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倉持裕、倉科カナ、上白石萌歌が描く悪人 現代の善悪のせめぎ合い

倉持裕、倉科カナ、上白石萌歌が描く悪人 現代の善悪のせめぎ合い

『お勢、断行』
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:豊田和志 編集:川浦慧(CINRA.NET編集部)ヘアメイク:野中真紀子(éclat)、永朋子(allure) スタイリスト:多木成美(Cコーポレーション)、道端亜未 衣装協力:STELLAR HOLLYWOOD、RPKO / THÉ PR

「晶も私も、善悪を判断する入り口にいる気がします」(上白石)

―これから『お勢、断行』の稽古が始まるとうかがっていますが、台本を読んでの感想はいかがでしたか?

『お勢、断行』撮影:山添雄彦
『お勢、断行』撮影:山添雄彦(サイトを見る

倉科:台本を読み始めたばかりなのですが、お勢はなかなか掴みづらい役柄だな、と思っています。でもパッと浮かぶのは、彼女がチェスをしているようなイメージです。

―チェス?

倉科:この話は、登場人物のほとんどが悪い人ですけど、そのなかでもお勢はいかに自分の手を汚さず目的に達することができるか考えている。他の人がいるゾーンよりもちょっと高い場所にいて、すべてを俯瞰しているイメージがありました。

倉持:なるほど。お勢は、脚本を書いていても難しいんですよ。能動的に、自分からガンガン動く主役をかっこよく、魅力的に見せていくのは簡単なんだけれど、ちょっと一歩引いたところにいる人物を映えさせるのは難しい。でもそこには独特な「かっこよさ」があると思うので、それをなんとか立ち上げたいと苦闘しているところなんですが。

倉持裕(くらもち ゆたか)<br>1972年生まれ、神奈川県出身。2000年劇団ペンギンプルペイルパイルズを旗揚げ、主宰。以降すべての劇団作品の脚本・演出を手がける。『ワンマン・ショー』にて第48回岸田國士戯曲賞受賞。舞台脚本・演出作品多数、近年では、映画、TVドラマの脚本も手がけ、活動の幅を広げている。
倉持裕(くらもち ゆたか)
1972年生まれ、神奈川県出身。2000年劇団ペンギンプルペイルパイルズを旗揚げ、主宰。以降すべての劇団作品の脚本・演出を手がける。『ワンマン・ショー』にて第48回岸田國士戯曲賞受賞。舞台脚本・演出作品多数、近年では、映画、TVドラマの脚本も手がけ、活動の幅を広げている。

―一方で上白石さんが演じる晶という役柄は、ほとんどつねにお勢と行動を共にするけれど、かなり異なる性質のキャラクターですね。そして年齢も上白石さんに近い。

上白石:お勢とは対極的ですよね。しかも、この悪人だらけの登場人物のなかで、唯一まっさらな存在で。倉持さん、晶の年齢っていくつの設定なんですか?

倉持:18、19歳くらいかな?

上白石:私、来年で成人なのでほとんど一緒ですね。それもあるのか、役と自分を重ねてしまうところが多くあります。これから大人としてどう生きていくか? 社会や人に揉まれていくなかでどんな自分を持てるか。晶も私も、善悪を判断する入り口にいる気がします。そういった「うつろい」を表現していきたいです。

倉持:お勢と晶は、まさにおふたりが話されたとおりのキャラクターです。そして、いまの話を聞いて、僕自身がそういう人物をきちんと受け止めていくべきなんだなあ、と思っていました。だから僕のほうがおふたりから気づかされるポイントがたくさんあります。

萌歌ちゃんが言っていた「うつろい」。うつろっていくものは作品に絶対に欲しい要素でもあるんですよ。芝居が始まって終わるまでに大事件が起きて、他の役柄はとにかくアクティブにくるくると状況を変えていく。けれども、この2人だけは「不動」で、うつろいってものと遠いところに生きている。しかし、肉体自体は動いていなくても、その内面はどんどん動いていっている、うつろっている、というのが重要なんでしょうね。

倉科:なるほど……。

倉持:構想として、2人を「あたまでっかち」にしたいと思うんです。周囲がフィジカルであるぶんだけ、2人は会話だけで「あの人たちは悪い人だ」「だから罰せられるべきだ」「いや、それはいけないことだ」みたいなやりとりをずっとしている。そうやって言葉を往復させていくなかで、やがて言葉に絡みとられて、自家中毒を起こしてしまうような。明らかに間違っていても、もはやそれを否定するための根拠を見つけられなくなってしまうような。

江戸川乱歩が生んだ魅力的な女性の悪人「お勢」の、「ありえたかもしれない」別の可能性を描く

―今回の作品は、江戸川乱歩の短編『お勢登場』に構想を得て、その「ありえたかもしれない別の可能性」を示す、リクリエイションな内容ですよね。乱歩自身もお勢というキャラクターを気に入っていて、いつか彼女が登場する作品を書くのだ、と宣言していたそうです。

倉持:乱歩のその言葉にはとても強いインパクトを受けました。あとがきに書いてるんですよ。「今後、お勢と明智小五郎が対決することになるかもしれない」って。でも、結局それは実現せず、お勢も『お勢登場』にしか登場しなかった。

また、乱歩作品のなかで女性が悪人というのも数少ないんですよね。しかも、『お勢登場』で描かれている事件も異質で、たとえば『屋根裏の散歩者』みたいに、ある種の実験として緻密に計画を立てて犯罪を起こす、というのとだいぶタイプが違うんです。自分の衝動に素直で、パッと閃いたら殺してしまうような。そのスピード感にも惹かれた気がしています。

倉持裕

―そして、倉持さんがお勢を題材にするのもこれがはじめてではありませんね。

倉持:はい。乱歩のいくつかの短編の要素をミックスするかたちで作ったのが、同じタイトルの『お勢登場』。これだけお勢にこだわって、かつ今回もですが時間軸のコラージュみたいなことに自分が関心を持っているのはなぜなんだろう……って考えたんですけど、僕はおそらく「罪と罰」について考えたいと思っているんです。

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作品情報

『お勢、断行』
『お勢、断行』

2020年2月28日(金)~3月11日(水)
会場:東京都 世田谷パブリックシアター

原案:江戸川乱歩
作・演出:倉持裕
音楽:斎藤ネコ
出演:倉科カナ、上白石萌歌、江口のりこ、柳下大、池谷のぶえ、粕谷吉洋、千葉雅子、大空ゆうひ、正名僕蔵、梶原善

プロフィール

倉持裕(くらもち ゆたか)

1972年生まれ、神奈川県出身。2000年劇団ペンギンプルペイルパイルズを旗揚げ、主宰。以降すべての劇団作品の脚本・演出を手がける。『ワンマン・ショー』にて第48回岸田國士戯曲賞受賞。舞台脚本・演出作品多数、近年では、映画、TVドラマの脚本も手がけ、活動の幅を広げている。近作に「神の子どもたちはみな踊る」(演出)、劇団☆新感線「けむりの軍団」(脚本)、「鎌塚氏、舞い散る」(作・演出)など。5月から7月に、作・演出を手がける「リムジン」の上演が控えている。

倉科カナ(くらしな かな)

1987年12月23日生まれ。2009年にNHK連続テレビ小説『ウェルかめ』の主演を演じ一躍注目を浴びる。2017年『奪い愛、冬』(テレビ朝日)での主演、2018年『春が来た』(WOWOW)、『トクサツガガガ』(NHK)、2019年『ミラー・ツインズ』(東海テレビ・WOWOW)、シーズン5を迎えた『刑事7人』(テレビ朝日)、舞台では2016年『ライ王のテラス』(演出:宮本亜門)などに出演。近作では主演映画『あいあい傘』が2018年に公開された。2019年『チャイメリカ』(演出:栗山民也)に出演。倉持作品への出演は『誰か席に着いて』(2017年)以来二度目となる。

上白石萌歌(かみしらいし もか)

2011年、第7回「東宝シンデレラ」オーディショングランプリ受賞。以降、テレビ、映画、舞台など幅広く活躍。主な出演作に、舞台『魔女の宅急便』(2017年)、『続・時をかける少女』、『るろうに剣心』(2018年)、テレビドラマ『3年A組ー今から皆さんは、人質ですー』(2019年)、大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』(2019年)など。2019年、「adieu」名義で音楽活動も本格的にスタート。2018年『羊と鋼の森』で第42回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。

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