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倉持裕、倉科カナ、上白石萌歌が描く悪人 現代の善悪のせめぎ合い

倉持裕、倉科カナ、上白石萌歌が描く悪人 現代の善悪のせめぎ合い

『お勢、断行』
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:豊田和志 編集:川浦慧(CINRA.NET編集部)ヘアメイク:野中真紀子(éclat)、永朋子(allure) スタイリスト:多木成美(Cコーポレーション)、道端亜未 衣装協力:STELLAR HOLLYWOOD、RPKO / THÉ PR

「SNSに賞賛が100あって、批判が1あったとしたら、どれだけ有名な人でもその1のほうに心が持っていかれると思う」(上白石)

左から:上白石萌歌、倉持裕、倉科カナ

―「揺るがされる」感覚って、いまの時代にこそリアルかもしれませんね。日々、心が揺らぐような出来事が続いていて。

倉持:そうですね。いまって「この人は悪い人だ」ってなったら、日本全国みんなで、いっせいにいじめるじゃないですか。たしかに悪いことは悪い。でも、そこには情状酌量の余地はないのだろうか、って思うんですけど、誰もその判断はできないわけですよね。それこそ、裁判の判事くらいしか判断できないかもしれないし、そもそもそこに至った事情は本人にしかわからないことなんですよね。けれども、みんな起きたことと、その結果だけで是非を下してしまう。

上白石:そうなんですよね。

倉持:そういう現実と比較してみると、演劇って責める側、責められる側の両方の人間を見せることができます。両方を見せて「で、どう思う?」って問いかけを投げかけることができる。それは自分自身も演劇でやっていきたいことだし、現実に対しても少なからずそういったことを考えたからこそ、この『お勢、断行』をやろうとしているのだと思います。

上白石:去年出演させていただいた『3年A組ー今から皆さんは、人質ですー』(日本テレビ系)は、それこそSNS社会の叫びがテーマだったんです。私の役は、SNS上での誹謗中傷に心をやられて死んでしまう女の子。それもあって、SNSに対する意識はちょっと敏感かもしれない。

―SNSの存在をポジティブに感じますか? それともネガティブ?

上白石:難しいです……。自分のお芝居に対して直接言葉をもらえる場所ってSNSくらいしかないんですよ。舞台をやっていても直接お客さんと話せるわけでもないですから、いろんな声が飛んでくることのよさはあると思います。

でも、賞賛が100個あって、批判が1個あったとしたら、どれだけ有名な人でもその1個のほうに心が持っていかれてしまうと思うんですよね。こういう仕事をしているから特別に心が強いとか、批判に慣れていると思われがちだと思うんですけど、まったくそんなことはなくて……。

上白石萌歌

倉科:私は最近SNSを始めて、ファンの方を身近に感じられることや、たくさんの人に舞台や作品を見てもらえるようになったことは嬉しいです。

メディアや週刊誌に書かれたものは嘘や真実にかかわらずSNS上で広がって、いろんな人たちが反応する。なかには「悪いこと」って言われたりすることもありますけど、たぶんどんなことでも一方が悪くて、一方が正しいってことはないと思うんです。

―混ざり合っているというか。それが人生だし社会ですよね。

倉科:そういう状況があって、正解がわからないまま攻撃的な言葉がどんどん膨らんでいく。言葉って、誰かを喜ばせる力も持っているけれど、同じくらい人を傷つける力も持っている。そういう言葉の力や使い方への意識が、いまはどんどん薄くなっている気がします。

左から:倉科カナ、上白石萌歌

上白石:Twitterも、海に向かって叫ぶような感覚で使われているのかもしれない。でも、誰かしらはその叫びを聞いていて、思わぬところで傷ついている。それは自分自身も気をつけないといけないなって思ってます。

倉科:うん。怖いよね……。

倉持:そういう空気を日々吸っていますから、僕らが作るものも、どこかで共鳴するんでしょうね。決して「いまの時代を切り取るぞ!」と思ってはいないけれど(苦笑)、自ずと、いまの時代の作品になっていく。それは『お勢、断行』もそうで、正義を後ろ盾にして攻めていくことのほうがむしろエスカレートしていって、引くに引けなくなっちゃう感覚があります。

―SNSも現在の社会には大小のすれ違いがあらゆるところにあって、それがあるぶんだけ「きっと声は届くに違いない」と思って、ますます大きな声を張り上げてしまうようなところがある気がします。しかし、そういう状況のなかでこそ、演劇という特殊な表現の意味もあらためて生まれてくるのかもしれません。直接観客とやりとりする機会はなくても、上演中だけはひとつの物語に触れて、一緒に考え合うことができる。そして、そこで得たものを持ち帰ることができることもあって。そこには小さな希望があるのではないでしょうか。

倉持:そうですね。見えないものだけど、同じ時間、同じような時代の空気を吸ってきた役者、スタッフ、そして観客が一堂に介して演じる / 見るわけですから。

倉科:たしかに。

倉持:いまの空気を吸って生きている人同士が劇場で出会って、感じているもの、そのときにしかないものを作る側と見る側の両方が発信して、受け取りあっているようなもの。それが演劇なのかもしれません。

左から:上白石萌歌、倉科カナ、倉持裕
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作品情報

『お勢、断行』
『お勢、断行』

2020年2月28日(金)~3月11日(水)
会場:東京都 世田谷パブリックシアター

原案:江戸川乱歩
作・演出:倉持裕
音楽:斎藤ネコ
出演:倉科カナ、上白石萌歌、江口のりこ、柳下大、池谷のぶえ、粕谷吉洋、千葉雅子、大空ゆうひ、正名僕蔵、梶原善

プロフィール

倉持裕(くらもち ゆたか)

1972年生まれ、神奈川県出身。2000年劇団ペンギンプルペイルパイルズを旗揚げ、主宰。以降すべての劇団作品の脚本・演出を手がける。『ワンマン・ショー』にて第48回岸田國士戯曲賞受賞。舞台脚本・演出作品多数、近年では、映画、TVドラマの脚本も手がけ、活動の幅を広げている。近作に「神の子どもたちはみな踊る」(演出)、劇団☆新感線「けむりの軍団」(脚本)、「鎌塚氏、舞い散る」(作・演出)など。5月から7月に、作・演出を手がける「リムジン」の上演が控えている。

倉科カナ(くらしな かな)

1987年12月23日生まれ。2009年にNHK連続テレビ小説『ウェルかめ』の主演を演じ一躍注目を浴びる。2017年『奪い愛、冬』(テレビ朝日)での主演、2018年『春が来た』(WOWOW)、『トクサツガガガ』(NHK)、2019年『ミラー・ツインズ』(東海テレビ・WOWOW)、シーズン5を迎えた『刑事7人』(テレビ朝日)、舞台では2016年『ライ王のテラス』(演出:宮本亜門)などに出演。近作では主演映画『あいあい傘』が2018年に公開された。2019年『チャイメリカ』(演出:栗山民也)に出演。倉持作品への出演は『誰か席に着いて』(2017年)以来二度目となる。

上白石萌歌(かみしらいし もか)

2011年、第7回「東宝シンデレラ」オーディショングランプリ受賞。以降、テレビ、映画、舞台など幅広く活躍。主な出演作に、舞台『魔女の宅急便』(2017年)、『続・時をかける少女』、『るろうに剣心』(2018年)、テレビドラマ『3年A組ー今から皆さんは、人質ですー』(2019年)、大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』(2019年)など。2019年、「adieu」名義で音楽活動も本格的にスタート。2018年『羊と鋼の森』で第42回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。

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