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仲野太賀×中川龍太郎 同世代が選んだ、生きづらい時代での闘い方

仲野太賀×中川龍太郎 同世代が選んだ、生きづらい時代での闘い方

『静かな雨』
インタビュー・テキスト
麦倉正樹
撮影:寺内暁 編集:石澤萌(CINRA.NET編集部)

時代が変われば、映画の中で描くリアリティーやその捉え方も変わってくるんだと感じています。(仲野)

―それは、おふたりの世代的なリアリティーや問題意識とも関連しているのではないでしょうか?

中川:ああ……それはあるかもしれませんね。友人として一緒にお酒を飲んでいると、何に不満を感じているのか、何に腹立つのか、あるいは何に憧れるのかとか、いろいろ話すんです。そういうところに時代感とか世代感みたいなものって、きっと出てくると思うんですよね。

仲野:僕らの世代だけではなく、ある種の生きづらさみたいな感覚って、たぶんいま日本で暮らしている多くの人にとってあると思うんです。でも、それってすごく不思議で。

たとえば、昔の映画を観ていると、みんなすごく饒舌にしゃべって、意見が食い違ったら殴り合って、みたいなことが平気で描かれてるじゃないですか。だけど、それを現代で描いても、何のリアリティーもない。いまは、言葉を飲むところから始まるような気がするし。

中川:そうだね。言いたいこと言えないところが起点だもんね。

仲野:それは僕らだけじゃなく、親世代もそうだと思う。でも、親世代が若かった頃は、きっとそうじゃなかったんだろうなっていうのもあって。そう考えると、どこかで歯車が狂ったんだろうし、そうやって時代が変われば、映画の中で描くリアリティーやその捉え方も変わってくるんだと感じています。

―なるほど。それは、世の中に対する「闘い方」の違いというか、太賀さんや中川監督の世代ならではの「闘い方」なのかもしれないですよね。

中川:そうですね、闘い方ですよね。背伸びして、暴力的なものや激しいものを作るのも違うと思いますし。

仲野:過激なものにいま、リアリティーがない。昔はあったのかもしれないけど。

中川:だから、ある種のファンタジーとしての過激さ……たとえば暴力がエンターテイメントとしてあるのはいいと思うんですけど、そういうものを僕がやってもしょうがない。自分はそれとは違う闘い方で、いまの時代を描きたいって思っているんです。

―中川監督って、映画の中で世代やリアリティーについて直接言及することはほとんどないですけど、こういう取材の場とかではお話されますよね。そこがすごく面白いなって思っていて。

中川:ああ、たしかにそうかもしれないですね(笑)。それをそのままやるのではなく、抽象化した地平で何を作れるかが大事だって思っているのかもしれないです。自分で観る分には、社会的な問題をストレートに描いた映画も好きなんですけどね。去年観た映画の3分の1以上はドキュメンタリーだったかもしれない。

仲野:面白いね。インプットとアウトプットが全然違うっていう。

中川:そうそう。インプットは現実的で、アウトプットは寓話的。

仲野:でも、中川監督の映画って、実際そうなってると思うよ。

左から:仲野太賀、中川龍太郎

ささやかな幸せをどれぐらいちゃんと見つめられるかに尽きると思うんです。たとえ、どんな困難があろうとも。(仲野)

―では最後に、おふたりは、この『静かな雨』という映画を、どんな人たちに観てもらいたいですか?

中川:生きづらさの中に生きている若い人たち……否、若い人たちだけじゃないのかな。いまの世の中で、どこか生きづらさを感じながら生きている人たちに観てもらいたいですね。で、どう感じられたのか、その意見を共有したいです。

―太賀さんは?

仲野:そうですね……しゃべっていて思いましたけど、いまっていよいよ大きなことを言えない時代になってきているじゃないですか。

中川:ああ、たしかに。

仲野:それはたぶん、大きなことを言うことにリアリティーがなくなってしまったということなのかもしれないですよね。この『静かな雨』という映画は、つまるところ、いま目の前に誰がいるかってことだし、ささやかな幸せをどれぐらいちゃんと見つめられるかっていうことに尽きると思うんです。たとえ、どんな困難があろうとも。

それはいま生きている人にとって共感できる着地点のような気もするし、それを現代におけるおとぎ話のように描こうというのが、僕らのスタート地点で。入り口は寓話的なのに、着地点がわりと現実的な映画だと僕は思っていて……。

中川:ああ、そうだね。たしかに、そうかもしれない。

仲野:そういう視点はなかなかないものだと思うので、ぜひ観てほしいですね。

左から:中川龍太郎、仲野太賀
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作品情報

『静かな雨』
『静かな雨』

2020年2月7日(金)からシネマート新宿ほか全国で順次公開

監督・脚本:中川龍太郎
原作:宮下奈都『静かな雨』(文春文庫、2016年)
音楽:高木正勝
出演:
仲野太賀
衛藤美彩
上映時間:99分
配給:キグー

プロフィール

仲野太賀(なかの たいが)

1993年2月7日生まれ。東京都出身。2006年、俳優デビュー。2007年の『風林火山』を皮切りに、2009年には『天地人』、2011年『江~姫たちの戦国~』、2013年『八重の桜』、2019年『いだてん』と過去に4作のNHK大河ドラマに出演。このほかのドラマ出演作にNHK連続テレビ小説『あまちゃん』、『恋仲』(フジテレビ系)、『ゆとりですがなにか』(日本テレビ系)、『仰げば尊し』(TBS系)、『今日から俺は!!』(日本テレビ系)など。主な出演映画に『走れ、絶望に追いつかれない速さで』『南瓜とマヨネーズ』『タロウのバカ』など。

中川龍太郎(なかがわ りゅうたろう)

1990年神奈川県生まれ。詩人としても活動し、17歳のときに詩集「詩集 雪に至る都」(2007年)を出版。やなせたかし主催「詩とファンタジー」年間優秀賞受賞(2010年)。国内の数々のインディペンデント映画祭にて受賞を果たす。初監督作品『Calling』(2012年)がボストン国際映画祭で最優秀撮影賞受賞。『雨粒の小さな歴史』(2012年)がニューヨーク市国際映画祭に入選。東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門では『愛の小さな歴史』(2014年)に続き、『走れ、絶望に追いつかれない速さで』(2015年)と2年連続の出品を最年少にして果たす。『四月の永い夢』(2018年)が、世界四大映画祭のひとつである第39回モスクワ国際映画祭コンペディション部門に正式出品、国際映画批評家連盟賞、ロシア映画批評家連盟特別表彰をダブルで受賞。第19回台北映画祭、第10回バンガロール国際映画祭にも正式出品された。

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