特集 PR

青木彬×宮本武典 入場料は野菜? アートと経済的価値を考える

青木彬×宮本武典 入場料は野菜? アートと経済的価値を考える

『3331 ART FAIR』
インタビュー・テキスト
内田伸一
撮影:豊島望 編集:宮原朋之(CINRA.NET編集部)

「アーティストの未来に加担する」ための方法はたくさんある

宮本:マーケットから少し話を移して、これまでぼくが関わってきたような社会包括的なアートプロジェクトでは、プロセスを重視するだけに、作家や主催側だけではなくて、参加する地域の側の人的・経済的な負担も大きく、継続する難しさがあると感じています。

活動を続けていると参加してくれる方々もだいたい固定化してくるので、いま現在も全国各地で国際芸術祭や地域密着型のアートプロジェクトが動いてますが、このまま同じサバイブを続けていくのは無理があるのではと。

だから、アクションを起こす人や地域それぞれが、川の上流から多様な「アートの経済圏」もセットで作る意識をもつことは、資金の大小にかかわらず、今後のアートプロジェクトにおいてすごく大事な意識変革になりますよね。

宮本武典

宮本:クラウドファンディングの他にも、お金を介した人とアートとの接点には、もっと多様な創造の余地が残されてると思いますし、電子マネーによって人々のお金に対する価値観や手触りは変わってくるだろうから、アートをめぐる経済的なコミュニケーションの幅は今後広がるでしょう。逆に言うと、これまで行政主導が多かったアートプロジェクトも、これからは多様な人々のニーズやパートナーとつながる仕組みを考えないと、現在のフレームを維持できなくなってくると思います。

青木:ぼくも学生の頃からわりと近いことを考えていました。行政からの助成金を活用したアートプロジェクトに関わってきましたが、やはりそれだけで活動を持続していくのは難しさを感じることが多かったからです。

仕事としても不安定だったり、経済的に厳しかったりする部分もたしかにあります。学生時代から数えるとアートの仕事に関わりはじめてまだ10年くらいですが、この状況に少し責任を感じるというか、変えていかなきゃなって思います。

青木彬

宮本:わかります。ぼくも大学の教え子たちが、いろんな地方の芸術祭事務局やアート系NPOでマネジメント職を渡り歩いているのですが、生活面ではなかなか安定しない。それはそれで重要な仕事だと感じつつ、これからの世代のために、もうひとつの仕組みを立ち上げていく必要があるなと。

今日お話ししていて、いままでのように地方自治体が何億円もかける芸術祭とはまた別の、マイクロ経済的に継続できるアートプロジェクトのつなぎ方を探れたらいいなと思いました。コアな現代アートシーンとはまた違う営みになるかもしれませんが、既存のマーケットにアートやアーティストをはめ込んでいくのはなく、「お金」の持つイメージや機能を変えていくというキュレーションにチャレンジしていきたいですね。

左から:青木彬、宮本武典

―最後に、今回の『3331 ART FAIR』が来場者にとってどんな場になればいいと考えているか、教えていただけますか。

青木:今日のお話に通底していたのは、アートフェアなどの既存の中心的な文化や枠組みは尊重しつつも、そこにどうやって自分らしいオルタナティブなやり方を接続できるのか、ということだったと思います。

それは「アーティストの未来に加担する」ための方法はひとつではないということ。「Selection-ROOFTOP」はまさにその実践の場になるので、来場者にとってなにか得られるものがあればいいなと思っています。

宮本:そう考えると『3331 ART FAIR』自体が、来場者それぞれが自分で稼いだお金とアーティストとの関係を主体的にキュレーションしていくような場になれば面白い。オルタナティブというのは、見出されていない可能性を探る、それぞれのアンサーだと思うんです。

左から:青木彬、宮本武典
Page 3
前へ

イベント情報

『3331 ART FAIR 2020』
『3331 ART FAIR 2020』

2020年3月18日(水)~3月22日(日)
会場:東京都 秋葉原 3331 Arts Chiyoda
※最新の実施情報については、ウェブサイトをご確認ください

プロフィール

青木彬(あおき あきら)

インディペンデントキュレーター。1989年東京生まれ。首都大学東京インダストリアルアートコース卒業。アートプロジェクトやオルタナティブスペースを作る実践を通し、日常生活でアートの思考や作品がいかに創造的な場を生み出せるかを模索している。社会的擁護下にある子どもたちとアーティストをつなぐ「dear Me」企画・制作。まちを学びの場に見立てる「ファンタジア!ファンタジア!─生き方がかたちになったまち─」ディレクター。KAC Curatorial Research Program vol.01『逡巡のための風景』(2019,京都芸術センター)ゲストキュレーター。「喫茶 野ざらし」共同ディレクター。

宮本武典(みやもと たけのり)

キュレーター / クリエイティブディレクター。1974年、奈良生まれ。海外子女教育振興財団の派遣プログラムでバンコク赴任、武蔵野美術大学パリ賞受賞により渡仏、原美術館学芸部を経て2005年に東北芸術工科大学へ。2019年3月まで同大学教授・主任学芸員を務め、東北各地でアートプロジェクトや東日本大震災の復興支援事業を展開。2014年に『山形ビエンナーレ』を創設し、プログラムディレクションを3期にわたって手がける(~2018年)。国内外を巡回した主な展覧会として『石川直樹:異人 / the stranger』、『向井山朋子:夜想曲』、『曺徳鉉:Flashback』など。2019年4月より角川武蔵野ミュージアム(隈研吾氏設計)の立ち上げに参画。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

BIM“Wink”

BIMの新作『NOT BUSY』より“Wink”の映像が公開。ゆるめに結んだネクタイは軽妙洒脱でも、背伸びはしない。どこか冴えない繰り返しのなかで<だって俺らの本番はきっとこれから>と、吹っ切れなさもそのままラップして次へ。BIMの現在進行形のかっこよさと人懐っこさがトレースされたようなGIFアニメが最高にチャーミング。(山元)

  1. サニーデイ・サービス曽我部の純情と歌。成熟を拒み、走り出せ 1

    サニーデイ・サービス曽我部の純情と歌。成熟を拒み、走り出せ

  2. キンプリ平野紫耀が体当たりで「問題」に挑む、ビタミン炭酸MATCH新CM 2

    キンプリ平野紫耀が体当たりで「問題」に挑む、ビタミン炭酸MATCH新CM

  3. 殺人鬼の異常な心情を描く R15+映画『アングスト/不安』予告&場面写真 3

    殺人鬼の異常な心情を描く R15+映画『アングスト/不安』予告&場面写真

  4. 『きのう何食べた?』西島秀俊が演じるシロさんの料理レシピ動画を公開 4

    『きのう何食べた?』西島秀俊が演じるシロさんの料理レシピ動画を公開

  5. 映画『キングダム』続編製作決定 山崎賢人、吉沢亮、橋本環奈が続投 5

    映画『キングダム』続編製作決定 山崎賢人、吉沢亮、橋本環奈が続投

  6. ゴッホ『ひまわり』が下着に 「巨匠のブラ」新デザイン登場 6

    ゴッホ『ひまわり』が下着に 「巨匠のブラ」新デザイン登場

  7. 広瀬アリス&すず、永山瑛太&絢斗がコメント 坂元裕二作ドラマ『Living』 7

    広瀬アリス&すず、永山瑛太&絢斗がコメント 坂元裕二作ドラマ『Living』

  8. 草彅剛主演『ミッドナイトスワン』に服部樹咲、水川あさみ、田口トモロヲら 8

    草彅剛主演『ミッドナイトスワン』に服部樹咲、水川あさみ、田口トモロヲら

  9. 『あつまれ どうぶつの森』コミュニケーションの代替だけでない魅力 9

    『あつまれ どうぶつの森』コミュニケーションの代替だけでない魅力

  10. 「唄う」ためにEXILEを脱退した清木場俊介。ソロ活動11年目だから唄えた、自身の軌跡 10

    「唄う」ためにEXILEを脱退した清木場俊介。ソロ活動11年目だから唄えた、自身の軌跡