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新生envyが体現する、国も人種も超えて自由に生きるためのヒント

新生envyが体現する、国も人種も超えて自由に生きるためのヒント

envy『The Fallen Crimson』
インタビュー・テキスト・編集
矢島大地(CINRA.NET編集部)
撮影:浜野カズシ
2020/03/06

政治も世界も、自分の歌だけでは変えられないと知っていく。じゃあなんのために歌うのかと考えたら、出会ってきた人たち、自分の大事なものを歌いたいんだと気づけたんです。(深川)

―そう考えるようになった背景はどういうものなんですか。

河合:俺は昔から、人から悪く言われたり、誰かが怒ってる顔を見たりするのが嫌だったんだよね。この人は俺の敵だと思ってしまう瞬間がどうしようもなく悲しかった。敵も味方もない生き方を選んでもいいでしょって思ってたし、傷つけ合うことのない世界で笑顔になるためにはどうしたらいいのか考えるようになってさ。その人がその人のまま存在することを許し合える選択肢や場所を作りたかったし、自由に選択肢を広げていいんだよっていう表現をして、目の前の人を笑顔にしたかったんだよね。だからこそ、海外をはじめとして誰も成し遂げていないことをやりたかったんだよ。

それにさ、今の世界の状況も考えてみると、自分たちが思い描いてきた「選択肢の提示」はより一層大事になってきたと思うの。この間6人で『HELLFEST』に出た時もすごい盛り上がりで、俺らもまだまだやれると実感できたんだよね。

2019年6月にフランスで開催された『Hellfest 2019』。2020年6月に行われる同フェス、同ステージに2年連続、ヘッドライナーとして出演が決定。“さよなら言葉“

―愛するもののために叫び続けるハードコアの精神と、だけどハードコアの型をはみ出してenvyとしか形容できないサウンドを作ってきた背景と。その両方がわかる話だと思います。

深川:envyを始めた当初はいろんなものへの反発がエネルギーになってたところは間違いなくあるんです。政治にしたって音楽シーンにしたって、自分たちが変えられると思ってた。でもやっぱり、自分の歌だけでは無理だと気づいていくわけです。

じゃあなんのためにやるのか……そしたら、いろんな場所で出会ってきた人たち、家族、自分の愛するものへ歌いたいんだと気づけたんですね。だから「目の前の人を笑顔にしたくてやってる」っていうのは、僕も間違いなくそうだと思う。僕らも40代後半になってきて、バンドにしても人生にしてもいつか終わるってことを意識するようになってきたからこそ、より一層「終わる時に笑顔でいたい」っていうシンプルな気持ちだけになってきた気がするんです。

envy

―たとえば“Swaying leaves and scattering breath”のように温かいメロディと緩やかなリズムを、切なさとしてではなく温かいまま聴かせる曲に、今おっしゃったことが表れていると思って。

深川:そうです。こういう曲は今までになかった。この曲に限らず、今回僕がメロディを歌っている箇所はほぼすべて、滝がメロディを考えてくれたんですよ。それが今回の歌の新鮮さのひとつにはなってると思います。

―なるほど。ただびっくりしたのは、“Rhythm”ではAchicoさんをゲストボーカルに迎えて、全編Achicoさんが歌われてますよね。これはどういう経緯だったんですか。

河合:“Rhythm”のフレーズを聴かせたら、滝から「歌を入れたらいいかもね」って意見が出て。イメージしてみたら、女性の歌が合いそうだなと思ったの。女性ボーカルの曲を作ったことがなかったからメロディは滝が考えてくれて、Achicoさんにオファーをしたらご快諾頂けて。

―“Rhythm”では、テツさんが一度も主旋を歌わないですよね。叫びだけでなくメロディが増えたこと、歌を人に委ねる曲もあることも含めて考えると、フィジカルな表現だけではなく、緩やかに染み入るものを追求する気持ちもあったんですか。

河合:それはあったね。今の自分たちを素直に表現しようと思うと、たとえば毎日演奏する海外ツアーで絶叫やアグレッシブな楽曲だけを1時間半(ワンマンライブの時間)やり続けるのは難しい。もちろん年齢もあるし、自分たちの変化を受け入れないとダメだと思ったんだよね。そこは、前向きだからこその変化だと思うね。

Spotifyでenvy“Rhythm”(『The Fallen Crimson』収録)を聴く(Apple Musicはこちら

河合:……とはいえ、俺らの曲作りをもし矢島くんが見たら笑っちゃうだろうけどね。だってさ、未だに「ロッキー(渡部)、そこはウワァーッ! ドン、ドンドン、みたいな感じで!」とか、原始人みたいな伝え方してるんだから(笑)。

渡部:これ、本当ですからね(笑)。

―はははははは!

河合:でも真面目な話、それは俺にとって「アバウトな指示」じゃなくて、お互いの境界線を探ってるって感覚なんですよ。

―境界線というと?

河合:たとえばギター3本をレイヤーしてる部分で言えば、滝が1弦2弦、俺が3弦4弦、yOshiが5弦6弦を担当してるイメージなんですね。で、そこで鳴っている音以上に、音と音の境界線で何が生まれるかを狙ってるんですよ。だから境界線上の弾かなくてもいい開放弦もよく入れるし、それがenvyの音の特徴になってる。いかに境界線の部分で混ざり合うか。それは、音楽としても生き方としても僕らのテーマなんです。

―混ざるということはつまり、予想外のものが生まれるということ?

河合:そう。境界線を面白がるっていうのは、線を引くこととは違うんだよね。あらかじめ引かれた線を守ることじゃなくて、人と人の持ってる線の上で起こる間違いや意図していないものを「素敵だね」って受け入れることなんだよ。特に価値観の異なる人が集まるバンドにおいて、想像を超える感動は一種の勘違いから生まれていくものなんじゃないかな。この6人で新しいenvyを作るというテーマがはっきりしていた分、自由にお互いの境界線を面白がれたんだと思うし、それが俺のやりたかったenvyなんだよね。まさに人を受け入れるための音楽というかさ。

envy
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リリース情報

envy『The Fallen Crimson』
envy
『The Fallen Crimson』(CD)

2019年2月5日(水)発売
価格:2,750円(税込)
SZ-008

1. Statement of freedom
2. Swaying leaves and scattering breath
3. A faint new world
4. Rhythm
5. Marginalized thread
6. HIKARI
7. Eternal memories and reincarnation
8. Fingerprint mark
9. Dawn and gaze
10. Memories and the limit
11. A step in the morning glow

プロフィール

envy(えんゔぃー)

前進のBLIND JUSTICEを経て、1995年に結成。日本ではSONZAI RECORDSを主宰し、世界各国のレーベルからも作品をリリース。北米、欧州、アジア問わずツアーを実施している。ハードコアバンドとして始動しながらも、ポストロックやシューゲイザーまでを消化した深い音響と轟音を特徴とした音楽性を持つ。2018年にyOshi(killie)、滝善充(9mm Parabellum Bullet)、渡部宏生(heaven in her arms)をサポートメンバーとして迎え、2016年に脱退していた深川哲也も復帰。6人編成でリスタートを果たし、現体制で初のアルバム『The Fallen Crimson』を2月5日にリリースした。

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