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新生envyが体現する、国も人種も超えて自由に生きるためのヒント

新生envyが体現する、国も人種も超えて自由に生きるためのヒント

envy『The Fallen Crimson』
インタビュー・テキスト・編集
矢島大地(CINRA.NET編集部)
撮影:浜野カズシ
2020/03/06

不自由なことに目を向けるんじゃなくて、好きなことに対して踏み出せれば自由であれるはずだっていうことを表現してきた。本当に必死に生きてれば、お互いに足を引っ張り合うこともないはずなんだよ。(河合)

―たとえば“HIKARI”の<願わくば後悔を携え今日を乗り切る / 優しい声を貸して下さい><時は鼓動の間に 壊れた心を持って / 今から行くよ その光を持って>という一節を聴いて、“Worn Heels and the Hands We Hold”の<今日を精一杯駆け抜ける君に / 鼓動刻む明日は来る>という叫びを想起したんですよ。ここまで話してくれた人への優しさや、言葉にできない想いを抱えて生きている人を鼓舞する姿勢は今も変わらないんだと改めて実感します。

深川:やっぱり、自分は優しい歌詞を書き続けてきたんだと思います。自分が普段吐き出せない言葉を書いている分、どこにも行けなくて苦しい人に対して優しいものになってるんじゃないかなって。やっぱり今の時代、人が傷つけ合うところばかりが可視化されて、みんな色んな意味で怖いと思う。昔も今も――今は特にだけど、不安を抱えて生きているのは人も僕も同じだと思うから。

envy

―そこで張り裂けそうな想いが叫びになっているとも言えますか。

深川:何故叫ぶのか……叫ぶって、叫びたいから叫ぶんじゃない。伝えたいことがあって、どうにかして伝えたくて自然と叫んでしまうのが「叫び」だと思うんです。みんな生きていたら辛いこともある。思わず叫び出しそうな時もある。僕だってそうなんですよ。だからこそ、envyの音楽は叫んでいるのに優しいんだと思う。

―たとえば“Dawn and gaze”はこの体制で初めてのシングルに収録されていた曲ですが、新しい始まりを感じさせつつ、愛するものを守るために叫んで闘うんだという意志だとも感じたんですね。

深川:“Dawn and gaze”は俺がバンドに戻って最初に書いた歌詞なんです。新しい始まりに対しての歌でもあるし、言われたように、自分が今大事にしているもの――家族や子供に向けて「こんな未来を歩んでほしい」っていう願いが出てきてる。大事なものがあるのは自分だけではないし、だからこそ人を傷つけてはいけないと理解していくじゃないですか。だから、人に優しくあるために自分の大事なものを書いてるというか。

Spotifyでenvy“Dawn and gaze”(『The Fallen Crimson』収録)を聴く(Apple Musicはこちら

深川:それが今と昔では違うところだろうし、でも自分自身の心を歌い続けてきたという意味では変わっていないとも言える。自分たちがハードコアかどうかはもはやどうでもいいことで、でも結局ハードコアっていうのはジャンルじゃなくて、そういう優しさや心の形のことだと思ってるんです。

河合:そう。不自由なことに目を向けるんじゃなくて、好きなことに対して踏み出せれば自由であれるはずだっていうことを俺らは表現してきたつもりでね。自分を自由にするために本当に必死に生きてれば、お互いに足を引っ張り合うこともないんだよ。この前も、ライブの最前列のところにイスラム教のスカーフを顔に巻いた女性の方がいて。日本語で絶叫する僕らを観て涙を流してくれるんだよ。最高じゃない? 国も宗教も言葉も超えて、互いに感動し合えるんだから。

金があるヤツが強い、新しい可能性を非生産と決めつけて潰そうとする無知なヤツらが力を持ってしまっているーーそういう今だからこそ、誰かに決められた意味のない境界線なんて飛び越えていける音楽の力を今一度信じたいと思うんだよね。音楽は旅だし、出会いだよ。どこにだって行ける。誰とだって出会える。その旅の途中、その出会いの中で、一瞬でもお互いを理解し合える瞬間があるのなら、本当に幸せなことだと思ってる。

yOshi:政治や世界が変わるかわからないのに何故音楽をやってるのかと考えると、目指す最終地点に辿り着くためにやってるのではなくて、そこに辿り着こうとしている日々そのものが理由・目的なんだと思うんですよ。昔、僕の尊敬するバンドマンが「遥か遠くの天竺を目指していると思いがちだけど、実際は今ここが天竺なんだよね」と言ったことがあったんですけど、まさにその通りだと思います。目指す先が天竺なのではなく、今この日々こそが天竺なんだと。

―今作は、生きることと同時に、終わっていくものもシビアに描いた歌も印象的なんですよ。だけどそれが悲しい歌かと言ったらそうじゃなくて、素直に年輪としてのものだし、その一方で鳴っているのはまっさらな衝動だけで。僕らはただ生きて死んでいくだけじゃない、蒼くなり続けることだってできるんですよね。

深川:どうしたって、人生は終わりに向かっていくので。だけど、その中でも失いたくないものは増えていくし、生きることの美しさも知っていける。自分の証明として歌ってきたからこそ、終わっていくことも生きていくことも両方がさらに重みを増していくんだと思います。じゃあ、その間にある美しいこと――出会ってきた人、大事なもの――を歌うしかない。そうやってenvyを続けていきたいんです。

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リリース情報

envy『The Fallen Crimson』
envy
『The Fallen Crimson』(CD)

2019年2月5日(水)発売
価格:2,750円(税込)
SZ-008

1. Statement of freedom
2. Swaying leaves and scattering breath
3. A faint new world
4. Rhythm
5. Marginalized thread
6. HIKARI
7. Eternal memories and reincarnation
8. Fingerprint mark
9. Dawn and gaze
10. Memories and the limit
11. A step in the morning glow

プロフィール

envy(えんゔぃー)

前進のBLIND JUSTICEを経て、1995年に結成。日本ではSONZAI RECORDSを主宰し、世界各国のレーベルからも作品をリリース。北米、欧州、アジア問わずツアーを実施している。ハードコアバンドとして始動しながらも、ポストロックやシューゲイザーまでを消化した深い音響と轟音を特徴とした音楽性を持つ。2018年にyOshi(killie)、滝善充(9mm Parabellum Bullet)、渡部宏生(heaven in her arms)をサポートメンバーとして迎え、2016年に脱退していた深川哲也も復帰。6人編成でリスタートを果たし、現体制で初のアルバム『The Fallen Crimson』を2月5日にリリースした。

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