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主人公になれないgummyboy 光に手を伸ばすためのラップ

主人公になれないgummyboy 光に手を伸ばすためのラップ

gummyboy『The World of Tiffany』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:垂水佳菜 衣装協力:THE FOUR-EYED 編集:久野剛士、山元翔一(CINRA.NET編集部)

ラッパーのgummyboyが、ミックステープ『The World of Tiffany』をリリースした。Tohjiと共に率いるクルー「Mall Boyz」での活動でも知られる彼にとって、本作は初のミックステープ作品となる。事前に全体像などは考えず、そのときそのときの「いま」を刻むことに終始した曲たちが並んでいるという本作は、その作為のなさゆえか、この作品にしか刻み得なかったひとりの青年のリアルを、記憶を、独自のバイオリズムと共に刻んでいる。ユーモアと欲望が跳躍しながら手を繋ぐ狂騒的なテンションの序盤から、中盤、徐々に徐々に溶けだしてゆく感情――不安、焦り、アパシー、安らぎ、幸福、「君」、愛。そして、辿り着く最終曲“Tiffany”において広がる、あらゆる不安と安堵が混ざり合った末に生まれる祈りのような光景。ここでリアルはリアルのまま、物語になる。本当に美しい作品だ。写真家Ryo Yoshiyaによる素晴らしいアートワークも、この作品の持つ美しさと悲しさを見事に映し出している。

この『The World of Tiffany』には、言い訳も説明もない。ただ、gummyboyにしか体感することができなかったリアルがあり、彼にしか思い出すことができなかった記憶がある。それでもこの作品は、僕らを温かい気持ちにさせる。僕らにもなにかを思い出させる。以下から始まるのは、gummyboyへの単独インタビュー。彼はとても恥ずかしそうに、ゆっくりと語る。彼と話すのは、とても特別な時間だった。

どれだけダサいことをそのままいえるかが、大事だと思う。

―新作ミックステープ『The World of Tiffany』は、ご自身にとってどんな作品になりましたか?

gummyboy:作った期間が長かったんです。全部を1カ月で作るとかではなくて、半年以上前の曲とかもあるんですよね。作りたいときに作っていた曲を並べてみたら、結果的に物語みたいになったなって。最終的に、すごく自分っぽいものができたなと思います。

―この作品を振り返ると、自分はどんな人間なんだと思いますか?

gummyboy:前半のアッパーな曲はパーティーやクラブでのノリを念頭に作ったけど、最後の曲(“Tiffany”)は最後にできて……やっぱり自分のことだな、みたいな(笑)。どっちの感じもしっくりくるけど、最後はそっちに落ち着きたいんだなって思いました。やっぱり、自分は内側の部分を歌いたいんだと思います。

gummyboy(ぐみぼーい)<br>ハードなトラップだけではなく、叙情的なリリックでメロウな曲調までを自由に乗りこなし、独自のアーティスト像を確立している。ソロ活動を本格化させた2019年後半から勢いに乗り、いまその動きが注目されているラッパーの一人。2020年2月には自身初のミックステープ『The World of Tiffany』をリリースした。
gummyboy(ぐみぼーい)
ハードなトラップだけではなく、叙情的なリリックでメロウな曲調までを自由に乗りこなし、独自のアーティスト像を確立している。ソロ活動を本格化させた2019年後半から勢いに乗り、いまその動きが注目されているラッパーの一人。2020年2月には自身初のミックステープ『The World of Tiffany』をリリースした。
ミックステープ『The World of Tiffany』を聴く(Spotifyを開く

―ラップは、自分の内側を語るためのものである?

gummyboy:そうですね。ふたつモードがあるんです。なにも考えずに、ただ楽しいことを求めてやるときと、ひたすら自分のこと、自分がいま思っていることを、正直に歌詞にしていくときと。

―なぜ、gummyboyさんにとって自分の内側をさらけ出せるものはラップだったのだと思いますか?

gummyboy:ひとりでやっているからかな。作るときはひとりだから。「恥ずかしいけど、これはきっと、みんな思っていることだろうな」と思って、曲を作るんです。「いわなきゃ」っていう気持ちも少しあって。きっと、みんなこう思っているし、俺みたいな人もいっぱいいると思うから……だから、俺がいいたい。「暗い人代表」みたいな(笑)。

―gummyboyさんの曲は、「自分のことだけど、みんなのこと」という感覚があるんですね。

gummyboy:そうですね。「みんなのことだろうな」っていうのは、常にあります。

―1st EP『Ultimate Nerd Gang』の1曲目“Young Rich Nerd Gang”は、<俺たちみんなが地球にいる 俺たちみんなは宇宙にいる>という言葉から始まりますよね。gummyboyさんの曲は一貫して「独白」という側面が強いと思うけど、でも、「俺たち」を歌うところからgummyboyさんのラップは始まっている。そこが、僕としてはすごく印象的だったんです。

gummyboy:基本的に、みんな同じだと思っていて。もちろん違うんですけど、根本的なところは一緒というか。みんな優しいし、みんな嫌なやつだし……あんまり変わらないんだろうなって思う。子どもの頃からそう思ってきたなって思います。でも基本的には、どれだけ自分のことを正直にいえるか? だと思うんですけど。

『Ultimate Nerd Gang』を聴く(Spotifyを開く

―正直さは、大事なことですか?

gummyboy:そうですね。俺も、人の正直な気持ちを聞きたいと思っているから。そういう音楽を聴くと、いいなと思う。

―これまで、gummyboyさんが「この表現は正直だ」と思った人というと、誰がいますか?

gummyboy:XXXテンタシオン(XXXTentacion)かな。それこそ、聴いたときに「俺のことを歌ってくれてる」と思いました。彼は自分のことを歌っているだけだと思うけど、すごく共感できた。XXXテンタシオンは、リリックが難しくないんですよね。悲しい、焦ってる、怒ってる……そういう、本当にただ、いま思っていることをシンプルに書いているような曲が多いし、音にもそれが表れているし。すごく好きですね。

XXXテンタシオン『17』を聴く(Spotifyを開く

―特に言葉で、正直に自分を書くのって、難しいことだと思うんです。Twitterなんかをやってみても思うんですけど、どうしても、「こう見られたい」という脚色された自分像を作ってしまうもので。正直に自分を書くということに、gummyboyさんはどのように向き合っていますか?

gummyboy:俺、文章を書くのがめちゃくちゃ苦手で。作文とかは書けないんですよ。本を読むのも苦手だし。だから、簡単なことしかいえない。もちろん、まんま書くと、ダサいんです。でも、たとえダサくてもどれだけそのまま出せるか。どれだけダサいことをいえるかが大切。恥ずかしいけど、それもひとりでやっているからできるんだろうなと思います。

―どんなときにリリックは書かれるんですか?

gummyboy:曲を作るときにしか書かなくて。ラップをやり始めたとき、あらかじめ電車で書いたものを家で録ってみたんですけど、全然しっくりこなかったんです。俺は、書いたらすぐ録るのが一番いいんだなって思います。そうしないと、しっくりこない。トラックも、そのときに聴いて、歌ってみて、自然に感情を乗せることができるものがいいんです。いまやりたい感じのビートを選んだら、あまり繰り返して聴かないようにするんです。そのとき初めて聴いた、みたいな感覚が一番いいんですよね。

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リリース情報

gummyboy『The World of Tiffany』
gummyboy
『The World of Tiffany』

2020年2月19日(水)配信

1. hone
2. fuckin'boy
3. SAKURAI SHO
4. 302
5. talk to you
6. thinking?
7. orange
8. heart interlude
9. Tiffany

イベント情報

『CROSSING CARNIVAL'20』
『CROSSING CARNIVAL'20』

2020年5月16日(土)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-EAST、TSUTAYA O-WEST、TSUTAYA O-nest、duo MUSIC EXCHANGE、WOMB LIVE、clubasia、7th FLOOR

出演:
曽我部恵一
吉澤嘉代子
君島大空
柴田聡子inFIRE
王舟(トリオ編成)
CRCK/LCKS
Lucky Kilimanjaro
betcover!!
YOMOYA
ISSUGI
ELLE TERESA
OMSB
Campanella
gummyboy
C.O.S.A.
JAZZ DOMMUNISTERS
仙人掌
Daichi Yamamoto
Dos Monos
dodo
FNCY
MARIA
and more

料金:5,500円(ドリンク別)

プロフィール

gummyboy(ぐみぼーい)

2018年末、1st EP『Ultimate Nerd Gang』をリリース。直後Tohjiと共にMall Boyzとして『Mall Tape』を発表。収録された“Higher”が大ヒットとなり、2019年のヒップホップを代表する曲となる。Tohjiと共に超満員のO-EastやLIQUIDROOM、またUltra Koreaへの出演を果たし、その人気を確固たるものとした。2019年9月に2nd EP『pearl drop』。2020年2月には自身初のミックステープ『The World of Tiffany』をリリース。ハードなトラップだけではなく、叙情的なリリックでメロウな曲調までを自由に乗りこなし、独自のアーティスト像を確立している。ソロ活動を本格化させた2019年後半から勢いに乗り、いまその動きが注目されているラッパーの一人。

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