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ましのみの人間的開花。世界と自分を閉ざしていた、呪いを破って

ましのみの人間的開花。世界と自分を閉ざしていた、呪いを破って

ましのみ『つらなってODORIVA』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:垂水佳菜 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)

「幸せを感じちゃいけない」と思い込んでいた高校時代。ましのみの音楽の奥にある「疎外感」の正体

―ましのみさんのなかにある根本的な疎外感というのは、どういったところから生まれているのだと思いますか?

ましのみ:もともと、不安症なんです。音楽に対する気持ちも、3歳くらいの頃は「歌手になりたい!」って堂々と言えていたんですけど、物心ついてからは誰にも言えなくなっちゃったんですよね。「イタい子」扱いされたくないっていう気持ちが強かったし、普通のサラリーマン家庭で育ったので、音楽をやっている人たちを「外れ者」とする価値観のなかで生きてきたから。

ましのみ

ましのみ:高校生の頃は、頑張って勉強して、親に褒められるような道に進んで、バリキャリになろうと思っていたんです。

この間、高校の頃の友達に会ってびっくりしたんですけど、高校生の頃の私、「恋愛はしなくていいから結婚したい。子どもは老後のために欲しいけど、離婚してもいい。相手に頼らず、依存せずに生きることができるように稼ぎたい。だから、バリキャリになりたい」って言っていたらしいんですよ……この感じ、伝わりますかね?(笑)

―なんだか、「こう生きなきゃいけない」と、自分をカチコチに固めているというか……。自分で自分を呪ってしまっているような感じですよね。

ましのみ:昔から、囲って囲って、自分を守っていたんですよね。私、高校の個人面談のときに、「普通の幸せが欲しいんです!」って泣いていたらしくて(笑)。

―(笑)。

ましのみ:自分では全然覚えていなかったんですけど(笑)、そもそも、そういう性格なんですよね。その向上心ゆえに、幸せを感じちゃいけないとも思っていたし……だから、疎外感を感じやすかったんだろうなって思う。

そういえば、「不器用な超完璧主義」と言われたこともありました(笑)。「完璧にできるわけじゃないのに完璧主義だから、ずっと自分の首を絞め続けているよね」って。

ましのみ

ましのみ:そういう人間だから、世間を斜めに見て、それゆえに疎外感を感じて、テレビで流行っている歌を聴いて、「どうせみんな、綺麗な歌ばかり歌うんでしょ?」って、皮肉っぽく思っている……そんな過激派だったんです(笑)。

―それでも、大学に入って、音楽をはじめたわけですよね。そこで解放される瞬間もあったのでは?

ましのみ:むしろ、大学に入って一層、疎外感が強くなってしまった感じもあって。自分でも音楽をはじめたから、曲の歌詞をよく読むようになったんですよ。そうしたら、流行りの歌の歌詞を見ても、自分の生活とまったく一致しないというか、「そんなに綺麗な起承転結になるわけないよね?」とか、「そんなにハッピーエンドで終わるわけないよね?」って思っちゃう。

でも、そういうものが世間の中心にあることもわかっていたし……だから、皮肉的というか、悲観的な感情がずっとあったんだと思います。もちろん好きな歌はあって、大森靖子さんの“ノスタルジックJ-pop”とか、大好きでした。あと、クリープハイプやRADWIMPSも聴いていましたね。こういう音楽なら寄り添ってくれるなって。

ましのみ

ましのみの人間的開花。世界を閉ざしていた彼女が、音楽家として目覚める

―先ほど「歌詞はネガティブだけど、明るくなれるような曲調の音楽をやりたい」とおっしゃっていましたけど、新作『つらなってODORIVA』は、そういった作為を超えたところで、「存在」そのものを感じることができる作品だなと思っていて。とても大切な変化が今、ましのみさんのなかで起こっているのかなと思うのですが、どうでしょう?

ましのみ:まさに、そうだと思います。2ndアルバムを作り終わったタイミングで、これまでやってきたことに手応えを感じつつ、自分のこだわりの強さにも気づいたりして、なんとなく自分のセンスにも自信を持つことができるようになってきたんです。

そもそも、私、音楽をほとんど聴いて育ってこなかったんですね。とにかく、歌うこととか踊ること、それで人に喜んでもらうことが好きで音楽をやってきたから。そういう部分に由来している自分の感性を壊されるのが怖くて、音楽を聴いたり、勉強することも拒んできた部分もあって。でも私の感性は、誰かと喋ったりしても壊されることはないし、むしろ誰かと話すことによって、照らし出されることがあるかもしれないって、今は気づくことができているんです。

ましのみ

ましのみ:それに、いろんな音楽を聴いたうえで得ることのできる技術と、私自身の感性は、ちゃんと両立させられるものなんじゃないか……そんな気持ちも出てきました。そういう気持ちになれたのが2ndアルバムをリリースした直後で、そこからガラッと、自分のモードが変わっていったんです。

―それが、今作の作品性につながっている?

ましのみ:そうですね。心地いいんだけど面白い、生活感があるんだけど違和感がある……そういうものを作りたいっていう意識が、今の自分にはあります。

そのために今作では、今までよりも生音を活かしたり歌のキーを下げたり、ピアノをメインにしてみたり、初めて生ドラムを入れたり、音楽的にも自分のこだわりをどんどん出していきました。

ましのみ『つらなってODORIVA』(2020年)収録曲(Spotifyで聴く / Apple Musicで聴く

ましのみ:2ndアルバムまでは、詞曲は私自身で書くものの、アレンジは大部分をプロの方に任せていたし、見え方も、周りの人の客観的な視点に任せてきた部分が大きくて。「ましのみ」というプロジェクト自体、分業制で成り立ってきたところが大きかったんですよね。それは、私がそうしたかったから、そうしていたんですけど。でも分業でやっていくには、今の私はこだわりが強すぎると思う。

―もっと、自分で自分自身をコントロールしたい欲求が出てきているんですね。

ましのみ:そもそも、メジャーデビュー当初のエレクトロポップの路線は、当時のディレクターが、私に合うんじゃないかって考えてくれたもので。もちろん私自身もいいと思って、意見を出しあって進めてきたんですけど、でも今は、「もっと、自分で自分のことをトータルプロデュースしたい」と思っています。

打ち込みも勉強しはじめたんですけど、サウンドからビジュアル面まで、自分で細かく考えたうえで見せたい。そんな気持ちで作れた最初の作品が、今作なんです。

―音楽とましのみさんの距離が近づいた、ということですね。

ましのみ:まさに、そうですね。「やっと近づいてきたな」っていう感じあります。最近はプライベートでも人と会うようになって、「だんだんと人間的になってきたな」って自分では思っているんです(笑)。

ましのみ

―音楽を聴く機会も増えましたか?

ましのみ:前よりも聴くようになりました。でも、聴けば聴くほど、私は、どのジャンルの音楽でも好きなんだなって思いましたね。ジャズも好きだし、環境音楽も好きだし、同世代の人たちが作っている、あえてチープな音を使ったローファイなものも好きだし、オルタナ系のバンドも好きだし……でも、どのジャンルにものめり込みたくないというか。

「私」という存在が、いろんな音楽を好きな塩梅で組み合わせられる、統括する中心にいられればいいなと思うし、せっかく生きているからには、自分にしかできないことをやりたいなと思います。そうでないと、意義が見出せないから。

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リリース情報

ましのみ『つらなってODORIVA』初回限定盤
ましのみ
『つらなってODORIVA』初回限定盤(CD+DVD)

2020年3月18日(水)発売
価格:3,000円(税込)
PCCA-04934

[CD]
1. 7
2. NOW LOADING
3. エスパーとスケルトン
4. 薄っぺらじゃないキスをして
5. のみ込む

[DVD]
1. 7(Music Clip)
2. エスパーとスケルトン(Music Clip)
3. 『Digest of「ぺっとぼとリテラシー vol.3~レセプションパーティーin TOKYOでひとつになりまショータイム~@渋谷ストリームホール」』
4. mashinoMeeting
5. 『Making of 「エスパーとスケルトン」 Music Clip』

ましのみ『つらなってODORIVA』通常盤
ましのみ
『つらなってODORIVA』通常盤(CD)

2020年3月18日(水)発売
価格:2,000円(税込)
PCCA-04935

1. 7
2. NOW LOADING
3. エスパーとスケルトン
4. 薄っぺらじゃないキスをして
5. のみ込む

イベント情報

『ましのみワンマンライブ 「ODORIVA」』

2020年5月13日(水)
会場:大阪府 アメリカ村BEYOND

2020年5月20日(水)
会場:東京都 WWW X

番組情報

『死にたい夜にかぎって』

2020年2月23日(日・祝)から毎週日曜24:50~にMBS、2月25日(火)から毎週火曜25:28~に放送、2月25日(火)から毎週火曜にTSUTAYAプレミアムで配信

監督:村尾嘉昭
脚本:加藤拓也
原作:爪切男『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)
オープニング主題歌:ましのみ“7(ナナ)”
エンディング主題歌:アイナ・ジ・エンド“死にたい夜にかぎって”
出演:
賀来賢人
山本舞香
戸塚純貴
今井隆文
青木柚
櫻井健人
玉城ティナ
小西桜子
中村里帆
安達祐実

プロフィール

ましのみ
ましのみ

1997年2月12日生まれのシンガーソングライター。2016年3月、ヤマハグループが主催する日本最大規模の音楽コンテスト『Music Revolution 第10回東日本ファイナル』で約3000組の中からグランプリを獲得。2018年2月、大学在学中に『ぺっとぼとリテラシー』でメジャーデビュー。現在までに2枚のアルバムと1枚のシングルをリリースしている。また、LINE LIVEやSNSで発信するショート動画など個性的な発信も行っている。2020年3月18日、ドラマ『死にたい夜にかぎって』のオープニング主題歌“7”を収録したミニアルバム『つらなってODORIVA』をリリース。

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