
今の10代には通用しない、レコード会社の古き体制をどう変える?
CONNECTUNE- インタビュー・テキスト
- 金子厚武
- 撮影:小田部伶 編集:矢島由佳子(CINRA.NET編集部)
ビクターエンタテインメント内のレーベル「CONNEXTONE」が、新たな新人発掘部門として「CONNECTUNE」を立ち上げた。昨年4月に誕生した「CONNEXTONE」は、ぼくのりりっくのぼうよみ、SANABAGUN.、Reolらを輩出してきた「CONNECTONE」と、洋楽部が統合。「CONNEXTONE」のサブレーベルとなる「CONNECTUNE」では、これまでの「メジャーデビュー」の概念を変える、フットワークの軽いリリースを展開していくという。
現在CONNECTUNEを運営しているのは、CONNEXTONEのレーベルヘッドでもある高木亮と、A&Rの堀猛雄。堀はもともとビクターに所属していたが、2011年に独立し、自らのレーベルSOPHORI FIELD COMPANYからregaやSawagiをリリース、近年は『未確認フェスティバル』の事務局スタッフを務め、当時16歳のbetcover!!を発掘したことでも知られている。
洋邦問わず、長くメジャーの第一線で活躍してきた高木と、一度はメジャーに見切りをつけ、アーティストに寄り添った活動を続けてきた堀が出会い、新たな世代の作る音楽に興奮しながら、時代に見合ったレーベルのあり方を模索するというのは、非常に興味深い。大人とはまったく違う発想を持っている10代アーティストたちの魅力から、「レコード会社」の未来まで、幅広く聞いた。
※この取材は東京都の外出自粛要請が発表される前に実施しました。
これまでの「メジャーデビュー」はカロリーが高すぎる。(高木)
―CINRA.NETでは4年前に「CONNECTONE」が立ち上がった際にも取材させていただきましたが(参考記事:ぼくりりを輩出したCONNECTONEが実践する新たなメジャー戦略)、まずはこれまでに対する手応えから話していただけますか?
高木:前回の取材では「1年目は50点」と自己採点した覚えがあるのですが、CONNECTONEを丸4年やって、かなり軌道に乗ってきたところで、洋楽部と一緒になってCONNEXTONEへと発展しました。「インターナショナルとドメスティック」「インバウンドとアウトバウンド」「音源ビジネスとnon音源ビジネス」を合言葉に、全てにおいてハイブリッドで、面白いレーベルにしていくつもりです。そこで今回、さらなるチャレンジとしてCONNECTUNEを始めたんです。
―CONNECTUNEは「新たな新人発掘の部門」という位置付けなんですよね?
高木:そうです。レコード会社やマネージメント間で新人アーティストの獲得競争は激化していますし、ビジネスの領域も刻々と変化しています。音楽業界全体がスピードを上げて変化している中、僕らもスピードを上げて新しい才能たちに出会って発信していきたい。
CONNECTUNEで変えていきたいことのひとつは、フットワークの軽さ、スピード感です。本当は、ライブハウスやSNSで見つけて「いいな」と思ったアーティストに、すぐ「一緒にやろうよ!」って声をかけて、その場で具体的なアクションに移りたいんですよね。でも、契約に至るまでには会社としてのプロセスを踏まないといけなくて、割と時間がかかる。
もうひとつ。これまでの「メジャーデビュー」への道のりは、カロリーが高すぎるとも思っていました。手間暇かけて、お金もかけて、準備に1年かけてデビューして、最初の1年でなにも起きなかったら、軌道修正が本当に難しい。それって、アーティストにとっても僕らにとっても不幸なことなんですよね。
―確かに。
高木:だったら、もうちょっと身軽に、「ちょっとやってみる?」というノリで、メジャーから出せないかなと思ったんです。たとえば、就職するまでの間やれるだけやってみて、もしなにかが生まれそうならその先もやるし、そこでやり切ったと思ったらそこまででもいい。
アーティストの卵にとって、人生かけてメジャーデビューしたはいいけど、残念なことになにも起きないとなかなか敗者復活が難しい、というのはあまりにリスクが高すぎるし不健全だなと。そんなことをモヤモヤと考えていたときに、堀さんと出会ったんです。
堀:僕は『未確認フェスティバル』の事務局スタッフをやるようになって、10代の子と話す機会がグッと増えたんです。その中でずっとひっかかっていたのは、「大学行ったら音楽やめるんで」とか「音楽を続けるかどうかはわかんないです」という考えの子が多いことで。
僕は、大学行きながらでも、就職してからでも、音楽はできると思っているから、「就職しなきゃいけないから音楽をやめる」みたいな考えに縛られるのは勿体ないなと思っていて。なので、そういう子たちをもっと世の中に出してあげたいなと。
ただ、僕が今やっているのはインディレーベルで、会社としては小さいし人もいないから、多くの子に声かけると手が回らなくなっちゃう、という事情もあって。
―そういう中で高木さんと出会い、意気投合したと。
堀:そうなんです。メジャーだと、「途中でやめるかもしれないやつとは契約できない」という話になりかねないけど、そうではないだろうと。「そういう若い子たちをちゃんと世に出してあげることが、新人発掘なんじゃないですか?」って高木さんに言ったら、「それを一緒にやろうよ」と言ってくれて。
高木:メジャーにいる自分と、ご自身でレーベルをやっていらっしゃる堀さんと、立ち位置は違うけど、アーティストとの関わり合い方の理想像はシンクロしていて、「だよね!」という感じでした。

高木亮(たかぎ りょう)
1985年に東芝イーエムアイ音楽出版株式会社に入社し、洋楽曲の獲得及びプロモーションに関わる。1993年、東芝イーエムアイ株式会社に入社、洋楽ディレクターとして、The Rolling StonesやThe Smashing Pumpkinsなど、数多くの海外アーティストを手掛ける。2004年、同社の邦楽部門に異動。執行役員として、邦楽レーベルヘッド、社内アーティスト・マネージメント社長、新人開発部門等を兼務。2014年、ビクターエンタテインメントに入社。
堀:僕のレーベルにいるアーティストは働きながら音楽やっていますし、「定期的に音源を出さなきゃダメ」というわけではなく、「表現したいときに表現できる場所がちゃんとある」ということでいいんじゃないかと思っていて。もちろん、ビジネスとして考えなくちゃいけないこともあるけど、それを気にしていたらなにもできなくなっちゃいますからね。
ウェブサイト情報
- 「CONNECTUNE」アーティスト募集 応募フォーム
リリース情報

- uami
『消費散文』 -
2019年10月30日(水)配信リリース
1. 欲
2. ひとりのとき
3. 見た夢
4. 美形信仰 – jinkakunai(uami)

- 音楽かいと
『僕は音楽に照らされて』(CD) -
2020年2月26日(水)発売
価格:1,980円(税込)
NCS-102361. それは未来に進んでいます
2. 矛盾な感情
3. 飛べよ
4. スイマー
5. 早く迎えに来てよ
6. ヒラヒラソング
7. 空梅雨
8. 夢の先へ
9. まだこのまま
10. あなたは朝日に照らされて
11. もう、やめよっか。

- どんぐりず
『jumbo』 -
2020年4月22日(水)配信リリース
プロフィール
- 高木亮(たかぎ りょう)
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早稲田大学商学部を卒業後、1985年に東芝イーエムアイ音楽出版株式会社に入社し、洋楽曲の獲得及びプロモーションに関わる。1993年、東芝イーエムアイ株式会社に入社、洋楽ディレクターとして、ローリング・ストーンズやスマッシング・パンプキンズなど、数多くの海外アーティストを手掛ける。2004年、同社の邦楽部門に異動。執行役員として、邦楽レーベル・ヘッド、社内アーティスト・マネージメント社長、新人開発部門等を兼務。2010年から、レコード会社としては初のロックフェスとして話題を集めた『EMI ROCKS』を主宰、日本を代表するロックレーベルとしてのブランドを確立。2014年、ビクターエンタテインメントに入社。
- 堀猛雄(ほり たけお)
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東京の高校を卒業後、カナダとドイツにサッカーで渡りクラブチームに所属。帰国後ライブイベント関係のアルバイトを経由し、2001年ビクターエンタテインメント株式会社に入社。新人発掘セクションにて発掘やインディーズ展開に関わり、2009年に制作本部でA&Rも兼任。2011年、インディーズレーベル、マネージメント運営を主に行う株式会社モンション設立し、最近はbetcover!!等、国内外アーティストを自社で手掛けるいっぽうで、外部A&RとしてReN等他社アーティストにも関わる。