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永原真夏が歌い切る。多様性への目配せより、目の前の君を愛す

永原真夏が歌い切る。多様性への目配せより、目の前の君を愛す

永原真夏『ラヴレター』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:山口こすも 編集:矢島大地(CINRA.NET編集部)
2020/04/02

「君はどう生きるんだ?」っていう問いかけじゃなくて、「あなたと私はどうなりたいですか?」っていう考え方をベーシックに持って、時代を駆け抜けたいと思った。

―SUPER GOOD BANDが本格始動するタイミングで発表された“オーロラの国”でも<てきとうでも生きていける>と歌っていて、ただ力強いだけではなく、大事なタイミングだからこそ風通しを良くしておくというのは、非常に真夏さんらしいと思います。ただ、これはあえて意地悪に聞きますけど、「それでも最終的には自分で決めないといけないし、この考え方は逃げなんじゃないか」って思う人も、もしかしたらいるかもしれない。その意見に対してはどう返答しますか?

永原:でも、それでつぶれちゃったら元も子もないじゃん? っていうのが私のリアルですね。だって、人間は簡単につぶれちゃうから。例えば「俺は絶対逃げない!」って、日本海の岬に裸で立てる人もいるんでしょうけど(笑)、そんなことしたら再起不能な人だっていて。それなのに、みんなで並んで「お前もやれよ」みたいなことだらけだったら、回るものも回らなくなっちゃう。

それに、「生まれたときは誰でも他力本願じゃん」って気持ちがあるし、「自分一人で生きてきた」っていうのはおごりだとも思う。とにかく、私は「逃げてでもいいから、つぶれないでくれ」って思うんですよね。自分が何かを表現したり歌ったりするのは、その余白を作りたいから。それはずっと思ってることです。

永原真夏

―『ラヴレター』ではさまざまな「出会いと別れ」「愛と喪失」が歌われていて、結構生々しいというか、私小説的な色合いも強いように感じられたのですが、いかがでしょうか?

永原:私小説的な部分はずっとあるとは思うんですけど……『BEΔUTIFUL』までは「考え方」にフォーカスが絞られていたと思うんです。さっきお話ししたように、人生に隙間と余白を作りたいとずっと思っていて、「私はこういう考え方なんです」っていうところにフォーカスしてきた。で、その隙間で音楽を聴いたり、ライブを観たりすることで世界との隙間に色がついたというか、そういう人生を送ってきて。その上で、今一度人に対する気持ちを音にしようと思ったというか、人と関わることにもう一回絞ってもいいのかなと思った一作目だと思ってます。

―なるほど。

永原:しかも、「君はどう生きるんだ?」っていう問いかけじゃなくて、「あなたと私はどうなりたいですか?」っていう考え方をベーシックに持って、ものを作ったり、時代を駆け抜けたりしたいと思った。「あなたどう思う? 私はこう思うけど」じゃなくて、「私とあなたで考えるならどれにする?」みたいなことを忘れたくないなって。

―言ってみれば、グルーヴもそうやって生み出されるものですよね。一方向じゃなくて、双方向で音を紡ぎ合うというか。

永原:そうかも! いつも作ってるときは夢中で、後からこうやってお話して気付くことも多いんですけど、新しいグルーヴになって、自分と他人の間に目線が行った作品なのかもしれない。

永原真夏

―グルーヴという意味では、1曲目の“さよならJAZZ”は特に印象的です。ドラムはかなり面白いことになってるし。

永原:面白いですよね。さっきも言った通り、自分はもともとスクウェアなリズムがルーツなので、「もうちょっとだけグルーヴしないでください」みたいなことも言いました(笑)。ドラムの尾日向くんはすごい芸術家気質で、「何連符で」とかじゃなくて「もうちょっとギャングスタしちゃう感じ?」みたいなノリなんです。でも彼の描く絵がすごく良くて、「この人は一見こんなにチャラいのに、こんな静けさも持ってるんだ」って思って、きっと話ができると思ったんですよね。私はライフと音楽の繋がりをすごく信じているので。

―それは他のメンバーに関してもそう?

永原:ベースの大樹は地元が一緒で、隣町の中学に通ってたから、見てきた景色が似てたり、もう一人のドラムのチャックは手数の多いパーカッシヴな部分と、オルタナな部分が混在してるプレイヤーで、あとすごくゲームが好き(笑)。「この人たちはこういうフィルターを通して音楽を見てるんだ」っていうのが掴めていたので、だから安心できた部分はあって。スタジオで発する言葉もすごくフリーで、楽譜じゃなく会話ができたのは自分らしいところかなって。

―音の旅crewはまだしも、No Gimmick Classicsは音だけ聴くとこれまでの真夏さんの音楽とはだいぶ毛色が違うなと思ったんですけど、今の話でなるほどと思いました。

永原:たとえば私はあっこゴリラと仲が良くて、一緒にいろんなことをやってきて。もともと自分はヒップホップも好きだったけど、ヒップホップって音楽的なことだけじゃなくて、活動のスタンスとか考え方も大事じゃないですか? そこで認め合えたのは嬉しかったんですよね。

永原:尾日向くんもヒップホップの子で、小西くんはジャズの子で、私はずっとパンクが好き。そこがブレることなくわかり合えたっていうのは、これから先の日本の音楽を考えたときに、希望があるし素敵だなって。どのジャンルの人でも、話してみると、「ここ!」っていう部分は一致するんですよね。それは自分がひとつのバンドに籠ってたら見えなかった景色で、「ソロで向かって行くと、こんな喜びがあるのか!」っていうのは、4年前と比べて一番変わったところかもしれないです。

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リリース情報

永原真夏『ラヴレター』
永原真夏
『ラヴレター』(12インチアナログ盤)

2020年3月25日(水)発売
価格:2,800円(税込)
MNCP-0002

【SIDE A】
1. さよならJAZZ
2. みなぎるよ
3. BLUES DRAGON

【SIDE B】
4. おはよう世界(2020 ver.)
5. 海と桜

【BONUS TRACK】
1. おはよう世界(朗読)
2. 海と桜(朗読)

プロフィール

永原真夏(ながはら まなつ)

2008年、SEBASTIAN Xを結成(2015年活動休止、のち2017年に再始動を果たしている)。2015年からソロプロジェクト「永原真夏+SUPER GOOD BAND」での活動をスタートし、『BEΔUTIFUL』のツアーを経て2019年11月にSUPER GOOD BANDが解散。SEBASTIAN X結成からの盟友・工藤歩里とのユニット「音沙汰」でも活動する中、2020年3月25日に永原真夏名義でのEP『ラヴレター』をリリース。

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