
millennium parade×神山健治×荒牧伸志 新『攻殻』で描く時代性
millennium parade × ghost in the shell: SAC_2045『Fly with me』- インタビュー・テキスト
- 柴那典
- 撮影:Takashi Togawa 編集:矢島由佳子(CINRA.NET編集部)
おそらく、世界に大きなインパクトを与える一作になるだろう。
Netflixオリジナルアニメシリーズ『攻殻機動隊 SAC_2045』が、4月23日よりNetflixで全世界独占配信スタートする。日本を代表するアニメとして世界中にファンを持つ『攻殻機動隊』シリーズ初のフル3DCG作品となる本作は、『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』シリーズの神山健治と『APPLESEED』シリーズの荒牧伸志が共同監督を手掛け、Production I.GとSOLA DIGITAL ARTSが共同で制作を担当している。
注目すべきは、「全世界同時デフォルト」が発生し、計画的かつ持続可能な戦争「サスティナブル・ウォー」へと突入した2045年の世界を舞台にしている物語設定だ。制作は5年前からスタートしたというが、新型コロナウイルスが猛威を振るい各国で死者が続出し、世界経済にも壊滅的な被害が出ている2020年の現在と先行きを、ある意味で「予言」したものと言えるかもしれない。
オープニングテーマ“Fly with me”にも注目だ。常田大希がクリエイターレーベルPERIMETRONと共に手掛けるプロジェクト・millennium paradeが本作のために書き下ろしたこの曲は、4月22日に配信シングル、5月13日にCDシングルがリリースされる。昨年5月に行ったライブイベント『“millennium parade” Launch Party!!!』で本格始動し、映像と音楽を高い次元で融合させた表現で大きな評価を集めるmillennium paradeにとっても、この曲は世界に向けて東京のカルチャーの今を打ち出す大きな最初の一歩となるはずだ。
本作の公開にあわせ、神山健治、荒牧伸志の両監督と、『攻殻機動隊』に多大な影響を受けたというmillennium paradeの常田大希、佐々木集、神戸雄平ら5人によるトークセッションが実現。制作の裏側、アニメーションと音楽との化学反応について、たっぷりと語ってもらった。
※この取材は東京都の外出自粛要請が発表される前に実施しました。
millennium paradeが『攻殻機動隊』から影響を受けた、東京の描き方、視覚表現
―『攻殻機動隊 SAC_2045』のオープニングテーマをmillennium paradeが担当するという話は、いつ頃に始まったんでしょうか。
荒牧:スタートは春頃ですね。
神山:まず顔合わせをして、そのあとに最初のデモを上げていただくという流れとなりました。
―millennium paradeのみなさんは、お話を受けたときの印象ってどんな感じでしたか?
常田:話が来たときには、相当テンション上がりましたね。
佐々木:「嘘でしょ!?」みたいな。
―『攻殻機動隊』からは大きな影響を受けたということですが、どんなところが思い入れとしてありますか。
常田:俺はやっぱり、音楽家目線で作品を見ていたので。菅野よう子さんやCorneliusが音楽を担当したアニメーションがあるというところから『攻殻機動隊』を知った記憶があります。そこから世界観とかストーリーラインにも影響を受けるようになりました。
佐々木:トータルのアートワークやビジュアル的な側面にしても、今までにない東京の近未来の切り取り方をしていて。街の見せ方にしても、ホログラムが看板になっていたり、「本当にこういうのがあったら面白いな」というものが可視化されていた。そういう部分はmillennium paradeとしても表現したい形であったので、すごく影響を受けています。
神戸:自分が最初に知ったのは押井守監督の『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(1995年公開)だったんですけど、そこから『攻殻機動隊 S.A.C.』にも没入していくようになって。今好きなカルチャーの根源みたいなところに、『攻殻機動隊』がずっと残っているという感じです。二人が言ったように、視覚表現としての新しさ、斬新さ、情報量の緻密さにはすごく影響を受けていますね。

millennium parade(みれにあむ ぱれーど)
左から:佐々木集、常田大希、神戸雄平
東京のプロデューサー / ソングライターである常田大希が主宰し、デジタルネイティブなミレニアル世代を中心としたミュージシャン、映像ディレクター、CGクリエイター、デザイナー、イラストレーター等、様々なセクションを内包した気鋭の音楽集団。佐々木集は映像プロデューサー / デザイナー、神戸雄平はデジタルアーティスト。(過去記事:King Gnu常田大希、新プロジェクト・millennium paradeで世界へ)
常田:たとえば“Plankton”のミュージックビデオ(以下、MV)とか、明らかに『攻殻機動隊』をリスペクトしている作品です。
佐々木:東京という都市の描き方というか、単純な景観ひとつとっても、そうだと思いますし。そもそも僕たちが好きな世界観としての影響があります。それをもとにどうオリジナルなものを作れるかと思いながら、毎回作っている感じです。
millennium parade“Plankton”ミュージックビデオ
―神山監督、荒牧監督はmillennium paradeの音楽性やクリエイティブにはどんな印象を抱きましたか?
荒牧:最初に発表された“Veil”のMVをYouTubeで見せてもらったとき、『攻殻機動隊』にはかなり合うんじゃないかなと思いましたね。そのとき僕らはまだ名前を存じ上げなかったんですけど、その場で初めて聴かせてもらって、方向性とか世界観は全然外れていないし、ハマったらすごいことになるだろうなと思いました。
神山:音楽的な偏差値もすごく高いし、玄人っぽい音楽だな、でもとんがっているなって印象でした。
荒牧:最初に曲を聴かせていただいたときには、もっと歳の上の人が作った曲かなと思ったんです。ただ単にテクニックがあるというだけじゃなく、大人っぽいなと思った。IQが高いというか、いい意味で、簡単にはわからせてくれない感じがあった。老獪さもあるし、エッジもある。そういうことを感じました。
millennium parade“Veil”。現体制のmillennium paradeが初めて発表したミュージックビデオ

荒牧伸志(あらまき しんじ)
1960年生まれ。アニメ監督、メカニックデザイナー。実写映画では石井竜也監督『河童』(1994年)、卓球シーンのストーリーボードを担当した『ピンポン』などに参加。士郎正宗の原作を得た監督作『APPLESEED』(2004年)は世界初3Dライブアニメとして日本だけでなく、世界中のクリエイターに大きな影響を与えた。

神山健治(かみやま けんじ)
1966年生まれ。アニメ監督、脚本家。『攻殻機動隊 S.A.C.』で監督とシリーズ構成を兼任。『精霊の守り人』(NHK-BS)でも監督とシリーズ構成を兼任。オリジナルテレビシリーズ『東のエデン』(フジテレビ)では原作も務め、『009 RE:CYBORG』においては初のフル3D劇場作品を監督した。荒牧伸志と共同監督の作品としては『ULTRAMAN』(2019年)がある。
―『攻殻機動隊』の作品の中で音楽が占める役割は大きな位置づけを果たしてきたと思うのですが、そのあたり今回の“Fly with me”に関してはどうでしたか。
荒牧:オープニングテーマは作品の顔というか、作品の方向性や目指すところを体現する曲になると思うんですよね。それが見る人にとっての最初のインパクトになる。そういう意味でのハマり具合は間違いないと思いました。
―“Fly with me”はヒップホップのテイストで、いわゆるアニメーションのオープニングテーマによくある疾走感や勢いというよりは、スリリングな不穏さを持った楽曲になっていると思います。こういう楽曲がオープニングにハマると思ったのは?
荒牧:実は上げてもらったのは2曲あったんですよ。
神山:もう1つの曲は、もうちょっと今までの『攻殻機動隊』っぽいもので。
荒牧:そういうところもあって、僕らの側でもすごく悩んだんです。
常田:最後の最後で変わりましたもんね。
荒牧:でも、チャレンジとしての意味を込めてこっちを選んだ記憶があります。「これ、俺たちが試されているよね」みたいな話もした気がする(笑)。
常田:そんなつもりではなかったんですけど(笑)。
リリース情報

- millennium parade × ghost in the shell: SAC_2045
『Fly with me』(CD+DVD) -
2020年5月13日(水)発売
価格:1,980円(税込)
VTZL-174[CD]
1. Fly with me
2. Fly with me - Steve Aoki Neon Future Remix[DVD]
・『「攻殻機動隊 SAC_2045」スペシャルトークセッション』

- millennium parade
『Fly with me』 -
2020年4月22日(水)配信リリース
1. Fly with me
2. Fly with me -Live
リリース情報
- 戸田信子 × 陣内一真
『攻殻機動隊 SAC_2045 O.S.T.』 -
2020年6月3日(水)発売
価格:2,800円(税抜)
VTCL-60523
作品情報

- 『攻殻機動隊 SAC_2045』
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2020年4月23日からNetflixで配信
監督:神山健治 × 荒牧伸志
原作:士郎正宗『攻殻機動隊』(講談社KCデラックス)
音楽:戸田信子 × 陣内一真
制作:Production I.G × SOLA DIGITAL ARTS
オープニングテーマ:millennium parade × ghost in the shell: SAC_2045“Fly with me”
出演:
田中敦子
阪脩
大塚明夫
山寺宏一
仲野裕
大川透
小野塚貴志
山口太郎
玉川砂記子
プロフィール

- millennium parade(みれにあむ ぱれーど)
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東京のプロデューサー / ソングライターである常田大希が主宰し、デジタルネイティブなミレニアル世代を中心としたミュージシャン、映像ディレクター、CGクリエイター、デザイナー、イラストレーター等、様々なセクションを内包した気鋭の音楽集団。日本の説話に登場する、深夜に徘徊をする鬼や妖怪の群れ、および、彼らの行進を意味する「百鬼夜行」をコンセプトとしており、「世界から見た東京」をテーマに掲げ、混沌としたリアルな東京の面白さを世界に発信する。2019年5月にプロジェクトのローンチパーティとして行った3D演出を用いたライブのチケットは話題が先行し、即日完売。続く東阪ライブツアーもチケットの入手は激戦となった。活動期間が僅かで、謎の多い集団でありながら、新たな価値観の提唱者として大きな注目が集まっている。
- 神山健治(かみやま けんじ)
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1966年生まれ。アニメーション監督、脚本家。『攻殻機動隊 S.A.C.』で監督とシリーズ構成を兼任。『精霊の守り人』(NHK-BS)でも監督とシリーズ構成を兼任。オリジナルテレビシリーズ『東のエデン』(フジテレビ)では原作も務め、『009 RE:CYBORG』においては初のフル3D劇場作品を監督した。『ひるね姫~知らないワタシの物語~』(2017年)では、初の劇場版オリジナルストーリーでの原作・脚本・監督を務める。荒牧伸志と共同監督の作品としては『ULTRAMAN』(2019年)がある。
- 荒牧伸志(あらまき しんじ)
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1960年生まれ。アニメーション監督、メカニックデザイナー。実写映画では石井竜也監督『河童』(1994)、卓球シーンのストーリーボードを担当した『ピンポン』などに参加。士郎正宗の原作を得た監督作『APPLESEED』(2004)は世界初3Dライブアニメとして日本だけでなく、世界中のクリエイターに大きな影響を与えた。