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鹿野淳が語る『VIVA LA ROCK』 エンタテイメント復興の道

鹿野淳が語る『VIVA LA ROCK』 エンタテイメント復興の道

『VIVA LA ROCK 2020』
インタビュー・テキスト
三宅正一
撮影:HayachiN 編集・リードテキスト:矢島大地(CINRA.NET編集部)

我々のフェスのような民間団体は、事業体に対してどれだけ負荷をかけずにエンターテイメントを維持していけるのか? そういうポイントにも『ビバラ』は向き合っている。

―その時系列と、一向に突破口が見えない状況を踏まえてストレートに訊きます。この3月20日時点で、『ビバラ』を開催する可能性はどれくらいあると思ってますか?

鹿野:あー、ね(笑)。難しいですよね、選択するのも難しいし、何よりも開催の見通しを想像するのが難しい。これ、ロックフェスだからね、単純にどういう状態でも開催すればいいってもんじゃないんですよ。だから僕はこれだけは再確認しました、「声を上げるな、盛り上がるな、手を挙げるな」っていうことをオーディエンスに課したら、それはロックフェスとは言えないってこと。

―間違いない。

鹿野:だからそれを唱えることが条件で開催できるということなら、開催は断念すると思います。そもそもダイブとかモッシュとかに対してもずっと同じスタンスだから。僕はダイブとかモッシュとかを禁止するというルールを明記しながら、それでも最前にはセキュリティが大挙して、しかも場合によってはヘラヘラ笑いながら「ダイブは禁止ですよ~」ってなんちゃって風にMCするフェスを見たことが複数あって。それが本当に嫌だと思ったんです。だからルールを掲げるならそれをこちら側がまず守れって思うし、中途半端なスタンスでいるくらいなら、このフェスは覚悟を決めてルールを取っ払って楽しもう、それがロックフェスだって信じているし、そのスタンスをフェスとして愚直に守りたい気持ちが強いんですよね。

だから、今回もそういった縛りがない状態で、5月2日から5日の4日間にかけてロックフェスティバルを開催するために何をしたらいいのか? ということを、これから4月に入る前までにさらに詰めて考えようと思ってます。…………このインタビュー記事を読んでる人は「本当にこいつは脳みそがたりないな」と思うかもしれないけどさ、「館内で感染を防ぐためにマスクを二重にしたら効果は上がるのか」とか、「オーディエンスにマスクを1枚してもらったうえで来場してもらい、我々がもう1枚渡したうえで楽しんでもらうことはできないのか?」とか「口や鼻だけじゃなく、両手を守るためにビバラのロゴを入れた軍手を作って配布して、退場時には指定の場所に捨ててもらって、それをこちら側で廃棄するのはどうだ? これも完全防止に役立たないか?」とか、イチイチそういうことから確認していて。「そんなの無意味に決まってるじゃん」って言われるかもしれないけど、そこから考えたいんだよね。

鹿野淳

鹿野:そこから考えたうえで「ここまでいったら効果があるのか?」という領域を見つけていきたい。その上でとことん会場側とも話し合いたいし、埼玉県ともコミュニケーションをとっていきたい。それほど多くはないけど、まだ残された時間はあるからね。ただ、もしこれからまたライブやイベントでオーバーシュート(爆発的患者急増)が起こったら、開催中止を決断せざるを得ない可能性はありますよね。現状、4月10日前後くらいまでには開催するか無念の判断を下すか、悩めるんじゃないかと思ってます。…………思うんだけどさ、これ、ライヴやフェスが開催できる状況になるって、それ自体が「収束宣言」のようなものだよね。開催できれば、ある意味コロナに勝ったという象徴のようなものになると思うんだよね。

―なるほど。

鹿野:ちなみに付け加えますけど、さいたまスーパーアリーナって換気はめちゃくちゃいい会場なんですよ。会場の身長もやたら高いし、優秀な換気システムを構築してる場所なんです。

―それは言っておきましょう。サウンドシステムの素晴らしさをはじめ、『ビバラ』は屋内メインのフェスのストロングポイントを押し出してきたと思うから。

鹿野:ありがとう、音楽に夢中になれる空間としてクオリティの高い屋内フェスを目指してやってきてます。

―音響もお客さんの導線も1年ごとにブラッシュアップしてきたと思うんですけど。ただ、まさか屋内フェスであることがこの状況でかえってウィークポイントになるとは、という苦悩も抱えてると思うんですよ。

鹿野:あー。屋内フェス…………屋外フェスということで話しておくとーーこの数日で僕は『METROCK』さんとも『JAPAN JAM』さんとも偶然レベルで接触しましたよ(どちらも春フェスとして同タイミングにあるもの)。話の内容的には割と濃厚接触でしたけど。

―おお(笑)。それはどんな趣旨で?

鹿野:同時期に開催される『METROCK』さんも『JAPAN JAM』さんも両方とも野外フェスで、我々は屋内フェスであると。この状況の中、『ビバラ』の分が悪いのは明白で。それは実質的な環境面としても、風評としてもね。ただ、『ビバラ』が一番分が悪いのは前提として、どこが開催したけどどこが中止になって、どこか延期になったか、という印象が生まれるのは個々のフェスにとってとてもデリケートな問題だと思うんです。足並みを揃える必要もないけどね。だからそういう意味でもお互いが最終的にどういう判断を下すのか情報共有しましょうというお願いや確認をしました。

―承知しました。それこそ今日3月20日に『ビバラ』が屋内フェスである強みを活かした『All Night Viva!』(ライブ終演後のたまアリ内で行われるオールナイトイベント。アリーナ内で朝まで休むことも可能)の開催中止を発表しましたよね。この時点で相当な煩悶があったと思います。

鹿野:はい、悔しかったなあ。『All Night Viva!』の開催中止を決断した理由はふたつあるんですけど、まずは一度お客さんに会場を出てもらって全体的な大きな換気をしようと。清掃、消毒作業も含めて今までと違うレベルでやらなくてはいけないからね。

CAVE STAGE。『All Night Viva!』同様、ライブハウスそのままの熱気を味わえる空間が同フェスの特色となっている。 撮影:小宮山峻 ©VIVA LA ROCK 2019 All Rights Reserved
CAVE STAGE。『All Night Viva!』同様、ライブハウスそのままの熱気を味わえる空間が同フェスの特色となっている。 撮影:小宮山峻 ©VIVA LA ROCK 2019 All Rights Reserved

―もちろん、それは『ビバラ』自体を開催するための前向きな決断でもあったわけですよね。

鹿野:もちろん、もちろん。あとは、『All Night Viva!』を開催すると、自分を含めて開催中に睡眠をとれないスタッフがたくさん出てくるのね。それでも、今までフェスの期間中はナチュラルハイの状態でい続けられたからよかったけど、今年はさすがにそれじゃマズい。僕は社会的に偉くもなんともないけど、まず主催者として僕の体力が弱って感染するのが一番マズいでしょ。

―一発アウトですよね。

鹿野:そう、完全レッドだし、僕だけではなく『ビバラ』のスタッフが感染したら、出演してくれるアーティストやアーティストのスタッフのみならず、その先にいる事務所やレーベルのアーティストやスタッフにも検査や待機の必要が出てくる。そうなったらもう、我々は生きていけませんよ。だって主要スタッフが感染すれば、それだけで『ビバラ』がクラスターになったと言われ、「だからやっぱライブはさ」って言われるんだから。

そんなことになったら、一番かわいそうなのは『ビバラ』というこのフェスだよね。フェスだって感情もあるし生きてるって本気で思いながらプロデュースしていますから。そういう意味でも、開催することによっていろんな十字架をビバラが長い間背負うことになるよね。そう考えたときに『All Night Viva!』を中止して、スタッフみんなが毎日毎日ちゃんと帰って休んで寝て、体力を回復してから次の日に臨もうと決めました。

―感染防止において免疫力の維持も本当に重要なポイントですからね。

鹿野:そうなんです。あと今回、『All Night Viva!』と併せて『ティーネイジサイタマ2020』の開催中止も発表しました。埼玉県内在住の10代に向けたオーディション企画だったんだけど、こちらはさらに現実的な問題にぶつかったんです。埼玉の公立高校は1週間くらい前に3月中の部活動を一切禁止にしたと、埼玉の軽音連盟(埼玉県高校軽音連盟)からご連絡を頂いて。要は3月25日と26日に予定していたオーディションに生徒たちを連れて行けませんと。そこで延期する方向性をお互いが探るのもいいけど、4月になったら行政が部活動禁止を解除するかもわからない。それであれば埼玉の軽音連盟にご迷惑をかけるわけにもいかなので、今回は中止を決めました。

説明しておくと、大きな体系として行政と事業体と民間の3つがあるじゃないですか。自粛要請も含めていろんなジャッジを下すのが行政で、軽音連盟は事業体で、我々フェス側は民間。我々民間はこうやってエンターテイメントでビジネスをしている。そして、事業体に対してどれだけ負荷をかけずにエンターテイメントを維持していけるのか。このご時世の中で考えなくちゃいけないそういうポイントとも今、『ビバラ』は向き合っていると思ってます。

『ビバラ』内で行われる、埼玉県在住の10代限定オーディション『ティーネイジサイタマ』。「高校軽音楽部門」を創設するなど、新たな試みも予定していた。
『ビバラ』内で行われる、埼玉県在住の10代限定オーディション『ティーネイジサイタマ』。「高校軽音楽部門」を創設するなど、新たな試みも予定していた。
鹿野淳
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イベント情報

『VIVA LA ROCK 2020』
『VIVA LA ROCK 2020』

2019年5月2日(土)~5月5日(火・祝)
会場:埼玉県 さいたまスーパーアリーナ

5月2日(土)出演:
赤い公園
ANTENA
おかもとえみ
カネコアヤノ
Karin.
KEYTALK
キュウソネコカミ
Saucy Dog
SHISHAMO
SUPER BEAVER
そこに鳴る
the telephones
ニガミ17才
ネクライトーキー
Hakubi
Hump Back
ハンブレッダーズ
BIGMAMA
FOMARE
flumpool
popoq
UNISON SQUARE GARDEN
緑黄色社会
and more

5月3日(日・祝)出演:
Awesome City Club
岡崎体育
奥田民生
ORIGINAL LOVE
Creepy Nuts
ZOMBIE-CHANG
TENDRE
Tempalay
東京スカパラダイスオーケストラ
ドミコ
never young beach
Vaundy
パソコン音楽クラブ
BBHF
VIVA LA J-ROCK ANTHEMS
【Ba:亀田誠治 / Gt:加藤隆志(東京スカパラダイスオーケストラ) / Gt:津野米咲(赤い公園) / Dr:ピエール中野(凛として時雨)】
藤井風
FLOWER FLOWER
フレデリック
フレンズ
Ryu Matsuyama
Rude-α
ravenknee
レキシ
and more

5月4日(月・祝)出演:
秋山黄色
打首獄門同好会
Age Factory
大森靖子
ORANGE RANGE
9mm Parabellum Bullet
クリープハイプ
GEZAN
SPARK!!SOUND!!SHOW!!
セックスマシーン!!
chelmico
DJダイノジ
teto
XIIX
東京初期衝動
バックドロップシンデレラ
BLUE ENCOUNT
マカロニえんぴつ
マキシマム ザ ホルモン
宮本浩次
Mega Shinnosuke
ヤバイTシャツ屋さん
ユレニワ
and more

5月5日(火・祝)出演:
あっこゴリラ
WOMCADOLE
オメでたい頭でなにより
KUZIRA
kobore
さなり
Survive Said The Prophet
SiM
女王蜂
DJやついいちろう
Dizzy Sunfist
TETORA
10-FEET
とけた電球
Dragon Ash
ハルカミライ
the band apart
FAITH
HEY-SMITH
MONOEYES
LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS
ROTTENGRAFFTY
and more

プロフィール

鹿野淳(しかの あつし)

音楽ジャーナリスト。1989年に扶桑社に入社、翌1990年に株式会社ロッキング・オン(現:株式会社ロッキング・オン・ホールディングス)へ。98年より音楽専門誌『BUZZ』、邦楽月刊誌『ROCKIN'ON JAPAN』の編集長を歴任。『ROCK IN JAPAN FES』は構想から関わり、企画 / オーガナイズ / ブッキングに尽力。2003年には『COUNTDOWN JAPAN 03 / 04』を立ち上げ、国内初のカウントダウン・ロック・フェスティバルを成功させた。2004に年ロッキング・オンを退社後、有限会社FACTを設立(現在は株式会社)。2006年に月刊『STARsoccer』を(現在は休刊中)、2007年3月には『MUSICA』を創刊させた。2014年に埼玉県最大のロックフェス『VIVA LA ROCK』を立ち上げ、2020年に7回目の開催を予定している。

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