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鹿野淳が語る『VIVA LA ROCK』 エンタテイメント復興の道

鹿野淳が語る『VIVA LA ROCK』 エンタテイメント復興の道

『VIVA LA ROCK 2020』
インタビュー・テキスト
三宅正一
撮影:HayachiN 編集・リードテキスト:矢島大地(CINRA.NET編集部)

アーティスト主催フェスが増えたということは、ある意味でワンマンライブ時代に戻っているとも言えると思っていて。フェスの淘汰が実証され始めているとも感じる。

―前回のインタビューで鹿野さんは「2020年はいろんなフェスが淘汰される1年になる」と言っていて。あの発言がこんな感じで予言めいたものになるとは思わなかったですね(苦笑)。

鹿野:それ、意味が根本的に違うから(笑)。今日の取材で初めてコロナと関係のない話をするけど、今年のフェスの準備やブッキング、プロデュース作業をしながら去年のインタビューを反芻していたのね。それで思ったのは「やっぱりフェスは淘汰されるんだな」ということで。

わかりやすく言うと、今どんどんアーティストフェスが増えてます。たとえばくるりの『京都音楽博覧会』、10-FEETの『京都大作戦』が始動したときくらいまでは、アーティストがフェスを開くのはすごくリスクがあったんですよ。どういうリスクかと言うと、曲の良し悪しによってアーティストの評価が上がったり下がったりすることは彼らにとって必然だよね。音楽創造を生業にしてるわけだから。でもさ、フェスは音楽そのものじゃなくあくまでも興行であって、それってつまりは音楽を乗っける器でしょ。ラーメンのどんぶりではあっても、ラーメンじゃないからさ。

―高菜でもないしね(笑)。

鹿野:高菜については未だに怒りがこみ上げてくるから、話を続けるわ。わからない方には「鹿野 高菜」で検索してもらうとして。

鹿野淳

―押忍(笑)。

鹿野:で、もしアーティストが主催フェスを失敗すると、「運営がクソだ」とか、ネットでよく使われるような言葉が直接アーティストに投げられるじゃない。それによってアーティストの価値が下がるのは本意じゃないよね、きっと。本来フェスって、アーティストにとってはそういうリスクを孕んだ危険なものだったんですよ。もちろん今もそうなはず。なのにこの5年間でアーティストフェスがこれだけ乱立して増えているのには、それだけの理由があると思うんです。

まず、フェスそのものの敷居がすごく下がったこと。そして、2000年以降でフェスがビッグマーケットになったこと。さらに言えば、フェスという現場を通じてアーティスト同士の交流が深まったり増えたりした。そうなれば、アーティストは「最終的に僕たち自身がいないとフェスが成り立たないんだったら、自分たちでフェスをやります」となるよね。それはいたって正しい意見だし、正しい発想だと思う。

―昨年のインタビューでも言ったけど、アーティストが主役だからね。

鹿野:間違いない。で、アーティストの交流のあり方も一昔前とは変わってきていて、フェスのバックヤードでLINEを交換するところから、アーティストフェスのブッキングが始まるんだよね。それは僕のブッキングよりもダイレクトだし生々しい。

―それが一番早いしね。そのコミュニケーションの発展がフェスに着地するという。

鹿野:そう。あたりまえだけど、アーティストがアーティストにオファーされたらやっぱり断りにくいじゃん。前向きな言い方をすると、一緒に音楽は作らないけど一緒に現場を作るのは楽しいし、2マンや3マンの発展の場という、バンドマンにとっては自分たちらしい表現の場所になる。しかも、仲間のフェスに出演した後に自分たち自身でアーティストフェスを企画したとき、今度は出演オファーをしやすくなる。その結果を含め、必然的にこれだけアーティストフェスが増えてきた。しかも上記の理由で、そのフェスでは熱い想いが重なり合う。彼らにとって、それはフェスであると同時に、自分らのライヴの拡大版なんだよね、当たり前だけど。

―たしかに。

鹿野:もっと言うと、ワンマンライブの延長なんです。ということは、構造としてはワンマンからフェスへという流れをたどったシーンの時代感が、元に戻ってるとも言えるわけじゃない? フェスというものは最終的に、アーティストのワンマンとかライブハウスに行かせるシステムなんだから。

―それでいいと思うし、それがある意味一番健康的なことだと思いますね。

鹿野:そうだよね。そういう意味でも、アーティストフェス自体がフェスの中心になるということ自体が、フェスの淘汰を実証し始めてると思う。……ビバラはここまで暑苦しいフェスをやってますけど、あくまでフェスはカタログでいいと思ってるんですよ。だけど、どこよりも意味のある、そのカタログの中の音楽を求めたくなる暑苦しいカタログを作りたい。このカタログをきっかけにアーティストのワンマンに行って音楽にどっぷりハマってくれよという願いを持ってるんだよね。

だからね、ここが大事だと思ってるんだけど、『ビバラ』はとことんオールドスクールというか、オールドスタンダードないいフェスをやり続けたいし、今こそもう一度「フェスとはなんなのか?」という原点回帰をフェス自身がすべきだと思います。そういうフェスが残り続けるべきだと思うしね。ビバラは今年もそれを開催するために動いてます。

鹿野淳

―アーティストフェスの話になった流れで訊きたいんですけど、3月1日にBAD HOPとNUMBER GIRLがライブの中止を受けて生配信を実施したじゃないですか。両方とも音響的にも映像的にもクオリティが高くて、アーティストがステージから発した熱量も含めて多くの人が高揚したと思うんですけど。

鹿野:そうだね、擬似ライブでもなんでもない、ただの最高のライブだったよね。

―BAD HOPに関しては、ライブ自体は無料配信したけど、中止で被った1億円の負債を受けてクラウンドファンディングを実施して、ライブ配信自体をそのプロモーションに活かした面もあったと思います(6833人によって78,834,022円が集まった)。今回のコロナを契機に、今後ライブ配信でマネタイズを図るアーティストは増えていくと思います。つい先日ceroが実施した有料のライブ配信のクオリティも本当に素晴らしかった。で、単独公演とフェスではライブ配信の受け止められ方や訴求力の差異があるのは前提として、鹿野さんは現時点でフェスのライブ配信をしてマネタイズをすることにどのような考えを持ってますか。

鹿野:そのことに関してはひとつ前の段階からの話をしたい。まずーーこれはCINRA.NETにケンカを売る話じゃないけど、僕は出版社の経営者として、WEBメディアを脅威とは思ってないんです。それはWEBメディアにWEBメディアとしての役割がある代わりに、『MUSICA』のような紙雑誌メディアがWEBメディアに侵されてることって実はそんなにないんですよ。

―本当にそうなんですかね?

鹿野:結果が物語っているしね。それはつまり、読者がWEBメディアで感じられることと、雑誌メディアで感じられることのベクトルが違うからで。

―そもそも棲み分けとして違うと。

鹿野:やっぱりWEBメディアでは「情報」がすごく重要だし重宝されていて、だからこそ、この15年くらいで紙の音楽情報系メディアはどんどん淘汰されていった。で、音楽メディアで生き残ってるものの多くは情報メディアではなくて、ジャーナリズムメディアなんですよ。

鹿野が発行人を務める『MUSICA』。2020年4月号 / ©FACT,inc
鹿野が発行人を務める『MUSICA』。2020年4月号 / ©FACT,inc
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イベント情報

『VIVA LA ROCK 2020』
『VIVA LA ROCK 2020』

2019年5月2日(土)~5月5日(火・祝)
会場:埼玉県 さいたまスーパーアリーナ

5月2日(土)出演:
赤い公園
ANTENA
おかもとえみ
カネコアヤノ
Karin.
KEYTALK
キュウソネコカミ
Saucy Dog
SHISHAMO
SUPER BEAVER
そこに鳴る
the telephones
ニガミ17才
ネクライトーキー
Hakubi
Hump Back
ハンブレッダーズ
BIGMAMA
FOMARE
flumpool
popoq
UNISON SQUARE GARDEN
緑黄色社会
and more

5月3日(日・祝)出演:
Awesome City Club
岡崎体育
奥田民生
ORIGINAL LOVE
Creepy Nuts
ZOMBIE-CHANG
TENDRE
Tempalay
東京スカパラダイスオーケストラ
ドミコ
never young beach
Vaundy
パソコン音楽クラブ
BBHF
VIVA LA J-ROCK ANTHEMS
【Ba:亀田誠治 / Gt:加藤隆志(東京スカパラダイスオーケストラ) / Gt:津野米咲(赤い公園) / Dr:ピエール中野(凛として時雨)】
藤井風
FLOWER FLOWER
フレデリック
フレンズ
Ryu Matsuyama
Rude-α
ravenknee
レキシ
and more

5月4日(月・祝)出演:
秋山黄色
打首獄門同好会
Age Factory
大森靖子
ORANGE RANGE
9mm Parabellum Bullet
クリープハイプ
GEZAN
SPARK!!SOUND!!SHOW!!
セックスマシーン!!
chelmico
DJダイノジ
teto
XIIX
東京初期衝動
バックドロップシンデレラ
BLUE ENCOUNT
マカロニえんぴつ
マキシマム ザ ホルモン
宮本浩次
Mega Shinnosuke
ヤバイTシャツ屋さん
ユレニワ
and more

5月5日(火・祝)出演:
あっこゴリラ
WOMCADOLE
オメでたい頭でなにより
KUZIRA
kobore
さなり
Survive Said The Prophet
SiM
女王蜂
DJやついいちろう
Dizzy Sunfist
TETORA
10-FEET
とけた電球
Dragon Ash
ハルカミライ
the band apart
FAITH
HEY-SMITH
MONOEYES
LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS
ROTTENGRAFFTY
and more

プロフィール

鹿野淳(しかの あつし)

音楽ジャーナリスト。1989年に扶桑社に入社、翌1990年に株式会社ロッキング・オン(現:株式会社ロッキング・オン・ホールディングス)へ。98年より音楽専門誌『BUZZ』、邦楽月刊誌『ROCKIN'ON JAPAN』の編集長を歴任。『ROCK IN JAPAN FES』は構想から関わり、企画 / オーガナイズ / ブッキングに尽力。2003年には『COUNTDOWN JAPAN 03 / 04』を立ち上げ、国内初のカウントダウン・ロック・フェスティバルを成功させた。2004に年ロッキング・オンを退社後、有限会社FACTを設立(現在は株式会社)。2006年に月刊『STARsoccer』を(現在は休刊中)、2007年3月には『MUSICA』を創刊させた。2014年に埼玉県最大のロックフェス『VIVA LA ROCK』を立ち上げ、2020年に7回目の開催を予定している。

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