特集 PR

betcover!!から僕ら全て弱き人間たちへ 心まで殺されないために

betcover!!から僕ら全て弱き人間たちへ 心まで殺されないために

betcover!!『告白』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:木村篤史 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)

なんて悲しく、無力で、それでいて優しく美しい歌たちだろう。betcover!!から届けられた2ndフルアルバム『告白』は、2020年という、この混沌とした時代の騒々しいざわめきを背景にしながらも、どこまでもあたたかな手触り、耳触りを感じさせる作品だ。

前作『中学生』までの弱々しくもギラついた少年の眼差しは、いつの間にか、喪失の先を見つめる青年の眼差しへと変わった。生まれたときには世界から失われていたもの、誰もが持っているはずなのに自分の手にはなかったもの……そうした「ない」ものを思い、嘆き、それがときに怒りへと変わった季節は過ぎ去って、この2020年にヤナセジロウは、ただ率直に、「愛している」といっている。「生きたい」といっている。「優しくありたい」と願っている。

怒号も悲鳴も笑い声も銃声もけたたましく鳴り響き、街から人がいなくなっても、あらゆるノイズが耳に入り込んでくる今、この世界のなかで、「告白」――この言葉の、凛として、孤独で、生々しくも不可侵な響きに身を預けてみる。少し、安心できる。「普遍」とは、こんな音楽にこそ相応しいのだと、このアルバムを聴いていると思う。

相変わらず、苛立ちも恐れも消えてはいないし、自嘲とユーモアも冴えわたっている。しかし、取材現場に現れたヤナセジロウは、1年前と比べると格段に穏やかで落ち着いた表情を浮かべていた。

betcover!!(べっとかばー)<br>ヤナセジロウのソロプロジェクト。1999年生まれ、東京で風土を感じる多摩地区育ち。幼い頃からEarth, Wind & Fireなどソウルミュージックを聴いて過ごし、大人びた音楽指向と環境、才能と表現の狭間で揺れ動きながら、中学にあがる頃には創作をはじめる。2020年7月、2ndアルバム『告白』をリリース。
betcover!!(べっとかばー)
ヤナセジロウのソロプロジェクト。1999年生まれ、東京で風土を感じる多摩地区育ち。幼い頃からEarth, Wind & Fireなどソウルミュージックを聴いて過ごし、大人びた音楽指向と環境、才能と表現の狭間で揺れ動きながら、中学にあがる頃には創作をはじめる。2020年7月、2ndアルバム『告白』をリリース。

「今の世の中、つらすぎませんか? 世の中にはこんなに悪意が溢れているのかと思うと、息が詰まるんですよ」

―新作『告白』、普遍的な悲しさと優しさに満ちている作品だなと思って。素晴らしかったです。

ヤナセ:今回は、実験作です……といっても、サウンドがっていう意味ではなくて。サウンドは、むしろ『中学生』よりも統一されていると思うんですよね。急に変な音が聴こえてきたり、低音をめちゃくちゃ出したりしているわけでもない。今回、そういうものは全部削って、ストレートに曲を聴かせる方向にいきました。結果的にキラキラした、歌として聴きやすいものになっていると思います。大衆性っていうものを、自分なりにですけど、意識したアルバムです。

―「大衆性」という言葉が出たうえで不毛な質問だとは思うのですが、「このアルバムはどんな人たちに向けられているのか?」と問われれば、ヤナセさんはどう答えますか?

ヤナセ:う~ん……漠然と、「現代社会を生きる、すべての人々に向けて」っていう感じですけど。でも、より埋もれている人たちに聴いてほしいかな。どうしようもない人たち。どっちにもいけない人たち。自分の意思をハッキリと発言することもできず、かといって、なにもしたくないわけじゃないし、傍観しているだけではダメだと思っているような人たち。そういう人たちには響くんじゃないかと思います。あとは、音楽が好きな人たち。

―うん。

ヤナセ:ただ、大衆性といっても、別に曲のなかで他の誰かの話をしているわけでも、大きな規模の話をしているわけでもないんですよね。結局、「ひとりの人間の、ひとりの歌」っていうのが、ずっと自分の曲作りの根本だから。

それでも、今は生きづらい世の中じゃないですか……鮮明すぎて。この鮮明さのなかで、零れがちな本質を探りたいと思って。曲を書くにあたって一番心がけたのは、どれだけ真っ直ぐな心を持てるのか、どれだけ真っ直ぐに向き合えるのかっていうこと。

ヤナセジロウ
betcover!!“さみしがりな星”を聴く(Apple Musicはこちら

―「鮮明すぎる」というのは?

ヤナセ:Twitterなんかを見ていても、毎日しんどくて……今の世の中、つらすぎませんか? 世の中にはこんなに悪意が溢れているのかと思うと、息が詰まるんですよ。一方的な価値観や偏見にまみれた、本当に頭が悪い猿みたいな人たちがウヨウヨいて、無防備な人たちを攻撃している。なんでそんなに悲しいことができるのか? 想像力がなさ過ぎるのか? もうブチ切れですよ、こんなクソしょうもない人間たちがいるのかと思うと。

でも、ああいう悪意って、特殊な人たちだけが持っているわけじゃなくて、誰にでも普通にあるものなんですよね。どれだけ大人しく優しい人でも、恐ろしいことは考えているものだと思う。今は時代が、普通の心のなかにある卑劣さを引きずり出してしまっている、というか……。

Page 1
次へ

リリース情報

betcover!!『告白』
betcover!!
『告白』(CD+DVD)

2020年7月1日(水)発売
価格:3,850円(税込)
CTCR-96001B

[CD]
1. NOBORU
2. Tokyo
3. こどもたち
4. 告白
5. さよこ
6. 家庭のひかり
7. 失踪
8. Jungle
9. さみしがりな星
10. Love and Destroy

betcover!!
『告白』(CD)

2020年7月1日(水)発売
価格:3,300円(税込)
CTCR-96002

1. NOBORU
2. Tokyo
3. こどもたち
4. 告白
5. さよこ
6. 家庭のひかり
7. 失踪
8. Jungle
9. さみしがりな星
10. Love and Destroy

ライブ情報

『レコ発、無観客生配信ワンマンライブ「絆」』

2020年7月4日(土)
開演19:00 / 終演20:30(アーカイブ期間 2020年7月7日20:30)
電子チケット:1,500円(2020年7月7日18:50まで電子チケット購入可能)

プロフィール

betcover!!
betcover!!(べっとかばー)

ヤナセジロウのソロプロジェクト。1999年生まれ、東京で風土を感じる多摩地区育ち。幼い頃からEarth, Wind & Fireなどソウルミュージックを聴いて過ごし、大人びた音楽指向と環境、才能と表現の狭間で揺れ動きながら、中学にあがる頃には創作を始める。2019年7月、才能、悩み、怒りを爆発させた1stアルバム『中学生』を「avex/cutting edge」よりリリース。曽我部恵一やクリープハイプなどへのRemixも評判を呼び、20歳の奇才はじわじわと熱い支持を集める。2020年7月、2ndアルバム『告白』をリリースした。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

あらかじめ決められた恋人たちへ“日々feat.アフロ”

何かを我慢することに慣れすぎて忘れてしまいそうになっている「感情」を、たった10分でこじ開けてしまう魔法のようなミュージックビデオ。現在地を確かめながらも、徐々に感情を回転させていくアフロの言葉とあら恋の音。人を傷つけるのではなく、慈しみ輝かせるためのエモーションが天井知らずの勢いで駆け上がっていった先に待ち構えている景色が、普段とは違ったものに見える。これが芸術の力だと言わんばかりに、潔く堂々と振り切っていて気持ちがいい。柴田剛監督のもと、タイコウクニヨシの写真と佐伯龍蔵の映像にも注目。(柏井)

  1. オダギリジョー×永瀬正敏 日本のテレビドラマが抱える課題と未来 1

    オダギリジョー×永瀬正敏 日本のテレビドラマが抱える課題と未来

  2. 稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾出演『ワルイコあつまれ』第2回コーナー発表 2

    稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾出演『ワルイコあつまれ』第2回コーナー発表

  3. クラムボンの東名阪ツアー『クラムボン2021“爽秋編”』が10月開催 3

    クラムボンの東名阪ツアー『クラムボン2021“爽秋編”』が10月開催

  4. 『文化庁メディア芸術祭』受賞作『音楽』『映像研には手を出すな!』を紹介 4

    『文化庁メディア芸術祭』受賞作『音楽』『映像研には手を出すな!』を紹介

  5. ドレスコーズ志磨遼平×パピヨン本田のコラボ漫画公開、10年の歩み振り返る 5

    ドレスコーズ志磨遼平×パピヨン本田のコラボ漫画公開、10年の歩み振り返る

  6. 杉咲花と平野紗季子が遠野を訪問、成田凌が語りのEテレ『きみと食べたい』 6

    杉咲花と平野紗季子が遠野を訪問、成田凌が語りのEテレ『きみと食べたい』

  7. Bank BandがNHK『SONGS』に初登場 大泉洋が小林武史、櫻井和寿と対談 7

    Bank BandがNHK『SONGS』に初登場 大泉洋が小林武史、櫻井和寿と対談

  8. ジム・ジャームッシュのコラージュ本『Some  Collages』刊行 サイン入りも 8

    ジム・ジャームッシュのコラージュ本『Some Collages』刊行 サイン入りも

  9. 『マッドマックス 怒りのデス・ロード』 時代を先取りした画期的作品 9

    『マッドマックス 怒りのデス・ロード』 時代を先取りした画期的作品

  10. ZAIKO取締役ローレンを動かした、日本の音楽業界に対する可能性 10

    ZAIKO取締役ローレンを動かした、日本の音楽業界に対する可能性