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町田康からbetcover!!へ。約40年の表現活動で得た確信を伝える

町田康からbetcover!!へ。約40年の表現活動で得た確信を伝える

betcover!!『中学生』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:前田立 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)

betcover!!の音楽は、いつだって唐突だ。唐突に展開する楽曲、唐突に発せられる言葉……そのすべてが唐突で、しかし、それらが唐突だからといって、まったく奇妙奇天烈なものというわけではない。段差のない場所で転んでしまったあとのように、「そうなのだから仕方がないじゃないか」と思わせるものがbetcover!!の音楽にはある。これが人生なのだから仕方がないじゃないか、と。だから、聴き手がその人自身の人生をそれなりにでもかけがえのないものだと思っているのなら、betcover!!の音楽もまた、かけがえのないものとして響く。

受け手にそんな感覚を抱かせるという点においては、betcover!!のヤナセジロウと町田康は似ているかもしれない。今年二十歳になったばかりのヤナセと、1980年代より活動を続けてきた町田。世代のかけ離れたふたりだが、しかし時代が変わろうが人間の「存在」というのはそう簡単に変わるものではないし、それを追求する表現者のあり様もまた、普遍的なものだ。

去年、CINRA.NETでの取材時にヤナセは町田からの影響を語っており、また町田もかねてよりbetcover!!に対する興味を示していたという。そこで今回、betcover!!の1stフルアルバム『中学生』リリースを記念し、ヤナセジロウと町田康の対談を実施した。「人間」という存在が宿す悲しみ、不安、残酷さ、甘さ、そして美しさ――それらを形にし続ける表現者同士の対談、じっくり読んでください。

人間が生きて死ぬっていうだけで、それはとても重いことですから。そういうものに対して率直に向き合っている詞であり、音楽だなと思ったんです。(町田)

左から:ヤナセジロウ(betcover!!)、町田康
左から:ヤナセジロウ(betcover!!)、町田康

―まず、ヤナセさんはどういった経緯で町田さんの表現に触れたのでしょうか?

ヤナセ:僕は、1980年代くらいの日本のフォークやパンクが好きで、町田さんのことは『アース・ビート伝説'85』の映像でずっと見ていて。

町田:そうなんですね。『アース・ビート伝説』を読者のために説明すると、映画監督の山本政志という人がいて、彼は当時、じゃがたらというバンドの1stアルバム(『南蛮渡来』)のプロデューサーをやっていたんです。

そういう関係で、じゃがたらを中心に、ネパールとか海外からいろんなグループを呼んで、国内でも、彼と付き合いのあるTHE FOOLSや僕なんかも呼んでもらって、日比谷野外大音楽堂でコンサートを開いたのが『アース・ビート伝説』です。でも、僕がbetcover!!の音楽を聴いた印象では、あの辺りの音楽からの影響は直接的にはないような気がしましたけど。もう少し新しい音楽という印象を受けました。

町田康(まちだ こう)<br>1962年大阪生まれ。作家・詩人・パンクロッカー。町田町蔵名義で歌手活動をはじめ、1981年パンクバンド「INU」の『メシ喰うな!』でレコードデビュー。96年、処女小説『くっすん大黒』で文壇デビュー。2000年『きれぎれ』で『芥川賞』、2005年『告白』で『谷崎潤一郎賞』、2008年『宿屋めぐり』で『野間文芸賞』を受賞。
町田康(まちだ こう)
1962年大阪生まれ。作家・詩人・パンクロッカー。町田町蔵名義で歌手活動をはじめ、1981年パンクバンド「INU」の『メシ喰うな!』でレコードデビュー。96年、処女小説『くっすん大黒』で文壇デビュー。2000年『きれぎれ』で『芥川賞』、2005年『告白』で『谷崎潤一郎賞』、2008年『宿屋めぐり』で『野間文芸賞』を受賞。

ヤナセ:僕は、子どもの頃から両親の影響でEarth, Wind & FireやThe Nolansのような音楽を聴いていて。小学生の頃にはB・J・トーマスやギルバート・オサリバンが好きだったし、音楽性的には、そういったポップスからの影響が強いんです。ただ、そういう音楽のなかに、フォークやパンクのようなものを内包したい……それはジャンルとしてということではなく、精神性の部分で内包したいっていう気持ちがあるんです。

町田:今の話を聞いて、なるほどと思いました。僕のbetcover!!との出会いはYouTubeだったんです。偶然、“平和の大使”のビデオを見て、パッと見ただけでも「これは違うな」っていう感じがあったんですよね。

最近はたくさんの音楽があって、どんな音楽を聴いても、昔に比べると技術もあるし、参照する音楽の幅も広いし、それなりのセンスのよさを感じる。でも、通り過ぎていってしまうんですよね。匿名的というか、どれも似たような感じで(笑)。なので、特に意識に残ることもなく「あぁ、いい音楽だな」くらいに聴くことが多いんですけど、betcover!!に関しては「なんか違うぞ」っていう感じがあったんですよ。

ヤナセ:ありがとうございます。

betcover!!(べっとかばー)<br>1999年生まれ多摩育ちのヤナセジロウによる音楽プロジェクト。小学5年生でギター、中学生のときに作曲をはじめ、2016年夏に本格的に活動を開始。同年レーベル主催企画で初ライブ、その次はロッキングオン主催の『RO JACK for COUNTDOWN JAPAN』で優勝し『COUNTDOWN JAPAN 16/17』に出演。2019年7月24日、メジャーデビュー作となる1stフルアルム『中学生』をリリースした。
betcover!!(べっとかばー)
1999年生まれ多摩育ちのヤナセジロウによる音楽プロジェクト。小学5年生でギター、中学生のときに作曲をはじめ、2016年夏に本格的に活動を開始。同年レーベル主催企画で初ライブ、その次はロッキングオン主催の『RO JACK for COUNTDOWN JAPAN』で優勝し『COUNTDOWN JAPAN 16/17』に出演。2019年7月24日、メジャーデビュー作となる1stフルアルム『中学生』をリリースした。

町田:特に印象に残ったのは、詞のあり様です。これは文学作品ではなくて音楽の話なので、歌詞を独立させて考えるのは危険なんですけど、その前提でお話すると、「この人の詞には、なにかあるな」というのを“平和の大使”を聴いたときに直感的に感じたんです。

パッケージとしてはエンターテイメントな要素があるんだけど、内実の部分には、人間が日々生きていくにあたって感じるであろうことが表現されている。そうはいっても別に、大げさなことではなくてね。人間が生きて死ぬっていうだけで、それはとても重いことですから。そういうものに対して率直に向き合っている詞であり、音楽だなと思ったんです。今のヤナセさんの話を聞いて、自分の直感は間違っていなかったんだと思いました。

betcover!!『サンダーボルトチェーンソー』(2018年)収録曲

―ヤナセさんご自身は、歌詞に対してどのように向き合っていますか?

ヤナセ:僕が歌っているのは、根本的にはとても個人的なことなんです。僕は、父親に酒の問題があって、もう10年くらい会っていなかったり、兄には知的障害があったりして、家庭環境のなかに逃げ場がなかったんです。そんななかで、音楽を作っている間が一番楽しかった。でも、そういう僕の個人的な話は、世間には関係がないし、社会にはなにも影響を与えていないじゃないですか。

だから、僕の個人的なことを歌ったものが社会的なイメージを持てばいいなって思っているんです。僕の個人的な感覚や身内の事情が、巡り巡りって、一般論的なところにまで届けばいい。そういうことを意識しはじめたのが『サンダーボルトチェーンソー』なんですよね。あのなかで歌っているのは、ただただ家庭のことなんです。

betcover!!『サンダーボルトチェーンソー』を聴く(Apple Musicはこちら

町田:あれは家庭の歌だったんですね。今、とても重要なことをおっしゃったと思うんですけど、「個人的な歌が社会性を帯びる」というのが、まさにbetcover!!の詞だと思うんです。

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リリース情報

betcover!!
『中学生』(CD+DVD)

2019年7月24日(水)
価格:3,564円(税込)
CTCR-14973/B

[CD]
1. 羽
2. 水泳教室
3. 異星人
4. 決壊
5. 雲の上
6. 世界は広いよ
7. ゆめみちゃった(アルバムver.)
8. 海豚少年(アルバムver.)
9. 素直な気持ち
10. 中学生

[DVD]
・“異星人”PV
・“海豚少年”PV
・レコーディングドキュメント

betcover!!
『中学生』(CD)

2019年7月24日(水)
価格:3,024円(税込)
CTCR-14974

1. 羽
2. 水泳教室
3. 異星人
4. 決壊
5. 雲の上
6. 世界は広いよ
7. ゆめみちゃった(アルバムver.)
8. 海豚少年(アルバムver.)
9. 素直な気持ち
10. 中学生

イベント情報

『1st.フルアルバム発売記念 単独公演「中二魂」』

2019年8月23日(金)
会場:東京都 渋谷WWW

プロフィール

betcover!!(べっとかばー)

1999年生まれ多摩育ちのヤナセジロウによる音楽プロジェクト。小学5年生でギター、中学生のときに作曲をはじめ、2016年夏に本格的に活動を開始。同年レーベル主催企画で初ライブ、その次はロッキングオン主催の『RO JACK for COUNTDOWN JAPAN』で優勝し『COUNTDOWN JAPAN 16/17』に出演。2019年7月24日、メジャーデビュー作となる1stフルアルム『中学生』をリリースした。

町田康(まちだ こう)

1962年大阪生まれ。作家・詩人・パンクロッカー。町田町蔵名義で歌手活動を始め、1981年パンクバンド「INU」の『メシ喰うな!』でレコードデビュー。96年、処女小説『くっすん大黒』で文壇デビュー。2000年『きれぎれ』で『芥川賞』、2005年『告白』で『谷崎潤一郎賞』、2008年『宿屋めぐり』で『野間文芸賞』を受賞。

関連チケット情報

2019年10月5日(土)
新宿フィールドミュージアム -shin-音祭 2019
会場:新宿文化センター(東京都)
2019年11月21日(木)
NITRODAY/betcover!!
会場:Shibuya WWW(東京都)

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