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ラブリーサマーちゃん、真摯さを胸に語る ノイジーな世界に調和を

ラブリーサマーちゃん、真摯さを胸に語る ノイジーな世界に調和を

ラブリーサマーちゃん『THE THIRD SUMMER OF LOVE』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:中山京汰郎 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部) 撮影協力:DJ Bar EdgeEnd、TSUTAYA O-nest

「私を私として扱ってくれないのが嫌」ーーラブサマちゃんの日々の怒りの根幹にあるもの

―じゃあ今は、ブリットポップ時代のデーモン・アルバーンはダメなんだ(笑)。

ラブサマ:昔はデーモンがインタビューの質問を面白くかわしてるのが好きだったんです。そういうのを「気が効いてる」って思ってたんですけど、でも自分が同じことをするようになったら、「自分、嫌味ったらしいやつだなあ」と思ってすごく嫌になっちゃって……徐々に素直になったんです(笑)。

前は嫌なことがあってもチクッて風刺したり自嘲するようなBlurの歌詞が好きだったけど、今は真正面から泣いたりしてるほうが私向きかもって思います。

ラブリーサマーちゃん

ラブサマ:あと最近、イギリス人の友達ができたんですけど、めっちゃいい子なんですよ。皮肉とか全然言わないし、思ったことは真っ直ぐ言うし、私が思ってたイギリス人のイメージと結構違うなと思って。

―去年初めてイギリス旅行をしたそうですが、そのときはどうでしたか?

ラブサマ:イギリスの音楽がすごく好きだからこそ、その背景を調べたりするなかで私の思うイギリス像ができあがってたんですけど、ギャップを感じましたね。寒々しくて、曇ってて、陰鬱な空気のレンガ造りの街……みたいに思っていたんですけど、実際行ったら快晴だし、それにみんな朗らかで。私の思ってた「イギリスらしさ」に対して、何も言えなくなっちゃいました。

―その話はすごく面白くて、それこそ僕自身1990年代は情報も少なかったから、「ブリットポップ」ってものをひと括りで受け取っていたけど、今はSNSの存在もあって、全体でひとつに見えていたものが、いろんな人たちの集合体なんだってわかる。それってすごく現代的というか。それで言うと、ラブサマちゃんの今回のアルバムも「個人」を見つめた作品だと思うんですよね。

ラブサマ:パチパチパチパチ(拍手)。本当にそうですね。私、いつもいろんなことに怒ってますけど、その根幹にあるのは全部それですもん。「私を私として扱ってくれないのが嫌」ってことだと思う。

ラブリーサマーちゃん“I Told You A Lie”を聴く(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く

ラブサマちゃんの大きな変化の背景。そこには、自分の力ではどうしようもないことが理由で苦しい境遇に追い詰められている人たちの存在があった

―今の話は1曲目の“AH!”と2曲目の“More Light”に特に表れてる気がして。セルフライナーノーツも読ませてもらったんですけど、“AH!”はもともと映画『ファイト・クラブ』(1999年公開、監督:デヴィッド・フィンチャー)を見たことをきっかけに書いた曲だそうですね。

ラブサマ:前のアルバムは約4年前で、当時はまだ大学に入りたてだったし、「自分の力でどう生きていくか」みたいなことを考えてなかったし、すごく未熟だったんです。今もまだ未熟だけど、もっと何も考えてなくて。

でも今は、自分が何を考えて、何を選んで生きていくかってことに意識的になりはじめていて。以前は、生きていくときに自分が大切にしたい主義はどんなものなのか、なんとなくぼんやり思うだけでしたけど、周りを見渡したときにやばいなって思ったんですよ。

―何に対してやばいと思ったんですか?

ラブサマ:マキャベリストというか、自分と自分の周りがいい思いをして、その他の人たちが苦しんでも別にいいと思ってる人ってたくさんいるんだなって。「自分と周りが潤えばOKで、バカな人たちのことは知りません」みたいな排他的な側面が世の中にはたくさんあるんだって気づいたんです。

そういう主義の人がいることはしょうがないとも思うけど、でも私は、「持ってない」人たちも安心して生きていける世の中であってほしいと思っていて。だから、“AH!”は古典的自由主義が世の中にあることを認めつつ、私はそれは受け入れませんって表明している曲だと思います。

ラブリーサマーちゃん“AH!”を聴く(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く

―この4年の間に一人で活動する期間もあったなかで、今話してくれたような経済のシステムの存在に気づいていったのでしょうか?

ラブサマ:そうだと思います。この4年の間に大学を変えたり、レコード会社を離れたり、フリーランスになったりいろいろあったので。それまでは8年間お嬢様学校に通っていて、苦しんでいる人の存在が見えなかったんでしょうね。いじめとか、他人の悪意によって傷ついている人の存在は見えていたけど、そもそも貧しかったり、何かを持っていないために苦しい状況にいる人って、私の周りには全然いなかったんです。

でも、大学に入ったり、いろんな種類の友達ができるなかで、苦しんでいる人が世の中にたくさんいることを知って。もし私が王道な人生を生きていたら、気づかなかったのかもしれないけど、今の音楽業界は儲からないし、私自身、「持ってない」状況になりました。だから、人が感じているつらさに気づくようになったんだと思います。構造に由来するつらさがあるってわかった4年間でした。

ラブリーサマーちゃん
ラブリーサマーちゃん“ミレニアム”を聴く(Apple Musicはこちら

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リリース情報

ラブリーサマーちゃん
『THE THIRD SUMMER OF LOVE』初回限定盤(CD)

2020年9月16日(水)発売
価格:3,630円(税込)
COCP-41239
※三方背ケース、初回盤限定ブックレット付

1. AH!
2. More Light
3. 心ない人
4. I Told You A Lie
5. 豆台風
6. LSC2000
7. ミレニアム
8. アトレーユ
9. サンタクロースにお願い
10. どうしたいの?
11. ヒーローズをうたって

プロフィール

ラブリーサマーちゃん

1995年生まれ、東京都在住の25歳女子。2013年夏より自宅での音楽制作を開始し、インターネット上に音源を公開。SoundCloudやTwitterなどで話題を呼んだ。2015年に1stアルバム『#ラブリーミュージック』、2016年11月にはメジャーデビューアルバム『LSC』をリリースし好評を博す。2020年9月には待望の3rdアルバム『THE THIRD SUMMER OF LOVE』を発売。可愛くてかっこいいピチピチロックギャル。

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