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小山田壮平の歌の旅路 奥山由之と語り合う、歌の言葉と写真の神秘

小山田壮平の歌の旅路 奥山由之と語り合う、歌の言葉と写真の神秘

小山田壮平『THE TRAVELING LIFE』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:佐藤祐紀 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)

「僕は、生活においてずっとスランプな気がします」――奥山が小山田に明かす、作家としての胸の内

左から:奥山由之、小山田壮平

―奥山さんは、『THE TRAVELING LIFE』を聴いていかがでしたか?

奥山:聴いていると、まず最初に「自由」という言葉が浮かび上がります。壮平さんは今、好きな人たちと、好きな音を鳴らすことができているんだろうなと思うし、すごく自然体な佇まいの楽曲たちだなと思いました。なににも縛られていない自由さがあって、何周でも繰り返し聴けるアルバムだと思います。そしてやっぱり移動中の車の中とか、そういった、景色が変わる環境で聴くと一番心地がいいです。ブックレットには、壮平さんが撮った写真も使われているんですよね?

小山田:うん、最後のほうには僕は撮った写メも何点か使っていて、最後のページに使っているのは、僕が撮ったローヌ川の写真なんです。

奥山:“ローヌの岸辺”は、この写真の場所で書いたんですか?

小山田:うん、そうです。

小山田壮平“ローヌの岸辺”を聴く(Apple Musicはこちら

奥山:昔から、壮平さんの歌詞からはなんで異国の香りがするんだろう? とずっと思っていて。曲を書く場所はまちまちですか?

小山田:曲を書くのは日本が多いかな。旅に出ても、曲を書くのは日本に帰ってきてからっていうパターンが多い。旅先で見た情景を思い出しながら書くことが多いかな。

奥山:そうなんですね。あと、“スランプは底なし”もすごい曲ですよね。なにがすごいって、スランプで曲が書けない、っていうことで曲を書けている。しかも名曲。結果、全然スランプじゃない(笑)。

小山田:うん、無理やりスランプじゃなくした(笑)。

奥山:壮平さんってスランプあるんですか?

小山田:めちゃくちゃあるよ。曲が書けない、やる気が出ない、前向きになれない……そういうことはめちゃくちゃある。

奥山:それって、原因はわかっているんですか?

小山田:原因がわからないことのほうが多いかなぁ。落ちる原因は常にいろいろあると思うんだけど、酷い状況なのに元気なときもあるし、どうしようもなく落ちちゃうときは落ちちゃうし。

小山田壮平“スランプは底なし”を聴く(Apple Musicはこちら

小山田:でも、周りの人の話を聞いていると、僕はスランプの期間は短い気がする。数か月とか1年くらいスランプになってしまう人もいるみたいだけど、僕は大体、3~4日くらいだから。おっくんはどう?

奥山:僕は、生活においてずっとスランプな気がします。自分自身に納得がいかないことや上手くいかないことが多すぎて、結局、表現に逃げ込んでいるというか。写真を撮ったり、映像を作ったり、そうやってなにかに向き合うことで、結局、そこに逃げ込んでいる感じがするんですよね。自分自身に納得がいかない、自分のことを好きになれない感覚が、生まれてからずっとあるような気がしていて。

小山田:おっくんは、生まれてからずっとスランプなんだ。

奥山:人間としては、そんな感じがします(笑)。だからこそ、せめて作り出すものだけは好きになりたいという感覚があって。自分が作るものはいつだって好きだし、我が子のように思っているし、愛しているんです。

だから正直、今、こうやって人前で喋っている状態にすごく緊張していて。僕、自分が写真に写ることや、人に見られることがすごく苦手で。自分自身のズルさとか、人としての汚い部分ばかり気になってしまうんです。できる限り魅力的な人になりたいと思っているんですけど、それでも「今日もこんなことをやってしまった」みたいなことばかり考えてしまうし……。だから、気持ちを落ち着けるために、なんとか魅力的な作品を作らないと、って。

左から:奥山由之、小山田壮平

「幸せだった状態を形にしたい、残したいと思うから、なんとか幸せだった瞬間のことを思い出して歌を書いている」(小山田)

小山田:その感覚は、わかります。作品を作るっていうことは、自分の一番輝いているものを切り取ることで、自分を肯定していくことだと思うから。

奥山:そうですよね。やっぱりいつも「こうであってほしい」という願いを、写真や映像に込めているような気がします。「この世界はこうであってほしい」とか、「この人のこういう素敵なところをずっと見続けていたい」とか……日常が今よりもっともっと上手くいっていて、この世界は素晴らしいものだと思えていたら、その瞬間を永遠に残そうとは思わないのかもしれない。

きっと根本的に、自分が生きている世界そのものに対して、「これでいいのかな?」って思っているんですよね。でも、そんな世界にも素晴らしい瞬間がたくさんあるはずだと思いたいし、「こうだったら素晴らしいな」と思えるものを切り取りたいなと思っている。それは結局、自分が見たい世界を、見たいように撮っているということなんだけど……でも、もちろん嘘はつきたくないんですよ。

小山田:うん。

奥山:だからこそ、「ここだ!」っていう瞬間を探している。人であれ、環境であれ、何事も変化していくじゃないですか。そのなかの、「この瞬間が永遠であってほしい」と思えるような瞬間を残そうとしているんだと思うんです。

小山田:きっと写真を撮る人って、少なからず起こっている現象の外にいないと、写真は撮れないんだよね。僕だったら、酒を飲んでいても、その現場に一体化してウワーって盛り上がってバカになって幸せになってしまえる。もちろん、「まぁ、この幸せは長くは続かないんだろうな」って心のどこかでは思いながらね。でも、おっくんは人よりも「幸せは長くは続かない」っていう感覚が強いのかもしれないし、そうじゃないと写真を撮ることはできないのかもしれない。だって、一緒に楽しんでいたらシャッターは切れないもんね。

小山田壮平

奥山:今のいま見ているものや、感じていること以外のすべての時間軸に幸せに感じていたら、その瞬間、写真を撮ろうとは思わないのかもしれない……。

小山田:うん、ものすごく幸せに感じていたら撮らないんだけど、それでも、そういう瞬間があることも知っているし、その瞬間を撮って残したいっていう気持ちもあるっていう。

僕の場合も、曲を書くときに向き合うのって、やっぱり記憶なんですよね。ものすごく幸せな状態のときは、幸せだから歌なんて書いている場合じゃないんだけど、その幸せだった状態を形にしたい、残したいと思うから、なんとか幸せだった瞬間のことを思い出して歌を書いている。

おっくんも、実際に美しいものを体験したり感じたりしているときは、写真を撮っていないのかもしれないよね。その景色のなかで自分が感じたことや、「これを残したい」と思ったこと、「あれはなんだったんだろう?」と思うものを、あとから写真を撮るモードになったときに思い出しながら、作品に残そうとしているのかもしれないなと、今、話を聞いていて思った。

小山田壮平“雨の散歩道”を聴く(Apple Musicはこちら

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リリース情報

小山田壮平『THE TRAVELING LIFE』
小山田壮平
『THE TRAVELING LIFE』初回限定盤(CD+DVD)

2020年8月26日(水)発売
価格:4,180円(税込)
VIZL-1786

[CD]
1. HIGH WAY
2. 旅に出るならどこまでも
3. OH MY GOD
4. 雨の散歩道
5. ゆうちゃん
6. あの日の約束通りに
7. ベロベロックンローラー
8. スランブは底なし
9. Kapachino
10. 君の愛する歌
11. ローヌの岸辺
12. 夕暮れのハイ

[DVD]
『THE TRAVELING LIFE DVD』
・あの日の約束通りに(なんば Hatch 2019.9.19)
・革命(中野サンブラザ 2018.10.30)
・16(中野サンブラザ 2018.10.30)
『Music Video』
・OH MY GOD
・HIGH WAY

小山田壮平
『THE TRAVELING LIFE』通常盤(CD)

2020年8月26日(水)発売
価格:3,080円(税込)
VICL-65411

1. HIGH WAY
2. 旅に出るならどこまでも
3. OH MY GOD
4. 雨の散歩道
5. ゆうちゃん
6. あの日の約束通りに
7. ベロベロックンローラー
8. スランブは底なし
9. Kapachino
10. 君の愛する歌
11. ローヌの岸辺
12. 夕暮れのハイ

小山田壮平
『THE TRAVELING LIFE』(LP)

2020年9月4日(金)発売
価格:3,850円(税込)
VIJL-60226~60227

プロフィール

小山田壮平
小山田壮平(おやまだ そうへい)

1984年、福岡県飯塚市で生まれる。2007年、andymoriを結成。2014年10月解散。ALのギターボーカル。自主制作音盤『2018』を自身の弾き語りツアーにて会場販売。2016年より自身のソロ弾き語り全国ツアー等も精力的に行なっている。2020年8月、1stソロアルバム『THE TRAVELING LIFE』を発表した。

奥山由之(おくやま よしゆき)

写真家・映像監督。1991年東京生まれ。2011年『Girl』で第34回写真新世紀優秀賞受賞。2016年『BACON ICE CREAM』で第47回講談社出版文化賞写真賞受賞。映像監督としてTVCM・MVなどを多数手がけている他、広告・CDジャケットなどのアートディレクションも行う。新作写真集『The Good Side』がフランスの出版社・Editions Bessardより発売中。

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