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和田彩花「わからない」から始める美術の楽しみ方、その奥深さ

和田彩花「わからない」から始める美術の楽しみ方、その奥深さ

美術検定
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:豊島望 編集:宮原朋之(CINRA.NET編集部) 取材協力:中村屋サロン美術館

美術を学んで「すべてを否定することはできない」ってことに気づかされた

―アートに対する興味を知識として学び、よりアートの鑑賞体験を奥深くするきっかけとしてあるのが「美術検定」ですが、「知る」ことが新しい楽しみを生んでいく、というのは和田さんとアートの関係にも共通する気がしました。

和田:私、最初はいつも感覚的なんですよ(笑)。展覧会に行っても、ばーっとひととおり見て回って、自分が気になるもの、好きだなってものをメインで見ちゃいます。で、そのなかから気になったものは作品解説や図録のテキストを読み込んで「なるほど~」ってなることが多いです。

「知る」楽しみと、「見る」楽しみには共通するところが多いですけど、作品っていう物理的なものがあって、見ることでコミュニケーションが取れるところが美術のよさですよね。言い方を変えると、それって「友だちになる感覚」に近いかもしれない。

和田彩花
 
美術検定
作品を知り、作家やその時代、社会を知れば、作品からもっとたくさんのことがみえてくる。美術検定は、「知るほど、みえてくる」の体験を通じて、「みる力」のステップアップの機会を提供しています。(サイトで見る

―「なんだかこいつと相性いいぞ」みたいな(笑)。

和田:そうそう。人それぞれの楽しみ方を美術は許してくれるので、深く付き合っても軽く付き合ってもいいし。でも、友だちになろうとしたら、どこかで積極的に近づかないといけないじゃないですか。だから個人的には、展覧会に行ったときはなんとなく眺めるだけじゃなくて、気になった作品の前で立ち止まって、向き合ってみるのがオススメです。向き合うことって大切。

和田彩花

―そういう経験から自分自身も変わっていくんでしょうね。例えば、さっきおっしゃってたようなフェミニズムとの出会いも「見る」ことを通じた学びから得たものだと思います。

和田:そうですね。でもちょっと気をつけておきたいのは、知ったからといってすべてを否定はできないよ、ってこと。

描かれてる主題が現代の価値観からして褒められるものではなくても、そこにあるのは色とかバランスとか造形的な素晴らしさでもあるんですよね。私は美術が好きだから、そういったものに魅力を感じることに嘘はつけなくて。むしろ美術を学んで「すべてを否定することはできない」ってことに気づかされました。

―例えばTwitterでは、社会的な事件が起きたときに、「正しさ」の言説が一気に広がっていきますよね。近年は人種差別や女性差別に顕著ですが、「正しさ」のなかに生じることのある排他性や偏見を忘れて暴走してしまう怖さも感じます。

美術や歴史について知る、考えるということは、そういった人間の多面的な複雑さや矛盾に向き合うことでもあるので、和田さんのおっしゃることはわかります。

和田:女性の表象に関する興味から美術史を読んでいくと、どうしても批判的な視点に傾倒していっちゃうんですよね。そこには自分自身がこれまで経験したことも重なっていくから、余計に深く入り込んでしまう……。

でもゼミの先生と話していうるうちに「社会学ではなく美術史を勉強しているのだから、絵の魅力自体についても考えなければ」ということに気づいたんです。そうでなければ、近代化のなかで生まれていった、個の尊重や多様な視点でものを見るって価値観、社会背景すら否定してしまうことになりますから。

和田彩花

和田:もちろんフェミニズムが照らし出す問題や視点はとくにいまは重要です。ただ、いろんな視点から見て作品や創作について考える、語る、っていうことも美術史の重要なところなんです。何か1つを知って簡単に「わかった」と思わないというか。あるいは「わからない」ってことを認めて、それと向き合う、っていうのかな。

―「わからない」を認めるっていうのは大事ですね。

和田:高校生の頃の私も、全然わからないまま美術の本を読んでましたね。技法も書いてあれば、時代についても書いてあって、頭がこんがらがっちゃって。でもそのときになんとなく知識として頭にインプットされたことが、いまになってあらためて結びついたりする。

点として散らばってたものが本当にちょっとずつつながってきたんだな、っていうのはよく感じています。いまもわからないことがたくさんあって、行ったり来たりしてますけど(笑)。でも、それも楽しいんですよ。

高村光太郎『自画像』1913年 中村屋サロン美術館所蔵
高村光太郎『自画像』1913年 中村屋サロン美術館所蔵

―つまり、わからなさを楽しんでる。

和田:そうですね。私、あるときまでずっとマティスがわからなかったんですよ。マネと比べると妙に絵画が軽い感じがしてどうしても好きになれなかった。

―晩年の切り絵とか、71歳で設計した南フランスの「ロザリオ礼拝堂」なんて、ほとんど落書きのようでもありますしね。

和田:軽いですよね。でも、その軽さがずっと気になっていて、あるとき、マティスの表現しようと思っているのが、シンプルな色やかたち、遠目で見たときの配置の仕方が融合したような世界観であり、全部含めて経験するのがマティスの楽しみ方だとわかったんです。

和田彩花

和田:そうすると、これまで好きではなかった軽さが自分のなかで肯定されて、その瞬間からマティスが大好きになりました。これは、わからなかったものが開かれた経験ですね。

―なるほど。

和田:マネ、マティス、Chim↑Pomから共通して感じることなんですけど、作品に触れて、何かしらを理解すると、自分は自分でしかなくて、人はそれぞれ違う考えや感覚を持っているんだな、ってことがわかります。それは人間にとってとても根本的なことですけど、どこかで忘れちゃうんですよね。

それを思い出させてくれるのが絵画とか作品であって、それが文化として残っているからこそ、現在に生きる私はそこから学ぶことができているし、もっと言えば未来に届けることもできる。そして未来の人たちは、それをまた学んでいく。「美術検定」が知識を得るきっかけであるのと同じように、美術に触れる、知ることへの一歩を踏み出すっていうのは、とても素晴らしいことだと本当に思いますね。

ステイホーム期間中は、エッセイや書評の執筆を進めていましたが、あらためて自分は美術が好きなんだと気づきました 。そして、それをきちんと言葉にしてかたちにしたいと思いました。いつになるかわからないですけど、10年後、ひょっとしたら20年後に美術批評を書けるような自分でありたい。それがいまの私の夢ですね。

和田彩花
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サービス情報

美術検定 ― 知るほど、みえてくる。
美術検定 ― 知るほど、みえてくる。

美術は、「つくる力」だけで生み出されてきたのではなく、「みる力」によって育まれ、伝えられてきた。作品を知り、作家やその時代・社会を知れば、作品からもっとたくさんのことがみえてくる。美術検定は、「知るほど、みえてくる」の体験を通じて、「みる力」のステップアップの機会を提供しています。

試験開催情報

2020年美術検定
2020年美術検定

1~3級オンライン試験:
2020年11月7日(土)・8日(日)開催
申込期間:9月15日(火)~11月2日(月)

4級オンライン試験:通年開催中

対象
・作品や作家、美術史の基本的な流れを知って、美術鑑賞をもっと楽しみたい方
・美術の知識に関する資格として、進学や就職に活かしたい方
・ビジネスシーンでも役立つ教養として、美術の基礎知識を身に付けたい方

合格特典
美術検定を応援する美術館・施設では、合格認定証の提示で特典を提供中
※中村屋サロン美術館では、ポストカード進呈の特典が受けられる

イベント情報

中村屋サロン美術館『コレクション展示』
中村屋サロン美術館
『コレクション展示』

会期:2020年9月12日(土)~12月6日(日)
開館時間:10:30~19:00(最終入館18:40まで)
※2020年10月現在、開館時間変更 10:30~18:00(最終入館17:40まで)
休館日:毎週火曜日
※10/28(水)は展示替えのため休館。但し11/3(火・祝)は開館し翌11/4(水)休館。
入館料:300円
所在地:東京都新宿区新宿3丁目26番13号新宿中村屋ビル3階

プロフィール

和田彩花(わだ あやか)

1994年8月1日生まれ。群馬県出身。アイドル。2009年4月アイドルグループ「スマイレージ」(後に「アンジュルム」に改名)の初期メンバーに選出。リーダーに就任。2010年5月『夢見る15歳』でメジャーデビューを果たし、同年『第52回日本レコード大賞』最優秀新人賞を受賞。2019年6月18日をもって、アンジュルム、およびHello! Projectを卒業。アイドル活動を続ける傍ら、大学院でも学んだ美術にも強い関心を寄せる。特技は美術について話すこと。特に好きな画家は、エドゥアール・マネ。好きな作品は『菫の花束をつけたベルト・モリゾ』。特に好きな(得意な)美術の分野は、西洋近代絵画、現代美術、仏像。趣味は美術に触れること。

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