古田新太が振返る劇団☆新感線40年 演劇界に吹かせたエンタメの風

旗揚げから今年で40年! いまや1演目あたり約10万人を動員する人気劇団となった劇団☆新感線。しかし、その道のりは、必ずしも平坦なものではなかったという。演劇がエンタメではなく「文学」「芸術」とされていた1980年に産声を上げ、時代劇やSF、ロック、コントなど、「エンターテイメント」の要素を率先して盛り込みながら、さらには阿部サダヲや上川隆也など、劇団外の人気俳優たちを次々と招き、独自の進化を遂げていった。

そんな40周年を記念して、代表的な演目の「ゲキ×シネ」6作品――『髑髏城の七人~アカドクロ』『「髑髏城の七人」~Season鳥』『五右衛門ロック』『阿修羅城の瞳2003』『SHIROH』『乱鶯』が、3か月にわたって時代劇専門チャンネルで連続放送される。

今回は、劇団の看板役者であると同時に、近年はテレビのバラエティ番組やドラマなどでもすっかりお馴染みの俳優・古田新太に、劇団と共に歩んできた自らのキャリアについてはもちろん、劇団☆新感線が40年のあいだに成し遂げたこと、さらにはこのコロナ禍における心境について、大いに語ってもらった。

(メイン画像:©ヴィレッヂ・劇団☆新感線)

つかこうへいのコピー劇団から、ハードロックをかける「アクションミュージカル劇団」になるまで

―劇団☆新感線(以下、新感線)は、いまや押しも押されぬ人気劇団です。古田さんは役者として、いろんな現場をご存知かと思いますが、その中でも新感線はどういった劇団だと感じていますか?

古田:ひと言で言うなら、歌ったり踊ったり戦ったりする、アクションミュージカル劇団ですね。おいらは、テレビドラマでは、女装家とかゲイの役ばっかりやっているんだけど、実はこのアクションミュージカル劇団の人なんだよっていう。この記事では、それがわかってもらえたらもう大丈夫です(笑)。

―(笑)。しかも、その看板俳優でいらっしゃいます。

古田:演劇って、まだまだ敷居が高いと感じている方は多いと思うんです。でも、SEKAI NO OWARIとか嵐のコンサートって、曲を全然知らなくても、めちゃくちゃ楽しめるじゃないですか。それと同じように、うちの劇団の芝居は、基本的に敷居が低いし、難しいことは言わない。まあ、難しいことは言わないっていうか、言えないんだけど。頭の悪い人たちがやっている劇団なので(笑)。

―「難しいことは言わない」というのは、結成当初からなんですか?

古田:もともとうちの劇団は、つかこうへいさん(1970年代から活動していた劇作家、演出家。国籍は韓国)のコピー劇団から始まったんです。ただ、つかさんは劇中にクラシックを流していたところ、うちらはJudas PriestとかIRON MAIDEN(どちらも、イギリスのへヴィメタルバンド)のようなハードロックを流していました(笑)。当時、そんな劇団は他になかったんですよね。

ただ、つかさんの芝居には、在日コリアンの悲しみとか差別の問題とかも入っていて……我々も途中で気づいたんですよ。ノンポリのおいらたちが、そんなお芝居をやっちゃいけないって。それで、オリジナルを始めて、35年ぐらいって感じでしょうか。

古田新太(ふるた あらた)
1965年、兵庫県生れ。1984年、大阪芸術大学在学中にデビュー。「劇団☆新感線」の看板役者である。独自の存在感と確かな演技力で、幅広く活躍をしている。

―古田さんは旗揚げ時には参加しておらず、新感線に参加して今年で36年ということですが、どういったいきさつがあったのですか?

古田:おいらが大学生のとき、旗揚げメンバーだった渡辺いっけい先輩に、「ちょっと手伝ってくれ」と言われて、そのまま36年ずっといるような感じなんですけど、おいらが入ったあたりから、さっき言ったようなオリジナル路線になっていったんですよね。

おいらはもともとミュージカルとアクションが好きだったので、「踊りが入るなら、歌も入れましょうよ」とか「もっとアクションをやりましょうよ」とか、座長のいのうえに言い続けていて。そしたら、うちの座付き作家をやっている中島かずきさんが参加するようになって、歌も踊りもある脚本を書き出したんです。

―古田さんのアイデアが通っていったんですね。

古田:そうなんです。その頃、大学を出たら、東京で職業俳優になろうと思っていたんですけど、この劇団にいたら、おいらがやりたいアクションがあって下ネタもあるようなミュージカルができるんじゃないかって思ったんですよね。それで、劇団に残ったんです。

そこから、デーモン(デーモン閣下)さんやROLLYみたいな知り合いのミュージシャンにも手伝ってもらうようになって。それでいまのような形態になっていった感じです。

ミュージカル俳優はウソのつき放題で、お得な職業

―もともとミュージカルをやりたかったとのことですが、そのきっかけはどんなことだったのでしょう?

古田:いちばん最初は、小学生のときに学校でミュージカルを見せられて……それがまあ、つまらなくて寝ていたんですけど、朝市のシーンで八百屋とか花売りが、急に歌い踊り出したんですよね。で、それを見て、「これはバカみたいだな」と思って。そんなわけないだろうと。

でも、これはお得な職業だなって思ったんです。音楽もできるし、身体を動かすこともできるし、ニセモノにもなれるじゃないですか。

―ニセモノ?

古田:舞台の上で「俺は弁護士だ」って言えば弁護士だし、医者の免許を持ってなくても、医者だって言えば医者なわけで。あと、劇場の中なのに、「ここは広い海だ」って言ったらそこは海になったり。これはもう、ウソのつき放題で最高だなって思ったんです。

あと、中学生のときに映画版の『ロッキー・ホラー・ショー』(ジム・シャーマン監督作 / 1976年日本公開)を見て「ミュージカルって、下品なことをしてもいいんだ」と思って。で、俄然そういうのがやりたいと思うようになっていきましたね。

―『ロッキー・ホラー・ショー』との出会いは、古田さんの中でかなり大きかったんですね。

古田:完全においらの原点ですね。その後、自分でやったりもしているんですけど、『ロッキー・ホラー・ショー』に出たいというよりも、『ロッキー・ホラー・ショー』みたいなものが作りたいっていう欲求があるんですよね。『ロッキー・ホラー・ショー』のパロディだと思うけど、『ONE PIECE』に出てくるイワンコフみたいなことをやりたい。

今回放送されるラインナップの中でも、おいらが主演している『髑髏城の七人』とか『五右衛門ロック』は、その延長みたいなところがありますね。

『五右衛門ロック』場面写真(©︎ヴィレッジ・劇団☆新感線)

古田の宴会芸から始まったという、新感線の得意とする「チャンバラ」や「いのうえ歌舞伎」

―先ほど、アクションミュージカル劇団だとおっしゃっていましたが、もうひとつ大きな特徴として、時代劇を得意とする、いわゆる「チャンバラ」の要素があると思いますが、これはいつ頃から始めたのでしょう?

古田:これは、中島かずきさんが新感線に参加するようになってからだと思います。いのうえが、時代劇がやりたいと言い出して。その頃おいらは、宴会芸でよく近衛十四郎(戦前戦後に活躍した不出世の剣豪スター。故・松方弘樹、目黒祐樹の父でもある)の真似をやっていたんですよね。それを知ったいのうえが「古田はチャンバラができるから」ってことで作ったのが、『星の忍者~THE STRANGE STAR CHILD』(1986年)という作品なんです。これがのちに続いていく「いのうえ歌舞伎」の第一弾なんですよね。

『星の忍者~THE STRANGE STAR CHILD』(1986年)

古田:時代劇って、かつらとか小道具が必要になるから、お金がかかるんですよ。でも、そこにSF要素を混ぜたり宇宙人とかを出しちゃえば、そんなに小道具を用意しなくてもいいんじゃないかってなって。

―そうなったら、時代考証とかあんまり関係ないですもんね(笑)。

古田:そうそう。宇宙人対忍者とかにしてしまえば、誰も何も言わないだろうと(笑)。そこから、平安時代を舞台にして、陰陽師を出しちゃえば何でもありじゃん、みたいになってできたのが『阿修羅城の瞳~BLOOD GETS IN YOUR EYES』(1987年)です。

『阿修羅城の瞳~BLOOD GETS IN YOUR EYES』(1987年)

―宴会芸でチャンバラを披露していたとのことですが、そもそも古田さんは、どうしてそんなにチャンバラができるのですか?

古田:学生の頃からダンスはやっていたんですけど、その当時って、ジャッキー・チェンとか少林寺が流行っていたんですよ。それで、みんなで真似をしていた時代でした。

おいらは剣豪スターの近衛十四郎さんが大好きで、テレビでやってた時代劇の「ラスタチ」って言われる最後の立ち回りを完コピしていたんです。だから、剣術とか棒術とかヌンチャクとか、その頃すっげえ練習して(笑)。

―なるほど。そういう古田さんがいなかったら、新感線の舞台もいまのような感じにはなっていなかったかもしれないですね。

古田:まあ、そうでしょうね。最初の頃は、おいらが役者に殺陣を全部つけていましたから。そのあと10年ぐらい経ってから、アクションクラブが参加してくれるようになって本格的になっていきました。

市川染五郎、小栗旬、森山未來、松山ケンイチ、阿部サダヲーー豪華客演を招いて上演し続ける代表作『髑髏城の七人』

―そんな新感線時代劇の代表的な演目と言えば、やはり『髑髏城の七人』になると思いますが、古田さんが一人二役で演じた「アカドクロ」をはじめ、実にさまざまなバージョンがあります。これはどういう経緯で生まれて、どのように進化していった作品なのでしょう?

古田:もともと、おいらの罰ゲームから始まったんですよね。その前の作品で、出番の合間にタバコを吸っていて、出トチリをしまして……それで中島さんといのうえが激怒して、「お前にはタバコを吸うような時間はいっさいやらない!」って言って、ヒーローとヒールの両方を一人二役でやる芝居を考えて。それがいちばん最初の『髑髏城の七人』(1990年)です。

―そんな誕生秘話が……。

古田:でも、やっぱりヒーローとヒールを一人二役でやるのは、ちょっと無理がありましたね。いちばん最初にやったときは、最後、ヒーローである「捨之介」が天守閣に行ったら、ヒールの「天魔王」が病死していたっていうオチでしたから(笑)。

だから、初演はさほど面白くなかったんですけど、いのうえがリベンジして、ヒールに仮面をかぶせて、ヒーローとの一騎打ちをやるようにしたら、結構評判が良くて。さらに、その次から、アクションクラブが参加するようになって、より高度な立ち回りができるようになったら、それが大評判になったんです。

―それが、1997年に上演された『髑髏城の七人』ですね。

古田:そう。で、それを市川染五郎(現・松本幸四郎)が見ていて、「こういうのをやりたい」って言うから、「じゃあ、染ちゃん、髑髏城やる?」ってなってやったのが「アオドクロ」で、それなら古田バージョンもやろうってことで作ったのが「アカドクロ」。「ドクロイヤー」と称して、その年は二本立てでやったんですよね。

市川染五郎主演『髑髏城の七人~アオドクロ』予告

古田新太主演『髑髏城の七人~アカドクロ』予告

―それが2004年ですね。

古田:で、今度はそれを見ていた小栗(旬)とか(森山)未來とかが、「やってみたい」って言うので、「じゃあ、一人二役だったのを、二人二役にしちゃうか?」っていうことでやったのが「ワカドクロ」(2011年)。

小栗旬、森山未來、早乙女太一出演の『髑髏城の七人』予告

古田:2017年から2018年にかけてIHIステージアラウンド東京で上演した『髑髏城の七人』のシーズン「花」「鳥」「風」「月」は、マツケン(松山ケンイチ)が主演の「風」だけ、「初心に戻って一人二役でやるか」となって。だから、とにかくいろんなバージョンができたんですよね(笑)。

松山ケンイチ主演『髑髏城の七人~Season風』予告

―そこが面白いですよね。出演者が変わるだけではなく、演出はもちろん、ものによっては物語自体が、ちょっと変わっている。

古田:そうですね。だから全部、同じ台本ではないんです。

―今回放送されるラインナップには、古田さんが主演で一人二役を演じた「アカドクロ」、阿部サダヲさん主演の「Season鳥」がラインナップされていますが、そのふたつを見比べるだけでも、だいぶ違いますよね。

古田:そうですね。「鳥」は歌って踊るから、見ていてすごく楽しいです。

『「髑髏城の七人」~Season鳥』場面写真(©TBS/ヴィレッヂ)
阿部サダヲ主演『「髑髏城の七人」~Season鳥』予告

じつは、劇団員はみんな主役を演じたくない。新感線が客演を招いて進化していったわけ

―阿部サダヲさんをはじめ、市川染五郎さんや小栗旬さん、森山未來さんなど、出自の異なるいろんな役者がメインキャストとしてゲスト参加するのも、大きな特徴ですよね。

古田:そうですね。「ゲストを呼ぶと楽しい」って思い始めてから、ゲストとの関わり方が変わってきたんですよね。それこそ、永作(博美)がいたアイドルグループribbonと一緒にやった『TIMESLIP 黄金丸』(1993年)あたりから、「じゃあ次は、みっちょん(芳本美代子)とか出ないかな?」なんてやり始めていって。そしたら、うちの劇団が、意外とホスト的な関わり方をするのが得意だってわかってきたんです。

で、「染ちゃんが出たいって言ってるぜ」「呼ぼう呼ぼう」ってなっていって、「いっそ、阿部サダヲとか出ないかな?」っていう考え方に変わっていった。まあ、うちの劇団員が、みんな主役を演るのが嫌いっていうのもあるんですけど。

―それは古田さんも?

古田:そうですよ。主役ってしんどいじゃないですか。出ずっぱりで台詞も多いわけで。なるべくしんどいことはせず、楽しいことだけをしていきたいんですよ。だったら、外から人気者を呼んできて主役にすればいいんじゃないかって。そしたらお客さんも入るし、おいらたちも楽しいでしょ。

こういう集団だっていうことが、ここ20年ぐらいでわかってきたんですよね。出番はなるべく少ないほうがいいけど目立ちたい、楽をして得を取りたいやつばっかりなんです(笑)。

―新感線は舞台経験のない人たちをメインキャストに据えたりもしますが、他の劇団では、あまり例がないことですよね?

古田:それは多分ね、おいら達が楽しいからだと思います。ドラマや映画の俳優さんで舞台経験がない人とか、それこそ声優さんを出したりとか、そういうのが愉快なんでしょう(笑)。

―なるほど。門戸を閉じていくのではなく、むしろ開いていく感じが、40年ものあいだ劇団が続いてきた、何よりの秘訣なのかもしれないですね。

古田:いま思い出したけど、おいらが入った頃は「人さらい劇団」って呼ばれていたんです。他所の劇団のヒーロー候補、ヒロイン候補、当時人気があった、「そとばこまち」とか「劇団M.O.P.」とかに声を掛けて、「お前、空いてるならこいよ」って連れてくるっていう。おいら、その「人さらい」を専門にやっていたんですよね(笑)。

―「人さらい」というと聞こえは悪いですけど、さらわれてきたほうも、まんざらではないというか、リピーター率が非常に高いですよね。

古田:ありがたいことに。さらってきたはいいけど、そのまま逃げていったやつもいっぱいいますけどね(笑)。

「映像の場合、カメラがパンする。でも舞台は、役者の実力によって客の目線をパンさせるもの」

―ちなみに、今回放送されるのは、「ゲキ×シネ」という形で劇場公開もされた、ハイクオリティの舞台映像作品になるわけですが、こうしてしっかりと映像を残しているところも特徴のひとつですよね。

古田:それで言うと、うちの劇団のプロデューサーの細川(展裕)は、先見の明があったのか、そのおかげで、いまもこうして見られるわけですから、本当にえらいですよね。

―映像化を始めた頃はどうだったんですか? 俳優さんによっては、芝居の映像化を嫌がる方も多かったのでは?

古田:そういう人は多いでしょうね。やっぱり演劇はライブじゃなきゃだめで、あとで編集されちゃったら、舞台上でやってる細かい動きとか表情が見えないから。

よく言うのは、映像の場合、カメラがパンするじゃないですか。でも、舞台っていうのは本来、役者の実力で客の目線をパンさせるもの。一方で、アップじゃないと伝わらないようなことを舞台上でやっている人間もいて、それは映像じゃないと楽しめないところもある。だから痛し痒しなんですけど、おいらはどっちもいいなと思いますね。

演劇は「エンタメでもいい」という新しい風を吹き込んだ新感線。後には、ナイロン100℃や大人計画、さらに2.5次元も登場

―こうして劇団の足跡を追っていくと、すごく順風満帆に進んできたように思えますが、40年のあいだには、風当りの強い時期もあったのではないでしょうか?

古田:それはありましたね。特においらなんかは、20代の前半からラジオに出て下ネタばっかり言っていたり、他所の劇団の芝居にホイホイ出たり、テレビでコントをやっていたりしたから、当時の先輩劇団の人たちから、「あいつは本当に節操がない」とか言われていました。

劇団としても、嫌われていた時代はあると思います。あいつらはポリシーがないとか、演劇の意味がわかってないとか。その頃は、エンターテイメントっていう言葉を、演劇に使う人たちがいなかったんですよ。演劇っていうのは、文学であり芸術なんだって言って。

―その風向きが変わったのは、いつ頃だったのでしょう?

古田:それはね、大きいことを言っちゃいますけど、うちの劇団の人気が出てきたからだと思いますよ。おいらの同世代とか下の世代が、「新感線みたいなスタンスでもいいんだ」って思うようになってきたんだと思います。

それまでは、唐十郎、つかこうへい、別役実の時代だったのが、あとには、ケラリーノ(・サンドロヴィッチ)の「劇団健康」「ナイロン100℃」とか、松尾スズキの「大人計画」とかが出てきて、「ナンセンスをやってもいいんだ」ってなっていった。それまではね、演劇っていうのは「文学」だったんですよ。「文学」じゃなくて「漫画」でいいんだっていうことを新感線がやり始めたのは大きかったんじゃないかな。

あと、うちの劇団は、いまだったら『刀剣乱舞』や『パタリロ』が演劇化されていますけど、そういうものの舞台化にも影響を与えたと思うんですよね。

―いわゆる「2.5次元ミュージカル」の先駆けですね。たしかにそうかもしれないです。

古田:まだ「2.5次元」っていう言い方がなかった頃に、新感線は高橋留美子さんの漫画『犬夜叉』を舞台化しているんです。みんな「それアリなんだ?」みたいになってました。これがなければ、(市川)猿之助の「ワンピース歌舞伎」もなかったかもしれないわけで。そこらへんは、おいらたちがこじあけてきた自負はありますね。

40周年にぶつかってしまったコロナ禍。50周年に向けた今後の展望は「小さい劇場で、地声でミュージカルをやるとか」

―記念すべき40周年である今年は、新型コロナの影響によって、さまざまな活動が制限されてしまいました。

古田:今年はライブの人間は、もう振り回されっぱなしでしたよね。だから、いまはできることを地道にやり続けていくしかないと思っています。

いま一緒に芝居(『獣道一直線!!!』)をやっている宮藤(官九郎)もコロナに罹ったり、阿部(サダヲ)もちょっと前に、陽性が出たじゃないですか。身近なところでも実例が出てきているので、全然他人事ではないんです。そんなときに劇団の40周年がぶつかるっていう運のなさも、おいらたちらしいのかもしれないなと。

―興行としても、コロナ禍によって演劇界も大きな打撃を受けていると思います。新たな演劇の形を模索したり、オンラインで配信するケースも増えていますが、古田さんは、何か新しいことを考えていたりしますか?

古田:ここまで長引いたら、何か新しい形を模索しなきゃいけないですよね。でもおいらはやっぱりライブの人間だから、お客さんがいないところでやったときの虚しさを覚えているんです。

シリアスな芝居だったら、まだ配信でも成立するかもしれないけど、お笑いをやっている人間は、お客がいない中で芝居をするって本当に虚しいんですよ。だから、今回の連続放送のように、演劇界がまだ元気だった頃の映像が家で見られるっていうのは、非常にありがたいことだと思っています。それを見てもらいながら、「早くこの世界に帰りたいなあ」とか思ってもらえたら嬉しいですね。

―40周年のアニバーサリーイヤーはこういう形になってしまいましたが、次の10年は、たくさんお客さんを入れた形で派手にできると良いですよね。

古田:おいら、60歳で定年しようかなと思っていて。あと4年なので、50周年にはいないかもしれないですね(笑)。

大きな劇場では十分やってきたし、個人的には、もうちょっとミクロのほうをやりたいと思っていて。小さい劇場で、地声でミュージカルをやるとか、2~3人でしょーもない音楽劇とかできたらいいなって思ってます。

―あれだけ大きな舞台に立ち続けてきたわけですが、小さな劇場で少人数でやることの面白さは何でしょうか?

古田:やっぱり、細かいニュアンスが伝わりますよね。小さいところなら、眉毛をピクッとさせるだけでも、笑いがとれるんです。それはやっぱり、巨大な劇場では難しい。下北の駅前劇場だったら、唇をとんがらかすだけで、クスクス笑い声が聞こえるんですよ。そういう芝居も好きだけど、久しくできていないので。

―大きい箱と、表情まで見えるような小さい劇場――その両方を面白がれるところが、古田さんのすごいところですよね。

古田:どっちも楽しいですから。そうやってどっちもできる立場にいるっていうのは、すごく幸せなことです。

作品情報
ゲキ×シネ『髑髏城の七人~アカドクロ』

2020年11月15日(日)21:00~
作:中島かずき
演出:いのうえひでのり
出演:
古田新太
水野美紀
佐藤仁美
坂井真紀
橋本じゅん
佐藤正宏
山本亨
梶原善 ほか

©ヴィレッヂ・劇団☆新感線

ゲキ×シネ『髑髏城の七人~Season鳥』

チャンネル初
2020年11月22日(日)21:00~
作:中島かずき
演出:いのうえひでのり
出演:
阿部サダヲ
森山未來
早乙女太一
松雪泰子
粟根まこと
福田転球
少路勇介
清水葉月
梶原善
池田成志 ほか

©TBS/ヴィレッヂ

ゲキ×シネ『五右衛門ロック』

2020年12月20日(日)21:00~
作:中島かずき
演出:いのうえひでのり
出演:古田新太
松雪泰子
森山未來
江口洋介
川平慈英
濱田マリ
橋本じゅん
高田聖子
粟根まこと
北大路欣也 ほか

©ヴィレッヂ・劇団☆新感線

ゲキ×シネ『阿修羅城の瞳2003』

2020年12月27日(日)21:00~
作:中島かずき
演出:いのうえひでのり
出演:
市川染五郎(現・松本幸四郎)
天海祐希
夏木マリ
高田聖子
橋本じゅん
小市慢太郎
近藤芳正
伊原剛志 ほか

©ヴィレッヂ・劇団☆新感線

ゲキ×シネ『SHIROH』

2021年1月~放映予定
作:中島かずき
演出:いのうえひでのり
出演:
中川晃教
上川隆也
高橋由美子
杏子
大塚ちひろ(現・大塚千弘)
高田聖子
橋本じゅん
植本潤(現・植本純米)
粟根まこと
吉野圭吾
泉見洋平
池田成志
秋山菜津子
江守徹 ほか

©東宝/ヴィレッヂ

ゲキ×シネ『乱鶯』

2021年1月~放映予定
作:倉持裕
演出:いのうえひでのり
出演:
古田新太
稲森いずみ
大東駿介
清水くるみ
橋本じゅん
高田聖子
粟根まこと
山本 亨
大谷亮介 ほか

©松竹/ヴィレッヂ

プロフィール
古田新太 (ふるた あらた)

1965年、兵庫県生れ。1984年、大阪芸術大学在学中に参加。「劇団☆新感線」の看板役者である。独自の存在感と確かな演技力で、幅広く活躍をしている。出演作としては、映画「ヒノマルソウル∼舞台裏の英雄たち∼」(近日公開)、「空白」(21年公開予定)、ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ ガンバレ人類!新春SP」「小吉の女房2」(21年4月)、「関ジャム完全燃SHOW」レギュラー出演中、舞台 ねずみの三銃士「獣道一直線‼」、YELLOW⚡新感線「月影花之丞大逆転」(21年2月~)、他。



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