BIM、ソロ活動3年を総括。呪縛を振り払って見つけた自分らしさ

2020年、表現活動が足踏み状態になるのを余儀なくされる、あるいは自ら止まることを選んだアーティストが多い中、BIMというラッパーは精力的な動きを見せた。まだあどけなさが残る10代だった2011年に3人組のヒップホップクルー、THE OTOGIBANASHI'S及びその兄弟関係にあたる総合的なクリエイティブチーム、CreativeDrugStoreの中心メンバーとしてデビューし、一躍注目を集めた彼も今年で27歳になった。

至極マイペースに歩んでいたTHE OTOGIBANASHI'Sの季節を経て、BIMがソロ始動したのは2017年。MVを制作した“Bonita”や所属レーベル、SUMMITの先輩であるPUNPEEを客演に迎えた“BUDDY feat. PUNPEE”でフレッシュなポップネスを開放し、2018年7月にリリースした1stアルバム『The Beam』でソロラッパーとしての存在感を示した。

どちらかと言えばTHE OTOGIBANASHI'S時代から多作家というよりは寡作家のイメージがあり、おそらく本人もそれを否定しないだろうがしかし、2020年は2月にミニアルバム『NOT BUSY』、そしてそれからわずか半年後の8月に2ndアルバム『Boston Bag』をリリース。COVID-19の影響でツアーの延期を重ねざるを得ない中、オンラインを含めて印象的なライブパフォーマンスも披露してみせた。

また、BIMにとって2020年はさまざまなアーティストと交わることで自らのラッパーとしてのアイデンティティやリアリティと向き合い、研鑽を積み、そのスキルとクリエイティビティを高めた1年でもあった。自身の作品ではkZm(YENTOWN)、SIRUP、Bose(スチャダラパー)、STUTS、KEIJU(KANDYTOWN)、高城晶平(cero)、Cwondo、No Busesを客演に招き、さらに木村カエラやBES、G.RINAの楽曲に呼ばれヴァースをキックした。

この顔ぶれの多彩さには驚かされると同時に今の彼がいかに高い求心力を誇っているのかがよくわかる。しかし、彼は10代から最近まで長らく同業者やコアなリスナーにラッパーとして認められていないという、ある種の被害妄想も含むコンプレックスを抱えていたという。そんな彼にどのような意識変化が起こり、多くの音楽仲間と交歓しながら活き活きとラップする現在地にたどり着いたのか。その軌跡を語ってもらった。

BIM(ビム)<br>1993年生まれ、東京と神奈川の間出身。THE OTOGIBANASHI'S、CreativeDrugStoreの中心人物として活動。2017年より本格的にソロ活動をスタート。最新作は、2020年8月に発表した2ndアルバム『Boston Bag』。
BIM(ビム)
1993年生まれ、東京と神奈川の間出身。THE OTOGIBANASHI'S、CreativeDrugStoreの中心人物として活動。2017年より本格的にソロ活動をスタート。最新作は、2020年8月に発表した2ndアルバム『Boston Bag』。

G.RINA“WHITE NIGHT feat BIM”を聴く(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く

BIM、2020年の快進撃の理由。周りの目やコンプレックスから解放されて、「こうしなきゃいけない」から「こうしたい」へ

―BIMくんは多作家か寡作家で言ったら後者のイメージがあったんですね。でも、2020年はさまざまなラッパー、シンガー、ビートメイカー、あるいはバンドとも交わりながらミニアルバム『NOT BUSY』とアルバム『Boston Bag』をリリースしたことですごく前進したと思います。『NOT BUSY』のリリースタイミングで話を聞いたときは「次はいつ出すか本当にわからない」と言っていたから、このスピード感は意外でもあって。

BIM:そうですね(笑)。

―何がBIMくんの制作意欲に火をつけたんですか?

BIM:脳で考える進歩というよりも、ラップをするときの運動神経的な筋肉が付いてきたのかなと思っていて。今までだったら「こういうことをラップで言いたい、それを言うためにはこういうフロウでやろう」と着地するまでに時間がかかっていて。

でも、今年になってから「この曲は一度ノリでやってみるか」ってはじめてみたらスルッとそのまま着地までいけることが多くて。そうすると、自然と言いたいことが言えるし、今日の今日、今思ってることを書けるようになって。「これでいいか」というより「これがいい」というラップができるようになったんですよね。

―それができるようになった要因を自己分析できますか?

BIM:1stアルバム(2018年7月にリリースした『The Beam』)をリリースしてから、それまで気にしていた同世代のラッパーやバンドに置いていかれている感じやヘイターの目を気にしていた感じからちょっと解放されて。自分の好きなようにやってもいいんだなって思えたのはありますね。「好きにやっても許されるんだ」という意識が曲を作りやすくなった要因になってると思います。

―ある種のコンプレックスが解消された。

BIM:そうですね。未だに自分より活躍している人を見て「いいな」と思うことはありますけど、曲を作ってるときは一切そういうことを気にしなくなったかもしれない。

特に『NOT BUSY』を作ってからそうなれたように思います。「こう思われるからやめておこう」じゃなくて、「こういうふうにラップしたらこう思われるかもしれないけど、まあいいか」って思考になった。そのときパッと出てきた言葉を曲にしても取り返しのつかないことになるわけではないし。

たとえ誰によく思われても、悪く思われても、それでいいっていう。別の曲でこういうことをラップしたから、こういうことをラップしなきゃいけないわけでもないし、今まで言ってきたことと真逆のことを言っちゃっても、今の自分が本当にそう思ってるならそれでいいかなって。

BIM“Wink”を聴く(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く

BIMのラップにブレーキをかけていた「ナメられるのはイヤだ」という感情

―アウトプットの仕方が、本当の意味でラッパー然としたものになったのかもしれないですよね。

BIM:逆に前のほうが「ラッパーにならなきゃいけない」って気持ちがあったんですよ。

―コンプレックスを抱えていたがゆえに?

BIM:うん。こうでなきゃいけないとか、ナメられるのはイヤだみたいな感情は前のほうが強かった。今年は特にいろんな人と曲を作ったことによってそういう自分を縛っていたものが解けたというか。

たとえば『The Beam』のときにPUNPEEくんと“BUDDY feat. PUNPEE”を一緒に作らせてもらってときは、PUNPEEくんが俺に合わせてくれる感覚があった。

BIM“BUDDY feat. PUNPEE”を聴く(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く

BIM:でも、やっぱりkZmは同い年だし、なんなら彼より俺のほうが先にラップをはじめていて。あいつと素の状態で、1対1で、ぶつかり稽古のように曲を作ってるときに「こいつ、俺よりずっと自由だな」って思ったんですよね。その日の朝に書いてきたラップをレコーディングして、それが世に出るということに全然ビビってなかった。俺もそれができるようになりたいと思ったんですよね。

KID FRESINOら同世代のラッパーにバリアを張っていた過去の心情を明かす。自己評価を覆す形で多くの人に届いた“Bonita”がひとつの転機に

―『NOT BUSY』のタイミングでインタビューしたときにBIMくんが「数年前までkZm氏とかKID FRESINO氏に対し嫉妬していたし、それゆえに彼らのことを嫌ってもいた」と言っていたのが意外でもあったんですよ。BIMくんがTHE OTOGIBANASHI'S(以下、オトギ)として活動していたときにそんな負の感情を抱いていたんだって。

BIM:「あいつが嫌い」って言うことでバリアを張っていたというか。あっちが俺のことをどう思っているかわからないし、それが怖かったんですよね。もしあいつらが当時の俺の活動を好意的に思ってなかったとしても「こっちもそうだから」って感じでバリアを張っていたんです。

BIM“One Love feat. kZm”を聴く(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く

―自分を守るための予防線を。

BIM:そう。前に佐々木(KID FRESINO)と飲んだときに「知り合ってから長いけど、やっとこうして2人で飲む感じになったね」って言われたんですけど。そのとき佐々木に「“Bonita”を出してから一皮剥けたんじゃない?」って言われてハッとして。「ああ、そうかもしれない」と思ったんですよね。周りに認められてないことによってバリアを張ってたけど、俺の中ではあの曲でかなり変わったんだと思います。

―自己肯定感がでてきた。

BIM:自信が付いたことでだんだん人と話してる感じで歌詞を書けるようになってきたし、そっちのほうがラクだし、変な話、そっちのほうが人気も出るんじゃないかと思ったんですね。

―ソロを始動したときは、オトギとは違うアプローチをするという自分に課したところがあったんですか?

BIM:う~ん、まずは人気になりたいというのがめちゃめちゃありましたね。わかりやすく言うと、売れたいと思ってたんですけど、それこそ“Bonita”のころはまだよくわかってなかったです。

Reebokが協賛に付いてくれてミュージックビデオを撮れるってなったとき、レンくん(SUMMITのBIM担当のマネージャー&ディレクター)に「俺、MV撮るなら“Bonita”じゃないと思いますよ」って言ったら、「いや、絶対にこれ」って言われて。当時、俺は「売れなくても知らないですよ」って思ってましたから。

でも、実際にMVを撮ったら「たしかにこれだった!」って思った。本当に何がポップなのか自分ではよくわからないんですよね(笑)。レンくんに「これ、ポップじゃね?」って聞いたら「全然ポップじゃない」って言われることもよくあるし。

プロデュースはCreativeDrugStoreのメンバーでもあるVaVa / BIM“Bonita”を聴く(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く

―“Bonita”がソロ名義発表した最初の楽曲だったと思うんですが、こうやって振り返ってみるとBIMくんにとって大きな転機となった1曲ですよね。

BIM:KEIJUくんも“Bonita”出たときに「あの曲、リミックスしたいくらい本当に好きだわ」ってわざわざ連絡をくださったんですよね。正直、KEIJUくんもオトギのことにいい感情を持ってなかったと思うんです。だけど、KEIJUくんがそういうふうに言ってくれたから、「じゃあ俺も言わせてもらいますけど、めっちゃ好きです」みたいな感じで(笑)。だから『Boston Bag』の“Jealous feat. KEIJU”でKEIJUくんと一緒にやれたのは大きかったです。

BIM“Jealous feat. KEIJU”を聴く(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く

かつて抱いていた嫉妬の気持ちも隠さない。不貞腐れていた20代前半の記憶

―KEIJU氏との曲は「Jealous(=嫉妬)」っていうタイトルで。

BIM:それこそ昔はKANDYTOWNとかFla$hBackS(JJJ、Febb、KID FRESINOによるヒップホップユニット)、そのあとに出てきたkiLLa crew(YDIZZYをはじめとするラッパー、DJ、ビートメイカー、デザイナー、空間デザイナーを含む9名で構成される渋谷を中心に結成されたヒップホップクルー)とかに嫉妬してましたから。あっちはクラブのイベントがあって、俺らは別のところのイベントに呼ばれるみたいなことで不貞腐れていたときもあったし。

―ああ、なるほど。自分たちは枠の外にいるラッパーなんだ、みたいな。

BIM:言い方はよくないけど、ヒップホップ畑の人間としてコンプレックスがあったんですよね。「別の界隈にしかおまえらは受け入れられねえのか」って言われてるような被害妄想を勝手に抱いていて。今考えたらバンドのイベントに呼ばれるのもすごく幸せなことなんだけど、当時は恥ずかしさもあったんですよね。

オトギで『フジロック』の「ROOKIE A GO-GO」に決まったとき(2013年)もめちゃめちゃうれしかったですけど、それと同時に少しは「あ、やっぱり俺たちはそういう感じか」って気持ちもあった。本当にめちゃめちゃうれしかったし、みんなに「すげえじゃん!」って言われてブチ上がったけど、別の畑に属してると思われるのではなくて、ヒップホップのほうで評価されたいという願望があって。

―でも、KANDYTOWNはレイジくん(オカモトレイジ)繋がりなどで距離は遠くないと思ってた。

BIM:いや、全然入り込めてはなかったです。面識はあったし、会ったときもみんな優しいですけど、結局ラッパーとラッパーの関係ってレイジくんが紹介してくれたからとかは関係なく、お互いがどういう活動をしてるかって話になってくるから。

この喩えがあってるかはわからないですけど、帰宅部の人から見たサッカー部の集団がいて、そこでワチャワチャ楽しんでる人たちに入れないみたいなコンプレックスがあったんですよね。それを俺のほうが過剰に気にしてました。

余裕でクールなBIMを作りあげていたソロ以前の葛藤と、偉大な先輩たちと音楽をできるようになって気づいたこと

―あらためて、オトギのときにナメられたくないと強く思っていたということは、ナメられてるという実感があったからですよね。

BIM:そう感じることが多かったですね。ライブ中にフロアにいるゴリゴリの格好をしてるやつから中指を立てられたり。

―ああ……。

BIM:当時、中指を立ててるやつに対して「俺はおまえよりヒップホップを聴いてるけどな」って感情はあったんですよ。あとは「おまえがしてるような服装はとっくに経ての今だから!」とか。

BIM:そういう感覚を保つためにどんどん内省的な武装をしていた感じですね。「俺だってヒップホップ好きだから認めてほしい」みたいな。でも、「おまえなんかヒップホップじゃねえ」って言われる理由もわかるし。それがなおさらイヤだったんでしょうね。

―前にも言ったけど、オトギはどこかヴェイパーウェイブのような霧がかかった音楽性と、CreativeDrugStoreのクルーとしての存在感も含めて、ある意味では冷淡なムードが武器でもあったと思うんですよ。ヘイターに対してリアクションするキャラクターでもないと思うし。

BIM:そこの攻防戦はありましたよね。でも正直、オトギのときは「いいね」って言ってくれる人たちの言葉なんて一切耳に入ってこなかったですね。むしろ嫌いって言ってる人の意見を自分から探しにいくくらい、否定的な声が気になってしょうがなかったですね。今でもイヤですけど、そんなに気にならなくなりました。

―何度も言うようだけど、当時のBIMくんがそういう感じだったのも本当に意外で。余裕でクールにやってるヤングボーイというイメージだったから(笑)。

BIM:そういう葛藤は隠していたんじゃないですかね。余裕でやってる人に憧れていたし。でも、偉大な先輩と実際に接してわかるのは「俺は余裕」って存在感を自分で出そうと思ってもできないってことですね。

簡単にやってそうで、全然できない。なんならそういう先輩のほうがハーコー(ハードコアの意味)だなって思う。音楽をやるうえで、ずっと「のほほん」としながら最前線にいられるわけないよなって。そういうことにやっと気づきましたね。

BIM“Be feat. Bose”を聴く(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く

「人間としてダメなやつのほうが曲はカッコよかったり面白かったりする可能性もあるし、その逆もあると思う。だからこそ、自分のダメな部分を隠す必要はない」

―最初にも話してくれたけど、周りにどう思われるかを考えすぎていたところから解放されて、今の自分を臆せず出せるようになったのは本当に大きかったんですね。

BIM:そうですね。それで言うと、kZmには本当に感謝していて。たとえばレンくんとか、オトギのときだったら増田さん(SUMMITのレーベルオーナー)にも「BIMちゃん、もっと素を出したほうがいいよ」って言われていたけど、自分の中で2人は歳も離れてるし、「年上の人に言われたから」という理由で逃げられる。

でも、kZmみたいにタメのやつに「おまえ、マジでその普段の感じを曲に出せよ。絶対に面白いから」って言われたときに「おまえがそう思うんだったら、そうしよう」って思えたんです。地元の友だちみたいな感じだから。

―kZm氏は同志でもあると思うんですが、友だちのような距離感からの言葉はまた違いますよね。

BIM:別の友だちとも「人間としてカッコいい人とカッコよくない人が自分をさらけ出してバン! って曲を作ったときに、どっちが曲としてカッコいいかはわからない」って話になったんですよ。人間としてダメなやつのほうが曲はカッコよかったり面白かったりする可能性もあるし、その逆もあると思う。だからこそ、自分のダメな部分を隠す必要はないなと思って。

もちろん、人としてはカッコいいほうがいいですけど(笑)、ラッパーとして見たときに欠点を歌うことはやりたくなったらやればいいし、やりたくなかったらやらなくてもいい。本当にどんなことをラップしてもいいし、どんなやつでもカッコよくなれるということにやっと気づいたんですよね。

―それこそがラッパーのリアルであると。

BIM:そうですね。それがソロで曲を作るときのいいところかなって。

嫉妬や周りの目との闘い、葛藤を乗り越えて、ラップをする理由に変化が

―ラッパーって、特に同じワードを吐いたときに説得力の違いが顕著に出るじゃないですか。誰がその言葉を吐くかによってすごくシリアスに聴こえるときもあるし、ユーモラスに聴こえるときもある。そのリアリティこそがラッパーの説得力だと思うんですけど。

BIM:説得力を持たせるために人間力を上げていくことは生きるうえでみんなやることで。たとえば友だちと飲みに行って「あのとき酔っ払って俺はああいう言い方をしたけど、ちょっと違ったかな」って思ったり、人間力ってそうやって日々トライ&エラーを繰り返しながら上げていくものだと思うんですね。

そういう意味でも曲を作るときに今の時点の自分を、自分の言葉でラップすることが説得力に繋がると思う。だから、自分も人間的にはどうあれ27歳の今しか出せない説得力があると思うんですよ。22歳のときや35歳のときとは違う説得力が。それをどうやって出せるかということと向き合うのが今は楽しいですね。腹が立つこともありますけどね。

―どういうときに?

BIM:ワンヴァースに3、4時間かけても全然よくならないときとか自分に腹が立ちますね。曲を作るたびに毎回「俺、やっぱり向いてないんだ」って思うけど、曲ができたときは「向いてないと思ったことはなしにしよう」ってなる(笑)。

BIM“Veranda”を聴く(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く

―2017年にソロを始動したときは今のような思考になるとは思ってなかった?

BIM:「なんのためにラップをしてるか?」って理由がちょっと変わってきたかもしれないですね。グループのときは認めてほしいという欲求がデカかったし、ナメられたくないという思いがすごくあったから。さっきも言ったように今もそれはあるけど、曲を作るときの一番の理由がそれではなくなった。

もうちょっと自己中になったし、俺自身がファンでいるアーティストがリスナーにすり寄ってきたら、俺はたぶんそのアーティストを好きじゃなくなるから。俺はリスナーとしても、そのアーティストが好きなように音楽をやってるところを見て憧れたい。それなら俺もそうしたほうがいいから。それで嫌いになられちゃったらその人とは縁がなかったということだし。

おじいちゃんになったときにも「ラップやっててよかったな」と胸を張って言いたいから――ちゃんと人気者になりたいというBIMの野望

―同世代から先輩、木村カエラさんのような憧れの人まで、本当にいろいろな人と交わりながら、いろんな気づきを得た2020年だったんだろうなとお話を聞いてて強く感じました。

BIM:本当にそうですね。カエラちゃんと仕事ができたのも本当にデカかったですね。俺、ファンクラブに入ってたので(笑)。

木村カエラ“ZIG ZAG feat. BIM”を聴く(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く

BIM:去年から今年にかけてRYO-Zさん、BESさん、Boseさん、kZm、STUTSくん、KEIJUくん、No Buses、ceroの高城(晶平)くん、今度客演したクリスマスソングが出るG.RINAさん、カエラちゃん……なんでこんなにいろんな人と一緒に曲を作れたのか自分でも意味不明ですね(笑)。

―オトギ時代のエピソードを鑑みると感慨深いですよね。

BIM:そうですね。BESさんからオファーをいただいたときも「ラップやっててよかった」と思いましたもん。「嘘でしょ?」とも思ったし。レンくんは俺がBESさんのことめっちゃ好きなことを知ってたから、「レンくん、そういう嘘は本当に大丈夫だから」「本当に本当だよ」みたいなやり取りもして(笑)。

俺が通っていたTSUTAYAがキラリデッキという場所にあるんですけど、それもあって『NOT BUSY』の“KIRARI Deck”という曲では、そこでBESさんを知ったときのことを書いたりして。本当にBESさんに誘ってもらえたのはブチ上がったし、ラッパーになった自分が報われたタイミングでしたね。

BES“Make so happy”を聴く(Apple Musicはこちら

BIM“KIRARI Deck”を聴く(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く

―ちょっと言い方が難しいけど、今年、ここまでいい1年だったと実感してるアーティストは少ないと思うんですよ。

BIM:そうなんですよね。元気ない人がいっぱいいるけど、俺はすごく元気で(笑)。

―いいことだと思う。でも、どこかで食らっていたってあとで気づくかもしれないしね。

BIM:そうかもしれないですよね。1年後、2年後に2020年を振り返ったときに。今年はコロナもあって「いい年でした」ってなかなか言いにくし、実際にイヤなことがあったとしても俺の場合は本当にいいことのほうが多かったから。イヤなことの上に「カエラちゃんに会えた」っていうタルタルソースがかかっちゃってるから、やっぱりいい印象のほうが大きくなっちゃいますよね(笑)。

―2021年に向けてのビジョンはありますか?

BIM:ちょうど昨日、洗濯物を畳みながらちゃんとコンセプトのあるアルバムを作ってみたいって思ったんです。2作連続で日記のような作品を作ったから。ふと、コンセプチュアルに自分がワクワクするための曲を作りたいなと思いました。

BIM:でも、俺は気持ちがコロコロ変わるので、「12月9日現在」って書いておいてください(笑)。さっきの話の続きで言うと、ラッパーって不思議なのは普通に生きていくうえではもちろんハッピーなほうがいいんだけど、歌詞を書くことを考えるとイヤなことや腹が立つことがあったほうがいいなと思ったりもするので(笑)。

―こちらとしてもさらに大きなフィールドに立つBIMくんを見てみたいと思います。

BIM:ラップをやってる人間としては、やっぱりKREVAさんみたいなヒーローになるのは夢だなって思います。俺はKREVAさんに直接お会いしたことはないですけど、VaVaくんやPUNPEEくんから聞くと「ヒーローだった」って言うし。あと、今は活動してないけどRIP SLYMEのような大きな存在感を得てみたいですね。

ラップで家を建てたいし、いい車にも乗りたい。「ラップやっててよかったな」っておじさんになったときに思いたいですからね。そこからさらにおじいちゃんになったときに「俺は売れなかったけど、ラップやってたときはカッコよかったからいいんだ」ってなってたら「ちょっと待て! それは違う」って思いそうだし。だから「のほほん」とやらせていただきたいと思います。

―さっきと言ってること変わってますね(笑)。

BIM『Boston Bag』を聴く(Apple Musicはこちら

BIM『NOT BUSY』を聴く(Apple Musicはこちら

リリース情報
BIM
『Boston Bag』

2020年8月28日(金)配信
SMMT-153

1. Get Gas (Hey You Guys) [Prod. by Rascal]
2. Veranda [Prod. by STUTS]
3. 三日坊主 [Prod. by Rascal]
4. One Love feat. kZm [Prod. by G.RINA]
5. Jealous feat. KEIJU [Prod. by Rascal]
6. Cushion [Prod. by Astronote]
7. 想定内 [Prod. by STUTS]
8. Tokyo Motion feat. 高城晶平 [Prod. by STUTS]
9. Good Days feat. Cwondo[Prod. by Cwondo]
10. Time Limit [Prod. by 熊井吾郎]
11. Non Fiction feat. No Buses [Prod. by No Buses]

BIM
『NOT BUSY』

2020年2月12日(水)配信
SMMT-137

1. Wink
2. Runnin' feat. kZm, SIRUP
3. Yammy, I got it
4. KIRARI Deck
5. Be feat. Bose
6. WANTED

プロフィール
BIM
BIM (ビム)

1993年生まれ、東京と神奈川の間出身。THE OTOGIBANASHI'S、CreativeDrugStoreの中心人物として活動。グループとして『TOY BOX』(2012年)、『BUSINESS CLASS』(2015年)の2枚のアルバムをリリース。2017年より本格的にソロ活動をスタート。2018年7月、初のソロアルバム『The Beam』を発表。2019年、ワンマンライブ『Magical Resort』を東京、大阪にて開催。同年、SIRUPとの“Slow Dance”、STUTS, RYO-Zとの“マジックアワー”が発表され、シングル“Veranda”をリリース。2020年2月にミニアルバム『NOT BUSY』リリース。3月には木村カエラのアルバムタイトル曲"ZIG ZAG"にプロデュース、客演で参加した。7月には赤坂BLITZにて無観客配信ライブ『Bye Bye, BLITZ』を開催し、8月に2ndアルバム『Boston Bag』を発表。



フィードバック 4

新たな発見や感動を得ることはできましたか?

  • HOME
  • Music
  • BIM、ソロ活動3年を総括。呪縛を振り払って見つけた自分らしさ

Special Feature

Crossing??

CINRAメディア20周年を節目に考える、カルチャーシーンの「これまで」と「これから」。過去と未来の「交差点」、そしてカルチャーとソーシャルの「交差点」に立ち、これまでの20年を振り返りながら、未来をよりよくしていくために何ができるのか?

詳しくみる

JOB

これからの企業を彩る9つのバッヂ認証システム

グリーンカンパニー

グリーンカンパニーについて
グリーンカンパニーについて