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音楽プロデューサー木崎賢治が、成功や失敗で気づいた仕事の流儀

音楽プロデューサー木崎賢治が、成功や失敗で気づいた仕事の流儀

木﨑賢治『プロデュースの基本』
インタビュー・テキスト・編集
黒田隆憲
撮影:山口こすも
2020/12/25

沢田研二や山下久美子、BUMP OF CHICKENらを手掛けてきた音楽プロデューサーの木﨑賢治が、そのメソッドを綴った著書『プロデュースの基本』を上梓した。

本書には、自身がこれまで手がけてきた様々なアーティストとの具体的エピソードを挙げながら、ものづくりの楽しさ、クリエイティブを磨く方法、プロデュースのノウハウなどが紹介されている。「アーティストが持つ特徴を活かしながら、よりみんなが分かりやすいスタイルに変換する」という彼のプロデューススタイルは、音楽の現場だけでなく様々な職種、人間関係などにも活用できるコミュニケーション術とも呼べるものだ。

今回CINRA.NETでは、著書『プロデュースの基本』を紐解きながらものづくりにおける発想法、プロデュースに対する哲学、クリエイティブなライフスタイルの送り方について伺いつつ、彼が今構想中の「新人発掘オーディション」への意気込みも語ってもらった。

「感情」というものは、数学的なアプローチを突き詰めた先にある気がするんですよ。

―著書『プロデュースの基本』によれば、木﨑さんのクリエイティブは、何かを見て「いいな」から「作りたいな」に変わり、「どうなっている?」と構造を調べ、実際に「作ってみる」というプロセスが基本だそうですね。

木﨑:好きなものは色々ありますが、「作ってみたい」とまで思うものはあまりないんです。例えば洋服は好きだけど、着るだけで「作りたい」とは思わなかった。でも音楽は「作りたい」と思えたんですね。そうすると「この曲は一体どうなっているのだろう?」と仕組みが知りたくなるんです。それでまず調べたのがコード進行。和音の響きやその進み方が情緒を生み出すことが分かってくると、今度はそれを使って自分でも作ってみたくなったんです。

木﨑賢治(きさき けんじ)<br>音楽プロデューサー。1946年、東京都生まれ。東京外国語大学フランス語学科卒業。渡辺音楽出版で、アグネス・チャン、沢田研二、山下久美子、大澤誉志幸、吉川晃司などの制作を手がけ、独立。その後、槇原敬之、トライセラトップス、BUMP OF CHICKENなどのプロデュースをし、数多くのヒット曲を生み出す。ブリッジ代表取締役。銀色夏生との共著に『ものを作るということ』(角川文庫)がある。
木﨑賢治(きさき けんじ)
音楽プロデューサー。1946年、東京都生まれ。東京外国語大学フランス語学科卒業。渡辺音楽出版で、アグネス・チャン、沢田研二、山下久美子、大澤誉志幸、吉川晃司などの制作を手がけ、独立。その後、槇原敬之、トライセラトップス、BUMP OF CHICKENなどのプロデュースをし、数多くのヒット曲を生み出す。ブリッジ代表取締役。銀色夏生との共著に『ものを作るということ』(角川文庫)がある。

―何かを作るためには、その構造を知ることはとても大切ですよね。

木﨑:例えば、The Beatlesもそうやって曲を作っていました。彼らはモータウンの音楽が好きで、その構造を調べるところから始まった。すべてのクリエイティブは模倣から始まると僕は思っています。野球でもそう。「野茂みたいに投げたい」と思ったら、どんなフォームなのか研究してまずは真似てみる。そこから少しずつ自分に合った、独自の投げ方を見つけていくわけじゃないですか。きっと野茂投手も、そうやって誰かの模倣から自分の投げ方を見つけていったのだろうしね。

―模倣したものに独自の要素を取り入れていく、つまり「組み合わせ」からオリジナルが生まれるということですね。

木﨑:全く新しいオリジナルなものなんてなくて、ほとんどのものは組み合わせによって生み出されていると僕は思っています。僕は以前、sacaiの服が好きでよく着ていたのだけど、異素材を組み合わせたアイテムが色々あってすごくユニークなんですよ。音楽もそうじゃないですか。そもそもジャズは、アフリカ系アメリカ人が西洋楽器を演奏したことから始まっているし、ロックンロールもリズム・アンド・ブルースやゴスペルが、カントリー・アンド・ウェスタンやブルーグラスと組み合わさることで生まれた音楽ですからね。

―それこそThe Beatlesも、ロックンロールにジャズやクラシック、インド音楽などを組み合わせながらポップミュージックとして進化していきました。

木﨑:彼らが意識してそういう融合を行なっていたのか、無意識だったからこそ型破りなことができたのか、詳しい事は分からない。けれどもそういう組み合わせによって、今まで誰も聴いたことのなかったサウンドを生み出していたのは事実です。それはThe Beatles以降もずっと続いてきました。ベックが登場した時も、僕は「ヒップホップとボブ・ディランの組み合わせだな」と思いましたしね。

木﨑賢治

木﨑:普通ではあり得ないもの同士が結びついて、全く新しいものが生まれる。人間だって水分とアミノ酸でできていますからね(笑)。それって突き詰めると元素にまで行き着くなと思ったんですよ。全ての物質は元素から成り立っており、例えば水(H2O)は水素(H)と酸素(O)が結びついて生まれるわけじゃないですか。

―文字どおり「化学反応」が起きたわけですよね。そう考えていくと、クリエイティブは数学的でもあるなと思います。

木﨑:そう、音楽も絵画も数学的ですよね。「この絵画は何色が何パーセント入っていて、何色が何パーセント入っている」みたいに解析できる。冬になると明度が低い色の服を着たくなり、夏はその逆だったりするのは、その時の気持ちに近い色を求めているのかもしれません。つまり「感情」というものは、数学的なアプローチを突き詰めた先にある気がするんですよ。

先日お亡くなりになった筒美京平さんとお仕事をした時に思ったのもそれ。彼の曲の作り方は、すごく数学的だなと。数学を突き詰めると感情になるのかな、と筒美さんと仕事をしていて強く感じました。

―構造を調べると、それがどういいのか、なぜいいのかが説明できる。説明できると、より多くの人に興味を持ってもらえるとも著書で書かれていましたね。

木﨑:日本人は「みんな同じように考えているだろう」という思い込みがあるせいか、説明するのが苦手な人が多い印象があります。「これ、かっこいいよね」「うん、かっこいいね」で会話が成り立ってしまう。僕の従兄弟はLAで生まれ育ち、大学へ行って一番大変だったのは友達選びだと言っていました。LAにはいろんな国から人が集まっており、物事を理解する前提条件がそれぞれ違うので、ちゃんと説明する力が必要なんです。

―確かに欧米の人たちは、自分の気持ちや好きなものについてロジカルに説明できる人が多い印象があります。

木﨑:子供を叱る時も、なぜ叱るのか、何がダメなのかをちゃんと説明している。「ダメって言ったらダメなの!」なんて叱り方をしているのは、日本だけかもしれないですよね。(笑)。

木﨑賢治

木﨑:英語はロジカルに説明するのに適した言語であることも大きいかもしれないですね、理路整然と説明しやすいというか。日本語は主語や述語も曖昧で、主語が全くなくても会話が成立してしまう。そういうコミュニケーションの良さもあると思いますが、すごく単一的に感じる時もあります。

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書籍情報

『プロデュースの基本』
『プロデュースの基本』

2020年12月7日(月)発売
著者:木﨑賢治
価格:968円(税込)
発行:集英社インターナショナル
ISBN:978-4-7976-8062-1
C0295 新書判 256頁

プロフィール

木﨑賢治(きさき けんじ)

音楽プロデューサー。1946年、東京都生まれ。東京外国語大学フランス語学科卒業。渡辺音楽出版で、アグネス・チャン、沢田研二、山下久美子、大澤誉志幸、吉川晃司などの制作を手がけ、独立。その後、槇原敬之、トライセラトップス、BUMP OF CHICKENなどのプロデュースをし、数多くのヒット曲を生み出す。ブリッジ代表取締役。銀色夏生との共著に『ものを作るということ』(角川文庫)がある。

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