
ラッパーはただただ自己を肯定する。だから、他人からの共感は必ずしも必要がない
―店で出くわして「スカしてたのに来てんじゃん!」みたいな(笑)。
Campanella:しかも自分もいるっていう(笑)。身近な人は、タイトルからその絶妙な感じをわかってくれると思うんですよ。
―それを「外」に向けたアルバムタイトルにしたのはなぜなんでしょう。
Campanella:ピエスタは俺の地元で、アムルはその地元から名古屋に向かう途中にあるんですよ。次のアルバムのタイトルを名古屋のどこかにするかどうかはわからないんですけど、今はちょっとずつ名古屋に近づいている状態(笑)。
―近づいた先になにがあるかは……?
Campanella:そこはまだちょっとわかんないですけどね(笑)。でも、アムルはそういう絶妙な場所なんですよ。
―コロナ禍でも積極的に各地でパフォーマンスをされていますが、どんなことを感じていますか。
Campanella:改めてクラブという場所と「向き合った」というか。当たり前にあったところがなくなってしまう可能性を、自粛期間中はちょっと想像してしまったんですよね。いつもなら、そこにいったらずっと音が鳴っていたり、好きな友だちと会えたりするような……そういう場所って当たり前に捉えすぎてしまっていたな、って。久しぶりにクラブにいったとき、あの大きな音を聴いて、「ああ、この爆音のおかげで健康でいられたんだな」という気がしました。
―アルバム制作にあたって、現在の状況のことは考えましたか?
Campanella:曲自体はコロナの前に作ったものも多いんですけど、曲を並べていくときに、最近の空気感をストーリーとして考えはしました。だんだんよくなっていくといいな、って。
―“SUMIYOI feat. 鎮座DOPENESS, JJJ”や“Think Free feat. 中納良恵”といった明るいテイストの曲が、アルバムの後半に並んでいるのは印象的です。
Campanella:自分によくしてくれている先輩がアルバムを聴いて、アウトロが終わった余韻まで、まるで1本の映画みたいだったと言ってくれたんです。自分も、起承転結とまでは言わないですけど、「よくなっていく」ストーリーは考えていましたね。
Campanella“Think Free feat. 中納良恵”MV
―アルバムのラストソング“PEARE”で、<ラッパー独特の話し方 これもlyricsあれもlyrics>という1節があります。さまざまな表現手段がある中で、ここまで触れてきたような世界観を形にする「ラッパー独特の話し方」ってどういうものなんでしょう。
Campanella:さっきのフッド愛や、共感しなくていいという話につながるんですけど、聴いている人がどう思うかにかかわらず、自信を持って「俺たちの地元はヤバいんだぜ」って歌う、あれもひとつの「ラッパーの話し方」という気がするんですよね。
「金稼いでるんだぜ」というのもそう。自分は作らないタイプの歌詞だけど、でもラッパーがそれを声を大にして歌っているのって、すっごい好きなんです。基本的に自己を肯定するんですよね、ラッパーは。
―自己肯定している人たちがたくさん、並列に、一緒にいる音楽なんですね。
Campanella:そうそう。だから、このスタイルがヤバいとか、俺はあれが好きでこれが嫌いということを歌って、それをみんなに共感しろというのも、ちょっと違うじゃないですか。その気持ちが強くなりすぎると、ラッパーがステージの上から説教しているみたいになるし、聴いているこっちも「知らねえよ」「うるせえよ」ってなってくる(笑)。でも、どこかの言葉に引っかかってくれて共感してくれたら、それはすごく嬉しいんです。だから俺も、「ついてこい」とまでは言わないんですけど、「アゲてこう」ぐらいまでは言うんですよ。
―そこのラインまでは歌う、と。ドライでいながらウェットなCampanellaさんの感覚がわかってきました(笑)。
Campanella:ハハハハハ、伝わりました? 「アゲていこう」とは思うし、このアルバムを聴いて頑張ろうと思ってくれたら、嬉しいですよね。
Campanella『AMULUE』を聴く(Apple Musicはこちら)
―今回は4年ぶりのフルアルバムでしたけど、次作もこれぐらいのペースで作るんですか?
Campanella:いや、もっと早く……と思っております。4年はさすがに長かったッス(笑)。ライブもできるだけやって、制作して……なんとなくやりたいなと思っていることは自分の中にあるので、それを形にできたらな、って。
―少しだけ、その「なんとなく」のところを伺えますか。
Campanella:いろんなところでライブをやらせてもらっていると、楽器を演奏する人と出会うことが多くて。何回かセッションもやらせてもらってきたんですよ。ああいうのを、もっと自分の中で形にできたらいいですね。修行でもないけど、そういう人たちと一緒にやって、勉強したいなって。
―それって、どういう「勉強」なんでしょうか。
Campanella:稽古をしてライブをして、ということからもっと「自由」になるというか。たとえばジャズマンとかだと、1曲やって、次の曲をやって、ということではない自由度の高さがあるじゃないですか。周りにいるそういう人たちと一緒に、もっと深くやってみたい。そうしたら、また全然違う景色が見えるかもしれないから。いっぱいセッションをして、いっぱいラップをして……誰かがドラムを叩いたら、誰かがギターやベースを入れてきたら、その感覚と一緒に楽器としてラップができるような、そんな自由なラップを勉強してみたいんです。
リリース情報

- Campanella
『AMULUE』初回生産限定盤(CD) -
2020年12月23日(水)発売
価格:3,850円(税込)
DDCB-121151. AMULUE
2. Bell Bottom
3. Douglas Fir
4. Next Phase
5. Hana Dyson
6. Freeze
7. Minstrel feat. ERA
8. SUMIYOI feat. 鎮座DOPENESS, JJJ
9. Think Free feat. 中納良恵
10. Palo Santo
11. PEARE
プロフィール

- Campanella(カンパネルラ)
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1987年生まれ、愛知県小牧市出身のラッパー。名前は宮沢賢治の小説『銀河鉄道の夜』の登場人物に由来。愛称は「CAMPY」。2011年、RCSLUM RECORDINGSのV.A.『the method』に参加。その後、C.O.S.A.とのユニットである「コサパネルラ」名義の作品、フリーミックステープ、CAMPANELLA & TOSHI MAMUSHI名義の作品などを立て続けにリリース。1stアルバム『vivid』(2014年)、2ndアルバム『PEASTA』(2016年)。2020年12月に3rdアルバム『AMULUE』がリリースされた。