インタビュー

GEZANマヒト×Essential Store田上 人を繋ぐ「モノ」の力

GEZANマヒト×Essential Store田上 人を繋ぐ「モノ」の力

テキスト・編集
矢島大地
撮影:水谷太郎

GEZAN・マヒトゥ・ザ・ピーポーによる対談連載、『闘争』。第2弾は、大阪市福島区で古道具、アンティークを扱う「Essential Store」のオーナー・田上拓哉を迎える。居場所、行き場所、還る場所までがあっという間に奪われ、生きる実感の在処に混迷し続けた2020年。精神的にも物理的にもあらゆるものの距離感が離れてしまったコロナ以降の状況下にあって、「モノ」(=人の息遣いを宿すもの)を手にすることから生まれる感動、衝撃を見つめ直したとマヒトは語る。自粛と隔離の中で改めて生まれた、人との出会いへの渇望。そしてカルロス尾崎の脱退を発表したGEZAN自身が、次なる時代をともに生きる人との出会いを望んでいる。異物の一つひとつに唯一の価値をつけ、それぞれのストーリーを仲介していく田上との会話を通して「出会い」へのヒントを得たいと願い、実現したのがこの対談だ。

1月13日から25日まで渋谷ヒカリエで開催された、21回目となる『Silent Auction 21』は、田上とEssential Storeの哲学の核心とも言える催しだった。ずらりと並んだモノ、モノ、モノ……用途も、生まれてきた理由もわからない異物達だからこそ、それを作り上げた人の生きた跡に想いを馳せ、自分の生活の景色へ持ち帰った時のこともまた想像する。「わからない」の奥にある面白さと、自分以外の存在に向き合う時間を生むことにこそ、このオークションの狙いがあった。

どんな存在にも、その存在だけの価値がある。言葉にすればたったそれだけだが、自分の人生すら情報の一部になって流れていくばかりの今日に忘れてしまいがちな「生きた実感」を失わないための語録がここにある。

コロナ以降の実体のない日々の中で、モノと自分の関係を考え直すことが増えた。異物がそこに存在していること、「なんだこれ!」っていう衝撃を受けることで、自分が存在していることもまた実感できるんだよなって。(マヒト)

マヒトゥ・ザ・ピーポー<br>2009年、GEZANを大阪にて結成。バンドのボーカル・作詞作曲を担う。自主レーベル「十三月」を主宰し、野外フェス『全感覚祭』も開催。2018年に『Silence Will Speak』をリリースし、2019年6月には、同作のレコーディングのために訪れたアメリカでのツアーを追ったドキュメンタリー映画『Tribe Called Discord:Documentary of GEZAN』が公開された。2019年10月に開催予定だった主宰フェス『全感覚祭』東京編は台風直撃の影響で中止となったが、中止発表から3日というスピードで渋谷での開催に振り替えられた。1月29日に『狂(KLUE)』をリリース。マヒト個人もソロワークを展開し、青葉市子とのユニット・NUUAMM、文筆業など、多方面で活動中。
マヒトゥ・ザ・ピーポー
2009年、GEZANを大阪にて結成。バンドのボーカル・作詞作曲を担う。自主レーベル「十三月」を主宰し、野外フェス『全感覚祭』も開催。2018年に『Silence Will Speak』をリリースし、2019年6月には、同作のレコーディングのために訪れたアメリカでのツアーを追ったドキュメンタリー映画『Tribe Called Discord:Documentary of GEZAN』が公開された。2019年10月に開催予定だった主宰フェス『全感覚祭』東京編は台風直撃の影響で中止となったが、中止発表から3日というスピードで渋谷での開催に振り替えられた。1月29日に『狂(KLUE)』をリリース。マヒト個人もソロワークを展開し、青葉市子とのユニット・NUUAMM、文筆業など、多方面で活動中。

マヒトゥ・ザ・ピーポー(以下:マヒト):この連載、タイトルが『闘争』であるばっかりに、誰と話すかを考え過ぎて時間が空いちゃったんだけど(笑)。

―はい(笑)。ということで、対談連載の第2回目となります。今回は大阪で古美術品を扱う「Essential Store」のオーナー・田上拓哉さんをお迎えしました。GEZANにとっては、カルロスさんが脱退された大変な状況の中ですが、そんな今、マヒトさんが田上さんと話したいと思った理由から教えてください。

マヒト:まずこの1年、コロナ以降は情報の速度が圧倒的に速まったよね。でもその全部が虚構っぽく流れていく感覚があって。そもそもウイルス自体が目に見えないから、「重症化するとこうなるよ」っていう情報に怯えることはあっても、実感なくイメージだけで終わることが多いじゃない?

もちろんコロナにかかった人からすれば「そんなもんじゃねえよ」って感じだろうけど、そうじゃない人からしたら実感のないものに怯えて、情報だけが回転する日々に疲弊していくばかりで……しかもGEZANはメンバーが脱退すると。その中にあって、人と自分、モノと自分が出会うことについて考え直すことが増えたんだよね。で、Essential Storeは前から好きで行かせてもらってたんだけど、モノと自分について考えている時に「Silent Auction」をやると知って。

―1月末に渋谷ヒカリエで行われた催しで、レイアウトされた骨董・ヴィンテージ品に入札用紙だけを入れていくオークションですね。

Essential Storeが主催した「Silent Auction」。1月13日から同25日まで、渋谷ヒカリエにて開催された。マヒトのソロアルバム『不完全なけもの』のジャケット写真に登場するお面も、Essential Storeで購入したもの。
Essential Storeが主催した「Silent Auction」。1月13日から同25日まで、渋谷ヒカリエにて開催された。マヒトのソロアルバム『不完全なけもの』のジャケット写真に登場するお面も、Essential Storeで購入したもの。
Essential Storeが主催した「Silent Auction」。1月13日から同25日まで、渋谷ヒカリエにて開催された。マヒトのソロアルバム『不完全なけもの』のジャケット写真に登場するお面も、Essential Storeで購入したもの。

マヒト:そもそも拓哉くんのセレクト自体が面白いし、いわば異物と異物の化学反応みたいな空間だったわけだけど、それを見た時に、「なんだこれ!」っていう衝撃を受け取ることによって自分がそこに存在していることを実感して。で、その「存在することに対する感覚」が、モノ・人と出会うことに思考を巡らせていたところにピタリとハマった気がして。実態がない日々の中でも確かな存在を実感して、モノを通じて、人の存在に想いを馳せること……いろんなヒントをくれた拓哉くんと話したいと思いましたね。

田上拓哉(以下:田上):3年くらい前にマヒトくんがお店に遊びに来てくれて、僕ももちろんGEZANを知っていて。共通の知り合いも多かったから、「マヒトくんっていう面白い子がいるよ」ってよく話を聞いてたの。割とそれからすぐのタイミングで出会えたのが面白かったよね。で、今言ってくれたことは僕がEssential Storeを通じてやりたいと思っていたことが伝わってるってことやから、すごく嬉しい。

マヒト:いろんなモノの価値が数字に置き換えられて値札がついてる社会で、その流れはどんどん加速してるじゃないですか。だけどモノの価値は、生きてきた道筋によってそれぞれに変動し得るわけですよね。

俺の話をすると、昔、島根の爺ちゃん家の納屋にメノウの石があって。陽に当てると紫が抜けるから外で見ちゃダメだって言われてたから、いつも懐中電灯で光を当てて「綺麗だなあ」って見てた。俺は、それが忘れられないんですよ。メノウをお金に換算したら一番安い類の宝石になるわけですけど、俺にとっては納屋でメノウを眺めている時間、行為も含めて大切だったんですよ。言ってみれば、俺の記憶に刻まれたメノウの石は、その辺で売ってるメノウとは違う。それと同じで、モノの価値っていうのは本来、人によって異なるわけで。

だけどその「価値」が資本主義っていう構造に集束されて、「お金を稼いで数字に換算する」っていうシステムが社会をコントロールしている。で、その構造に飲まれることで取りこぼしている感覚がたくさんあるよなあっていう想いが漠然とあって。だから『全感覚祭』とかでは、ライブの価値、食べたものの価値、その日1日の価値を人それぞれに一任して、投げ銭にしてきたんだけど。その意味においてEssential Storeの面白い部分は、アウトサイダーアートの巨匠の作品も、大学生が描いた面白い絵も一緒の空間に並んでるわけ。なんなら拾ってきたような木まで飾ってあるしさ。

my ceramics(FF)
my ceramics(FF)

田上:あれは僕が5年くらい育てた木で(笑)。大事に置いてた木が枯れて、凄く悲しくて。せめて綺麗にしてあげようと思って紙でこすりまくったんですよ。そしたら滑りがよくなって、握るとクルクル回るようになったの。回してるうちにお清めみたいやなあと思って、今回の「Silent Auction」を始める際にも願掛けとしてあの木を回して(笑)。それが気持ちよくてね。

田上拓哉(たのうえ たくや)<br>大阪市福島区の「Essential Store」オーナー。同店舗は年2回、夏と冬の期間限定でオープンする。古道具、アンティークを主として、アパレルなども取り扱う。店内の併設ギャラリーにて不定期で開催する『Silent Auction』は、入札用紙だけで価格をつけられる仕組みによって、モノの価値を再考する場所として話題を呼んでいる。
田上拓哉(たのうえ たくや)
大阪市福島区の「Essential Store」オーナー。同店舗は年2回、夏と冬の期間限定でオープンする。古道具、アンティークを主として、アパレルなども取り扱う。店内の併設ギャラリーにて不定期で開催する『Silent Auction』は、入札用紙だけで価格をつけられる仕組みによって、モノの価値を再考する場所として話題を呼んでいる。

マヒト:ある種、そのモノが置いてある場所によってはガラクタと呼ばれちゃうものに光を当てるっていう……その行為を人に置き換えると、「優しさ」と呼べると思うんですよね。「こういう人もいていいじゃないか」「確かに存在しているじゃないか」っていう感覚。そういう意味で「Silent Auction」は『全感覚祭』と通ずる精神性があると感じていて。多様性って言葉にすると軽くなっちゃうんだけどさ。で、自分の思う価値を提示したり、いろんなものと出会ったりするためのアンテナをどう張っているのかを聞きたくて。

田上:もちろん骨董やアートっていうフィルターも自分の中にはあるんですけど、でも自分のやっていることに本当に適した言葉って未だに見つからなくて。たとえば買い付け1回ですごい金額を使うんです。毎年アメリカに買い付けに行く時は、長くて1か月、12000km移動するわけです。古いモノをひたすら集めて、一般的なサラリーマンひとりが小遣いで好きなモノを買う、その10年分くらいを1か月でやっちゃうんですよ。

マヒト:へえー!

田上:じゃあどんなアンテナでモノを見つけていくかというと、「これとこれが隣に並んだ瞬間にお互いがよく見える!」みたいな感覚なんですよ。一切狙ってないのに、モノとモノが波動を与え合ってるように見える瞬間があって、その連鎖でモノを購入していく場合がたくさんあるんです。

左から:田上拓哉、マヒトゥ・ザ・ピーポー
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プロフィール

マヒトゥ・ザ・ピーポー

2009年、GEZANを大阪にて結成。バンドのボーカル・作詞作曲を担う。自主レーベル「十三月」を主宰し、野外フェス『全感覚祭』も開催。2018年に『Silence Will Speak』をリリースし、2019年6月には、同作のレコーディングのために訪れたアメリカでのツアーを追ったドキュメンタリー映画『Tribe Called Discord:Documentary of GEZAN』が公開された。2019年10月に開催予定だった主宰フェス『全感覚祭』東京編は台風直撃の影響で中止となったが、中止発表から3日というスピードで渋谷での開催に振り替えられた。1月29日に『狂(KLUE)』をリリース。マヒト個人もソロワークを展開し、青葉市子とのユニット・NUUAMM、文筆業など、多方面で活動中。

田上拓哉(たのうえ たくや)

大阪市福島区の「Essential Store」オーナー。本職ではアパレルメーカーを運営しながら、夏と冬の年2回、期間限定で「Essential Store」を開催する。古道具、アンティークを主として、アパレルなども取り扱う。併設ギャラリーで不定期で主催する「Silent Auction」は、入札用紙だけで価格をつけられる仕組みによって、モノの価値を再考する場所として話題を呼んでいる。

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