インタビュー

GEZANマヒト×Essential Store田上 人を繋ぐ「モノ」の力

GEZANマヒト×Essential Store田上 人を繋ぐ「モノ」の力

テキスト・編集
矢島大地
撮影:水谷太郎

バンドってもちろん人間関係の話でもあるけど、だけどそれ以上の繋がりを持ってる。その美しさを夢見てたし、GEZANはそれを実現していくバンドだと思ってたけど……それが一度ぶっ壊れるくらい大変な時代なんだよね。(マヒト)

マヒト:……まあ、俺なんか今一番元気がないタイミングですからね。

田上:古くからの友人でありメンバーが脱退するわけやからね。

マヒト:2021年行ったるぞ、みたいなタイミングで出鼻くじかれたわけですし、とことん凹みましたよね。で、俺にとっては「出会い」っていうのがつまりライブなんですよ。たとえば「Silent Auction」にアイコニックなぬいぐるみがあったけど、あのぬいぐるみだって、ただ透明な入れ物にハメただけで表情も匂いも変わるわけですよね。あれも「モノの湯気」だし、出会いによって景色が変わっていくことの証明だと思うんです。

田上:まさに。しかもあのぬいぐるみの写真が出回って、どんどん人を呼んでくれてね。あのぬいぐるみを見たいっていうだけのお客さんもたくさん遊びに来てくれて。言ったら、「このぬいぐるみをこの入れ物にハメたら違う見え方になるかも」っていう想像力ひとつなわけ。そこでも、モノが持ってる記憶とか出会いが交差して面白いものが生まれてるってことやから。

「Silent Auction」で注目を集めたぬいぐるみ。ぬいぐるみと入れ物は別々に入手されたもので、田上の思いつきでひとつの作品になった
「Silent Auction」で注目を集めたぬいぐるみ。ぬいぐるみと入れ物は別々に入手されたもので、田上の思いつきでひとつの作品になった

マヒト:たとえば俺の場合、ライブをやっていても目の前の人を見ようっていう意識はないんですよ。だけど、その空間の一番遠くを見ようっていう感覚だけはある。これって逆のことを言ってるようで同じ意味だと思うんですよ。その空間を作っているのは間違いなく一人ひとりなわけで、同じ空気、同じ振動をともに感じて生きてるんですよね。クラブとかもそうですよね。歌詞がなくても何言ってるかわからなくても、圧倒的な体験とピースがあったりするわけですよ。それは、音と人の空間だけで言葉じゃない何かを共有してるってことに尽きると思う。

田上:たとえば水を入れたコップがふたつあって、片方だけに「美味そうな水やなあ!」って語りかけ続けたら、人は語りかけ続けた水を美味く感じるっていうデータが実際に残ってて。言ったらライブハウスって、それのエグいバージョンやと思うんですよ。人はほとんどが水でできているわけで、無形の音楽に全員が集中して、その熱気が水蒸気になって、全員で共有する。人が夢中になる時のポジティブな活力が、水を通じて確実に空気になってるわけですよね。目に見えないものの中で人同士が出会ってるっていうか。

マヒト:……それで言うと、ライブの制作や映像チームも交えて、カルロスが抜ける時にミーティングをしたんですよ。で、bloodthirsty butchersのドキュメンタリー映画(『kocorono』)の監督をやってた川口潤さんがいたから、その映画の話をしたんですね。言ったらその映画って、メンバー同士がギャラのことでモメてるところも映像に収めてて。メンバー同士でモメてるのに、オリジナルメンバーは一切変わらずに続いてるのは何故なんだろうっていう問いに対して、ステージ上のメンバーの表情で回答してくれる映画なんですよ。

田上:ステージ上の表情というと?

マヒト:人間関係がこんなにグチャグチャなのに、ステージ上のグルーヴが離脱させてくれない、脱退を許してくれないっていうのが伝わってくるんです。バンドってもちろん人間関係の話でもあるけど、だけどそれ以上の繋がりを持っていて。その美しさを夢見てたし、GEZANはそれを実現していくバンドだと思ってたんだけど……そしたら川口さんに、「ブッチャーズも、発汗によるポジティブなコミュニケーションを確認できていたから続けられたんだろうね。逆に言えば、ブッチャーズもライブができないこの時代だったら違っていたかもしれないよ」って言われて。その時に、やっぱり俺は大変な時代に生きてるんだなって改めて実感して。

マヒト:GEZANが4人でやった最後のライブが去年の12月31日になったわけだけど、その時にも“absolutely imagination”をやって。どんな時代が来ても想像力さえ持てばサバイブできるってことを話したのね。それが、今の自分への願掛けみたいに跳ね返ってきてて。個人単位でも命を絶ってしまう人もいたし、ギリギリでこの仕事をやってきたけど諦めざるを得ない人もいるし……絶対大丈夫だと思ってきたGEZANがぶっ壊れるくらい強烈な時代なんですよ。で、最後に残ったのがクソガキみたいな3人ですよ。俺、イーグル、ロスカル。

田上:はははははは! 笑えないことやとは思いつつ。

マヒト:でもね、現実的じゃないガキどもだからこそ、体温から生まれる湯気を信じて貫くべきだと思うんですよね。このモノに価値を見出せる自分、好きなものを自覚できる自分。もっと言えば、言葉やメロディがここに至るまでに辿ってきた記憶に思いを馳せる想像力。それが自分を存在させてくれるし、救ってくれると信じてるんですよ。

田上:もっと言えば、この先に出会う人っていうのが、次の時代を生きるヒントをくれるような存在になっていくんやと思うけどね。人それぞれに周期はあると思うし、きっとマヒトくんで言ったらバンドの充電期間なんやと思う。俺で言ったら、逆に今こそ動きまくる周期なんやろうし。ちゃんと今は充電期間やと思って過ごすのと、ただヤバイと思って動いてるだけなのと。それは全然違うことやから。

マヒト:そうですね。ぶっ壊れた成れの果てを超えての出会いだからこそ、新しい時代を生きる仲間になっていくってことですもんね。……うん、そうだな。

GEZAN
GEZAN
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プロフィール

マヒトゥ・ザ・ピーポー

2009年、GEZANを大阪にて結成。バンドのボーカル・作詞作曲を担う。自主レーベル「十三月」を主宰し、野外フェス『全感覚祭』も開催。2018年に『Silence Will Speak』をリリースし、2019年6月には、同作のレコーディングのために訪れたアメリカでのツアーを追ったドキュメンタリー映画『Tribe Called Discord:Documentary of GEZAN』が公開された。2019年10月に開催予定だった主宰フェス『全感覚祭』東京編は台風直撃の影響で中止となったが、中止発表から3日というスピードで渋谷での開催に振り替えられた。1月29日に『狂(KLUE)』をリリース。マヒト個人もソロワークを展開し、青葉市子とのユニット・NUUAMM、文筆業など、多方面で活動中。

田上拓哉(たのうえ たくや)

大阪市福島区の「Essential Store」オーナー。本職ではアパレルメーカーを運営しながら、夏と冬の年2回、期間限定で「Essential Store」を開催する。古道具、アンティークを主として、アパレルなども取り扱う。併設ギャラリーで不定期で主催する「Silent Auction」は、入札用紙だけで価格をつけられる仕組みによって、モノの価値を再考する場所として話題を呼んでいる。

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