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The Floorは巣から街へ。北海道のDIYスタジオで語る再生への道

The Floorは巣から街へ。北海道のDIYスタジオで語る再生への道

Eggs
インタビュー・テキスト
天野史彬
編集:井戸沼紀美(CINRA.NET編集部)
2021/07/14

北海道在住のバンド、The Floorがミニアルバム『CLOCK TOWN』をリリースする。2019年にメインコンポーザーが脱退するという大きな転機を迎えたあとも、メンバー全員が曲づくりを担いながら活動を続けてきた彼らにとって、バンドの過渡期と同時に訪れたコロナ禍は、端から見れば「さらなる追い打ち」でもあったが、結果として、彼らは逆境を味方につけたようだ。

新作『CLOCK TOWN』は、メンバー3人それぞれの作家性を発揮させながら、同時に、ミックスやジャケットデザインまで自分たちで手がけるという持ち前のDIY精神も発揮した充実作。コロナ禍の個人の心象を、ときにパーソナルに、ときに寓話的に描きながら、ポップなロックサウンドに結実させた本作は、2020年という時代を生きた人間のさまざまな感情の姿やさまざまな時間の流れを、見事に結晶化させている。

本作について、北海道にいるThe Floorの3人とZoomを繋ぎ、話を訊いた。筆者自身としては、2018年のメジャーデビュー時以来の彼らへの取材でもあった。バンドも、時代も、この3年であまりに大きく変わったが、そのなかで「変化」も「不変」も真摯に受け入れながら進むバンドの姿に、頼もしさと愛おしさを感じる取材となった。

巣から街へ。The Floorはなぜ「人が集まる場所」を目指すのか?

左から:コウタロウ、ササキハヤト、ミヤシタヨウジ<br><b>The Floor(ざ ふろあー)</b><br>2012年10月に結成された北海道札幌市在住バンド。海外ロックの系譜を持った世界水準のサウンドと、抒情的かつ温かな歌声は絶妙なバランスで共存。無邪気に「音」と遊ぶバランス感覚は、フェスシーンからJ-POPシーンまでを横断する、新たなギターロックのスタンダードを北の地から鳴らす。
左から:コウタロウ、ササキハヤト、ミヤシタヨウジ
The Floor(ざ ふろあー)
2012年10月に結成された北海道札幌市在住バンド。海外ロックの系譜を持った世界水準のサウンドと、抒情的かつ温かな歌声は絶妙なバランスで共存。無邪気に「音」と遊ぶバランス感覚は、フェスシーンからJ-POPシーンまでを横断する、新たなギターロックのスタンダードを北の地から鳴らす。

―新作『CLOCK TOWN』は、時計の針の音で始まり、時計の針の音で終わるというアルバムの構成を見ても、非常にコンセプチュアルにつくられた作品なのではないかと思ったんです。実際、つくり出すうえで考えていたことはありますか?

ササキ:前提として「こういうものをつくっていこう」というのが特にあったわけではないんです。いまのThe Floorは3人それぞれが曲をつくり歌詞も書くんですけど、今回も各々がつくりたいものをつくって持ち寄ったところで、最終的に『CLOCK TOWN』というタイトルがついたっていう感じで。

ミヤシタ:タイトルのコンセプト自体はコウタロウが考えたんだよね?

コウタロウ:うん。例えば僕が書いた“Coffee Cup City”という曲は、街で暮らす人を主人公にして歌詞を書いたんですけど、それは結局、コロナ禍の自分自身のことで。ライブができず、遠征にも行けず、北海道にこもりきりになったときに、音楽が救いになってほしいというか、「いまの自分自身ができないことを、曲では叶えさせよう」っていう気持ちがあって。いまいる世界から抜け出すような曲にしたかった。そういうところが漠然とですけど、都市とか街のイメージに繫がって。

Spotifyで“Coffee Cup City”を聴く(Apple Musicはこちら

―なるほど。ある種の「架空の街」が想起されていった。

コウタロウ:あとは、前作『nest』からの流れを汲んだところも大きいです。「nest」は「巣」という意味なんですけど、「巣」がどんどん大きくなって「街」になるっていう僕らの成長の意味合いも込めて、「TOWN」というワードをタイトルに入れたいなと。

それから収録曲の歌詞の話をしているうちに、アルバムの全体的な共通項として「繰り返すこと」や「ループすること」があることに気づいたんです。そこで(ミヤシタ)ヨウジが、『CLOCK TOWN』ってアルバム名を提案してきたのがすごくしっくりきて。

―1曲目の“We can’t put the clock back”はミヤシタさん作のインスト曲ですが、この曲は恐らく、タイトルのコンセプトが生まれてからつくられたということですよね。

コウタロウ:そうですね。「1曲目にインストを入れるのがいいんじゃない?」っていう話が出て、じゃあ時計の針から始まるのとかいいんじゃないかと。で、時計の針で始まるんだったら最後の曲(“Night Walker”)も時計の音で終わって、「また繰り返していく」みたいな意味合いを込められたら面白いねっていう話をしました。

ミヤシタ:1曲目は、アルバムを象徴するような曲にしたいと思ったんですよね。この曲は長さがちょうど1分なんですけど、そこも調節して「1周回る」っていうことを意識したり。あと、収録曲の歌詞のモチーフにつながるもの……例えば子どもの声や雨の音、パトカーのサイレンの音とか、そういうものを散りばめてコラージュ的につくりました。

Spotifyで“We can’t put the clock back”を聴く(Apple Musicはこちら

―前作の「nest(巣)」があったうえで、今作が「TOWN(街)」ということですが、そもそもThe Floorというバンド名自体にも、「人が集まる場所」というイメージがありますよね。なぜ、自分たちはそういうものを求めるのだと思いますか?

ササキ:たぶん「拠り所になりたい」っていう気持ちが強く表れているのかなと思います。それは結局、僕ら自身がそういうものを求めているからだと思うんですけどね。いまは音楽が支えになっていますけど、僕らはなにかしらの支えがないと、うまいことできない人間たちだと思う。そのくらい、どこかしらに常に空虚を感じるというか。

漠然と寂しくて、なにかにすがりたくなるときがある。いまこうやって音楽をやっているのも、端的にいえば、自分の空虚さみたいなものをまずは救いたいんですよ。まずは自分自身が安心できるような、自分のことを救ってくれるような音楽でないといけない。そうでないと、ほかの人に聴いてもらっても意味がないような気がするんですよね。

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リリース情報

The Floor『CLOCK TOWN』
The Floor
『CLOCK TOWN』(CD)

2021年7月7日(水)発売
価格:1,760円(税込)
LILC-1010

1. We can’t put the clock back
2. Talking is Hard
3. Coffee Cup City
4. Faraway
5. 雨中
6. slow motion -Album ver-
7. 24
8. Night Walker

イベント情報

The Floor one-man tour『How Are U ?』

2021年7月17日(土)
会場:北海道 札幌 Sound Lab mole

2021年7月21日(水)
会場:愛知県 名古屋 アポロベイス

2021年7月23日(金・祝)
会場:大阪府 心斎橋 ANIMA

2021年7月25日 (日)
会場:東京都 渋谷 O-Crest

プロフィール

The Floor
The Floor(ざ ふろあー)

2012年10月に結成された北海道札幌市在住バンド。海外ロックの系譜を持った世界水準のサウンドと、抒情的かつ温かな歌声は絶妙なバランスで共存。無邪気に「音」と遊ぶバランス感覚は、フェスシーンからJ-POPシーンまでを横断する、新たなギターロックのスタンダードを北の地から鳴らす。

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