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異才スティールパン奏者、電子音楽家の2つの顔 小林うてなの半生

異才スティールパン奏者、電子音楽家の2つの顔 小林うてなの半生

KORG
インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:豊島望 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)

蓮沼執太フィルに所属し、D.A.N.、KID FRESINOのライブやレコーディングでスティールパンを演奏する傍ら、millennium paradeにも参加するermhoi、Julia ShortreedとともにエレクトロユニットBlack Boboiのメンバーとしても活躍する小林うてなさん。今年3月に絵本仕様でリリースした最新作『6 roads』では、「今、この人生を謳歌するために生きる」をテーマに壮大なストーリーを展開するなど、ソロ活動も精力的に行っています。

スティールパンの常識を覆すようなプレイスタイル、「響き」や「躍動感」に重きをおいたトラックメイキングなど、オリジナリティーあふれる発想は一体どこから生み出されているのでしょうか。都内某所にある彼女のプライベートスタジオを訪ね、その秘密に迫りました。

小林うてな(こばやし うてな)<br>長野県原村出身。東京在住。コンポーザーとして、劇伴・広告音楽・リミックスを制作。アーティストのライブサポートやレコーディングに、スティールパン奏者として参加。ソロ活動では「希望のある受難・笑いながら泣く」をテーマに楽曲を制作している。2018年6月、音楽コミュニティレーベル「BINDIVIDUAL」を立ち上げると同時にermhoi、Julia ShortreedとともにBlack Boboi結成。翌年、ダイアナチアキとともにMIDI Provocateur始動。ライブサポートでD.A.N.、KID FRESINO(BAND SET)に参加、蓮沼執太フィル所属。
小林うてな(こばやし うてな)
長野県原村出身。東京在住。コンポーザーとして、劇伴・広告音楽・リミックスを制作。アーティストのライブサポートやレコーディングに、スティールパン奏者として参加。ソロ活動では「希望のある受難・笑いながら泣く」をテーマに楽曲を制作している。2018年6月、音楽コミュニティレーベル「BINDIVIDUAL」を立ち上げると同時にermhoi、Julia ShortreedとともにBlack Boboi結成。翌年、ダイアナチアキとともにMIDI Provocateur始動。ライブサポートでD.A.N.、KID FRESINO(BAND SET)に参加、蓮沼執太フィル所属。
小林うてな『6 roads』を聴く(Apple Musicはこちら

リコーダーを楽器演奏の本格的な入り口に、小林うてながスティールパンに出会うまで

長野県は八ヶ岳高原の麓の原村で生まれた小林うてなさん。近所のお姉さんが所属するリコーダー合奏団に入ったことが、音楽にのめり込む最初のきっかけだったそうです。

小林:幼稚園のときに合奏で大太鼓を叩いた記憶があります。小学校ではピアノを習ったんですけどサボりまくりで(笑)、レッスン当日だけ練習して行くような感じでした。

でも、リコーダーをはじめて「楽器が好きだ」ってことに気づいたんですよね。指を動かして音を出すことが楽しかったんだと思います。合奏団の先生が、課題用に用意してくれた楽曲もカッコよかったんですよ。マイナー過ぎて、いま探してもなかなか出てこないんですけど(笑)。それも楽器が好きになった大きな理由だったと思います。

小林うてな

打楽器をはじめたのは中学生の頃。吹奏楽部に入り、ドラムや木琴などひと通りマスターしました。高校を卒業し、音大の打楽器科に進学した小林さんは、新入生歓迎会で先輩たちが演奏するジャワのガムランに大きな感銘を受けます。

小林:「これは絶対やりたい!」って思いました。スティールパンの存在を知ったのもその頃です。叩いてリズムを生み出すのが「打楽器」のいいところですが、個人的に物足りないと思うのは、多くの打楽器はリリース(発音から音が消えるまでの時間)が短いことなんですよ。

オルガンやチェロみたいに持続音がある楽器が羨ましい(笑)。そういう意味でガムランやスティールパンの音は、たとえばマリンバなどに比べるとリリースが長いから好きなのかもしれません。

ガムランとは、インドネシア各地の様々な銅鑼や鍵盤打楽器による合奏、民族音楽の総称。動画は東京音楽大学付属 民族音楽研究所より

いま思えば「リズム」そのものよりも、「音色」や「響き」のほうに興味があったと振り返る小林さん。「リズム感」や「グルーヴ」という言葉自体を意識するようになったのも、大学を辞めてサポートミュージシャンとして活動するようになってからでした。

小林:気づいたら打楽器を演奏していたし、吹奏楽部時代から「いかにテンポを合わせるか」に重きを置いていたんですよね。

サポートをやるようになり、いろんな人と交わっていくなかで「テンポを合わせることより、グルーヴのほうが大事なんじゃね?」ということに、だんだん気づいていったのかもしれないです。じゃあ「グルーヴとはなんぞや?」という話になるとまた難しいんですけどね(笑)。

スティールパンの運搬用のハードケース
スティールパンの運搬用のハードケース

神秘的な音楽に惹かれることと、EDMでぶち上がることを同じ感覚として捉える

意外なことに、クラブなどにもほとんど足を運んだことがなく、テクノの聴き方も「未だによくわからない」という小林さん。「いろんなものが削ぎ落とされたストイックな4つ打ちは、宇宙人の音楽のように聞こえる」と笑います。

小林:EDMは好きなんですよ。私、EDMって「太古の音楽」と結局は同じことをやっているんだなと思っています。

昔の人たちが火を囲んで雨乞いや豊作祈願などのために身近なものを叩いて「ワー!」とやっていたことと、現代人がスピーカーやパソコンを使って大きなフェスでEDMをやっていることはそんなに変わらないのでは? って(笑)。EDMのビートやベースが轟いた瞬間に無条件でテンションがぶち上がってしまうのは、DNAレベルで抗えないことだなと思う。

作業スペースの後ろに飾られていた『AKIRA』のポスター
作業スペースの後ろに飾られていた『AKIRA』のポスター

そんな小林さんを魅了してきた音楽は、たとえば高校生の頃に観た映画『アイズ ワイド シャット』(1999年公開、監督はスタンリー・キューブリック)のミサのシーンで流れている儀式的なSEだったり、ヒーリングミュージックを集めたコンピレーションアルバム『image』の楽曲だったり、神秘的な雰囲気のものが多かったそうです。

小林:教会や神社などで感じる厳かな気持ち……その宗教を信仰していなくても、「うわあ、すごい!」と圧倒されてしまうようなものに惹かれます。

もちろん宗教施設ですから、人を圧倒させるための建造物として進化していったものなんだろうけど、それらを見て心を揺さぶられるのも、人類共通に刻み込まれたDNAの反応なのかな? と思います。で、そういった感情を、聴いたときに喚起させる音楽が私は好きなのかもしれないですね。

小林は最近やきものにはまっているらしく、左端の乳白色の陶器は陶芸教室でつくったもの
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小林の自宅のお気に入りスポット①。『ゴッドファーザー』っぽいということでナイフとフォークを並べている
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機材情報

コンピューター

制作用:Apple「Mac mini(M1チップ搭載)」

ライブ用:Apple「Mac Book Pro 15inch Late2013」

DAWソフト

Apple「Logic Pro」

音源

KORG「opsix」(opsix - ALTERED FM SYNTHESIZER | KORG (Japan)

スティールパン(MAPPOさん製作のボアパン)

ハープ(Dusty Strings「Allegro」)

モニタースピーカー

Genelec「8040」

オーディオインターフェース

RME「Fireface UCX」

ミキサー

Soundcraft「EPM8」

マイク

Aston Microphones Spirit「audio-technica AT2020」

プロフィール

小林うてな(こばやし うてな)

長野県原村出身。東京在住。コンポーザーとして、劇伴・広告音楽・リミックスを制作。アーティストのライブサポートやレコーディングに、スティールパン奏者として参加。ソロ活動では「希望のある受難・笑いながら泣く」をテーマに楽曲を制作している。2018年6月、音楽コミュニティレーベル「BINDIVIDUAL」を立ち上げると同時にermhoi、Julia ShortreedとともにBlack Boboi結成。翌年、ダイアナチアキとともにMIDI Provocateur始動。ライブサポートでD.A.N.、KID FRESINO(BAND SET)に参加、蓮沼執太フィル所属。

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