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『ラブライブ!』のプロジェクトはなぜ成功した? 木皿陽平の考え

『ラブライブ!』のプロジェクトはなぜ成功した? 木皿陽平の考え

CAMPFIRE
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:永峰拓也 編集:矢島由佳子

いろいろ気にしちゃうと、どうしても媚びちゃうじゃないですか? そうじゃなくて、マイウェイな感じです。

―『ラブライブ!』の楽曲を作る上では、どんなことがポイントになりましたか?

木皿:いい曲を作ることしか考えてなかったです。ライブを意識すると、「メンバーにちょっと楽させてあげよう」とか考えちゃって、曲としてのよさがなくなるかもしれないから、あえてライブのことは気にしないようにしてました。そうやって作った最初の3曲がすごくよくて。「ライブ映えする曲」とか、PPPH(「ぱんぱぱんひゅー」とオーディエンスをのらせるリズム)とか、そういうのはあんまり気にしちゃダメだなって思います。

木皿陽平

―そういう発想に至ったのは、なにかきっかけがあったのでしょうか?

木皿:アニメ主題歌の放送フォーマットのほとんどが89秒だから、そのなかで展開を作ろうとすると、似たものになりがちなんです。しかも、「オープニングは疾走感があって、ノリがよくて、明るい曲がいい」という発想になると、なおのこと。

あとはトレンドもあって、メロウなメロディーラインとド派手なストリングスの曲って、ライブ映えもするしキャッチーですけど、みんながそれをやりだしちゃうと飽きますよね。僕もそういう曲を制作したことがないわけじゃないから、自分に言ってるところもあるんですけど。でも、やっぱりトレンドを意識し過ぎるのは危険で、なににしても自然発生的に起こってほしいんです。

―実際に、なにか自然発生的なことを経験されているわけですか?

木皿:一番びっくりしたのは、1stライブでやった“Snow halation”の落ちサビの穂乃果のソロですね。各メンバーのイメージカラーって、まだTwitterの公式アカウントもない頃に、僕が自分の個人アカウントで適当に書いたのがほぼそのままなんですけど、特になにも意識せず、穂乃果はオレンジにしたんですね。

“Snow halation”は雪のイメージだから、お客さんは白のペンライトを振ってるんですけど、誰も示し合せてないのに、穂乃果のソロでオレンジにバーッと変わったんです。すごくびっくりしました。でも、それがいいわけですよ。「こうしてください」ってこちらから言うのは寒いじゃないですか? お客さんが意志を持ってやるからいいんだと思うんですよね。

木皿陽平

―だからこそ、トレンドは意識せずに、作りたい曲を作ったと。

木皿:そうですね。真っ新な状態で作るほうがいいですよ。いろいろ気にしちゃうと、商売なので、どうしても媚びちゃうじゃないですか? そうじゃなくて、マイウェイな感じです。

僕はやっぱり古臭いのが好きで、そこにはヒントがいっぱいあるんですよね。たとえば、テレビアニメ1期のエンディングのカップリングで“輝夜の城で踊りたい”という曲があって、結構人気があるんですけど、ああいう三の線なんだけどかっこいい歌って、僕でいうと『タイムボカン』(1975~1976年放送)の主題歌を歌ってる山本正之さんとかなんですね。山本正之さんの音楽が体に染み付いてるから、発想できたんじゃないかなと思っています。

あの時代ってディスコブームだったりして、曲で言ってることはバカバカしいんですけど、音はかっこよかったり、そのギャップが好きで。“輝夜の城で踊りたい”は、そういう世界観をμ'sが歌うと面白いんじゃないかと思って、カップリング曲だし、自由度高く作ったら、意外とライブで人気になったんですよね。

―やっぱり、なにかを狙って作るんじゃなくて、自分がいいと思うものを作ることが重要だったと。それが結果的に、『紅白歌合戦』への出場、さらには東京ドーム公演までつながったというのは、すごいことですよね。

木皿:最後のほうに関しては、これまでの頑張りが報われるようにしてあげたいと思ってました。演じるキャストとしての本分から、相当逸脱したレベルのことを求められて、それをこなしてきた九人の演者のみなさんが、「これを頑張ってきてよかったな」って、思えるようにしたかった。

『紅白』も東京ドームも、オリコン1位にしても、一生に一度経験できるかどうかのことなので、できれば叶えてあげたいなと。まあ、ホントはそういうことも気にしちゃいけないと思うんですけどね。正直、夢物語だとは思っていたんですけど、叶えられたのはよかったなって思います。

―メディアミックスによって、そこにいろんなクリエイターや演者が集まって、いろんな壁を超えていくことができる。『ラブライブ!』はその大きな成功例だったと思います。

木皿:そういうことで言うと、『ラブライブ!』は男女の壁を超えたんですよね。『ラブライブ!』がなんであんなに女子に受けたのかは、僕も未だによくわかってないんです。

木皿陽平

―やはり、アイドルブームともリンクしていて、女の子にとっても「憧れ」の対象だったのかなと。

木皿:ああ、そうですね。アイドルになりたいというか、きれいな衣装を着て、華やかなステージに立つというのは憧れるんでしょうね。あと、萌えコンテンツとしての観点から言うと、『ラブライブ!』の女の子たちはそこまで媚びないんですよ。大体の萌えコンテンツって、主人公がハーレム状態で、男が主人公に感情移入してウハウハみたいな感じだけど、『ラブライブ!』は男性がいないので、女の子同士のピュアで真っ直ぐな気持ちが描かれている。そこがいいのかもしれないですね。

―『ラブライブ!』の女の子も、それを作る側も、媚びない姿勢を貫いた。そこが一番の成功の理由だったのかもしれないですね。

僕は会社員ですけど、特にエンタメは「個人の時代」っていうのがどんどん強くなってきていると思うんです。

―この連載記事はCINRA.NETとCAMPFIREの合同企画なのですが、木皿さんはクラウドファンディングについて、どのような印象をお持ちですか?

木皿:いろんな可能性が広がるのはいいことだと思います。お客さんの立場で言うと、ホントにほしいものが手に入るのであれば、出してもいい額に際限はないじゃないですか? 僕もガジェット系、プロダクト系の面白いものには、お金出してるんですよ。夢を買うようなものですよね。

ただ、一個思うのは、「発表の場」という意味で、ニコニコ動画とかが出てきたときにも同じ議論があったと思うんですけど、個人でやった場合、そこには「プロデュース」というものが介在しないじゃないですか? ランティスは、ただのパブリッシャーではなくて、プロデュース集団でもあると思っていて、プロデュースによって、作品がよりいいものになるという意識を持っている。プロデュースがなかった場合、ある程度の作品しかできないんじゃないかっていう気もしています。まあ、僕は基本的に新しいもの好きなので、面白いことができるなら、全然アリだとは思うんですけどね。

木皿陽平

―では最後に、エンターテイメント業界に入りたいと思っている人、また興味はあるんだけど、業界の未来に不安も感じている人に対して、なにかメッセージを伝えていただけますか?

木皿:僕は会社員ですけど、特にエンタメは「個人の時代」がどんどん強くなってきていると思うんです。僕の「プロデュース」という仕事で言うと、僕が今日とつとつと話してきた積み重ねのなかでインプットされた感性、知識、感覚が昇華されていて、それは僕にしかできないし、他の方も同様。

僕はランティスに所属をしていますけど、ときとしてそれは「木皿と仕事をする」ということになる。そう考えると、やはり個々のバリューをどう高めるかが大事で、自分の人生そのものがバリューの礎になるというのは、すごく面白いと思うんですよね。

―自分自身の価値で仕事をしていくことにこそ、面白さがあると。

木皿:僕はクラシックをやりながらアニメも好きで、それが僕独自の路線につながった。当然下積みは必要ですけど、自分にしかできないことがバリューになって、さらにそれが枚数とか売り上げとして可視化されていけば、すごくやりがいありますよね。

僕は、やるなら自分のやりたいことをやって、自分を高めていきたいと思っているんです。その分安定はないのかもしれないけど、時代の変化を見ていけば、会社がダメになったとしても、自分だけ成功することも可能なはず。そういう「個人の時代」だからこその面白さを、すごく感じますね。

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プロフィール

木皿陽平(きさら ようへい)

株式会社ランティス 制作本部チーフプロデューサー。『ラブライブ!』では音楽プロデューサーを務める。現在は、大橋彩香、SCREEN mode、HopStepSing!などを担当している。

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