怒れる少女と少年が日本社会に復讐 映画『アジアの純真』8年ぶり再上映

映画『アジアの純真』が1月20日から東京・ラピュタ阿佐ヶ谷で再上映される。

片嶋一貴が監督、井上淳一が脚本を担当し、2011年に公開された『アジアの純真』。在日朝鮮人の女子高生が殺害される事件の現場に居合わせた気弱な日本人の高校生の前に被害者の双子の妹が現れ、少女が旧日本軍が破棄した毒ガスを持って日本社会への復讐の旅に出るというあらすじだ。『ロッテルダム国際映画祭』『レインダンス映画祭』『パリシネマ映画祭』『春川国際学生平和映画祭』に出品。同作は、2月11日に長野・松本CINEMAセレクトでも上映される。

片嶋一貴監督のコメント

『アジアの純真』がまた映画館で上映されるのは、嬉しいことです。なかなか多くの人の目に触れることが難しい作品なので…。撮影は2009年1月、劇場公開は2011年の10月でした。この映画は、韓英恵という女優がいなければ成立しえないものでした。18歳の韓英恵。この年齢でしか出し得ない異様な殺気と脆さが同居し、特有のオーラを醸し出している。偏狭な精神から自由になるためにもがき苦しむ純真な魂に、社会の正義など、いかに不確かなものなのか…。そこに、人間存在の不条理があると考えます。すでに韓英恵は29歳。時代は変わり、変わらないものは何も変わらない。今現在、この映画がどんなふうに受入れられるのか、とても楽しみです。

井上淳一のコメント

戦後最悪と言われる日韓関係。ネットばかりか、ワイドショーでも反韓嫌韓ヘイトまがいの言葉が平然と語られる。ヘイトはそんなに視聴率がとれるのだろうか。叩いても文句を言われないものを叩く品性の卑しさ。「強制連行」が「徴用工」と呼び名を変えて久しい。あいちトリエンナーレの「表現の不自由展・その後」が中止になったのも、KAWASAKIしんゆり映画祭の『主戦場』上映中止騒動も、最大の原因は慰安婦だ。誰も自分たちのことを、歴史を、振り返らない。この国が彼の国で何をしてきたか。足を踏まれた者にしか足を踏まれた者の痛みは分からないのだとしても、これは酷すぎるのではないだろうか。いつかどこかで見た風景。戦前?いや、もっと近く。例えば、2002年。拉致問題が騒がれていた頃の、国を挙げての北朝鮮大バッシング。あの頃の空気にソックリだ。その後も、やれミサイルだ、やれ核開発と騒いだはいいが、金正恩がトランプと握手した途端にトーンダウン。今度はお隣の国が敵になる。それを煽って何になるというのだろう。
『アジアの純真』は2003年にシナリオを書き、09年に撮影され、11年に公開された映画だが、この映画で描いたことと何も変わらない現実。双子の姉を殺された在日朝鮮人少女は旧日本軍が不法投棄した毒ガスを手に入れ、日本という国に復讐するために旅に出る。報復の連鎖。その先に何が待っているのか?
香港では若者たちのデモに警察の暴力がエスカレート、権力は弾圧を隠さなくなった。イランでもペルーでもデモが激化、パレスチナではイスラエル軍との激突が続き、カシミール地方を巡って印パは一触即発、米中関係も温暖化も悪化の一途、辺野古の埋め立ては続き、福島では原発汚染水が垂れ流され続け、我が国の首相はウソしかつかない。分断と対立。なぜ同時多発的に世界中でクソバカな指導者が誕生してしまったのか。
そんな今だからこそ、『アジアの純真』を再上映したいと思った。幸い、全国各地で手を挙げてくれる同志がいた。新潟、茨城、沖縄、長野、大阪、広島、名古屋、埼玉と回り、ついに東京再上陸。この映画は公開時、「反日映画」と散々叩かれた。反日、上等。今、この国を愛せよという方が不可能だ。日本人が作った「反日映画」を題材して、この国がどうしたらもう少しマシになるか考えたい。主人公は言う。「どうやったら、世界は変わるの?」と。答えなんて出るワケがない。でも、問いかけるだけではダメだ。この映画が、考えるはじめの一歩になればと願っています。

作品情報

『アジアの純真』

2020年1月20日(月)からラピュタ阿佐ヶ谷で上映
監督:片嶋一貴 脚本:井上淳一 音楽:ken sato 出演: 韓英恵 笠井薫明 黒田耕平 丸尾丸一郎 川田希 パク・ソヒ 澤純子 白井良明 若松孝二 上映時間:110分 配給:ドッグシュガー
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