書店市場、4年ぶり拡大の可能性 『鬼滅の刃』による特需も好影響

書店市場の推移と今後の見通しを帝国データバンクが発表した。

2019年まで3年連続で減少していた書店市場(事業者売上高ベース)。日本出版販売によれば、2020年は10月の漫画売上が前年比1.5倍になるなど、13か月連続で前年を超えている。これを受けて、4年ぶりに市場拡大になる可能性が高いと報告されている。

売上増は新型コロナの感染拡大による「巣ごもり需要」によるものと考えられる。自宅で楽しめるエンターテイメントとして漫画需要が増えたことに加えて、『鬼滅の刃』の大ヒットにより、コミックスだけでなく関連書籍、付録グッズの販売が大幅に伸びているという。

店頭売り上げの前年比は10月が114.3%となり、伸び率としては同社が集計を開始した2008年以降で最高値とのこと。

調査によれば、漫画などで人気作品や話題作品が出ると、リアル書店での販売が伸びやすくなる傾向があるという。限定特装品やシリーズ全冊まとめ買いも、その理由として挙げられている。

2020年10月までに倒産した書店は、前年同期を9件下回る10件。このペースで進めば書店の倒産は4年ぶりの前年比減少に転じ、通年で最も少ない2001年の15件を下回り、過去最少を更新する可能性が高いという。

一方で、書店が『鬼滅の刃』のようなヒット作頼みになっている点も指摘。2019年の売上は1兆2186億円だが、今後は反動減も見込まれ2030年までに書店市場全体で1兆円台を下回る恐れもあるとのこと。またネガティブな要素としてはフリマアプリでの2次販売や、消費税を含めた税込価格で表記する「総額表示」への一本化が書籍にも適用される点などが挙げられている。

書店による書籍販売以外の事業として、丸善CHIホールディングスの総合保育事業やパソコン修理事業、「蔦屋書店」ブランドを展開するトップカルチャーの雑貨や文具販売、オンライン書店「Fujisan.co.jp」を運営する富士山マガジンサービスの雑誌の定期購読といった事例にふれ、そういった非書籍事業を育てることが脱「ヒット頼みの構造」を促し、書店の命運を決めることになるのでは、と結ばれている。

需要の高まりにより回復を見せた書店市場。しかし規模全体が減少傾向にあることは変わらないため、脱「ヒット頼みの構造」の施策を打つことができない事業者、とくに小規模な店舗はこれからも苦境に立たされる可能性が高い。今後の推移を見守りたい。

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