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『文化庁メディア芸術祭』受賞作『音楽』『映像研には手を出すな!』を紹介

『音楽』 ©Hiroyuki Ohashi / Rock’n Roll Mountain / Tip Top
『音楽』 ©Hiroyuki Ohashi / Rock’n Roll Mountain / Tip Top

『第24回文化庁メディア芸術祭 受賞作品展』が9月23日から東京・お台場の日本科学未来館ほかで開催される。

高い芸術性と創造性をもつメディア芸術作品を顕彰する『文化庁メディア芸術祭』。今年は世界103の国と地域から集まった3693作品からアート、エンターテインメント、アニメーション、マンガの4部門ごとに大賞、優秀賞、ソーシャル・インパクト賞、新人賞、U-18賞が選ばれたほか、34の国と地域から集まった114作品からフェスティバル・プラットフォーム賞が選出された。またメディア芸術分野の貢献者に功労賞を贈呈。

アート部門大賞は小泉明郎『縛られたプロメテウス』、エンターテインメント部門大賞は岩井澤健治監督『音楽』、アニメーション部門大賞は湯浅政明監督『映像研には手を出すな!』、マンガ部門大賞は羽海野チカ『3月のライオン』が受賞。フェスティバル・プラットフォーム賞ジオ・コスモス カテゴリーは秋山智哉『ちぎる』、同賞ドームシアター カテゴリーはSandrine DEUMIER、Myriam BLEAU『L'alter-Monde』、功労賞は草原真知子、坂田文彦、さくまあきら、野沢雅子に贈られた。

今回は、エンターテインメント部門大賞『音楽』と、アニメーション部門大賞『映像研には手を出すな!』の2つのアニメ作品について紹介したい。

『シティライツ』『夏の手』などで知られる漫画家・大橋裕之の『音楽と漫画』を原作とした長編アニメーション映画『音楽』は、楽器を触ったこともない不良学生たちがバンドを組むところから物語が展開。岩井澤健治監督は手描き作画にこだわり、約7年半を費やして完成させた。映像は実写映像をもとに作画を行なうロトスコープの手法で制作。野外フェスのシーンではステージを組み、実際に観客を動員したライブを行ないながら撮影を敢行した。声優陣は坂本慎太郎、駒井蓮、前野朋哉、芹澤興人、平岩紙、竹中直人ら。新宿武蔵野館では約10か月にわたってロングラン上映された。

大童澄瞳の同名漫画を原作としたテレビアニメ『映像研には手を出すな!』の舞台は、湖に面した人工島に建てられ、増改築を繰り返し複雑怪奇な建築となった芝浜高校。スケッチブックに様々な設定のアイデアを描きためている高校1年生・浅草みどり、プロデューサー気質の金森さやか、カリスマ読者モデルでありながらアニメーターを志望する水崎ツバメの3人が映像研究同好会を設立し、「最強の世界」を作るために奮闘する姿を描く。実際のアニメ制作の過程や技術・演出論などを盛り込み、キャラクターを通じてアニメ作りの葛藤や達成感も描写。

川田十夢のコメント

『音楽』贈賞理由
バンドで経済的に成功するまで、あるいは文化的に挫折するまでを描いた作品は、過去膨大にあった。しかし、バンドで最初に音を出したときの、ふっと軽くなる瞬間。生物が魂を宿したような、例えようのない時間をズバリとらえた作品は皆無だったように思う。作者自身が、一人で絵コンテや作画を7年もの歳月をかけてつくり上げたことと、結果として素晴らしいエンターテインメントが生まれたことは、無関係ではない。だが、必然でもない。同じように苦労して生み出された芸術作品は、数多くある。VFXやAR/VRなど多くの技術が点在する現代において、ロトスコープという古典的な手法で生み出されたアニメーションが、例えようもない時間を一番鮮明な形で残しているのが興味深い。驚くべきことに、この作品はまだ商業的に成功していない。審査委員としての任期最後の年、この作品を文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門大賞に選べたことを、誇りに思う。

佐藤竜雄のコメント

『映像研には手を出すな!』贈賞理由
制作者あるある。準備中のラフなイメージボードの方が実際の映像よりキマっていて「この絵のまま動かせば良かったのに」とガックリすること。丁寧につくり上げた映像も確かに良い。しかし、思いのままに鉛筆を走らせ、淡彩で色を乗せた絵が動くのを想像するのも楽しい。商業アニメがセルを使用していた当時は不可能に近かったが、デジタル化した今、本作品は実現した。その結果、何を生んだか? キャラクターや美術のルックも相まって作品内の現実と空想がないまぜになり、登場人物たちがイメージを共有していくさまを視聴者は台詞ではなく感覚で理解するという希有な映像体験を味わっていたのではないだろうか。しかもそれは毎週続く。キャラへの愛着、彼女たちの夢想への共感も増していく。全話数で初めて1本の作品であるというテレビアニメの不利を、本作品はむしろプラスに転じている。タイトルとは裏腹に、映像づくりへの愛おしさといざないにあふれているのが素晴らしい。

『映像研には⼿を出すな!』 ©Sumito Oowara, Shogakukan / Eizouken Committee
『映像研には⼿を出すな!』 ©Sumito Oowara, Shogakukan / Eizouken Committee
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