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「遊び」を仕事にするために、一流クリエイターはどうやったのか

『QREATOR'S calendar』
テキスト
萩原雄太
撮影:河上良
「遊び」を仕事にするために、一流クリエイターはどうやったのか

一流クリエイターは、どうやって「できる」ようになっていったのか?

スターバックスや、adidasの広告クリエイティブ、岡村靖幸のグッズデザイン、きゃりーぱみゅぱみゅの振袖デザインに至るまで、幅広い活躍で知られるクリエイティブカンパニー「れもんらいふ」のアートディレクター・千原徹也。彼の活動の集大成となる『「TOKYO FRIENDS」れもんらいふ展』が、12月20日まで、大阪・E-maで開催中だ。そして、毎週末に開催される関連イベントには、千原の仕事の幅広さを象徴するように、お笑いコンビのジャルジャルやフォトグラファーのレスリー・キー、モデルの秋元梢など各界から著名人が名を連ねている。

なかでも注目を集めたのが、12月6日に行われたトークイベント。千原本人のほか、groovisionsの伊藤弘、クリエイティブユニット・Enlightenmentのヒロ杉山、空間クリエイターの谷川じゅんじ、イラストレーターのエドツワキなどが一堂に会したこのトークは、一流のクリエイターたちが自らの仕事観を語り合う濃密な時間となった。

「『TOKYO FRIENDS』れもんらいふ展」トークイベントの様子
「『TOKYO FRIENDS』れもんらいふ展」トークイベントの様子

「できないことが、できるって、最高だ。」というテーマで開催されたこのトークには、学生らしき参加者も数多く見られた。もちろん、登壇したクリエイターたちも、もともとはそんな参加者のように「できない」ことばかりの時代を経ているはず。彼らは、いったいどうやって「できる」ようになっていったのだろうか?

千原:「できないことが、できるって、最高だ。」というのは、プレイステーション4の広告コピーなんですが、このコピーを見たとき、ゲームを一生懸命やりながら、本気でゲームの世界にアイデンティティーや価値を感じていた昔の自分を思い出したんですよ。そして、いつしかリアルの世界でも「できないことができる」を目指していたことにも気づきました。今日集まっていただいた四人のクリエイターは、僕がデザインのデの字にも足を踏み入れてないころに憧れて見ていた「できないことができている」最高の方たち。そんなクリエイティブな四人と話すには、このプレイステーション4の広告コピーはちょうどいいと思ったんです。

ヒロ:ここにいる人たちは、好きなことだから続けられているし、不可能を可能にできるんだと思う。自分の好きなことをとことんやるっていうのが、「できないことをできるようにする」っていうことの1つのキーワードかな。長年続けると、不可能だったことが可能になるんです。世の中に情報があふれていて、それをなんとなく見ているだけで満足してしまうけど、自分の好きなものを選んでそこを掘り下げていく行為がクリエイターには必要なんじゃないかな。

左から:ヒロ杉山、谷川じゅんじ、千原徹也
左から:ヒロ杉山、谷川じゅんじ、千原徹也

趣味や遊びと同じように、仕事に没頭することの大切さ

クリエイターといえば、斬新な発想で、鮮やかに世の中を驚かせる「魔法使い」のようなイメージが強い。しかしヒロ杉山が語るのは、「継続は力なり」や「好きこそものの上手なれ」といったまるで職人のように地道な道のり。そんな言葉を受けて、谷川じゅんじが語るのは仕事における「背骨」の重要性だ。

谷川:背骨が通っているっていうのは、やりたいことをやるにはすごく大事な基本のスタンス。信念とか、心構えとか、マインドみたいなもの。僕はそういうものが一番大事なものだと思いますね。

それぞれ、好きなことを仕事にし、独特の信念を持ちながら数十年にわたって活動を継続してきたクリエイターたち。そのおかげで、彼らに共通する特徴は「趣味」や「遊び」の時間がないこと。千原からの「趣味ってあります?」という問いかけに、伊藤はかろうじて「自転車やってます」と答えられるものの、それぞれ趣味らしき趣味はないという。エドが「子どものころ趣味だったことが仕事になっちゃったから、『趣味なんですか?』って聞かれると『はて?』ってなっちゃう」と語るように、趣味や遊びと同じように彼らは仕事に没頭しているという。では、そんな彼らの発想の源泉とはなんなのか?

谷川:場の力ってすごくて、ネットのなかで感じる情報と実際にリアルにその場で受けた熱量って全然違う。わざわざ足を運んでその場に行くっていうのは本当に大事なこと。

左から:ヒロ杉山、谷川じゅんじ、千原徹也

ヒロ:絵画にしても、ネットで写真を見るのと現物を目の前で観るのとではまったく違う体験になる。オカルトチックな話になるけど、物質が出すエネルギーみたいなものがあって、それを肌で感じるっていうのがネットで見る鑑賞とはまた違った体験になるんです。

二人が語るのは「実体験」からインスピレーションを受けることの大切さ。身体全体で感じた経験が、次の仕事の発想につながっていくという。さらに、これに関連してエドが口火を切ったのは「反骨精神」が成長を促すという話だった。

エド:「できない」と誰かに言われたなら、僕はそれに逆らって「だったらやってやる」という気持ちがモチベーションになることもあるね。

エドツワキ
エドツワキ

伊藤弘(groovisions)
伊藤弘(groovisions)

谷川:できないって言うのはすごく簡単だからね。逆にできるって言ったら逃げ場なしだから。

ヒロ:全責任が自分だから、自分を追い詰めることになる。でも、その追い詰めるエネルギーが「できる」エネルギーに変わっていくんだと思う。

「愛情の深さ」こそが、才能の正体?

「好きであること」「継続すること」「その場に行くこと」「自分を追い詰めること」。一流のクリエイターたちが語る仕事観は、デザインやクリエイティブだけでなく、一般企業に務めるサラリーマンにも通じる基本的な姿勢のことばかり。なによりも、これだけのクリエイターが結集しているにも関わらず、「才能」という言葉が1回も使われたなかったのが象徴的だろう。彼らと他のクリエイターを分かつのは、才能の多寡ではなく仕事に対する愛情の多寡なのだ。そして、そんな仕事への愛情の深さが「できないことが、できるって、最高だ。」という感情を味合わせてくれる。

ちなみに千原は、どんなときに「最高」を感じているのだろうか? その答えは「TOKYO FRIENDS」という展覧会のタイトルにあるようだ。「生きてるって、僕と出会ってくれて、ありがとう」というコピーがつけられた同展には、千原の仕事に対するこだわりがあった。

千原:展覧会では作品を観てもらうというよりも、人とのつながりや、作るプロセスを、トークを交えて伝えられるといいなと思っていたんです。

左から:エドツワキ、伊藤弘、千原徹也、ヒロ杉山、谷川じゅんじ

その結果、これまでに手掛けた作品だけでなく、作品を介して生まれた仕事仲間や友人との出会いと関係を紐解くかたちになった同展。この日登壇したクリエイターたちも、それぞれ超多忙なスケジュールであるにもかかわらず、「お願いの連絡を入れたら、みんな1時間以内に『行きます』って返事をくれた」という。

谷川:千原くんが大阪で展覧会をやって、「なんかやりたいんですけど」って言われたら、ここに来て座ってしまう。みんな千原くんに興味があるんだよね。聞きたいこともいっぱいあるもん。

そんな谷川の言葉こそが、千原にとって、自身の仕事が生み出した「最高」の成果物なのだろう。

なお、このトークの模様は、12月21日に放映されるTOKYO MX系の『QREATOR'S calendar』にて放映される。ぜひ、生の声で彼らのピュアな仕事観に触れてほしい。

番組情報

『QREATOR'S calendar』

2015年12月21日(月)22:30~23:00にTOKYO MXで放送
スタジオゲスト:
西野亮廣
堀江貴文
椎木里佳

イベント情報

『TOKYO FRIENDS』れもんらいふ展

2016年11月26日(木)~12月20日(日)
会場:大阪府 梅田 E-MA1階イベントスペース
時間:11:00~21:00
料金:無料

プロフィール

れもんらいふ

広告、装丁、ブランディング、WEBなど様々なジャンルをデザイン。主なアートディレクションに、Zoff、adidas Originals Flagship Store Tokyo、六本木ヒルズ「ファッションコネクト」など、多岐にわたる。2013年に立ち上げた洋服ブランドZUCCaとのコラボレーション「ZUCCa LEMONLIFE CO.」第3弾では、千原が白いキャンバスに自由な発想で描いたアートが切り取られ、服や雑貨に展開された。先日、渋谷パルコ・スペイン坂広場にて巨大キャンバス上にライブペイントを行い、アーティストとしての活動も広がりを見せている。

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