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『スキージャンプ・ペア』に続く才能は現れるか?『DFGP』レポ

『DIGITAL FRONTIER GRAND PRIX 2016』
テキスト
阿部美香
撮影:Motoyoshi Hirata 編集:山元翔一
『スキージャンプ・ペア』に続く才能は現れるか?『DFGP』レポ

50万枚以上のセールスを記録したフルCGアニメーション『スキージャンプ・ペア』を輩出したアワード

エンターテイメントからアートまで、デジタルコンテンツの現在は、私たちに驚きと新しい価値観を与えるまだ見ぬ才能を求めて膨らみ続けている。そのニーズに応えんと、「デジハリ」の愛称でおなじみのデジタルハリウッドが毎年春、開催しているアワードが『DIGITAL FRONTIER GRAND PRIX』(以下『DFGP』)だ。デジハリが展開するスクール、大学、大学院など、さまざまな教育機関で学んだクリエイターの卵たちが卒業制作を持ち寄る『DFGP』は、DVDシリーズが50万枚以上のセールスを記録したフルCGアニメーション『スキージャンプ・ペア』(真島理一郎)を筆頭に、世間でも注目を集める作品とクリエイターを多数輩出している。審査員にもデジハリ卒業生を起用。今年は『スター・ウォーズ / フォースの覚醒』ほか、ハリウッド超大作のVFX制作に参加するIndustrial Light & Magic(ILM)のシニアジェネラリストテクニカルディレクター、山田義也らが迎えられた。

『DIGITAL FRONTIER GRAND PRIX』授賞式
『DIGITAL FRONTIER GRAND PRIX』授賞式

先日開催された『DFGP 2016』にも、約1500点以上の個性あふれる作品が集結。司会を務めた杉山知之学長は、授賞式を前に2015年度の卒業クリエイターの活躍、ファッション分野への進出や、医療とデジタルコンテンツを融合したプロジェクトの成功などを報告。「デジハリは新しいことをやるのが使命。『DFGP』も年々、格段に受賞作のクオリティーが向上している」と述べ、今年度の優秀作品とグランプリ作品の発表へと移った。ここからは、各部門の受賞作から、注目の作品を紹介していきたい。

2つの賞を獲得して注目を集めたイラストレーターのためのオリジナルデバイスは、商品化に期待

グラフィックデザイン部門は3作品が受賞したが、すべてが女性の視点かつ、生活により身近で「使える」アイデアを形にしていたのは特徴的だった。特に『ベストアートディレクション賞』を受賞した「chéri」は、金亦安と林子依、二人の外国人女性が日本の伝統文化とジャパニーズカルチャーを代表するKAWAIIとロリータファッションを融合した和装ファッションブランド。日本人ではない目線からの、和服の伝統を残したいという発想には、考えさせられることも多い。

また、インタラクティブコンテンツ部門の4賞に輝いた作品は、アートとエンターテイメント、両方のアプローチから形作られていたのが魅力だ。なかでも特徴的だったのは、『ベストブランディング賞』を受賞した『WebGL世界遺産』(望月一樹)と、『ベストメディアアート賞』の『moment』(吉野拓人)。『WebGL世界遺産』は地球上に分布する世界遺産を、写真だけでなく世界遺産に登録されてからの経過年数などのデータと共に3Dで可視化するメディアアート的作品。

『moment』はアンケートに答えることで、その人の寿命を算出してエネルギー体として動的に可視化した作品。無機質なコンピューター上に、地球の歴史や人間の生命をエモーショナルに表現することで、新しい人間とコンピューター、デジタルコンテンツのあり方を考えさせられた。

今年から新設されたサービス部門は、特定の手法やジャンルの枠で括ることが難しくなったデジタルコンテンツの多様化と今を、最も顕著に感じさせた。受賞作は3作で、クリエイティブなアイデアをそのまま実用的な商品化に結び付けている作品が目立つ。なかでも『ベストデプロイメント賞』『プラチナ・スポンサー賞』の2賞を受賞した『左手デバイス O2』(神成大樹)は、イラストレーターである開発者本人の不便を解消するために開発したオリジナルデバイスのアイデア。ペンタブレットメーカーなどと組めば、商品化も視野に入るデバイスとして今後の動向が注目される。

『左手デバイス O2』
『左手デバイス O2』

『左手デバイス O2』を用いた作品制作イメージ

アワードの華、映像部門では、外国人クリエイターによる実写作品に注目

全15作品がノミネートされた映像部門は、毎年、オリジナリティーにあふれた3DCGアニメーション、実写作品などが多く披露される、まさに『DFGP』の華といえる部門だ。デジハリは優秀なCGクリエイターを輩出する教育機関として名高く、今回も3DCGアニメーション、手書き風アニメーションなど多くのCG作品がノミネートされたが、今年は実写作品がとても目についた。『ベストドキュメンタリー賞』を受賞した『ドキュメンタリー仮 変態の流儀(留学生活)』(陳彬豪、黄彦錚)は、クリエイターを目指してアルバイトをしながら東京で暮らす中国人留学生の日常を淡々と追い掛けた作品。テレビのドキュメンタリー番組では味わえないリアルな実像にハッとさせられる。

実写の受賞作がすべて外国人作品だったことも、非常に面白い現象だ。『ベストアニメ賞』を受賞した、温もりのあるセル画風アニメ作品『JUNK』(粂田佳之、LAMPERTI GIULIA、LIMTHONG CHIDPHONG)が日本人と外国人留学生の合作だったことも、グローバルな人材を育成するデジハリらしい傾向だったと思う。

『アカデミー賞』公認の国際短編映画祭で招待上映されるグランプリ作品とは?

そして『DFGP 2016』の頂点に輝いたのは、『ベストCGアニメーション賞』を受賞した『Initial Enthusiasm』(太田杏奈)。挫折した高校球児が、夢の中で子どもの頃の自分に出会って大切な思いを取り戻していく姿を描くこの作品は、デジタルハリウッド大学に入学して初めてCG制作を学んだ太田杏奈さんが、シナリオから3DCGアニメーションまでをたった一人で手がけた短編だ。

授賞式後、グランプリ選考委員は「ストーリーがよくまとまっており、キャラクターのアニメーション表現が上手い。特に主人公の表情が素晴らしかった。なにより、この尺のフルCGアニメーション作品をたった一人で制作したことはすごい。全作品の中で、一番完成度が高かった」とコメント。表情豊かで繊細なキャラクター描写は女性ならではだ。作者の太田杏奈さんは、「CGも映像も何も知らないまま学校で勉強を続けてきた自分の経験が制作のきっかけ。忙しさの中で忘れそうになる『好きなものを好きでいる気持ち』の大切さをみなさんにも思い出してほしい。その想いを作品に込めました。今後もCGアニメーションの技術をより高め、大学卒業後もショートムービーを作っていきたい」と語ってくれた。さらに本作は、6月2日より都内各所で開催される米国『アカデミー賞』公認アジア最大級の国際短編映画祭『ショートショート フィルムフェスティバル&アジア2016』の特別招待作品としても上映。太田さんのCGクリエイターとしての今後の活躍に期待したい。

 
『DIGITAL FRONTIER GRAND PRIX 2016』グランプリ受賞者・太田杏奈(左)と杉山知之学長(右)

『DFGP 2016』の受賞作品17作は、YouTubeのデジタルハリウッド オフィシャルチャンネル「dhwtv」にて公開中。ここから世界に羽ばたいていくデジタルクリエイター、アーティストの「今」が、体感できるだろう。

イベント情報

『DIGITAL FRONTIER GRAND PRIX 2016』

2016年4月3日(日)15:00~17:30
会場:東京都 有楽町朝日ホール
審査員:
浅野南
永崎ひまる
宇治悦子
浅枝大志
稲垣匡人
須藤絵理香
山田義也
平岡政展
中西研二

主催:デジタルハリウッド株式会社
協賛:カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社、デジタルハリウッド校友会、ショートショート実行委員会/ショートショート アジア実行委員会、デル株式会社、インテル株式会社、アドビシステムズ株式会社、UUUM株式会社、株式会社アイ・エム・ジェイ、ブラックマジックデザイン株式会社、NECネッツエスアイ株式会社

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