レポート

D.A.N.、Taiko Super Kicksら気鋭バンドが生む新時代の熱

テキスト
天野史彬
撮影:小田部伶 編集:飯嶋藍子
D.A.N.、Taiko Super Kicksら気鋭バンドが生む新時代の熱

時代の豊かな熱が渦巻いた84回目の『exPoP!!!!!』

自分が生きている時代の優れたポップミュージックを聴くことは、その時代において最も熱く豊かな熱運動の真っただ中に「いる」ということだ。そして「いる」という行為は、「観る」や「聴く」と同じくらい、音楽にとって重要な行為なのだ――そんなことを改めて感じさせられた夜だった。音楽アプリ「Eggs」とCINRAの共同主催によって、TSUTAYA O-nestにて開催されている無料音楽イベント『exPoP!!!!!』、その84回目の夜。出演したのは、eimie、カルメラ、Taiko Super Kicks、そしてD.A.N.の4組。

フロアの密度を上げたeimieのリアルで耽美な音

まずトップバッターとして登場したのは、eimie。ボーカルのAmyと、シンセサイザーとプログラミングのTakumaからなる男女混成ユニットで、音楽性としてはWashed OutやNeon IndianのようなUSチルウェイブ勢からの影響を感じさせるシンセポップ。

eimie
eimie

思えばUSチルウェイブ勢が登場したとき、それは「逃避的な音楽」と評価されながらも、当時の少年少女にとって極めてリアルかつエモーショナルな表現だったが、この日のeimieにも、その耽美なデカダンスの裏側に、とても生々しい人間らしさを感じた。どこか幼さとあどけなさを残す佇まいのAmy。彼女の歌声が、Takumaの生み出す音に支えられながら響き渡る様子は、まるで2人のベッドルームに招待されたかのような親密さをフロアに与えていた。

ジャズのグルーヴでフロアと交感し喜びを分かつカルメラ

続いては大阪出身、自らを「エンタメジャズバンド」と称するカルメラの登場。eimieが2人というミニマムな関係性でフロアを密室的な空間へと導いたのに対し、8人という大所帯。それも全員がボーダー柄のスーツに身を包み、「楽しませる」ことに対して全身全霊で向かってくる彼らの登場で、会場の空気は一気に開放的なものへと変貌した。

カルメラ
カルメラ

陽性のパフォーマンスで聴き手の心と身体を掌握していく様は、誰も阻害せず、どこでも勝負できる、まさに「エンタメジャズ」。今、音楽性としてジャズが時代の潮流になっているのは、「生演奏」がもたらす有機的なグルーヴ感を人々が求めているからだと思うが、カルメラの演奏にも、あくまでも「人と人」のやり取りで喜びを分かち合おうとする真心をしかと感じた。

日常で静かに燃焼するTaiko Super Kicksの心地好い低体温

3番手はTaiko Super Kicks。去年リリースされた1stアルバム『Many Shapes』がそうだったように、低温、あるいは常温、だけど確かな「熱」を感じさせる4ピースのアンサンブルが心地よく会場を満たしていく。彼らの演奏は「生活」や「心」と楽器が血管で結びついているかのような錯覚を起こさせる、そのぐらい「人生」に対してナチュラルなものだ。アルバムタイトルにもあるように「Many Shapes」な日々の中で引き起こされる心の機微は揺れ動くビートになり、心の片隅に積もった塵はノイズになって舞う。

Taiko Super Kicks
Taiko Super Kicks

思えばフィッシュマンズやOGRE YOU ASSHOLEは、その心象表現を、より巨大な光を仰ぎ、闇を暴くものへ変えていったが、Taiko Super Kicksはこの先どこへ向かうのだろう。ただ今は日常を、そして「バンド」という小さくて大きな関係性を謳歌する4人の姿が愛おしい……この日の演奏を聴きながらそんなことを考えた。

夜に光の粒子を降り注ぎ、共鳴空間を生み出したD.A.N.

そして、トリはD.A.N.。1stアルバム『D.A.N.』リリース直後とあって、会場中に期待が充満する中、サポートに小林うてなを迎えた4ピース編成で登場した彼らが見せたのは、「今、なぜ、D.A.N.なのか?」という問いに答えるかのような素晴らしいステージングだった。インディーR&B経由のメロウネス、クラウトロック的反復によるサイケデリア、バンド音楽として1音1音を生々しく響かせながら、それを「空間」を生み出すクラブミュージック的に作用させる編集センス……優れている部分は多々あれど、そのすべてをひっくるめて若者たちの夜に射す「光」として提示するその姿には、ほとんど神々しさすら宿っていると言ってもよかった。

D.A.N.
D.A.N.

そして何より特筆すべきは、彼らの音源における音の多層構造が、ライブの現場において、まるでフロアにいる人々の祈りを吸収するかのような形で再現されていた点。光の粒子になってフロア全体に溢れた音、ステージ上のメンバーの無邪気な笑顔、そして、聴き手が持ち寄ったすべての夜が、D.A.N.の音楽を形作っているのだと心の底から理解できた、そんな演奏だった。

ステージ上のたった1人のスターを見つめることで生まれる熱狂もあるだろう。だが、この日の『exPoP!!!!!』に参加した4組に共通していたのは、一つひとつの音、あるいはメンバー個々人の「体温」を折り重ねることで、生まれる磁場を大切にしていたということ。そして、音楽という空気の振動に、時代の熱と人の温もりを与え、グルーヴやハーモニーという熱運動を生み出し、フロアと共有する術に長けていた。そこにあったのは音楽という名の「営み」だった。この「営み」を生み出したのは、演奏をした4組だけでなく、あの日、あの場に「いた」すべての人々だった……ここまで書くとロマンチックすぎるだろうか? でも、僕はそう思った。

イベント情報

『Eggs×CINRA presents exPoP!!!!! volume84』

2016年4月28日(木)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-nest
出演:
D.A.N.
カルメラ
Taiko Super Kicks
eimie
料金:無料(2ドリンク別)

『Eggs×CINRA presents exPoP!!!!! volume86』

2016年6月30日(木)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-nest
出演:
チーナフィルハーモニックオーケストラ mini
HINTO
戸渡陽太
Tempalay
料金:無料(2ドリンク別)
※会場入口で音楽アプリ「Eggs」の起動画面を提示すると入場時のドリンク代1杯分無料

プロフィール

eimie
eimie(えいみー)

2014年、東京にて結成されたAmy(Vo)とTakuma(Synth/Programing)によるエレクトロニカユニット。海外のチルウェイブやシンセポップをはじめとする前衛的なサウンドを昇華し、日本では例を見ない圧倒的オリジナリティー溢れたサウンドを武器に活動開始。2015年3月に1stシングル『Carnival』をリリース、同年8月には『出れんの!?サマソニ!?』で、いしわたり淳治賞を獲得し、『SUMMER SONIC 2015』へ出演した。また、10月には初の全国流通作品『Silver Fox E.P.』をリリース。2016年は東京タワーでのライブに続き、3月にはTempalayのサポートとしてAmyが米テキサスの音楽見本市『SXSW 2016』へ出演した。

カルメラ
カルメラ(かるめら)

大阪発エンタメジャズバンド。ポップス、ジャズ、サンバ、ラテン、ロックなどあらゆるジャンルを時に楽しく、時に切なく、大阪ライクにクロスオーバーする8人組。ライブのキラーチューン“犬、逃げた。-ver. 2.0-”が、「h.ear ×WALKMAN(R)」(ソニーマーケティング株式会社)のテレビCMソングに起用。2016年3月には日本最高峰のジャズクラブ、BLUE NOTE TOKYOで異例の抜擢となるワンマンライブを開催。同年4月20日に7thアルバム「REAL KICKS」(B.T.C.Records)をリリース。オリコンインディーズチャート初登場7位にランクイン。

Taiko Super Kicks
Taiko Super Kicks(たいこ すーぱー きっくす)

東京都内を中心に活動中。2014年8月、ミニアルバム『霊感』をダウンロード・フィジカル盤ともにリリース。2015年7月、FUJI ROCK FESTIVAL'15「ROOKIE A GO-GO」に出演。2015年12月23日、ファーストアルバム『Many Shapes』をリリースした。

D.A.N.
D.A.N.(だん)

2014年8月に、櫻木大悟(Gt,Vo,Syn)、市川仁也(Ba)、川上輝(Dr)の3人で活動開始。様々なアーティストの音楽に対する姿勢や洗練されたサウンドを吸収しようと邁進し、いつの時代でも聴ける、ジャパニーズ・ミニマル・メロウをクラブサウンドで追求したニュージェネレーション。『FUJI ROCK FESTIVAL '15《Rookie A Go Go》』に出演。『FUJI ROCK FESTIVAL '16』への出演が決定している。

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