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「関和亮のように活躍するには?」との質問に本人がバッサリ回答

『東京国際プロジェクションマッピングアワード vol.1』
テキスト
タナカヒロシ
撮影:鈴木渉 編集:宮原朋之
「関和亮のように活躍するには?」との質問に本人がバッサリ回答

関和亮の知られざる下積み時代、音楽チャート番組ばかり見て、闘志を燃やしていた

若手クリエイターの才能発掘、育成に向けて創立された『東京国際プロジェクションマッピングアワード』。東京ビッグサイトの建物を巨大なスクリーンにして、国内外の学生たちによるプロジェクションマッピング作品を披露する、上映会・表彰式が、12月17日に開催される。その本番を目前に控えた11月23日、アワードにエントリーした学生たちを対象にしたトークイベントが都内にて行なわれ、同アワードの審査員でもある映像監督の関和亮が、約1時間にわたって映像談義を繰り広げた。

ライターの深沢慶太が進行役となって進められたイベントは、まずは台本に従って関の学生時代の話からスタートするはずだったが、いきなりちゃぶ台をひっくり返すようなエピソードで幕を開けた。大学進学で長野県から上京した関だったが、学校に馴染めず3か月で不登校になり、実家に除名通知が届いて親から勘当されかけたそうなのだ。

左:関和亮、右手前:深沢慶太
左:関和亮、右手前:深沢慶太

しかし、中高生の頃から深夜の音楽チャート番組を見ては、映像の仕事につきたいと思っていたという関は、なんとかして映像業界へ潜り込めないか画策。運良くバイト先の店長から映像関係の知人を紹介してもらうと、荷物持ちや弁当の発注など、本人曰く「全然映像関係ないじゃん」という仕事からキャリアをスタートさせたそうだ。

歌詞、サカナクションメンバー、歩く、アラウンド。自然とたどり着いた答えが話題騒然のPVとなる

今の活躍からは想像もできない下積み時代が語られた後は、関が監督したPVを視聴しながら、撮影裏話を聞けるという贅沢な時間に。まず最初に流されたのは、関の出世作とも言えるサカナクションの“アルクアラウンド”(2010年)。

サカナクション“アルクアラウンド”

「大変だったと言い過ぎると見方が変わってしまうので」と前置きしつつも、セッティングだけでも10時間以上、撮影開始は深夜12時近くまで押し、OKテイクが撮れたのは夜明けの直前だったそう。しかし、この斬新なアイデアは、メンバーからの歌詞を見せたいという希望と、メンバーを出したいという関の希望、さらに「歩く」「アラウンド」といったタイトルから想起させるイメージをすべて詰め込んだ結果、自然とたどり着いた答えだったとのことで、その発想術には多くの学生が感銘を受けていた。

 

木村カエラの歌詞から膨らませた映像演出。単調さを避ける巧妙な「あえて」の判断

続いては紹介されたのは、「うちの母親はこれがいちばん好き」と関が語る木村カエラの“Sun shower”(2012年)。プロジェクターで投影された背景がリアルタイムで変化していくのが大きな見どころの作品だが、これも決してアイデアありきで撮ったPVではなく、<真っ白な雲の 色に染めて>という歌詞から膨らませた結果、本人の動きに合わせて絵の具で描いたような背景が動くという設定にたどり着いたとのこと。また、背景合成に見えることと、単調な映像になることを避けるため、あえてスタッフを映り込ませたそうで、映像を見る側の印象を想定した巧妙な手腕が際立つエピソードが語られた。

木村カエラ“Sun shower”

PerfumeのPVにみる多数の専門家を束ねる監督としての手腕

3作品目は関が数多くのPVを手がけているPerfumeの“Magic of Love”(2013年)。こちらもタイトルから想起し、「いかにトリックやギミックを入れられるかに挑戦した」という作品。「映像は刺激物だと思っている」というビビッドな色使いは、衣装やメイク、照明など、それぞれのプロと綿密な打ち合わせをして撮影に臨んだそうだ。PVの制作現場は「専門職の集まり」という関の言葉は、監督という仕事の本質を表していたようだった。

左:関和亮

思わず監督も感動したOK Go空撮PV、地上700mの高さで起こった奇跡

最後は関の名を世界に轟かせたOK Goの“I Won't Let You Down”(2014年。ダミアン・クーラッシュとの共同監督)。「彼らは絶対にカットを割らないのが基本なので、そのプレッシャーたるやすごかった」と回想する制作は、企画から編集が終わるまでに実に半年をかけたそう。

撮影に使ったドローンは運転担当や電波管理担当など、1台を動かすために4~5人で作業したとのことで、最終的には約700mの高さまで上昇。最後はスタッフも予想していなかった雲が現れ、関は地上でモニターを見ていて「鳥肌が立ちました」と、当時の感動を語ってくれた。

OK Go“I Won't Let You Down”

シンプルながら鋭く的確な批評眼で、昨年のアワード優秀作品を講評する

イベント後半では、今年3月に開催された『東京プロジェクションマッピングアワード vol.0』の入賞作品を講評。「東京ビッグサイトの建物に自分の作品を流せるなんて、こんな贅沢な話はないですよね」と、うらやましさすら感じていた様子の関。最優秀賞を受賞した『PLUS ONE』(SHIFT / 首都大学東京 インダストリアルアートコース)に対しては、「展開がたくさんあって、見てて飽きない」と評し、普段はインテリアのデザインをしている学生たちが作ったと聞いて驚きを隠せないようだった。

『PLUS ONE』(SHIFT / 首都大学東京 インダストリアルアートコース) 東京プロジェクションマッピングアワードvol.0

左から:関和亮、深沢慶太

続いて優秀賞の2作品。「問題作」と物議を醸した『Tamping Traveler』(テクノ家 / 多摩美術大学)には、「大きいスクリーンで、壮大な話になっている。確かに問題作ですね(笑)」と言いつつ、「見て面白ければいい」とアニメーションとしての出来栄えを評価。

『Tamping Traveler』(テクノ家 / 多摩美術大学) 東京プロジェクションマッピングアワードvol.0

クラブミュージックとシンクロさせた『CYBER-TRIP』(VISIONICA / デジタルハリウッド大学)には、「(2つの三角形の)真ん中にDaft Punkがいてもおかしくないですよね。本当にDJがいるんじゃないかな?」と、感心の声をあげていた。

『CYBER-TRIP』(VISIONICA / デジタルハリウッド大学) 東京プロジェクションマッピングアワードvol.0

今まさに応募作品を作っている学生に対して、関和亮が送る愛のこもったアドバイス

最後は来場した学生たちとの質疑応答。「関さんのように映像もやったり、グラフィックもやったり、多方面で活躍するためには、今何をすべきですか?」という学生には、「勉強するしかないよね」とバッサリ。関自身、学生時代の美術の成績は「1か2だった」そうだが、興味を持ったものには、とにかく1回は手を出してきたことが、今につながっているとのこと。しかし、今でも勉強しておけばよかったと後悔することが数え切れないほどあるそうだ。

 

そして、今まさに応募作品を制作している学生の「どうしても意見が合わず、別の方向を向いてしまった人たちを、うまく組み合わせる方法は?」というお悩みに対しては、「あなたが取りまとめているなら、自分がいちばんいいと思うものを取捨選択するしかない」と、こちらもバッサリ。自身が撮影中に当初の計画が困難な状況に陥ったとき、プロデューサーに相談し「ぜひやりきってください」と言われたことで、結果うまくいったという体験談も交え、「人の話を聞くとか、いろんな人と話をするのは、映像を作っていくうえで大事な作業になるから、そこは逃げずにとことん付き合う。言いたいことは言ったほうが、絶対いい作品になると思います。そこは腕の見せどころだよね」と、愛のあるアドバイスを送った。

関和亮

応募作品の制作が大詰めを迎えるなかでのイベントで、学生たちには制作のヒントが山ほどあったのではないだろうか。すぐに結果が出る類のものではないが、今年の、そして来年以降の『東京国際プロジェクションマッピングアワード』で、関和亮の薫陶を受けた学生たちが作り上げる作品を楽しみにしたい。

イベント情報

『東京国際プロジェクションマッピングアワード vol.1』

2016年12月17日(土)16:30開場、17:00~18:10上映会(予定)
会場:東京都 有明 東京ビッグサイト 会議棟前広場
料金:無料

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