レポート

『exPoP!!!!!』レポ yule、クアイフら五者五様の熱に沸いた夜

テキスト
天野史彬
撮影:瀬能啓太 編集:山元翔一
『exPoP!!!!!』レポ yule、クアイフら五者五様の熱に沸いた夜

沖縄から来た、体重130kgオーバーのフロントマン擁する3人組

2月23日、音楽アプリ「Eggs」とCINRAの共同主催による入場無料のマンスリーイベント『exPoP!!!!!』が、TSUTAYA O-nestにて開催された。

トップバッターは、沖縄出身の3ピースバンド、caino。沖縄という土地は音楽的にミクスチャー文化が根強い土地で、cainoは一見、沖縄の風土はあまり感じさせないオルタナサウンドなのだが、その実、まるで軟体動物のように曲ごとに姿を変える奇妙なギターロックを鳴らす。

NUMBER GIRL風の鋭角なリフが映えたと思えば、優しくメランコリックなメロディーが寄り添うように響き、太くファンキーなダンスビートが会場を揺らす。その雑多なサウンドの根幹を支えるは、公式プロフィールによれば体重130kg以上もあるというギターボーカル、高良豊のハイトーンボーカル。佇まいやパフォーマンスはユーモラスながら、その歌声には、声にならない叫びを「歌」という手段に託すしかなかった、情けなくも暑苦しい男の切ない生き様が刻まれていた。

高良豊(Gt,Vo)
高良豊(Gt,Vo)

毒気のないキャラと抜群のメロディーで幸福感を生み出したTENDOUJI

続いては4ピースバンド、TENDOUJI。去年『exPoP!!!!!』にも出演していたドミコやTempalayらと共に、この時代、この日本において、「ロックンロール」を再定義するバンドの1組だ。

TENDOUJI
TENDOUJI

その音楽は、白にも黒にも、善にも悪にも左右されない場所で、「全部、どーでもいいじゃん」と言わんばかりに、あっけらかんと鳴っている。音源ではマック・デマルコ辺りのUSインディーロックと共振するローファイでサイケデリックな音像を聴かせているが、ライブで聴くと、より音の輪郭ははっきりとしてサウンドも疾走感を増し、Hi-STANDARD的なパンキッシュさすら感じさせる。“Mayonnaise”やSkippy”など、彼らの曲はとにかくメロディーが抜群にいい。

そんなTENDOUJIがドミコやTempalayら同世代と違うのは、その毒気のなさ。どこか社会や時代に対して隠しきれない苛立ちを音に滲ませる2バンドとは違い、TENDOUJIはひたすら甘く揺らめいている。彼らがステージにいた30分間、ひたすらにユーフォリックな感情がフロアを支配していた。

アサノケンジ(Vo,Gt)
アサノケンジ(Vo,Gt)

Lee&Small Mountainsの、熱く、語りかけるような魂の音楽

3番手は、今年1月に曽我部恵一主宰の「ROSE RECORDS」より1stフルアルバム『カーテン・ナイツ』をリリースしたばかりのLee&Small Mountains。バックバンドが鳴らすメロウなソウルアンサンブルのなかで響く、中心人物、リーファンデの魂から汗がしたたり落ちるような歌声は、力強くありながらも、聴き手に対して「語りかける」という表現がしっくりくるような等身大の魅力がこもっている。

Lee&Small Mountains
Lee&Small Mountains

時にソウルミュージックというのは、得体のしれない巨大な力を表現するもののようにも思えるだが、リーファンデにとって「ソウル」とはきっと、自らの生活、そこで見たもの、出会った人、考えたこと……そうした身近なもののなかにこそ宿るものであり、だからこそ、彼の歌声には「寄り添うソウル」とでもいうような等身大の魅力があるのだろう。

この姿は、どこかレーベルオーナーの曽我部恵一の歌の在り方にも通じる。リーファンデという男の人となりや人生がソウルミュージックに乗って伝わってくる、体の芯から熱くなるステージだった。

リーファンデ
リーファンデ

別世界へ連れ出されるような、yuleの壮大で幻想的な音楽

4番手は、男女混合6人組バンド、yule。未だ結成2年ほどながら、今年2月にリリースした1stフルアルバム『Symbol』が素晴らしい完成度を誇っていた彼らだが、そのライブもまさに圧巻。

yule
yule

演奏は、アルバムでは内省的な後半への導入部に配置されていた“Morgenrot”でドープに幕を開け、一気にyuleの世界観の最深部に到達。続く“ゴーストタウン”から”Symbol”の流れで、その深みは壮大なアンサンブルと共に一気に覚醒し拡散されていく。

ReiとAnnaの男女ツインボーカルは調和と対話を繰り返すように世界観を広げていき、シンセ、パーカッション、グロッケンシュピール、マンドリンなどを駆使した音世界は、幻想的なサウンドスケープを描きながら、肉体と脳内を強烈に刺激する。ラストの“羊が眠る頃”のノイズシンフォニーに至っては、本気で別世界に連れて行かれているような感覚を覚えた。

左から:Anna(Vo)、Rei(Gt,Vo)
左から:Anna(Vo)、Rei(Gt,Vo)

yuleの音楽は、コンポーザーであるReiが見つめる現実世界と、その想像力が連れ出す桃源郷的世界の間を常にさまよっている。この日の演奏も、孤独と神聖さに同時に身を浸すような特別な体験を味わわせてくれた。

「ポップス」であることを力強く体現するクアイフが描き出した理想主義

この日のトリを飾ったのは、今年、メジャーデビューすることが発表されている名古屋の3ピース「プログレッシブピアノポップバンド」、クアイフ。「プログレッシブ」と「ポップ」――つまり「急進」と「普遍」を「ピアノ」で繋ぐというのは、まさにクアイフの音楽性そのもの。

冒頭の“Wonderful Life”から、まず耳に飛び込んでくるのは精錬されたメロディー。その根底を支える内田旭彦と三輪幸宏のリズム隊はどっしりとした安定感を持ちながらも、時に変態的に、時にダイナミックにうなる。強烈に激しいドラミングが曲に一筋縄ではいかない躍動感を与え、しかし、それに掻き消されないぐらい普遍性の高いグッドメロディーと紅一点ピアノボーカル、森彩乃の力強い歌声が、楽曲に「ポップス」としての存在感を与えていくようだ。

森彩乃(Vo,Pf)
森彩乃(Vo,Pf)

去年の暮れにリリースされたEPから演奏された“snow traveler”や、名古屋グランパスのオフィシャルサポートソングとなっている “Don't Stop The Music”など、この1年でバンドのスケールが飛躍的に大きくなったことがわかるポップソングを響かせる。本編最後に演奏された“good morning”、そしてアンコールの“ソングフォーミー”では、「音楽とは伝播するものなのだ、優しさや切なさを聴き手に与えるものなのだ」という、バンドが掲げる理想主義が光のようにフロアを包み込み、美しい景色が広がっていた。

イベント情報

CINRA×Eggs presents
『exPoP!!!!! volume94』

2017年2月23日(木)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-nest
出演:
Lee&Small Mountains
TENDOUJI
yule
クアイフ
caino(オープニングアクト)

CINRA×Eggs presents
『exPoP!!!!! volume95』

2017年3月30日(木)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-nest
出演:
DATS
PAELLAS
踊る!ディスコ室町
バレーボウイズ
Sentimental boys(オープニングアクト)
料金:無料(2ドリンク別)

プロフィール

caino
caino(かいの)

高良豊(Gt,Vo)、兼島紳(Dr,Cho)、田盛安一(Ba,Cho)からなる「『歌』を根幹にあらゆるジャンルをPOPで噛み砕く!! ボーダーレスミュージックバンド」。エモ、ポストロック、オルタナティブなどから強く影響を受け、その全てをポップへと昇華、叙情的な歌詞と直情的なメロディーを武器に130kgの巨体から放たれるハイトーンボイスと緻密なアンサンブルでミュージックシーンを席巻するポップロックバンド。全国発売の1stミニアルバム『mahoroba』は2015年12月度のタワレコメンに選出され、タワーレコード那覇りうぼう店の2016年度沖縄音楽アルバム部門売上3位を記録する。

TENDOUJI(
TENDOUJI(てんどうじ)

2014年、中学時代の同級生と後輩によって結成。バンド結成1か月で制作した1st DEMO(3曲入り)を各ショップやライヴハウスで無料配布し、話題を呼ぶ。その枚数は1000枚以上。東京のアンダーグラウンドシーン / インディーポップシーンで徐々に認知度を高め、『JUKEBOX』や『New Action!』をはじめ各地のイベントに出演しながら着実に動員を伸ばしてきた。その国籍不明の軽やかな音楽性から、UKやUSのアーティストのオープニングアクトも務め、これまでに、NORTON、Homeshake等とも共演。この海外アーティストたちとの共演がきっかけとなり、2015年3月には楽曲"GROUPEEEE"がイギリスの音楽サイト『POWER POP GUMDROP』の「SONG OF WEEK!!」に選定されるという日本人初の快挙を成し遂げる。2017年も持ち前のキャラクターで話題を意のままに操っている。

Lee&Small Mountains
Lee&Small Mountains(りー あんど すもーる まうんてんず)

リーファンデのソロプロジェクトにして、彼を中心とする熱きソウルを携えたR&B楽団。ホーンセクションを交えたソウルバンド形態をベースに、弾き語りなど様々な編成でライブ活動を展開する。自主企画イベント『Love can move mountain!』には、これまでに曽我部恵一や奇妙礼太郎などが出演。自主制作でリリースを重ねたのち、2015年10月に7inchシングル『Teleport City』をROSE RECORDSよりリリース。凄腕のミュージシャンらを従え制作されたデビューアルバム『カーテン・ナイツ』を2017年1月にリリースしたばかり。

yule
yule(ゆーる)

yuleはRei(Gt,Vo)、Anna(Vo)、mag(Gt)、Iwao(Gt,Synth,Glockenspiel)、Tetsutaro(Ba)、fumi(Dr)からなる東京の男女混声6人編成バンド。2015年1月、ボーカルのRei、Annaを中心に結成。男女混声のボーカルを中心にアコースティックギター、マンドリン、グロッケンシュピール、シンセサイザーなど多彩な楽器を加えたサウンドが特徴。2016年7月、販売終了した1st EP『Sleep』を再生産しタワーレコード渋谷店で限定販売を開始しスマッシュヒット中。その後タワーレコード新宿店・タワーレコード梅田大阪丸ビル店でも取り扱い開始。早耳の音楽ファンの間で話題となりつつある2017年間違いなく注目されるバンド。

クアイフ
クアイフ

華麗なるピアノボーカル・森彩乃擁するプログレッシブピアノポップバンド、クアイフ。2012年3月、音大クラシックピアノ科出身で数々のピアノコンクール受賞歴のある森彩乃を中心に結成。2016年4月に初のタイアップ楽曲2曲含む2ndミニアルバム『Life is Wonderful』をリリースし、東名ワンマンをソールドアウト。確実にその輪を広げる中、1st EP『snow traveler』を12月にリリース。リリースを記念して地元名古屋にて行われたワンマンライブにて、2017年にEPICレコードジャパンからメジャーデビューすることが発表され、今後の活躍から目が離せない。

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