レポート

Suchmosが仕掛けた「渋谷・原宿ジャック」の全貌を振り返る

テキスト
金子厚武
撮影:関口佳代 編集:矢島由佳子
Suchmosが仕掛けた「渋谷・原宿ジャック」の全貌を振り返る

物語が隠されていた14分のショートフィルム

6月23日、SuchmosがYouTubeで一本のショートフィルムと、ジャーナリスト森健によるライナーノーツを公開した。

これまでもSuchmosのミュージックビデオを手掛けてきた同年代の映像作家・山田健人による14分のショートフィルム序盤に登場するのは、「F.C.L.S.」というロゴが入ったパーカーを着た、全身黒の何やら怪しげな人々。これは、4月27日に新木場STUDIO COASTで開催された『TOUR THE KIDS』追加公演開演前の会場周辺の様子だ。当日は僕も「変な人たちがいるな……」と思いながらSTUDIO COASTに向かったのだが、この日のアンコールに自主レーベル「F.C.L.S.」の立ち上げが発表され、会場の外に出ると、彼らが風船を配るというサプライズな演出があった。

映像の後半では、黒パーカーの一人がSuchmosのロゴステンシルシートを箱に入れ、新木場から渋谷へと向かう。そこで同じ格好の人々へと箱が手渡されていき、最後にはそのステンシルシートを使って、様々な場所にSuchmosのロゴがスプレーされていく。

そして、ロゴと共にパーカーに記載された電話番号にかけてみると、「7月3日、渋谷駅に行って電話せよ」というアナウンス。公開当初は「?」だったが、実はこれには明確な物語性があり、「F.C.L.S.」からの第一弾作品『FIRST CHOICE LAST STANCE』のリリースに伴うプロジェクトのヒントだったのだ。

渋谷・原宿・代官山がSuchmosで埋め尽くされた

『FIRST CHOICE LAST STANCE』の発売週の月曜日、7月3日に実際に渋谷駅で例の番号にかけてみると、「渋谷駅 山手線 新宿方面 原宿駅」というアナウンス。これはSuchmosのポスターの場所を意味していて、実際にこの日、渋谷駅の山手線ホームと原宿駅構内、さらには裏原エリアに数多くのポスターが貼り出された。

渋谷駅構内(7月3日、4日時点)
渋谷駅構内(7月3日、4日時点)

原宿駅構内(7月3日、4日時点)
原宿駅構内(7月3日、4日時点)

裏原エリア。この辺りでは、計7か所のスポットをSuchmosが「ジャック」していた

裏原エリア。この辺りでは、計7か所のスポットをSuchmosが「ジャック」していた

裏原エリア。この辺りでは、計7か所のスポットをSuchmosが「ジャック」していた
裏原エリア。この辺りでは、計7か所のスポットをSuchmosが「ジャック」していた

これだけでも十分インパクトがあったのだが、CDの発売日である7月5日にはさらなる驚きが。これらのポスターが「ジャック」され、全面にスプレーロゴが描かれていたのだ。

さらに、バンドと縁のある気鋭のアーティスト6組が、ポスターをキャンバスにグラフィックアートを展開。Suchmosのグッズデザインも担当するYUGO.をはじめ、MOTTY、透明回線、217(nina)、WHOLE9、SAYORI WADAがそれぞれの作風でポスターを「ジャック」し、駅構内はさながらアートギャラリーのような雰囲気へと生まれ変わっていた。

YUGO.(渋谷駅)
YUGO.(渋谷駅)

WHOLE9(渋谷駅)
WHOLE9(渋谷駅)

SAYORI WADA(渋谷駅)
SAYORI WADA(渋谷駅)

透明回線(原宿駅)
透明回線(原宿駅)

217(nina)(原宿駅)
217(nina)(原宿駅)

MOTTY(原宿駅)
MOTTY(原宿駅)

Suchmosのロゴは他にも渋谷の様々な場所に出現。タワーレコードやTSUTAYA、楽器屋などに加え、スクランブル交差点の大型ビジョン3面を使って2種類の映像を公開。

また、代官山の蔦屋書店では「ロゴステンシルスポット」が開設され、『FIRST CHOICE LAST STANCE』に封入されたロゴステンシルシートを使って、持参したTシャツまたはトートバックに無料でスプレーをしてもらうことができた。

こうしてショートフィルムが現実となり、渋谷・原宿・代官山がSuchmosのロゴで埋め尽くされると、さらにはそれがSNSを通じて拡散され、日本中に広がっていったのである。

重要なのは驚きと楽しさ。変化する「プロモーション」の概念

昨年12月には地元の神奈川で一夜限りの『Suchmos DRIVE IN THEATER』(レポート記事:Suchmosが1日限りで復活させた「ドライブインシアター」を取材)を開催するなど、これまでもSuchmosは常にファンがワクワクするような仕掛けを展開してきた。これは今年の春にバンドのプロデューサーでもあるマネージャー・金子悟に取材をした際、彼が語ってくれた「音楽業界のプロモーションがルーティーンになっているのではないか?」という疑問に対しての、実践的な解答だと言っていいだろう(インタビュー記事:なぜSuchmosはブレイクできた?マネージャー・金子悟が語る)。

今こうした動きは世界中に広がっていて、例えば、今年の『FUJI ROCK』でグリーンステージのトリを務めたAPHEX TWINが2014年に復活した際、所属レーベルであるUKの名門「WARP RECORDS」は、ロンドンでロゴの入った飛行船を飛ばし、東京でも各所にステッカーが貼られるというゲリラ的なプロモーションを展開して、世界中を驚かせた。

前述のインタビューでも語られていたように、かつてUKのクラブカルチャーを現地で体験している金子からすれば、こうしたストリート感のあるプロモーション方法は、Suchmosと行動をともにするにあたって、大きなインスピレーション源になったはずだ。先日Hi-STANDARDの新作を告知する看板が突如現れ、大きな話題を呼んだことも記憶に新しいが、日本においてもこうした流れが業界全体を活性化していくことは間違いない。

この夏のSuchmosは『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』『RISING SUN ROCK FESTIVAL』『SUMMER SONIC』といった全国各地の大型フェスをにぎわせ、さらに10月からは『TOUR FIRST CHOICE LAST STANCE』の開催も発表されている。そのときはきっとまた新たな試みで、僕らをワクワクさせてくれるはずだ。

リリース情報

Suchmos『FIRST CHOICE LAST STANCE』
Suchmos
『FIRST CHOICE LAST STANCE』(CD)

2017年7月5日(水)発売
価格:1,080円(税込)
KSCL-2940

1. WIPER
2. OVERSTAND

イベント情報

Suchmos
『TOUR FIRST CHOICE LAST STANCE』

2017年10月7日(土)
会場:北海道 Zepp Sapporo

2017年10月13日(金)
会場:広島県 BLUE LIVE 広島

2017年10月15日(日)
会場:福岡県 DRUM LOGOS

2017年10月16日(月)
会場:福岡県 DRUM LOGOS

2017年10月21日(土)
会場:宮城県 仙台GIGS

2017年10月28日(土)
会場:愛知県 Zepp Nagoya

2017年11月4日(土)
会場:大阪府 Zepp Osaka Bayside

2017年11月5日(日)
会場:大阪府 Zepp Osaka Bayside

2017年11月10日(金)
会場:東京都 お台場 Zepp Tokyo

2017年11月11日(土)
会場:東京都 お台場 Zepp Tokyo

2017年11月19日(日)
会場:東京都 豊洲PIT

料金:各公演4,500円(ドリンク別)

プロフィール

Suchmos
Suchmos(さちもす)

2013年1月結成。ROCK、JAZZ、HIP HOPなどブラックミュージックにインスパイアされたSuchmos。メンバー全員神奈川育ち。Vo.YONCEは湘南・茅ヶ崎生まれ、レペゼン茅ヶ崎。都内ライブハウス、神奈川・湘南のイベントを中心に活動。バンド名の由来は、スキャットのパイオニア、ルイ・アームストロングの愛称サッチモからパイオニアとなるべく引用。普段からバイブスを共有していた、YONCE(Vo)、HSU(Ba)、OK(Dr)、TAIKING(Gt)、KCEE(Dj)、TAIHEI(Key)の6人グループ。

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