
なぜSuchmosはブレイクできた?マネージャー・金子悟が語る
CAMPFIRE- インタビュー・テキスト
- 金子厚武
- 撮影:CINRA.NET編集部 編集:矢島由佳子
日本のエンターテイメント業界の最前線で戦い続ける人物に話を聞く連載『ギョーカイ列伝』。第7弾に登場するのは、Suchmosのマネジメントや制作を手掛ける、スペースシャワーネットワークの金子悟。
今年の1月に発表した、Suchmosの2ndアルバム『THE KIDS』はオリコンのウィークリーチャートでAKB48に次ぐ2位を獲得し、現在までにCDセールスが17万枚を突破。広くファッション業界も巻き込んでの盛り上がりによって、最近では彼らの名前を聞かない日はないと言ってもいいくらいの状況であり、そのマネージャーである金子の考えは、今あらゆる業界の人間が気になっているのではないだろうか。
自ら音楽活動をし、イベントを開催していた学生時代から、マネジメントの世界へと足を踏み入れ、Suchmosとの偶然の出会いから今に至る金子の足跡を振り返ると、そこにはルーティーンを嫌い、カウンターであろうとする、バンドとまったく同じメンタリティーが見えてきた。そして、その精神性こそが、現在のSuchmosの成功につながったのだと言えよう。まさに、彼は「第7のメンバー」なのである。
「Suchmos」という色をバンドに塗り足していくような作業を、徹底してやってきたと思っています。
―1月にリリースされた『THE KIDS』が大きな反響を呼んでいて、Suchmosは本格的なブレイクを果たしたと言っていいかと思います。金子さんは現在の状況をどのように感じていらっしゃいますか?
金子:デビューからやってることは変わってないんですけど、彼らが今まで生きてきたなかで培ったバックボーンを提示して、それが空気として、匂いとして、広がってきている実感があるのはすごく嬉しいです。ずっとインディーシーンで頑張ってやってる人たちの自信につながったらいいなとも思いますね。
―マスに向けて広めていくためには、やり方を変えなくても、自分たちらしさを突き詰めていけばいいと。
金子:そうですね。音楽業界のマーケティングとかプロモーションに対してずっと思ってたのが、「ルーティーンになってるな」ということで。「とりあえず、あのメディアに露出すればいい」とか「どこに広告を打てばいい」とか、そういうことが多いんじゃないかな、と。
そうではなくて、バンドのことをしっかり理解して、それぞれに合ったやり方を考え抜くことが重要なはずですよね。僕は2ndアルバムを出すまで、「Suchmos」という色をバンドに塗り足していくような作業を、徹底してやってきたと思っています。
―テンプレートに当てはめるだけでは、物事は進まないし、ヒットも生まれない。
金子:そう。アーティスト自身がなにを考えて、どういう音楽を生み出そうとしているか、ちゃんと把握しておかないといけないと思っています。
そのためには、メンバーとの会話のキャッチボールが重要で。ツアーの移動中の車のなかとか、ふざけた話が8割ですけど、そのなかでも「これはわりと本気で言ってるな」とか「こういうことをやりたいんだな」っていうのを、いかに僕がキャッチできるか。そこは意識してる部分ですね。
―個人的に、金子さんは「第7のメンバー」というイメージがあります。昨年の『FUJI ROCK』の後には、メンバーと一緒にグアム旅行に行かれてましたよね?
金子:メンバー全員と、僕と、現場マネージャーの八人で行きました。あそこまでずっと詰め詰めのスケジュールで動いてたんですよ。でも、彼らはもともとOK(Dr)とKCEE(DJ)の家に集まって、夜な夜な好きな音楽を聴いたりYouTubeを見たりして時間を共有していたので、そういう時間を作ってあげたかったんです。
それぞれ自由行動だったんですけど、僕はずっと海にいて、そこにメンバーが一人ひとり入れ代わり立ち代わり来て、Suchmosの話は抜きに、いろんなことを話しました。最後の夜、みんなでビーチに集まってビールを飲みながら見てた景色は、もう曲になってます。昨日レコーディングだったんですけど、すごくいい曲なんですよ。
“STAY TUNE”に関しては、デモの段階から「これだな」って思ってました。
―Suchmosのヒットにたどり着く歩みのなかで、転機はいつだったとお考えですか?
金子:彼らの意識が変わったのは、『LOVE&VICE』(2nd EP、2016年1月発売)のツアーですね。初めての全国ツアーで、それまでは「彼ら六人にとってかっこいい音楽であればいい」という意識だったんですけど、それは前提としてありつつも、自分たちのライブが初めてホームと呼べる空間になったときに、彼らはちょっと戸惑ったんです。
―初めてオーディエンスとの関係を意識したタイミングだったと。
金子:はい、そこから大きく変わったと思います。同時期にフェスにも出演するようになって、ライブに対する臨み方について、メンバーミーティングをより密にやるようになりました。そこから彼らの表情や意識が変わったなって思います。
―『LOVE&VICE』には“STAY TUNE”が収録されていて、あの曲がバンドの知名度を一気に高める契機にもなりましたよね。
金子:“STAY TUNE”に関しては、デモの段階から「これだな」って思ってました。<Stay tune in 東京 Friday night>というフレーズが、ピチカート・ファイヴの<東京は夜の七時>というフレーズともリンクして、相当なパンチラインだなって思ったんですよね。
歌詞には結構ディスも入っているので、世間からいろいろ言われるかなと思いつつ、あの曲の都会的な部分と、車のCMと、いろんな要素がしっかりハマったのかなって思っています。
ウェブサイト情報

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リリース情報

- Suchmos
『THE KIDS』(CD) -
2017年1月25日(水)発売
価格:2,700円(税込)
PECF-31741. A.G.I.T.
2. STAY TUNE
3. PINKVIBES
4. TOBACCO
5. SNOOZE
6. DUMBO
7. INTERLUDE S.G.S.4
8. MINT
9. SEAWEED
10. ARE WE ALONE
11. BODY
プロフィール
- 金子悟(かねこ さとる)
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スペースシャワーミュージック事業本部 制作部 金子ルーム プロデューサー。1979年生まれ。2006年、株式会社パルコ入社。2012年、スペースシャワーネットワークに入社。Suchmos、SISTERJETのマネージメント / A&Rを務める。