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椿昇が発案 アート業界を覆す破天荒なアートフェアを京都で取材

『ARTISTS' FAIR KYOTO』
テキスト
島貫泰介
撮影:伊藤信 編集:宮原朋之
椿昇が発案 アート業界を覆す破天荒なアートフェアを京都で取材

「京都ではオルタナティブであることが普通なんです」(金氏)

さまざまに型破りな『ARTISTS’ FAIR KYOTO』だが、とりわけ特徴的なシステムを紹介しておこう。椿は全体を統括するディレクターだが、その他に「アドバイザリーボード」という耳慣れないポジションがある。そこには金氏徹平、塩田千春、名和晃平、ヤノベケンジといった、第一線で活躍する12名の作家たちが名前を連ねている。

会場外には風変わりな石焼き芋屋の車が着けられ、アートユニット・ヨタのパフォーマンスが行われた
会場外には風変わりな石焼き芋屋の車が着けられ、アートユニット・ヨタのパフォーマンスが行われた

アドバイザリーボードのメンバーは、それぞれが20~30代前半の若手アーティストを数名ずつセレクトし、一部の例外を除いて、ともにこのフェアに出品者として参加する。つまり、ここでもアーティストによるアートフェアというアイデアが徹底されているのだ。アドバイザリーボードの一人である金氏は、小松千倫、NAZE、矢野洋輔の三人をセレクトした。

金氏:椿さんからはまだギャラリーに所属していないアーティストを選んでほしい、と言われてちょっと悩みました(笑)。でも考えてみると、関西ってギャラリーアーティストではない人のほうが多いんですよ。

東京には大小のギャラリーがひしめいていて、そこで展示をすることが「勝負」って感じですよね。だけど、京都ではオルタナティブであることが普通なんです。

みんな誰から頼まれることもなく自前で展覧会をやったり、遊びでもするみたいにプロジェクトを立ち上げている。その自由な空気があるから、実験することを恐れないし、失敗しても気にしない。結果的に、それが海外での活動展開につながっていくこともあるんです。

 

コンパクトで個人主義、長い歴史を持つ京都の街は、アーティストに東京とは異なる視野を与えてくれる

ここ数年、東京から地方に拠点に移すクリエイターやアーティストは多い。そこには文化庁の京都移転や、2020年の東京オリンピック開催という、大きな変化の影響があるかもしれない。だが、やはり昨年東京から京都へと生活拠点を移した私自身の体感で言うと、じっくり時間をかけて創作に向き合いたいアーティストたちにとって、京都が理想的な制作環境であることも、また大きな理由と思われる。

サテライト会場となっていた前田珈琲の店内。参加作家の作品がごく自然に展示されている
サテライト会場となっていた前田珈琲の店内。参加作家の作品がごく自然に展示されている

京都の街のコンパクトさが生むつきあいの親密さと、ほどよく放任し黙認してくれる個人主義。また、長い歴史を持つ京都の芸術・文化の深度は、情報とトレンドがたえまなく往き交うメガシティ東京とは異なる視野を与えてくれる。そしてそれは、作家と作品に強さと批評性をもたらす。

例えばそれは、出品者であるNAZEの作品に見てとれる。グラフィティーに代表される、ストリートで展開されてきた表現の身体感覚や環境への適応力を特徴とする彼の作品は、ジャングルジムのように入り組んだ空間のなかでいきいきと展開している。

展示されていたNAZEの作品
展示されていたNAZEの作品

NAZE:僕の作品のスタイルだと、きっちりしたギャラリースペースよりも、こういうフェンスで囲まれた空間のほうがやりやすい感じがあります。自分の作品越しに他の人の作品が見えるのも面白い。ドローイングやグラフィティーを描くスピード感は、「焦り」を僕の身体や感情に与えてくれて、直感が研ぎ澄まされる。それが作品に深みを加える気がします。

NAZE
NAZE

NAZEは、殴り合いのようなアクションを振付として提示するグループcontact Gonzoのメンバーでもあるのだが、パフォーマンスという別の領域で培われた直感力が、今回のような変化球的空間でも生きているのが面白い。関西のアーティストの層の厚さ、多ジャンル間の交流の活発さが、NAZEの作品から垣間見える。

NAZEによる床へのドローイング
NAZEによる床へのドローイング

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イベント情報

『ARTISTS' FAIR KYOTO』

2018年2月24日(土)、2月25日(日)
会場:京都府 烏丸御池 京都文化博物館 別館
時間:10:00~18:00
料金:1,000円

プロフィール

椿昇(つばき のぼる)

京都市立芸術大学美術専攻科修了。1989年のアゲインストネーチャーに「Fresh gasoline」を出品、展覧会のタイトルを生む。1993年のベネチア・ビエンナーレに出品。2001年の横浜トリエンナーレでは、巨大なバッタのバルーン《インセクト・ワールド-飛蝗(バッタ)》を発表。2003年、水戸芸術館にて9.11以後の世界をテーマに「国連少年展」。2009年、京都国立近代美術館で個展「椿昇 2004-2009:GOLD/WHITE/BLACK」を、2012年、霧島アートの森(鹿児島)にて「椿昇展“PREHISTORIC_PH”」を開催。2013年瀬戸内芸術祭「醤+坂手プロジェクト」ディレクター。青森トリエンナーレ2017ディレクター。

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