King Gnu常田大希、新プロジェクト・millennium paradeで世界へ
『“millennium parade” Launch Party!!!』- テキスト・編集
- 矢島由佳子(CINRA.NET編集部)
- 撮影:Ito Kosuke

常田大希の新プロジェクトが本格始動
5月22日、恵比寿LIQUIDROOMにて起きたことは、この国のカルチャーシーンの発展においてかなり重要な瞬間だったように思う。この日は、今音楽シーンにおいて大熱狂を生んでいるバンド・King Gnuの首謀者である常田大希による新プロジェクト「millennium parade」の本格始動を告げる、ライブイベント『“millennium parade” Launch Party!!!』が開催された。
King Gnu“白日”。ドラマ『イノセンス 冤罪弁護士』(日本テレビ系)主題歌。YouTubeでの動画再生数は、公開から3か月で2600万再生超え。リリースから3か月経った今も、ストリーミングチャートで3週連続トップ3にランクインしている(「Billboard JAPANストリーミング・ソング・チャート」より)
強力なクリエイターたちと技術が集まって「3D映像演出」が施された
来場者には入り口にて、アクティブシャッター方式の3Dメガネが配られた。「アクティブシャッター方式」とは、メガネの電源を入れると、自動的にスクリーン上の3D映像を感知してペアリングされ、その人の見え方に合わせて調整できる3Dメガネのこと。この日は全14曲・約70分の公演となったが、全編にわたってステージ前に紗幕が吊るされ、3D映像の演出が施された。
恵比寿LIQUIDROOMでの3Dライブは初の試みだったそうだが、海外に目を向けるとKRAFTWERKやFlying Lotusは以前からそれをやっているし、ここ日本でもamazarashiが4年前にやったケースなどもある。つまり「3Dライブ」を実現したことがすごいのではなく、3Dを使ってなにを表現するのか、という部分こそが肝だ。
映像をプロデュースしたのは、もちろん、King GnuのすべてのミュージックビデオやadidasのCMなども手掛けるクリエイティブブレーベル「PERIMETRON」。もともとPERIMETRONは常田がスタートさせたもので、のちに映像プロデューサー / デザイナーの佐々木集、映像作家・OSRINが加わり、現在は3Dビジュアルエディターの神戸雄平ら7人がメンバーとなっている。
さらにはテクニカルサポートとして、元・ライゾマティクスの比嘉了(Backspace Productions Inc.)と、Kezzardrix(INT)らが参加(参照:比嘉了とKezzardrixのインタビュー記事)。そもそも、ライブ演出のなかで「音」「映像」「照明」を同期させるシステムを構築できる人が日本ではまだ少ないのだが、この日はそれを実現できる人員が集まり、さらには3D映像をリアルタイムで歌に合わせて動かすプログラムなども使われていた。つまり、一言で簡単に言うならば、「ものすごい技術がこの場に集結していた」ということだ。
しかし繰り返すが、ライブという作品の肝は技術のすごさでなく、それを使ってなにを表現するのか、ということ。ステージの基盤となる音楽を制作し、全スタッフの士気を高めながら、すべての最終的なクリエイティブジャッジを下していたのは、もちろん常田大希である。
この日の中身は、King Gnuよりずっと前から常田が構想・創造していたもの
もともと常田は、King Gnuを始動する前から「Daiki Tsuneta Millennium Parade」名義で活動しており、2016年にはアルバム『http://』をリリース、六本木SuperDeluxeにてドイツ在住の日本人アニメーション作家・山田遼志をVJに招いてライブを行っていた。3Dライブの構想を描き始めたのは約2年前からだそうだが、世界に通用するライブをやるために演出面も工夫することは、そのさらにずっと前から考えていたことだったという。
2016年7月のライブ映像
新名義「millennium parade」としての幕開けに演奏された14曲のほとんどが新曲だったが、2曲は『http://』に収録されている断片が形になったもので(“www”“Down&Down”)、もう1曲は5年前にYouTubeにアップされている“ABUKU”だった。『“millennium parade” Launch Party!!!』に参加したミュージシャンは、日本人の父とアイルランド人の母を持つボーカリスト・ermhoi(Black Boboi)、最高峰ドラマー・石若駿(Dr)、江﨑文武(WONK / Key)、安藤康平(MELRAW / Sax.Gt,Vocorder)、新井和輝(King Gnu / Ba)、勢喜遊(King Gnu / Dr)といった、あらゆるジャンルの知識と演奏スキルを持つ実力派プレイヤーたち。ステージセンターにて客席へ背を向ける形で常田の椅子(普段常田が家で使っている、ペイントを施したチェアー)と機材がコックピットのごとく設置され、左から順に石若、安藤、江崎、ermhoi、コーラス / ラッパーとして参加したPERIMETRON・佐々木とグラッフィックデザイナー・Cota Mori(DWS)、新井、勢喜が半円形を描くようなポジションで、紗幕の奥に立っていた。
イベント情報
- 『“millennium parade” Launch Party!!!』
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2019年5月22日(水)
会場:東京都 恵比寿 LIQUIDROOM
リリース情報

- millennium parade
『Veil』 -
2019年5月22日(水)配信リリース
プロフィール

- millennium parade(みれにあむ ぱれーど)
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あらゆるカルチャーを呑み込む若き日本人アーティスト「常田大希」によるプロジェクト。東京芸術大学にて西洋音楽を学んだのちに、アメリカで行われている『SXSW2017』や、『FUJI ROCK FESTIVAL』『GREENROOM FESTIVAL』『Mutek』など国内外多数のフェスに出演し頭角を現わす。2016年、DTMP名義でアルバム『http://』をリリース。映画やドラマの音楽監督、adidas、New Balance×Chari Co、Beams、Numéro×Emporio Armani などへのファッションフィルムの楽曲提供、アメリカ版Pokemon、血界戦線といったアニメーション作品への参加など、活動は多岐に渡る。そして2019年、新プロジェクト「millennium parade」始動。