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又吉直樹×武田砂鉄 1本のメールから始まった無目的な思索の応答

又吉直樹・武田砂鉄『往復書簡 無目的な思索の応答』
テキスト
タナカヒロシ
撮影:鈴木渉 編集:中田光貴(CINRA.NET編集部)
又吉直樹×武田砂鉄 1本のメールから始まった無目的な思索の応答

タイトルを決めるにあたり、「これは無目的なものなんだ」って言葉を置いたときに、「そうなんだよ、そういうことがやりたかったんだよ」と、輪郭化された感じがありました。(武田)

2019年5月17日、又吉直樹と武田砂鉄によるトークイベント『違和感の居場所 ~芸人とライター、書くときに考えていること~』が、紀伊國屋ホールで開催された。2016年8月から2018年1月まで、東京新聞および中日新聞の紙上で、全54回にわたって往復書簡を交わしていた2人。それを書籍化した『往復書簡 無目的な思索の応答』(朝日出版社)が今年3月に発売され、その刊行記念として本イベントは行なわれた。

じつは、この日までに2人が直接顔を合わせた回数は片手で数えられるほど。この日も2人は開演直前に会場入りし、打ち合わせもないままにイベントはスタートしたという。

武田はステージに現れるなり、「『無目的な思索の応答』というタイトルなので、なにか役に立つ言葉や意見を持って帰りたいとか、そういう気持ちは捨てていただけると……」と切り出し、又吉も「役に立つ話はないです」と同調。これに対して客席からは笑いが起こったものの、2人のトークがどう転がるのか、いささか不安を感じさせる滑り出しで、会場は独特の緊張感に包まれた。

2人は『無目的な思索の応答』という書籍につけられた言葉について振り返る。

武田:新聞紙面で書簡をやりとりしていくなかで、そのうちに核のようなものが生まれてくるかなと思いながらやりとりしていたら、最後まで出なかったんですよね(笑)。

又吉:失敗したってことじゃないですよね?(笑)

武田:「何だったんだろう?」という不安感を抱えながら、書籍のタイトルを決めるにあたり、「これは無目的なものなんだ」って言葉を置いたときに、「そうなんだよ、そういうことがやりたかったんだよ」と、輪郭化された感じがありました。

又吉:そうですね。普段考えてないことを考えられて、僕はやってて楽しかったです。

左から:武田砂鉄、又吉直樹
左から:武田砂鉄、又吉直樹

武田:年を重ねてくると、「こいつとは話が合う」という人ばかりとよく会うようになりますよね。そうすると心地はいいんだけれど、相手の「快・不快」がわかるから、「快」ばっかり提供するようになる。すると、自分のしゃべっていることが先細ってるというか、限られてくる感覚があります。

でも、今回は「テレビで見る又吉さん」のままの距離感、それでいて、かなり直接的に言葉を投げられる面白さがありました。ライターという立場で、時にテレビや芸能界について批判的に書いたりすることもある人間(武田)と、テレビのなかにいる人(又吉)。そして、小説家(又吉)と、批評家とは名乗っていないもののそういう仕事もすることもある自分(武田)。このアンバランスにずっと慣れない感じが面白かったですね。

武田砂鉄(たけだ さてつ)<br>1982年東京都生まれ。出版社勤務を経て、2014年よりライターに。著書に『紋切型社会――言葉で固まる現代を解きほぐす』(朝日出版社、第25回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞)、『芸能人寛容論――テレビの中のわだかまり』(青弓社)、『コンプレックス文化論』(文藝春秋)、『日本の気配』(晶文社)などがある。
武田砂鉄(たけだ さてつ)
1982年東京都生まれ。出版社勤務を経て、2014年よりライターに。著書に『紋切型社会――言葉で固まる現代を解きほぐす』(朝日出版社、第25回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞)、『芸能人寛容論――テレビの中のわだかまり』(青弓社)、『コンプレックス文化論』(文藝春秋)、『日本の気配』(晶文社)などがある。

そもそも2人の往復書簡が始まったきっかけは、武田のもとに届いた「又吉です」という件名の1通のメール。小説『火花』について、武田が書いたレビュー記事を見た著者の又吉が、その感想を伝えるために直接メールをしたのだ。当初は迷惑メールだと思っていたという武田が、そのときの心境を説明する。

武田:これがもし「石原さとみです」というタイトルだったら嘘くさすぎて削除するけど、「又吉です」って来ると、一体なにをこっちに欲してくるんだろうかと気になる(笑)。

「芸能界でがんばっているんですけど、じつは悩みを抱えてて」みたいな、迷惑メールがありますよね。それは想像できるんだけど、「又吉」は何を望むのか、と思って開いたら、本人でした。僕がネットで書いた記事を読んでくださって、えっと、なんでしたっけ?

又吉:「今夜、あなたのおかげで生き延びれます」、みたいな。

武田:「ほう、なかなかいいメールだな、又吉」と思って(笑)。でもまだちょっと疑っていたので、「嘘だと思ってます」と返したら、「本物です」って。その返しもまた嘘臭いなと思って(笑)。

又吉:お礼を言いたいときとか、ご本人に直接メール送ったりするんですけど、みんな最初は詐欺的ななにかと思うみたいですね。

又吉直樹(またよし なおき)<br>1980年大阪府生まれ。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属のお笑い芸人。2003年にコンビ「ピース」を結成。2015年に『火花』で第153回芥川龍之介賞を受賞。著書に『東京百景』(ヨシモトブックス)、『劇場』(新潮社)などがある。毎日新聞で連載した小説『人間』が今秋に単行本化予定。
又吉直樹(またよし なおき)
1980年大阪府生まれ。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属のお笑い芸人。2003年にコンビ「ピース」を結成。2015年に『火花』で第153回芥川龍之介賞を受賞。著書に『東京百景』(ヨシモトブックス)、『劇場』(新潮社)などがある。毎日新聞で連載した小説『人間』が今秋に単行本化予定。
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イベント情報

『違和感の居場所 ~芸人とライター、書くときに考えていること~』
『違和感の居場所 ~芸人とライター、書くときに考えていること~』

2019年5月17日(金)
会場:紀伊國屋ホール

書籍情報

又吉直樹・武田砂鉄『往復書簡 無目的な思索の応答』
又吉直樹・武田砂鉄
『往復書簡 無目的な思索の応答』

2019年3月20日(水)
価格:1,620円
発行:朝日出版社

プロフィール

又吉直樹(またよし なおき)

1980年大阪府生まれ。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属のお笑い芸人。2003年にコンビ「ピース」を結成。2015年に『火花』で第153回芥川龍之介賞を受賞。著書に『東京百景』(ヨシモトブックス)、『劇場』(新潮社)などがある。毎日新聞で連載した小説『人間』が今秋に単行本化予定。

武田砂鉄(たけだ さてつ)

1982年東京都生まれ。出版社勤務を経て、2014年よりライターに。著書に『紋切型社会――言葉で固まる現代を解きほぐす』(朝日出版社、第25回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞)、『芸能人寛容論――テレビの中のわだかまり』(青弓社)、『コンプレックス文化論』(文藝春秋)、『日本の気配』(晶文社)などがある。

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