レビュー

リターン・オブ・ザ・シガヴェッツ! 5人の逆襲がここから始まる

金子厚武
2012/04/04
リターン・オブ・ザ・シガヴェッツ! 5人の逆襲がここから始まる

まずは『kings』の話から始めよう。00年代初頭に海外で起こったいわゆるロックンロールリバイバル、ポストパンク〜ニューウェイブリバイバルの流れを受け、日本の音楽シーンでも新しい波を起こすべく、the telephones、QUATTRO、THE BAWDIES、THE BRIXTON ACADEMY、PILLS EMPIREという洋楽志向の強い5バンド(彼らは基本的に英詞のバンド)に、DJチームのFREETHROWという組み合わせでスタートしたイベント、それが『kings』である。2008年に代官山UNITでスタートし、2009年には恵比須LIQUIDROOMで開催、その後はしばらく開催が途絶えるものの、the telephonesとTHE BAWDIESはメジャーへと進出し、残りのバンドたちもインディシーンで着実に力をつけて行った。

そして、昨年8月に新木場STUDIO COASTでひさびさに行われた『kings』は、シーンの成熟を証明すると同時に、ひとつの区切りをつける機会となった。その年の年末にはthe telephonesがさいたまスーパーアリーナ、THE BAWDIESが日本武道館での単独公演を成功させ、名実ともにトップバンドの仲間入りを果たした一方で、THE BRIXTON ACADEMYが年明けの3月に活動を終了(これはホントに残念)、しばらくリリースのなかったPILLS EMPIREは新体制を発表し、リスタートを切ることとなった。

さて、前置きが長くなったが、The Cigavettesもこのような流れの中で、もっともっと大きなバンドになっていても不思議ではないバンドだった。OASIS、THE LA'S、THE WHOといった英国のロックンロールバンドの系譜を受け継いだ楽曲のクオリティは高く、中心人物でギタリストの山本幹宗はくるりやTHE BEACHESといったバンドからも寵愛を受けるなど、スター性も十分だったのだ。しかし、福岡という出身がゆえか、どこかシーンから浮いた存在という印象もあり、また「あまりに洋楽的」とされ、どこか邦楽ファン・洋楽ファンの踏み絵のような存在になってしまっていたとさえ言えるかもしれない。

また、この状況をさらに加速させていたのが彼らの所属レーベルがなかなか落ち着かなかったことで、2007年にミニアルバム『taste of the sun』でデビューしてから、初のフルアルバム『The Cigavettes』をリリースするまでに4年の月日を擁し、そのフルアルバムにも『tasete of the sun』の楽曲が収録されていたのだから、これはリリースのペースが遅すぎる。THE BAWDIESが矢継ぎ早なリリースで駆け上がっていったように(もちろん、それだけが理由ではないが)、特にロックンロールバンドにとってこのスローペースは致命傷だったと言わざるを得ない。

しかし、昨年4月の上京後、やっと活動のペースが安定したようで、前作からほぼ1年というブランクで(もっと短くてもよかったけど)、無事にセカンドアルバム『We Rolled Again』が到着、これが素晴らしい出来なのだ。まず顕著なのが、オルガンやピアノ、ストリングスを大きくフィーチャーすると共に、これまでの作品でも聴くことのできたコーラスのバリエーションがさらに増え、ポップスとしての完成度が格段に上がっているということ。美メロはこのバンドの大きな武器だが、その抜け具合も過去最高と言っていい。一方で、楽曲のBPMは全体的に上がっていて、ロック的なダイナミズムも5割増し。これならいわゆる邦楽のシーンにも土足で踏み込んでいけそうな勢いだ。



盟友とも言うべきQUATTROも新体制でポップス色の強い新作を発表したばかりだし、同じ月に京都のTurntable Filmsのような類似性のあるバンド(こちらはよりフォーク色が強いけど)も新作を発表するなど、『kings』以降とでも言うべきシーン全体での盛り上がりも感じられる。もちろん、これは世界的なオールドポップスの盛り上がりともリンクする部分があると言えよう。さあ、これで準備は整った。ここからThe Cigavettesの逆襲が始まり、あなたを再び熱狂の渦へと巻きこむだろう。

リリース情報

『We Rolled Again』
The Cigavettes
『We Rolled Again』

2012年4月4日発売
価格:2,400円(税込)
FABC-110

1. Presley Song
2. We Rolled Again
3. She's So Fine(She's Not Fair)
4. (All I've Got To Do Is) Begging You
5. I Wonder
6. My Old Car
7. My Girl
8. Flux Fiddlers On The Roof
9. Can't Find Memories
10. I Wonder That You're Alone
11. Sweet Memories Into Nightmare
12. Maybe It Goes On
13. Far Away
14. Keep The Customer Satisfied

※CINRA.STOREではアルバム購入特典として“Presley Song (Demo)”が付属します

  • CINRA STOREで購入する
  • プロフィール

    The Cigavettes

    2005年4月に福岡にて結成されたロックバンド。メンバー構成は、山本幹宗(G)、山本政幸(Vo)、戸高亮太(Dr)、篠崎光徳(B)、小田淳之介(G)の5人。2007年にミニアルバム「taste of the sun」を発表した後、翌2008年に自主レーベルから「Out Of The Race EP」リリースする。これが各地で話題を呼び、2009年3月には「Out Of The Race EP」をCD化したものと、DVDを同梱したリマスター盤を発売。2011年4月にファーストアルバム『The Cigavettes』をリリース。2012年4月4日にはセカンドアルバム『We Rolled Again』を発表。

    SPECIAL PR 特集

    もっと見る

    BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

    もっと見る

    PICKUP VIDEO 動画これだけは

    The Wisely Brothers“テーブル”

    The Wisely Brothersの新アルバム『Captain Sad』から、リード曲“テーブル”のMVが公開。監督は新進気鋭のアートチーム「chua」。目の前に座っていても視線は交わされない、ひりつくように愛おしい時間は自分の記憶にも確かに存在していて、なんとも切ない気持ちに。ちょっとドリーミーなのも癖になる。<ふたつが重なることはない どうしてもそれぞれは なくなるコーヒーを見て歌おう>というフレーズ、このアルバムに通して漂う悲哀と希望がぎゅっと詰まっているよう。(石澤)

    1. おうちでサマソニ。YouTubeライブ配信にThe 1975、レッチリ、Perfumeら 1

      おうちでサマソニ。YouTubeライブ配信にThe 1975、レッチリ、Perfumeら

    2. 柄本佑と瀧内公美が盆踊りを手繋ぎで横切る 映画『火口のふたり』本編映像 2

      柄本佑と瀧内公美が盆踊りを手繋ぎで横切る 映画『火口のふたり』本編映像

    3. ピアニスト・清塚信也はなぜバラエティ番組に出る?意外な狙い 3

      ピアニスト・清塚信也はなぜバラエティ番組に出る?意外な狙い

    4. 吉田豪が見た『全裸監督』と村西とおる 過去の危ない体験談を語る 4

      吉田豪が見た『全裸監督』と村西とおる 過去の危ない体験談を語る

    5. 大友良英が『いだてん』に感じた、今の時代に放送される必然性 5

      大友良英が『いだてん』に感じた、今の時代に放送される必然性

    6. 『ライジング』8月16日は開催中止、台風10号接近のため 17日の開催は明日発表 6

      『ライジング』8月16日は開催中止、台風10号接近のため 17日の開催は明日発表

    7. 草彅剛がダメ長男、MEGUMI&中村倫也らが家族 映画『台風家族』場面写真 7

      草彅剛がダメ長男、MEGUMI&中村倫也らが家族 映画『台風家族』場面写真

    8. 『スター・ウォーズ』の展覧会『STAR WARS Identities』寺田倉庫で開幕 8

      『スター・ウォーズ』の展覧会『STAR WARS Identities』寺田倉庫で開幕

    9. 三浦直之とEMCによるファミレス感漂う「ポップカルチャー」談義 9

      三浦直之とEMCによるファミレス感漂う「ポップカルチャー」談義

    10. 広瀬すずが『LIFE!』登場、『なつぞら』コラボで中川大志&内村光良と共演 10

      広瀬すずが『LIFE!』登場、『なつぞら』コラボで中川大志&内村光良と共演