レビュー

「色からモノを好きになる」、リアルとネットを往復して見つける新しいファッションの楽しさ

CINRA.NET編集部
2014/10/03
「色からモノを好きになる」、リアルとネットを往復して見つける新しいファッションの楽しさ

「色からモノを好きになる」、新しい買い物の仕方

「色を出す」という言葉が、「個性を出す」という意味であるように、本来「色」というのは、生活や文化、商業や産業の側面を特徴づける重要な要素である。それにも関わらず、意外と「色」と「購買行為」を結び付けたサービスというのは、少なかった。そんなことに気がつかせてくれたのが、ブランドやシーズンではなく「色」で商品をセレクトすることによって独自の世界観を作り出している、2014年3月に誕生した「IROYA」である。


IROYA サイトトップページ

毎月ひとつの色に絞った商品を、渋谷・キャットストリートのリアルショップとネットの両店舗で展開するというアイデアの背景には、代表の大野敬太による近年の日本のファッションシーンに対する問題意識があったという。

「従来の洋服の買い方というのは、ブランドや店舗、販売員など、洋服をとりまく世界観への憧れがきっかけになっていました。僕は10年以上eコマースの仕事に関わっていますが、今はネット上で簡単に商品の比較検討・購入ができるようになったことで、『機能的にモノをどれだけ安く手に入れられるか?』が重視されていると思うんです」

IROYA実店舗の様子。害案には、毎月のテーマカラーに合わせたグラフティーが描かれる。
IROYA実店舗の様子。害案には、毎月のテーマカラーに合わせたグラフティーが描かれる。

確かに、インターネットは様々な小規模販売を可能にし、ユーザーにとっては「早い・安い」の点で便利さが増したが、「そろそろそれ以外の価値が求められてきているのではないか?」と大野は続ける。

「ファッションの未来を考えると、今の状況に不安を感じていて……ユーザーと商品の出会いの新しい関係を築くために、実店舗と情報空間を行き来するような新しい体験をデザインすることで、購入自体に魅力を感じられるような仕組みを作りたいと思いました」

安さや早さではなく、「買うこと」自体の魅力を取り戻す。テクノロジーが成熟し、リアルとネットの双方のリアリティーが同程度に求められている今の時代だからこそ、新たな価値を探ることができるのではないだろうか?

「安い・早い」の次の価値へ

例えば、大野同様に「モノ」への愛着の強さから、「Sumally」を立ち上げた代表の山本憲資は、生産・消費され、埋もれてしまうモノのデータを可視化させるアーキテクチャを実現した。Sumallyは、モノ単独の情報ではなく、「誰がそれを持ってるのか」という「人の欲望」まで可視化することができ、「あの人が持ってるモノが欲しい」「流行しているモノが欲しい」という、本来の購入のモチベーションに肉薄しているが、これはつまり、商品との「出会い方」の提示である。一方で、IROYAの「色」でセレクトするという特徴も、既存の色情報を整理して見せてくれることによって、「自分はこの色が好きだったのか!」「普段は着てみない色だけど着てみよう」というような新しい「出会い」となり得る。

IROYAサイト 色検索画面
IROYAサイト 色検索画面

さらに、IROYAが9月3日からJR博多シティ AMU ESTに出店していたポップアップストアでは、通常の1色展開ではなく、福岡のシンボルである「ウメ、ツツジ、ウグイス」に合わせた白、ピンク、緑の3色を同時に展開した。既存の商品を色ごとに整理するだけではなく、その「色」に新しい「遊び」の価値を付与したのだ。

期間限定ストア「IROYA HAKATA」
期間限定ストア「IROYA HAKATA」

すでにリアルショップの店内にはウェブカメラとディスプレイが設置されており、その前に立って撮影すると顧客の着ている洋服の色が抽出されてディスプレイ上に表示されるというチャレンジングなインタラクションも設置されており、IROYAが「購入の体験」を重視していることは明らかであろう。どうしたら自分の好きなモノに出会えるか? どうしたら買った後もモノを愛するコミュニケーションを築くことができるのか? 安さではないその回答を求めて、IROYAの遊びの仕掛けはさらなる進化の兆しを見せている。

インタラクションの様子
インタラクションの様子

ファッションとデジタルクリエイティブの接近が、コミュニケーションを活性化させる

今年6月に、はてな、バイドゥ、DeNAなど、大手IT企業でエンジニアの中核としてキャリアを積んできた水野貴明がIROYAに加わった。そして、社外取締役に、ウェブデザイナー・中村勇吾が設立したtha ltd.を経て、インタフェースデザイナーの「あるみかん」こと、奥田透也が就任。奥田はtha時代に、「INFOBAR A01」「INFOBAR A02」に採用される「iida UI」のデザインやTV CMのモーショングラフィックス、「UNIQLO INNOVATION PROJECT」、「Espace Louis Vuitton Tokyo」のデザインなど、数々の話題のサイトに関わってきた経緯を持つ。

近年のファッション業界では、先述した「Sumally」 や、スタートトゥデイのファッションコーディネートサービス「WEAR」といった、ユーザーとファッションの新たな出会い方を提案するオンラインサービスが登場している。スマホで撮ってそのまま出品できる「メルカリ」や「フリル」などのフリマアプリも徐々に浸透し始め、ファッション業界とデジタルクリエイティブ業界の距離は年々近づいてきている。

これが面白いのは、今までファッションショーや大手メディアによってトップダウンで生まれていたトレンドが、人々から発信される情報によって作り上げられる、ボトムアップ的な流れへとシフトしつつあることだ。つまり、これまで「エンドユーザー」としてとらえられてきた消費者が、買うだけではなく、むしろ積極的にファッションシーンに「参加する」欲望が生まれているし、テクノロジーの進化がそれを可能にしているのではないだろうか?

IROYAの「体験をデザインする」というスペシャリティーを持つクリエイターの集合は、自ら商品を作り出さないという意味で、アノニマスでありながらも、ファッションが本来備えていたコミュニケーション手段としての役割を取り戻す。「安い・早い」の先にあるのは、「ファッションが楽しい」という感覚がアップデートされた未来だ。さらに、冒頭で大野が「ファッションの未来」を求めたように、このような新たなサービスの連なりが、プロダクトを進化させ、サービスを進化させ、社会が成長するための「歴史」となっていくのだろう。IROYAは確実にその流れにある。

店舗情報

IROYA

「色」をテーマにしたセレクトショップ&オンラインショップ。2014年3 月14 日(金)のオープン以来、毎月1 つの「色」に絞ってファッションアイテムを紹介・販売することで、アイテムを「価格」や「ブランド」、「テイスト」だけでなく、「色」で選ぶ楽しみ方を提案している。eコマースサイト&店舗に並ぶ商品は、国内外の有名ブランドはもちろん、入手困難なデッドストック品やビンテージ品など様々。色はもちろん、色以外からも、新しい驚きを用意している。

IROYAでは、一緒に働く仲間を募集しています。

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