レビュー

強烈な音楽愛ある故にシニカルな言葉を吐き続ける、15年選手・VELTPUNCHの歩みをたどる

金子厚武
2015/07/21
強烈な音楽愛ある故にシニカルな言葉を吐き続ける、15年選手・VELTPUNCHの歩みをたどる

ASIAN KUNG-FU GENERATIONとの共振

僕がVELTPUNCHというバンドを紹介するときによく言うのが、「彼らはASIAN KUNG-FU GENERATIONになっていたかもしれない」ということ。フロントマンの年齢も結成された年もほぼ同じであるこの両バンドは、共に1990年代前半~中盤のアメリカのオルタナティブロックと、1990年代後半から2000年代初頭の日本のハードコア~エモからの影響を強く受けているという意味で、とてもよく似たバンドなのだ。

かつて下北沢には、WEEZERをはじめとしたオルタナ勢に影響を受けたポップバンドが溢れ返っていたし、2000年以降はNUMBER GIRLやeastern youthのようなエモーショナルなステージを武器とするバンドも数多く存在したが、ポップさとエモさを兼ね備えたバンドはそれほど多くなかった。そして、僕が知る限りこの系統に位置するバンドの2トップが、VELTPUNCHとASIAN KUNG-FU GENERATIONだと思うのだ。VELTPUNCHの代表曲の1つである“killer smile”に対し、かつてASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文は「ひっくり返るほど格好良い」と自身のブログで絶賛していたりもする。


インディーバンドとしては、ポップすぎた?

しかし、すぐに日本のトップに上り詰めたASIAN KUNG-FU GENERATIONに対し、VELTPUNCHの歩みは決して順風満帆ではなかった。2000年のCDデビュー以降、徐々に人気を高めていく中、2008年に発表した“CRAWL”がテレビアニメ『隠の王』の主題歌に起用されたものの、結局大ブレイクまでには至らず、その後はメンバーチェンジを繰り返しながら活動を継続。ほとんどのインディーバンドがそうであるように、彼らもまたバンド以外の仕事を持っていて、近年は活動のペースも以前よりゆっくりしたものになっている。

そもそも、当時バンドを次々とメジャーへ送り込んでいた下北沢シーンと関係の深いレーベル「UNDER FLOWER RECORDS」からデビューしたASIAN KUNG-FU GENERATIONに対し、VELTPUNCHは下北沢シーンとも接点を持ちつつ、拠点としていたのはよりハードコア色の強い三軒茶屋のHEAVEN'S DOORというライブハウスだった。よって、VELTPUNCHの曲は多彩な展開や変拍子などを駆使し、スクリームも入ったハードコア〜エモ的な色合いが強く、にも関わらず、メロディーだけはあくまでキャッチーだったのである。最近流行りの言い方で言ってみれば、彼らは「ポップすぎるインディーバンド」であり、メジャーからもインディーからも少しだけ浮いた立ち位置にいたことが、彼らの大ブレイクを難しくしていたのかもしれない。

シニカルな歌詞の裏側にあるピュアな音楽愛

そんなバンドの状況に対して、フロントマンの長沼秀典はときに自嘲気味に、ときにシニカルに歌詞を綴ってきた。先の“killer smile”では、<君が笑う。それだけで僕は音楽だって必要ねーよ。>と歌い、ライブのクロージングナンバーとしてお馴染みの長尺曲“Your corolla”では、最後の最後で<こんな音楽、二度と聴かなくてもいい!!>と突き放す。これは「性的描写がない表現物にはリアリティを感じない」(2011年8月3日 CINRA.NET掲載記事より)と、歌詞の中にマスターベーションやSEXといったやや中二的な単語を多用していることも含め、お笑いが好きな長沼ならではのユーモアであると同時に、照れ隠しでもあると言っていいと思う。

なにせ、長沼はかつてTHE SMASHING PUMPKINS(1990年代のオルタナティブロックを代表するバンドの1つ。VELTPUNCHはもともと彼らのコピーバンドだった)のビリー・コーガンが解散に際し、「アイドルに負けた」と敗北宣言をした記事を読んで、声を出して泣いたというエピソードの持ち主である。彼のピュアな音楽愛が今もバンドを続けるモチベーションの源泉となっていることは間違いない。そんな人間が最高にかっこいい演奏とキャッチーなメロディーに乗せて、「音楽だって必要ねーよ」と叫ぶことのカタルシス。ここにはVELTPUNCHの魅力が詰まっていると言えよう。

3年の空白を埋めて、新章の幕開けを告げる『(OAO)』

そんなVELTPUNCHが、2012年に発表された2枚組のベストアルバム『GOLD ALBUM』以来、約3年ぶりとなる3曲入りのニューシングル『(OAO)』を配信リリースした。オリジナルメンバーの長沼とナカジマアイコ、2010年に加入した元キウイロールの浅間直紀、そしてギターには荒川慎一郎を迎えての新体制1作目。顔文字のタイトルや、「あぶく銭」という言葉を連想させるジャケットなど、パッと見は相変わらずシニカルだ。しかし、浅間のドラムを軸にプログレッシブに変化を続ける展開の中で、2本のギターが絡み合い、サビではやや甘さを増したナカジマのボーカルによる、ポップなメロディーが耳に飛び込んでくる“LET IT DIE (OAO)”をはじめ、やはり収録されている楽曲のクオリティーは抜群に高い。3年の空白を埋め、バンドの今後にさらなる期待を募らせるには十分な作品だと言える。


VELTPUNCH『(OAO)』ジャケット
VELTPUNCH『(OAO)』ジャケット

“BENCH WARMERの逆襲”では<金持ちのボンボンが生活費稼ぐ必要ねぇから 芸術家になり 暇つぶししているんだ>と歌い、“シーズンインザスリー”ではトレンドに流される人々を横目に、<女子校の教師 一度くらいはやってみたいな もうバンドなんていいや! 誰がロックスターになって家を建てたっていうんだ?>と歌うなど、長沼らしい歌詞も健在。しかし、“LET IT DIE (OAO)”の<もったいないお化けと僕は 「希望」も「絶望」も捨てないよ!>という歌詞(つまり(OAO)は、もったいないお化けの顔文字?)からは、「俺はまだあきらめてないよ」という意地も感じられる。いや、実際はそこまでヒロイックな話ではなく、文字通り「ここまで来てやめるのはもったいないじゃん」くらいのテンションなのかもしれない。ただ、僕はやはりこれは長沼の照れ隠しであって、強烈な音楽愛の裏返しだと思う。そして、僕は彼らの一ファンとして、ベンチウォーマーの15年選手がいつか逆転ホームランを放つ日を、今も夢見ている。

リリース情報

『(OAO)』
VELTPUNCH
『(OAO)』

2015年6月24日(水)から配信リリース
EVOL-1059

1. LET IT DIE(OAO)
2. BENCH WARMERの逆襲
3. シーズンインザスリー

イベント情報

VELTPUNCH 東阪ワンマンツアー 2015「Noise for the underground vol.21 -エスカレータは左側編-」』

2015年10月12日(月・祝)
会場:東京都 下北沢 SHELTER

『VELTPUNCH 東阪ワンマンツアー 2015「Noise for the underground vol.22 -エスカレータは右側編-」』

2015年10月17日(土)
会場:大阪府 心斎橋 Pangea

プロフィール

VELTPUNCH
VELTPUNCH(べるとぱんち)

1997年、立教大学の音楽サークルでSmashing Pumpkinsのコピーバンドを組んでいた長沼秀典(Vo,Gt)、ナカジマアイコ(Ba,Vo)を中心に結成。下北沢、渋谷、三軒茶屋を中心にライブ活動を行い、国内のみならず『SXSW』など海外イベントにも参加。男女ツインボーカル+スクリームを活かした楽曲が特徴で、時にエモーショナルで激しく、時に繊細なギターロックサウンドが多くのファンを惹きつけている。

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