レビュー

ポストロックシーンに影響を与えたテクニカル集団・BATTLESが「原点回帰」の新作を発表

黒田隆憲
2015/08/05
ポストロックシーンに影響を与えたテクニカル集団・BATTLESが「原点回帰」の新作を発表

ポストロックシーンを語る上で欠かせない存在、BATTLES

2000年代前半に登場し、以降のポストロックシーンに決定的な影響を与えたエクスペリメンタルロックバンド・BATTLESが、前作から実に4年ぶりの3rdアルバム『La Di Da Di』を完成させた。本人たちのSNSによれば、レコーディングは昨年の春頃からスタートしており、今年に入って断続的にライブも再開。そして、奇しくも元メンバー、タイヨンダイ・ブラクストンが6年ぶりのソロ作『HIVE1』を出したのと、まるで呼応するようなタイミングでのリリースとなる。8月4日23時(日本時間)より、24時間限定で『La Di Da Di』から4曲のスタジオパフォーマンス映像が解禁され、発売1か月前にその片鱗を垣間見ることができた。それら楽曲の解説をする前に、まずは彼らのこれまでの歩みをざっと振り返ってみよう。


スーパーメンバーの集合体。瞬く間に日本でも絶大な支持を集めた

結成は2002年、ニューヨーク。マスロックの筆頭と言えるDon Caballeroや、そのバンドの元メンバーと組んだStorm & Stressに在籍していたイアン・ウィリアムス(Gt,Key)、フリージャズ界の巨匠であるアンソニー・ブラクストンを父に持つタイヨンダイ・ブラクストン、マスロックバンド・Lynxのメンバーであったデイヴィッド・コノプカ(Ba,Gt,etc)、そしてオルタナティブメタルバンド・Helmetの元メンバーであり現在はTomahawkとThe Mark of CainとBATTLESの3バンドを掛け持ちしているジョン・スタニアー(Dr)という、名うてのメンバーで構成されたバンドがBATTLESだ。つまりポッと出の新人などではなく、幾多の修羅場をくぐり抜けてきた歴戦のスーパーグループである。

2004年、3枚のEP『EP C』『Tras』『B EP』を、それぞれ別のレーベルよりリリースすると瞬く間に話題となり、かねてからバンドと親交の深かったスコット・ヘレン(Prefuse73)の後押しで、イギリスのエレクトロニカ / テクノ系名門レーベル「Warp Records」と契約を交わす。そして2007年、満を持して1stアルバム『Mirrored』をリリース。ファジーな要素など一切ない、ストイックなまでに精緻なリズムとギターの高速フレーズ、ボーカルエフェクトを駆使したタイヨンダイの奇天烈な歌声。クラウトロックやミニマルミュージックの影響を受けつつも、祭り囃子のような高揚感あふれるグルーヴを取り込んだそのサウンドは、前衛的でありながらポップかつユーモラスで、その年の各誌ベストアルバムを総ナメにした。

2007年の『FUJI ROCK FESTIVAL』にも出演し、直後の日本ツアーは軒並み完売するなどバンドの人気は絶頂にあったが、2010年にタイヨンダイが突然の脱退を発表する。そのタイミングでほぼ完成していた次のアルバムの素材を全て破棄し、三人で一から作り直したアルバムが、2011年にリリースされた『Gloss Drop』である。ボーカリスト不在を逆手に取り、BOREDOMSのEYEを含む4人のゲストシンガーをフィーチャーしたこのアルバムは、トロピカルな要素も加味されよりカラフルな仕上がりとなった。

最新作は、全曲インストに。キーワードは、「原点回帰」

そして、2012年のリミックスアルバム『Dross Glop』を経てリリースされるのが、本作『La Di Da Di』である。先日公開された映像の中で演奏された4曲を聴いて、真っ先に頭に浮かんだのは「原点回帰」の4文字。おそらくBATTLESファンの多くは、筆者と同じように感じたのではないだろうか。単に『Mirrored』以前のインストゥルメンタルアレンジに戻ったから、というだけではない。前作ではタイヨンダイというリミッター(制御装置)が外れたことで、破天荒に暴れまくっていた三人の「怪物」たちが、もう一度「BATTLESとは何か?」に向き合い、漲るパワーを内部爆発させているような、そんな美学と狂気を感じさせるのだ。


アルバムの冒頭を飾る予定の“The Yabba”は、奇妙なシーケンスフレーズと呪術的なドラミングが執拗にループしながら、徐々に目の前の景色を塗り替えていく。どことなくオリエンタルな響きをたたえつつ、後半に向かって一気に加速する展開は圧巻だ。“Summer Simmer”も、シンプルでどこかコミカルな高速アルペジオのループを基調とした曲。先だって公開された、彼らのショートドキュメンタリー『The Art of Repetition』でもこの曲の制作風景が垣間見えるが、アクセントをずらした複数のフレーズが重なり合い、幾何学的なアンサンブルを展開していく。2分足らずの小曲“Tyne Wear”も同様に、各パートのアクセントの位置がめまぐるしく変わっていくユニークなトラックとなっている。そして“Dot Com”は、バンドアンサンブルとシンセのレイヤーが交互に押し寄せるドラマチックな楽曲だ。

今の段階では、ここで公開された4曲からアルバムの全貌を予測するしかないのだが、この流れからすると『La Di Da Di』は、原点回帰しつつもカラフルな音色が散りばめられた、まさに「これぞBATTLESの音」になっているのではないか。前作は白紙に戻って再スタートしたため、意識的にBALLTESらしさから遠ざかっていたのかもしれないが、もはや再編成の呪縛から完全に解き放たれた三人の鳴らすサウンドに、期待は高まるばかりだ。

リリース情報

BATTLES
『La Di Da Di』日本盤(CD)

2015年9月15日(火)発売
価格:2,376円(税込)
Warp Records / Beat Records

1. The Yabba
2. Dot Net
3. FF Bada
4. Summer Simmer
5. Cacio e Pepe
6. Non-Violence
7. Dot Com
8. Tyne Wear
9. Tricentennial
10. Megatouch
11. Flora > Fauna
12. Luu Le
13. FF Reprise(ボーナストラック)
※初回生産分は紙ジャケット仕様

『BATTLES FALL TOUR 2015 JAPAN』

2015年11月25日(水)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:東京都 EX THEATER ROPPONGI
料金:前売 アリーナ立見6,500円 スタンド指定席7,000円(共にドリンク別)

2015年11月26日(木)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:大阪府 梅田 AKASO
料金:前売6,500円(ドリンク別)

プロフィール

BATTLES(ばとるす)

2002年にNYでイアン・ウィリアムス(ex.Don Caballero)、デイヴ・コノプカ(ex.Lynx)、ジョン・スタニアー(ex.Helmet / Tomahawk)、タイヨンダイ・ブラクストンにより結成されたエクスペリメンタルロックバンド。2004年には『B EP』『Tras』『EP C』と3枚のEPを立て続けにリリースし、ポストロック~マスロックシーンの隆盛とともに大きな注目を集める。精力的にライブ活動を行いながら、2005年には「Warp」と契約。2007年に1stアルバム『Mirrored』をリリースし、各メディアで絶賛を浴びると、国内外の大型フェスへの出演やツアーで大きな成功を収めた。2010年からは現在の3人編成に。2011年にリリースされた2ndアルバム『Gloss Drop』ではゲイリー・ニューマンからBOREDOMSのEYEまで様々なゲストボーカルを迎えて再び話題を呼ぶ。そして2015年、ワールドツアーの発表に続いて4年ぶり待望となる最新アルバム『La Di Da Di』のリリースがアナウンスされた。

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