BATTLESインタビュー 演奏だけじゃない、個性とユーモアを探る

現代のポストロックシーンに多大なる影響を与えたエクスペリメンタルロックバンド・BATTLESが、前作『Gloss Drop』から4年ぶりとなる3rdアルバム『La Di Da Di』をリリースする。複数のボーカリストを迎えた前作から一転、三人だけで全曲インストゥルメンタルという初期のサウンドプロダクションとなった本作は、バンドにとって「原点回帰」的な印象を強く感じる内容である。しかしそれは、決して後ろ向きな意味ではなく、「三人こそがBATTLESである」という初期衝動に立ち返りつつ、これまで培ってきたスキルを惜しむことなく注ぎ込んだ「最新アップデート版BATTLES」の姿がそこにあるのだ。

今回CINRAでは、BATTLESでギターやベースを変幻自在に操り、さらにはアートワークにも深く携わるデイヴィッド・コノブカにインタビューを敢行。BATTLESが、ポストロックシーンにおいてオリジナリティーを発揮し続けられる要因は、そのサウンドやライブの作り方だけでなく、アートワークに対するユニークなこだわりにもあると言えよう。

一般的にバンドのアートワークはどれも洗練されているから、僕らは何の意味も持たない、ひたすら気色悪い、不快なものをアートワークに落とし込もうと思ったんだ。

―BATTLESのアートワークは、メンバーの中であなたがイニシアチブを取っているそうですが、アートへの関心はいつからあったのでしょうか?

デイヴ:子どもの頃から絵を描くのが大好きだった。中学生の頃は、「キース・ヘリング(1958年生まれ、ストリートアートの先駆者とも言われているアメリカの画家)こそが最高のアーティスト」だと思って、彼のことを崇拝していたよ。あと当然アンディ・ウォーホルも。ポップアートがすごく好きだった。でも、音楽と同じで、好きなものは歳と共に変わっていくんだよね。そこから様々な表現方法を勉強していくうちに、絵画よりもグラフィックデザインのほうが自分に向いていることがわかったんだ。

BATTLES(左がデイヴ・コノプカ)
BATTLES(左がデイヴ・コノプカ)

―それでアートスクールに進学しデザインを専攻したのですね。

デイヴ:そう。ポール・ランド(1914年生まれのグラフィックデザイナー)らアメリカの近代デザイナーや、スイススタイルのグラフィックデザインに傾倒するようになった。僕と同級生だったベン・ジョーンズは、Paper Radというアートグループを組んで面白い作品をたくさん手がけているよ。

―前作『Gloss Drop』のアートワークは衝撃的でした。溶けかけたアイスクリームのような、ショッキングピンクの物体が写っているという。これはどのように思いついたのでしょうか。

デイヴ:『Gloss Drop』を手がけた時は、ただシンプルに、「ピンクの塊」をジャケットに描きたくて。何色でも良かったんだけど、個人的にピンクが大嫌いだからピンクにした(笑)。つまり、思いっきり気持ち悪いものにしたかったんだ。「不快」とさえ呼べるものにね。

BATTLES『Gloss Drop』ジャケット
BATTLES『Gloss Drop』ジャケット

―それはなぜですか?

デイヴ:バンドのアートワークは、どれも洗練されていて、「かっこいいものでなくてはならない」というルールに辟易していたから。僕らは何の意味も持たない、ひたすら気色悪い、不快なものをアートワークに落とし込もうと思ったんだ。ピンクの塊でしかないのに、それを見たらBATTLESを思い出す、そんなものにしたかった。

―そして今作のアートワークは、積み上げられたパンケーキや、バナナが突き刺さったスイカ、3つの目玉焼きなど、これまた意味深なモチーフが並んでいます。

デイヴ:今回のアートワークは、BATTLESが音楽を作る上でのプロセスを表現しているんだ。つまり、どのようにして様々な音楽的要素を組み合わせているのか。相性のいいものもあれば、良くないものもある。中には耳障りで不快な音だってある。それをアートワークで視覚的に表したかった。しかも、表ジャケットだけで完結しているわけじゃなくて、実際にアルバムを買うと、その続きが内ジャケに描かれているんだ。アルバムを通して、ちょっとした物語になっているんだよ。

BATTLES『La Di Da Di』ジャケット
BATTLES『La Di Da Di』ジャケット

―パッケージで手に入れてこそ、楽しめるコンセプトなのですね。

デイヴ:そう。今の時代、全てがデジタル化されてしまって、ジャケットの絵しか見せられないのがすごく残念だ。個人的には、今もアルバムに思い入れがある。音楽を聴きながら、写真や絵柄を眺めたり、歌詞を読んだりして、アルバムのアートワークから刺激をもらうのが好きなんだ。それに、アートというのは、日常生活の中で人々の記憶を呼び覚ますものだと思っているから。この先、普通に食事していても、バナナとスイカを見たら卑猥な想像せずにはいられなくなるよね(笑)。

―ポップな遊び心があって、なおかつ人の記憶に深く入り込む悪戯心もある。まさにBATTLESの音楽性そのものですね。デイヴ自身、現在はアートとどのように向き合っていますか?

デイヴ:アートスクール時代はアートが生活の中心だったのに、気付いたら音楽の道に進んでいて。だからその2つの世界を結びつけることができているのは、嬉しいことなんだ。レコーディングでもツアーでも音楽で煮詰まった時はいつも、何かアート作品を作ることで気持ちを晴らしている。なぜだかわからないけど元気になるんだ。バスケットボールをやるのもフィジカル的なストレス発散になるけど、アート作品を作って脳内運動をさせることは、自分のバイオリズムにとって必要不可欠なんだよね。

結果的に全曲インストになったのは、できあがった曲に充分エネルギーと個性があって、ボーカルを入れる必要がないと思ったから。

―最新作『La Di Da Di』を制作するにあたって、サウンド面ではどういったテーマがあったのでしょうか?

デイヴ:まずは僕とイアン(Gt,Key)が、それぞれのホームスタジオで曲の素材をたくさん作って。その段階では、何よりもまず、自分が面白いと思うことだけを考えるんだ。当然、他の二人のメンバーがそれを同じくらい面白いと思ってくれるかどうかが大きな賭けになるわけだけど、それは彼らも同じ状況にあるからね。

―つまり作品のインスピレーションは、各メンバーが自分の中で興味をそそられるものを見出すところから生まれると。

デイヴ:そう。このバンドはリードボーカルがいて、歌を歌うわけじゃない。ファンにどうしても伝えなきゃいけないメッセージがあるわけでもない。例えば「2016年の大統領選では、絶対にドナルド・トランプ(共和党からの立候補を表明した大統領候補者)に投票するな」とかね(笑)。自分たちにできることをやって、刺激的な音楽を作ろうとする過程の中で、面白いものを見出していくことに尽きるんだと思う。

―曲に対するアプローチも三人三様で、それが融合することによって立体的なアンサンブルが生み出されているように思います。

デイヴ:僕の場合はコンピューターを使わない分、いろいろなエフェクターやペダルを駆使している。一方イアンは、コンピューターを使ってAbleton Live(音楽ソフト)を走らせている。その2つの世界、つまりアナログとデジタルを融合させつつ、さらに完全アナログのジョン(Dr)のビートも取り入れていく。一人のメンバーが思いついたアイデアが、他の二人の手助けによってさらに面白いものになる。そうやって完成させていくんだ。

―前作『Gloss Drop』では、EYE(BOREDOMS)やカズ・マキノ(Blonde Redhead)ら、様々なゲストボーカルが参加し話題となりました、今回、そうしたゲストを入れずにバンドメンバーだけで、しかも全曲インストという方向性にしたのは?

デイヴ:別段大きな決断があったわけじゃない。僕たちはその場の感覚を大事にするバンドで、どうしたら面白い音楽が作れて、それを余計な要素に頼ることなく人に伝えられるか? ということだけを常に考えている。前作でゲストボーカルを入れたことは、あれで良かったと思う。あのアルバムに貢献してくれた、全てのボーカルが素晴らしかったからね。でも、だからと言って、「1回やったから、次はやめよう」という決断があったわけではない。「とりあえず音楽を作ってみて、どんな雰囲気か見てみよう」という感じで始めたんだ。

―ボーカルが必要かどうかは、実際に曲を作ってみて考えればいいと。

デイヴ:うん。ただ、ボーカルを入れるとなると、歌が曲の中にきちんと収まるようスペースを空けておく必要がある。ぶっとんだループの上に歌を入れようとしても、かち合うだけだからね。なので、曲を作りつつ、「この曲はボーカルを入れたほうが面白いかもしれない」と思ったものはとりあえず後回しにして、自分たちだけで完成させられる曲から取り掛かることにした。そして結果的に全曲インストになったのは、できあがった曲に充分エネルギーと個性があって、ボーカルを入れる必要がないと思ったから。

BATTLES

アイデアが煮詰まったから「原点回帰しよう」となるのは、バンドにはよくあることだ。でも、僕たちの場合はそうじゃない。

―個人的には、初期EP(2004年に3枚のEPを発売)を彷彿とさせる楽曲が増えたと感じました。三人の中では「原点回帰」の意識はありましたか?

デイヴ:『Mirrored』(2007年発売、1stフルアルバム)もほとんどインストだったし、『Gloss Drop』にしても4分の3はインストだったからね。まあ、完全なインストとなると初期EP以来になるわけで、改めて「あれはいい作品だったな」と振り返る瞬間は確かにあった。当時の自分たちが考えていた「何がバンドとして面白いのか?」ということを、改めて思い出したよ。

―「煮詰まったから原点回帰しようぜ」というのとは違うわけですね。

デイヴ:アイデアが煮詰まったから「原点回帰しよう」となるのは、バンドにはよくあることだけどね。例えばWeezerにしても、「この20年間で最も『Weezer』(デビューアルバム)に近い作品を作りました」なんて言ったりする(笑)。でも、僕たちの場合はそうじゃない。バンドを始めた時に核にあった部分を、再確認するだけでも面白かったりもするわけだ。今回全曲インストの作品を作ったことで、そういう部分がより強く出ているんじゃないかな。

―バンドを始めた時に核にあった部分を見つめ直すことで見えた、「BATTLESらしさ」とは何でしょう?

デイヴ:一番答え難い質問だね。世の中には、例えば「ドナルド・トランプに投票するな」というメッセージを掲げることができるバンドもいる。そういうバンドはファンにメッセージを伝えるという大義名分がある。でも僕らはそうじゃない。BATTLESの音楽は、僕たちのとった一連の行為の中から生まれる。今回インストアルバムを作ったけど、こうして僕たち三人が音楽を通して意思疎通を図ることこそが、このバンドの本質じゃないかと思う。

日本のオーディエンスが大好きだ。日本ならではの、静まり返って聴き入った後の熱い拍手も、アーティストへの敬意を強く感じる。

―これからワールドツアーをまわり、11月には日本でライブが行われます。数々の伝説的なパフォーマンスを行ってきたBATTLESですが、初来日の時のことは覚えてますか?

デイヴ:今でも覚えてるよ。たしか2004年、SHIBUYA-AX(2014年5月に閉館)でMars Voltaの前座だった。はじめのうちは、曲をちゃんと演奏することばかりに気を取られていて、観客のことなんて考える余裕がなかった。で、ふと顔を挙げると、3千人もの日本人のファンで会場が埋め尽くされていたんだ。まあ、当時は僕たちのことをまだ知らないだろうから、ファンと言っていいのかわからないけど。

―その時、どんなふうに思いましたか?

デイヴ:みんな髪の毛が黒いな、って(笑)。

―(笑)。オーディエンスの反応については?

デイヴ:最高だった。僕たちの一挙一動を食い入るように見つめる、みんなの熱い眼差しが印象的だったよ。ライブの中で、観客を自分たちの味方につけた瞬間が忘れられない。本当に気持ち良かった。あの時以来、日本のオーディエンスが大好きになったね。日本に行くのは誰にとっても特別のものだろう。本当に美しい場所だから。しかも、僕らの音楽を気にかけてくれている人たちがたくさんいる。それだけでもありがたいことなのに、実際に行ってファンの前でプレイできるなんて最高だ。日本ならではの、静まり返って聴き入った後の熱い拍手も、アーティストへの敬意を強く感じる。大好きだよ。テキサスでプレイする時とは大違いさ(笑)。



1990年代の音楽に触発された頃の自分を振り返ってみると、ライブのステージでバンドが演奏しているのを観るだけで、充分興奮した。映像なんて必要なかったよね。

―前回のライブ(2011年、『Gloss Drop』リリース後のツアー)ではLEDモニターと演奏を同期させてプレイしていましたね。

デイヴ:もともとあのLEDモニターの発想は、ボーカル入りの曲を演奏する際に、ボーカリストが歌っている映像を流すためだった。今回のライブでは、“Atlas”や“Ice Cream (feat. Matias Aguayo)”もやると思うけど……って、ネタバレになっちゃうね(笑)。とにかく、LEDモニターはもうなくてもいいかなと思っている。むしろLEDモニターに頼らなくてもいいようなライブの観せ方や演出を今考えているところなんだ。LEDモニターはあったらあったでいいんだけど、コストもかかるわけで……あ、夢のない発言だった?(笑)

―当時のライブは海外でも観たのですが、同期がうまくいかなかったことが何度かありましたよね。

デイヴ:僕らのチームは、大勢スタッフがいるわけじゃないし、最小限の規模でやっている。だからLEDモニターは、故障したりした時の手間ひまと経費がかかり過ぎていたんだ。照明担当のスタッフがその辺のこともやってくれていたから、今度のツアーではむしろ照明をもっと駆使しようと思っているよ。

―最近は、新人バンドでもステージのLEDモニターでビジュアルを観せて、いわゆるマルチメディアでライブを観せることが定着していますが、BATTLESのやっていたことはその先駆けと言えるかもしれないですね。

デイヴ:だからこそ、今そこに自分たちも加わるのは、アーティスティックではないと思ってしまうんだ。1990年代の音楽に触発されて、Lynx(デイヴがかつて在籍していたマスロックバンド)をやってた頃の自分を振り返ってみると、ライブのステージでバンドが演奏しているのを観るだけで、充分興奮した。同時に映像を観る必要なんてなかったよね。むしろ「他の人が作った映像作品を一緒に観せられても……」と思うこともあったし。

―ライブに行ったら、その音楽を作っている核心にあるものを観たいし、観せたいと。

デイヴ:もちろん、マルチメディアの演出を極めているバンドも、中にはいると思う。例えばDaft Punkなんてすごいよね。Chemical Brothersも素晴らしい。でもBATTLESの場合、フェスも回るけど、小さいクラブでプレイすることもある。このバンドの良さを引き出すためには、移動式サーカスのような大がかりな出し物なんていらないんだ。

―では最後に、今後のBATTLESの展望をお聞かせください。

デイヴ:当面の展望としては、三人で力を合わせて作ったこのアルバムを引っさげてツアーを行い、生計を立てることだね(笑)。

リリース情報
BATTLES
『La Di Da Di』日本盤(CD)

2015年9月15日(火)発売
価格:2,376円(税込)
Warp Records / Beat Records

1. The Yabba
2. Dot Net
3. FF Bada
4. Summer Simmer
5. Cacio e Pepe
6. Non-Violence
7. Dot Com
8. Tyne Wear
9. Tricentennial
10. Megatouch
11. Flora > Fauna
12. Luu Le
13. FF Reprise(ボーナストラック)
※初回生産分は紙ジャケット仕様

イベント情報
『BATTLES FALL TOUR 2015 JAPAN』

2015年11月25日(水)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:東京都 EX THEATER ROPPONGI
料金:前売 アリーナ立見6,500円 スタンド指定席7,000円(共にドリンク別)
※スタンド指定席は完売

2015年11月26日(木)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:大阪府 梅田 AKASO
料金:前売6,500円(ドリンク別)

プロフィール
BATTLES (ばとるす)

2002年にNYでイアン・ウィリアムス(ex.Don Caballero)、デイヴ・コノプカ(ex.Lynx)、ジョン・ステニアー(ex.Helmet / Tomahawk)、タイヨンダイ・ブラクストンにより結成されたエクスペリメンタルロックバンド。2004年には『B EP』『Tras』『EP C』と3枚のEPを立て続けにリリースし、ポストロック~マスロックシーンの隆盛とともに大きな注目を集める。精力的にライブ活動を行いながら、2005年には「Warp」と契約。2007年に1stアルバム『Mirrored』をリリースし、各メディアで絶賛を浴びると、国内外の大型フェスへの出演やツアーで大きな成功を収めた。2010年からは現在の3人編成に。2011年にリリースされた2ndアルバム『Gloss Drop』ではゲイリー・ニューマンからBOREDOMSのEYEまで様々なゲストボーカルを迎えて再び話題を呼ぶ。そして2015年、4年ぶり待望となる最新アルバム『La Di Da Di』がリリース。11月には来日公演も決定。

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