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Sonic Youthと並ぶNYアンダーグラウンドの帝王Swansとは?

Swans『The Glowing Man』
テキスト
黒田隆憲
編集:飯嶋藍子
2016/06/13
Sonic Youthと並ぶNYアンダーグラウンドの帝王Swansとは?

現メンバー最後のアルバム『The Glowing Man』

Swansの最新作『The Glowing Man』がリリースされる。すでにアナウンスされているように、本作は現在のメンバーでの最後のアルバムになるという。1997年にバンドを解散するも、2010年に再結成を果たし、その後はコンスタントに作品を作り続けてきたSwans。2013年と2015年には来日公演も行なうなど、精力的な活動をしていた彼らだけに、今回の発表を「青天の霹靂」と感じる人も少なくないはずだ。中心人物のマイケル・ジラ(Vo,Gt)によれば、今後も「Swans」の名の下に活動はするが、今より小規模なものになることは確かとのこと。身も心も吹き飛ばされそうなほどの、あの凄まじい轟音を「体感」する機会が再び訪れることはないのだろうか。

Swansはなぜ「重鎮」と呼ばれるのか?

Swansは1982年、マイケル・ジラを中心にニューヨークにて結成されたバンドである。翌年にはアルバム『Filth』でデビュー。そのメタリックかつノイジーなギターサウンドと、インダストリアルなビート、ありったけの憎悪を撒き散らすようなマイケルのボーカルは、シーンに大きな衝撃を与えた。

マイケル・ジラ(撮影:William Lacalmontie)
マイケル・ジラ(撮影:William Lacalmontie)

その頃ニューヨークでは、サーストン・ムーア(Sonic Youth)やジェームス・チャンス、リディア・ランチといったミュージシャンたちが、パフォーマンスアートやメディアアートなどと結びついた活動を精力的に行なっており、「ノーウェーブ」と呼ばれるムーブメントが形成されつつあった。Swansはその中心的な存在として、最初の解散までニューヨークのアンダーグラウンドを牛耳っていくのである。

度重なるメンバーチェンジ、レーベルの設立。そして、沈黙の13年

メンバーチェンジを繰り返しながら、アルバムごとに進化を続けてきたSwans。1989年にはメジャーレーベルへと移籍、アルバム『The Burning World』では歌心あふれるメロディーと、美しくもダークなアシッドフォークを奏で、従来のファンを驚かせた(個人的には、Swans最高傑作の一つ)。その後、自ら立ち上げたYoung God Recordsは、Swansの過去作をアーカイブするだけにとどまらず、後にデヴェンドラ・バンハートやAKRON/FAMILY、ラーキン・グリム(元Dirty Projectors)といった才能を見出すレーベルへと成長を遂げる。一方、バンドは1996年に架空のサウンドトラックアルバム『Soundtracks for The Blind』をリリースし、Godspeed You! Black EmperorやMogwai、Sunn Oらの先を行く暗黒のドローンサウンドを展開するも、前述のとおり翌年には解散。しばらく沈黙を守っていた。

それから13年後。2010年に現在のメンバーで再結成を果たし、『My Father Will Guide Me up a Rope to the Sky』をリリース。続く『The Seer』以降、本作『The Glowing Man』までの4枚のアルバムは、全てCD2枚組、2時間に及ぶ大作となる。前作『To Be Kind』からは、Mute Recordsと契約を交わし、そのおかげで日本でもおよそ24年ぶりにアルバムがリリースされた。

「時間芸術」の時間すら歪めるほどの緊張感

そして本作『The Glowing Man』である。マイケル・ジラを筆頭に、ノーマン・ウェストバーグ(Gt)、クリストフ・ハーン(Gt)、フィル・プレオ(Dr)、ソー・ハリス(Dr,Key)、クリストファー・プラウディカ(Ba)の六人によって生み出された鉄壁のグルーヴ。

Swans(撮影:Jens Wassmuth)
Swans(撮影:Jens Wassmuth)

まるで呪詛のようなマイケルのボーカルや、いつ果てるともなく執拗に繰り返されるフレーズ、潮の満ち引きのようなフィードバックノイズやドローン。「音楽は時間芸術である」とはよく言われるが、Swansが打ち鳴らす圧倒的な爆音の中に身を委ねると、時間の感覚は麻痺し、もはや自分はどこから来て、どこへ行こうとしているのかすら分からなくなるような錯覚を覚える。そう、彼らの音楽は「時間」という概念が喪失した「黄泉」の入口へと我々を誘うのだ。しかも、猛り狂う「獣性(死への衝動)」の奥には常に「知性(生への希求)」が内包されており、タガが外れる一歩手前のギリギリのバランスが、彼らのサウンドにただならぬ緊張感を生み出しているのだろう。

アルバム後半は、マイケルの妻ジェニファー・ジラがボーカルで参加した楽曲が印象に残る。“When Will I Return?”は、かつて彼女が自分の顔に深い傷を負い、そこからの回復を讃えた歌。曲作りは普段、アコースティックギターをつま弾きながら行なうというマイケルだが、この曲や最終曲“Finally, Peace.”は、彼のメロディーメーカーとしての資質が遺憾なく発揮されている。

Swans(撮影:Marco Porsia)
Swans(撮影:Marco Porsia)

おそらくマイケルは、現ラインナップでやれること / やるべきことは、全てやり尽くしたと判断したのだろう。今後、「新生Swans」では何をするつもりなのか。今の段階では全く不明だが、しばらくは彼が残したこのアルバムに浸りきりたい。

リリース情報

Swans『The Glowing Man』日本盤通常盤
Swans
『The Glowing Man』日本盤通常盤(2CD)

2016年6月15日(水)発売
価格:2,592円(税込)
TRCP-201/2

[CD1]
1. Cloud of Forgetting
2. Cloud of Unknowing
3. The World Looks Red / The World Looks Black
4. People Like Us
[CD2]
1. Frankie M.
2. When Will I Return?
3. The Glowing Man
4. Finally, Peace.
※ボーナストラック収録予定、解説、歌詞対訳付

黒猫チェルシー『青のララバイ』初回限定盤通常盤
Swans
『The Glowing Man』日本盤スペシャルエディション(2CD+DVD)

2016年6月15日(水)発売
価格:3,024円(税込)
TRCP-203~5

[CD1]
1. Cloud of Forgetting
2. Cloud of Unknowing
3. The World Looks Red / The World Looks Black
4. People Like Us
[CD2]
1. Frankie M.
2. When Will I Return?
3. The Glowing Man
4. Finally, Peace.
※DVDには2015年のライブ映像収録、ボーナストラック収録予定、解説、歌詞対訳付

プロフィール

Swans
Swans(すわんず)

1982年NYにてマイケル・ジラが中心となりバンドを結成、1983年アルバムデビュー。1980年代~1990年代のオルタナティヴシーンの巨頭としての活動は、当時そして現在のシーンへの影響力は計り知れない。1997年バンド解散。2010年に再結成をし、2013年来日公演実施。2014年ミュート・レーベルと契約、同年『To Be Kind』を発売し、有力誌の年間ベストを席巻した。2015年1月来日公演実施。2016年6月、現バンドメンバーとして最後のアルバムとなる『The Glowing Man』発売。現スワンズのメンバーは、マイケル・ジラ(G,Vo)、ノーマン・ウェストバーグ(G)、クリストフ・ハーン(G)、フィル・プレオ(Dr)、ソー・ハリス(Dr,Key)、クリストファー・プラウディカ(B)の6人組。

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