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「怖さ」の在処はどこ?恐怖を巧妙に操作する映画『ザ・ボーイ』

『ザ・ボーイ~人形少年の館~』
テキスト・編集
CINRA.NET編集部
「怖さ」の在処はどこ?恐怖を巧妙に操作する映画『ザ・ボーイ』
©2015 LAKESHORE ENTERTAINMENT GROUP LLC AND STX PRODUCTIONS, LLC All Rights Reserved

人形ホラーがサイコスリラーに? 変化する「怖さ」

人形をモチーフにしたホラー映画と言えば、代表的なものに、「チャッキー」で有名な『チャイルド・プレイ』や、新しいところで『アナベル 死霊館の人形』などがあるけれど、『ザ・ボーイ~人形少年の館~』は、それらの映画とは明らかに一線を画した作品だ。

この映画は、アメリカ人女性グレタが、イギリスにやって来たところから始まる。彼女は、老夫婦と暮らす8歳の男の子ブラームスの子守りとして雇われ、遠い異国の地へとやって来たのだ。ところが、その男の子とは、何と磁器で出来た人形だった。初めは冗談だと思ったグレタだったが、老夫婦がその人形を本気で自分たちの子どもとして扱っていることがわかり戦慄を覚える。

『ザ・ボーイ~人形少年の館~』 ©2015 LAKESHORE ENTERTAINMENT GROUP LLC AND STX PRODUCTIONS, LLC All Rights Reserved
『ザ・ボーイ~人形少年の館~』 ©2015 LAKESHORE ENTERTAINMENT GROUP LLC AND STX PRODUCTIONS, LLC All Rights Reserved

そして、老夫婦がしばらく旅行に出るために、彼女に人形の世話を頼む際に渡されたのが、「少年の顔を覆ってはならない」とか、「お休みのキスをすること」と書かれた10個のルールだった。ところが、老夫婦が旅立つやいなや、彼女はそのルールを破り始める。その頃から、人形を巡る不可解な現象が生じ始めた……。

このあとの展開は、こうしたホラー映画に馴れた者なら、それなりに予想が付くと思う。しかし、そうならないところがこの映画のミソだ。作品の紹介文に「ジャンル・スイッチ・ムービー」という表現があったが、一見、いわゆる「人形ホラー」に思えたこの映画が、途中から、むしろ「サイコスリラー」にトーンが変わる。そのtwist(ひねり)こそが、真性ホラーファンには新鮮味と映り、逆にホラーが苦手な人も刺激的に楽しめるポイントになっているのだ。

試される先入観。「恐怖」は映画装置に操られている?

その意表を衝く効果を高めるためにも、この映画がいかにも「人形ホラー」然とした仕掛けをたくさん用意する必要があったと思う。まず、グレタが訪れる老夫婦の住まう館が、ビクトリア調ゴシック様式の広大な屋敷で怖いのだ。そして、肝心の人形だが、磁器でできたヨーロッパ伝統のビスクドールというのがまた恐怖を煽る。

実は、その人形は、幼くして火事で亡くなった老夫婦の本当の息子を象ったものだということがわかるのだが、『マン・オブ・スティール』などのキャラクター造型で知られるブレンダン・ヘファーナンがデザインした人形の顔は、どことなく『オーメン』のダミアンに似ていて不気味だ。

『ザ・ボーイ~人形少年の館~』 ©2015 LAKESHORE ENTERTAINMENT GROUP LLC AND STX PRODUCTIONS, LLC All Rights Reserved
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そして、監督のウィリアム・ブレント・ベルは、そうした装置に頼るだけでなく、映画の前半、その人形のクローズアップを多用し、あたかも表情の変化があるかのような巧みな演出を施すことによって、見る者の意識をさらに人形に集中させるのだ

『ザ・ボーイ~人形少年の館~』 ©2015 LAKESHORE ENTERTAINMENT GROUP LLC AND STX PRODUCTIONS, LLC All Rights Reserved
『ザ・ボーイ~人形少年の館~』 ©2015 LAKESHORE ENTERTAINMENT GROUP LLC AND STX PRODUCTIONS, LLC All Rights Reserved

ところが、グレタが、実はDVの元カレから逃げるためにイギリスにやって来た、つまり、その元カレの影に今も怯えているということがわかったあたりから、この映画は、俄然「心理スリラー」的な様相を呈し始める。そして、最後に起こるショッキングな大どんでん返し。今作でグレタを演じ、もともとホラーが苦手なローレン・コーハンは、『ウォーキング・デッド』のマギー・グリーン役での成功のあと、もっとロマンティックな映画への出演を希望していたらしいが、彼女がこの作品に出ることを決めたのは、まさにこの映画の脚本の妙に唸った結果らしい。それほど、この映画は見る者を飽きさせないのだ。

「人形」は本当に不気味なのか?

そもそもなぜ人形をモチーフにしたホラー映画が多いのかと言えば、本作に登場する老夫婦が人形に息子を投影したように、霊が取り憑いているとか、持っていた人の怨念が籠っているといった、人形にはどこかそうした不気味なところがあると思いがちな人間の深層心理を突いたものだと思うが、一方で、愛すべき魅力的な存在だということもまた事実だ。それを証明するかのように、撮影中にスタッフたちにも不気味に思われていたブラームス人形は、ローレン・コーハンの自宅の居間にあるらしい。あれほど、ホラーが嫌いだった彼女が引き取って大事にしているというのだ。しかし、そのことこそが、この映画の、引いては「人形」の本質を照らし出しているのかもしれない。

『ザ・ボーイ~人形少年の館~』 ©2015 LAKESHORE ENTERTAINMENT GROUP LLC AND STX PRODUCTIONS, LLC All Rights Reserved
『ザ・ボーイ~人形少年の館~』 ©2015 LAKESHORE ENTERTAINMENT GROUP LLC AND STX PRODUCTIONS, LLC All Rights Reserved

作品情報

『ザ・ボーイ~人形少年の館~』

2016年7月21日(木)、7月26日(火)に新宿シネマカリテ、8月17日(水)、8月21日(日)にシネ・リーブル梅田で公開
監督:ウィリアム・ブレント・ベル
出演:
ローレン・コーハン
ルパート・エヴァンス
配給:プレシディオ

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