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w-inds.橘慶太のセンスは、日本のポップ史の転換点を作り得る

w-inds.『INVISIBLE』
テキスト
宇野維正
編集:山元翔一
w-inds.橘慶太のセンスは、日本のポップ史の転換点を作り得る

w-inds.は世界的にも前例のない領域に足を踏み入れようとしている


きりがないのでこのあたりにしておくが、これらはすべてw-inds.橘慶太の最近のツイートだ。アイドルグループ的な活動をしていたボーカリスト / パフォーマーがいきなり曲作りに目覚めた、というレベルではないのである。

音楽制作の現場における専門用語が飛び交うなかで、特に注目したいのは「作曲も編曲も好きだけど、MIXが一番楽しい」とサウンドに対する自身のフェティシズムを簡潔に告白しているところ。現在の彼が入れ込んでいるエレクトロニックミュージックの世界において、最も重要なことは「いいメロディー」でも「流行りのビート」でもなく、もちろん「グッとくる歌詞でもなく」なく(それらすべては言わば「いい曲の前提」だ)、どれだけ自身のフェティシズムを音として具現化できるかにある。

そこで重要なのは「◯◯◯みたいな感じ」ではなく、ジャストで「◯◯◯のサウンド」であること。だから、一部の売れっ子プロデューサー / ミュージシャンに世界中から依頼が殺到するという現象が起こる。つまり、それまでボーカリスト / パフォーマーだった表現者が「理想のサウンド」に目覚めたのなら、自分でプロデュース(アレンジ)やミックスまで手がけるのが一番の近道だ。

とはいえ、言うは易し行うは難しで、歌って踊って、さらにミックスまで手がける表現者なんて、世界的にもほとんどいない(もちろん、ジャスティン・ビーバーくらい資金力と周囲の人材と自身が属しているシーンからのバックアップがあれば、自分がプロデューサーとして立つ必要はないとも言えるが)。そんな「世界的にもほとんどいない」地平へと足を踏み入れようとしているのが現在のw-inds.だ。

w-inds.(左から:緒方龍一、橘慶太、千葉涼平)
w-inds.(左から:緒方龍一、橘慶太、千葉涼平)

先行シングルによる「事件」で幕を開けた新作『INVISIBLE』

橘が初めて作詞、作曲、プロデュースのすべてを手がけたシングル『We Don't Need To Talk Anymore』が今年1月にリリースされて以降、既に「えっ! 今度のw-inds.の曲、最高じゃん!」「えっ! これセルフプロデュースなの?」とサプライズの2段ロケット状態で音楽好きの間にバズを起こしているが、これはもっともっと多くの人から注目されるべき「事件」だ。

“We Don't Need To Talk Anymore”の衝撃に続いて、3月15日にリリースされたw-inds.の2年ぶり、12作目となるオリジナルアルバム『INVISIBLE』。本作には、シングルでいうと2016年5月にリリースされた『Boom Word Up』以降のw-inds.の歩みと、現在進行形の最新型w-inds.が刻まれている。

w-inds.『INVISIBLE』初回盤Aジャケット写真
w-inds.『INVISIBLE』初回盤Aジャケット写真(Amazonで見る

2001年のデビューから丸16年。これがたとえばロックバンドだと、中堅と呼ばれる季節を通り越してそろそろベテランなどと言われてもおかしくない時期だが、あらゆる意味でw-inds.はまったく別の世界にいる。そもそもデビューの時点で15~16歳だった彼らは、まだ30代に入ったばかり。ミュージシャンとしても、パフォーマーとしても、まだまだ天井知らずの成長期なのだ。

『INVISIBLE』は、そんな「成長期真っ只中」のw-inds.の現状を反映してか、音楽的な統一感よりも進化のスピード感が前面に出た作品となっている。アルバムの冒頭を飾るシングル既発曲“Boom Word Up”は、最近だとブルーノ・マーズなどの作品でもリバイバルしている、1980年代後半ニュージャックスウィング期のR&B的なサウンド。シングルとしてそれに続く作品となった“Backstage”も、リズムは2010年代の世界的トレンドであるトロピカルハウスの影響下にあるサウンドに様変わりしているが、全体のプロダクション(前述したサウンドへのフェティシズムの部分だ)と三人のボーカルスタイルは、旧来のR&B的なマナーに則ったものだ。

同じような傾向は、橘が作詞した“TABOO”、作曲に関わっている“Players”や、緒方龍一と千葉涼平がそれぞれ作詞とメインボーカルを担当している“ORIGINAL LOVE”と“In your warmth”といった曲にもうかがえるので、単純に制作時期によるものではないと推測できるが、それらの曲は「古くからのファンを置いてきぼりにしない」という役割をこのアルバムのなかで果たしているのだろう。

これは日本のポップミュージック史の転換点となるかもしれない

ただ、“We Don't Need To Talk Anymore”にぶっ飛ばされて、久々にw-inds.のアルバムに手を伸ばした自分のようなリスナーにとっては、この曲と同種の音に隙間があるクールな感触をもった曲の方にどうしても耳を奪われてしまう。具体的に言うなら、“Come Back to Bed”や“Complicated”、そして“CAMOUFLAGE”。その3曲に“We Don't Need To Talk Anymore”を加えたアルバム前半の流れは、先鋭的なインディーズアーティストを含めた日本のどんなアーティストの作品を聴いているときよりも、世界のポップミュージックの最前線に追いつき、それを追い越していくような音楽的興奮に満ちている。

そんなことを書くと「ボーカルドロップ」(ボーカルをシンセの音源のように加工して、曲中の音数が少ないポイントで印象的に使う、EDM以降のダンスミュージックシーンで流行っている手法)が使用されていればそれでいいのか、と思われてしまうかもしれないが、w-inds.の場合、それを他のグループが真似しようにも真似できない領域にまで高めているところが重要なのだ。

本作には「旧来のR&B的なマナー」と「音に隙間があるクールな感触」が混在していると指摘したが、少々乱暴に嚙み砕いて書くと、前者は「足し算」のサウンドメイキングで、後者は「引き算」のサウンドメイキング。その「引き算」のサウンドメイキングで最も大切なのが、最初に述べた「サウンドに対するフェティシズム」だ。メンバーのなかにそのフェティシズムに目覚めたクリエイターが現れてしまった以上、w-inds.の音楽性が今後向かっていくのは「引き算」の方ではないか。数年後、本作『INVISIBLE』がw-inds.にとって、そして日本のポップミュージック史にとって、大きなターニングポイントとなる作品だったと語られる日がくるかもしれない。

リリース情報

w-inds.『INVISIBLE』初回限定盤A
w-inds.
『INVISIBLE』初回限定盤A(2CD+Blu-ray)

2017年3月15日(水)発売
価格:5,000円(税込)
PCCA-04515

[CD1]
1. Boom Word Up
2. Come Back to Bed
3. Complicated
4. We Don't Need To Talk Anymore
5. CAMOUFLAGE
6. Backstage
7. Separate Way
8. ORIGINAL LOVE
9. In your warmth
10. wind wind blow
11. TABOO
12. Players
13. We Don't Need To Talk Anymore DMD Remix
[CD2]
1. w-inds. Reflection Remix by DMD
[Blu-ray]
1. Boom Word Up Music Video
2. Backstage Music Video
3. We Don't Need To Talk Anymore Music Video
4. The Making of Boom Word Up Music Video
5. The Making of Backstage Music Video and Photography
6. The Making of We Don't Need To Talk Anymore Music Video
7. Solo Interview ~RYOHEI~
8. Solo Interview ~KEITA~
9. Solo Interview ~RYUICHI~
10. Special Movie ~“INVISIBLE” Game~

w-inds.『INVISIBLE』初回限定盤B
w-inds.
『INVISIBLE』初回限定盤B(CD+DVD)

2017年3月15日(水)発売
価格:3,850円(税込)
PCCA-04516

[CD]
1. Boom Word Up
2. Come Back to Bed
3. Complicated
4. We Don't Need To Talk Anymore
5. CAMOUFLAGE
6. Backstage
7. Separate Way
8. ORIGINAL LOVE
9. In your warmth
10. wind wind blow
11. TABOO
12. Players
13. We Don't Need To Talk Anymore DMD Remix
[DVD]
1. Boom Word Up Music Video
2. Backstage Music Video
3. We Don't Need To Talk Anymore Music Video
4. Behind The Scene of INVISIBLE
5. 3shot Interview about INVISIBLE

w-inds.『INVISIBLE』通常盤
w-inds.
『INVISIBLE』通常盤(CD)

2017年3月15日(水)発売
価格:3,000円(税込)
PCCA-04517

1. Boom Word Up
2. Come Back to Bed
3. Complicated
4. We Don't Need To Talk Anymore
5. CAMOUFLAGE
6. Backstage
7. Separate Way
8. ORIGINAL LOVE
9. In your warmth
10. wind wind blow
11. TABOO
12. Players
13. We Don't Need To Talk Anymore DMD Remix

プロフィール

w-inds.
w-inds.(ういんず)

橘 慶太、千葉 涼平、緒方 龍一からなる3人組ダンスボーカルユニット。2000年11月から毎週日曜日、代々木公園や渋谷の路上でストリートパフォーマンスを開始。2001年3月14日にシングル『Forever Memories』でデビュー。同年リリースされた1stアルバム『w-inds.~1st message~』はオリコンチャート1位を記録。これまでに日本レコード大賞 金賞7回、最優秀作品賞1回を受賞し、NHK紅白歌合戦には6回出場と、実力・人気を不動のものとした。その活躍は、台湾・香港・韓国・中国・ベトナムなど東南アジア全域に拡がり、海外でも数々の賞を受賞。台湾ではアルバム4作連続総合チャート1位を記録。日本人として初の快挙を達成。21世紀という新しい時代に日本を中心に、世界中へ新しい風を巻き起こし続けている、男性ダンスボーカルユニット―――それがw-inds.である。

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