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Eveが『Smile』で果たした変化と独白。クロスレビューで探る

Eve『Smile』
2020/02/14
Eveが『Smile』で果たした変化と独白。クロスレビューで探る

「変わること」は、「自分を失くすこと」とイコールではない
テキスト:麦倉正樹

動画という形で発表される音楽の愛好家から「歌い手」に、そして仲間たちと生み出すMVを主軸とした「シンガーソングライター」へ。さらには、観客の前で歌い演奏する「パフォーマー」へ。「変わること」がEveというアーティストの本懐だとは思っていたけれど、“レーゾンデートル”や“白銀”、そして“心予報”といった、振り切れたポップ感を放つタイアップソングがテレビから流れてくるたびに、そのあまりの進化の速さに正直驚いたものである。<混ざって混ざって生まれ変わるまで>という“レーゾンデートル”の歌詞ではないけれど、新しい世界との出会いは、かくも大きな変化を、Eveというアーティストにもたらせるものなのかと。

レーゾンデートル ジャケット写真
レーゾンデートル ジャケット写真

とりわけ、「ロッテ ガーナチョコレート“ピンクバレンタイン”」のテーマソングとして書き下ろされた“心予報”のスペシャルアニメーションの破壊力はすごかった。2018年の12月、同じく川村元気の企画・プロデュースで生み出されたBUMP OF CHICKENの“新世界”をフィーチャーしたスペシャルアニメーション「ベイビーアイラブユーだぜ」を彷彿させる、その多幸感溢れるアニメーションは、それまでEveが生み出してきた幾多のMVとは、明らかに一線を画するものだったから。

前作『おとぎ』から1年ぶり、上記のタイアップ曲(アニメ『どろろ』のエンディング曲となった“闇夜”、スペースシャワーTV開局30周年記念STATION IDとなった“バウムクーヘンエンド”も含む)を、あますことなく収録したEveのニューアルバム『Smile』。しかしながらそれは、タイアップ曲で振り切れた彼のポップネスを、ただ爆発させるだけのアルバムではなかった。

「片割れ」の意を持つ“doublet”というインスト曲に続いて始まる2曲目“LEO”。軽やかなギターではなく、キーボードや弦、そして打ち込みを主体としたこの曲で、いきなりEveは<愛を満たしておくれよ / まだ死んでなんかいないさ / 心ごと吠えてくれよ>と、その思いの丈をぶちまけるのだ。<生まれよう / 応答してくれよ / しがらみも今捨てていけ / がらんどうなこのままで>。あるいは、その軽やかな曲調とは裏腹に、<ずっと変われないと 何百泣いたけど / 今日もどこかで 心を揺らして / 確かに歩んでいる>と、その心情を吐露する4曲目“虚の記憶”。そして、<この人生は歩く影法師のような物語 / 意味なんてない だけど>と歌う11曲目の“mellow”。絶望と希望が混在するそれらの歌詞は、間違いなくEveというアーティストがこれまで打ち出してきたものの延長線上にあるものであり、それによって彼は現在の場所まで押し上げられてきたといっても過言ではないだろう。

そう、タイアップという新しい人々との「出会い」は、Eveのポップサイドを引き出すと同時に、彼の内面にある「自分らしさ」を、さらに深遠な方向で引き出すことになったようだ。奇しくもEve自身が「二面性のアルバム」と称しているように、『Smile』と題しながらも、その目元からは涙がこぼれ落ちているアートワークをはじめ、このアルバムには、Eveというアーティストが持つ二面性が、その随所にまぶされている。明暗、白黒、あるいは絶望と希望。けれども重要なのは、それらのものが、必ずしも二元論的に対立しているわけではないということだ。そのどちらかを否定すれば、自分が自分でなくなってしまうのだから。その両方を認めながら、自らの表現をリミッター無しで高めていくこと。そう、「変わること」はEveというアーティストの本懐ではあるけれど、それは必ずしも「自分を失くすこと」とイコールではないのだ。自らの核の部分にあるものはそのままに、自分自身を偽ることなく、その表現の強度を上げていったアルバム。それがこの『Smile』というアルバムであり、「君は今、自分を偽ることなく、心の底から笑えているのか?」というのが、本作が打ち放つ、いちばんのメッセージなのかもしれない。

Spotifyで『おとぎ』を聴く(Apple Musicはこちら

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リリース情報

Eve『Smile』初回盤
Eve
『Smile』初回盤(CD+DVD)

2020年2月12日(水)発売
価格:4,180円(税込)
TFCC-86702

1. doublet
2. LEO
3. レーゾンデートル
4. 虚の記憶
5. いのちの食べ方
6. 闇夜
7. 朝が降る
8. 心予報
9. 白銀
10. バウムクーヘンエンド
11. mellow
12. ognanje
13. 胡乱な食卓

※特製ボックス仕様

Eve『Smile』通常盤
Eve
『Smile』通常盤(CD)

2020年2月12日(水)発売
価格:3,080円(税込)
TFCC-86703

1. doublet
2. LEO
3. レーゾンデートル
4. 虚の記憶
5. いのちの食べ方
6. 闇夜
7. 朝が降る
8. 心予報
9. 白銀
10. バウムクーヘンエンド
11. mellow
12. ognanje
13. 胡乱な食卓

イベント情報

『Eve Live Smile』

2020年5月23日(土)
会場:神奈川県 ぴあアリーナMM

プロフィール

Eve
Eve(いぶ)

2枚の自主制作アルバムを経て、2016年に全国流通盤『OFFICIAL NUMBER』をリリース。2017年に発表したアルバム『文化』は初めて全曲自作となり、収録曲“ドラマツルギー”はYoutubeで5,000万再生を突破。2018年~2019年は、12,000人を動員したワンマンツアー『winter tour 2019-2020 胡乱な食卓』を含めて全公演が即完。2019年2月発売の『おとぎ』はオリコンデイリー2位を獲得した。2020年2月12日にニューアルバム『Smile』を発売し、5月23日にはアリーナワンマンライブ『Eve Live Smile』を予定している。

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