
鼻に網タイツのくっついたキャラクターが一番好きですね
─続いてこちらは、人形を使った影絵作品の映像だ。


写真は2点とも映像作品《影の行進》(1999年)の展示風景
黒川「影絵の面白さって、映っているものが何なのかわからないところだと思うんですよね。それが何なのか自分で想像してみるのが面白いから、正体が分かっているのよりも集中して見ることができるんです」
─さらには、突然脚の生えた鏡(!?)と2枚の絵を使ったインスタレーション作品が登場。思わず駆け寄る黒川さん…が、あまりにも不思議な作品に、少々困惑気味。

鏡を使ったインスタレーション《警察官ではない(その制帽だけ)》(2007年)に興味をそそられる黒川さん。

こちらは《ダブル・カンナ》(2004年)。
─2枚の鏡を通して見た、壁に掲げられた2つの絵画を、頭の中で「立体」として再構築するという作品が2点。まさに「歩きながら考える」ケントリッジらしい作品とも言える。
黒川「どちらの鏡から見える映像も、不完全だっていうことなんですかね。ちょっと私には難しい作品ですけど、こうして鏡が展示してあるとキャッチーな面白さを感じます」
続いて、2つのレンズを通して立体像を作り上げるという作品が登場。

〈デューラーの測定法教則〉(2007年)のシリーズを覗く黒川さん。
黒川「目を凝らすと、すごく複雑な作りになっているのがよく分かります。さまざまな物体を描き込むことで、奥行きに広がりを持たせていますね。それから、見ている自分が揺れると、絵の中で飛んでいる飛行機も揺れるところが面白い。これも、視覚を揺さぶろうとする計算なんでしょうかね。すごい…」
─円筒形の金属に版画を映し出すインスタレーション作品にも注目。

円筒形の金属に版画が映る《メドゥーサ》(2001年)。
黒川「これは直接目を見ると石にされてしまうという、メデューサですよね。鏡ごしに見れば、石にされないのかも(笑)。これも視覚を使った、遊び心あふれる作品ですね」
─そして、最も謎に満ちた部屋が登場。上映されている数々の映像に登場するのは…なんと、鼻、鼻、鼻。
黒川「私、この鼻シリーズ、かなり好きです。鼻に網タイツのくっついたお姉さんのようなキャラが、今日見た中で一番気に入りました。鼻なのに、馬に乗って好き勝手やったあと、あっさり馬を下りてしまう気まぐれな強さ。それから、鼻なのにヒールを履いているかっこよさ(笑)。そうした要素に、さらにダークでシュールな要素も混ざってくる。これがケントリッジの面白さなんですね!」
─こうして、かなりボリュームがある展示を見終わり、大満足の黒川さん。最後に、率直な感想をお伺いした。
黒川「音楽あり、映像あり、アートに関するなんでもありで、とても楽しませてもらいました。遊園地のアトラクションに乗ったあとのような、爽快感がありますね。
そういえば、子どものお客さんもいましたね。頭が柔らかいぶん、大人より深く理解できるのかもしれないな。自由に発想することの大切さをすごく実感できる展覧会でした。
最初にケントリッジの絵を見たときは思ってもみなかったことなんですが、今やどの絵を見ても動き出しそうな気がしてならないです。帰り道、きっと周りのすべてが鼻に見えてくるんじゃないかな(笑)。一人の人間が、こんなにバリエーション豊かな作品を生み出すことができるなんて、本当にすごいなと思いましたね」
─暗い政治的な背景を持ちつつも、発想の豊かさと、笑いの要素を失わずに創作を続けてきたウィリアム・ケントリッジ。彼の作品をどのように受け取るかは、観客のひとりひとりに委ねられている。その豊かさ、自由さを味わいに、展覧会にぜひ足を運んでみてほしい。

※会場での撮影は、東京国立近代美術館の許可を得て行ったものです。
※作品は全て ©the artist
※作品には著作権があります。無断転用は固くお断りします。
CINRA.NETでは、レポートの公開を記念し、本展覧会の招待券を5組10名様にプレゼントいたします!ぜひ、実際に展覧会を体感してみてください。
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『ウィリアム・ケントリッジ―歩きながら歴史を考える そしてドローイングは動き始めた……』
2010年1月2日(土)〜2月14日(日)
会場:東京国立近代美術館 企画展ギャラリー(1階)
時間:10:00〜17:00 金曜日は20:00まで(入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(ただし、2010年1月11日は開館)、2010年1月12日(火)
料金:一般850円 大学生450円 高校生以下無料
『ウィリアム・ケントリッジ』展割引引換券ページ
CINRA.NET > 南アフリカ出身の現代美術家、ウィリアム・ケントリッジの手書きアニメーション
小林宏彰
1983年生まれ。ライター。小説、映画、演劇を中心として多分野に関心あり。CINRA.NETの他にマイコミジャーナル、HogaHolic、雑誌『ユリイカ』などにも寄稿する。2009年7月に笠井潔らとの共著『社会は存在しない セカイ系文化論』(限界小説研究会・編)が南雲堂より刊行。ゼロ年代の舞台芸術について論じた。























